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CloudStack を自分流に振り返る
2013/12/31 ※ハワイ時間
CUPA 荒井
CloudStack がリリースされたのは、今から 3 年半前となる 2010 年 5 月 4 日。
【http://cloud.com/】サイトと共に突如公開されたのが始まりでした。
OpenStack プ ロ ジ ェ ク ト が 始 動 し た の も ほ ぼ 同 時 期 ( ※ 更 に 国 内 で は
Wakeme-vdc も同じ時期にリリースされた)でそれまでオープンソースのクラウ
ド基盤ソフトウェアと言えば、Eucalyptus 一色だった時代が急激に変わるオー
プンソースのクラウド基盤ソフトウェアのターニングポイントと言えます。

CloudStack に注目した訳
早速、OpenStack?CloudStack の調査を開始しましたが、機能?動作を比較/
確認していくに連れて、CloudStack の感じる事が多々ありました。
個人的には「センスの良さ」とも言えるもので、以下のような事が主な理由で
した。
2010 年の発表資料
まだ CloudStack ユーザ会はなく母体は Eucalyptus ユーザ会であった。
(1) GUI、各機能の完成度の高さ
CloudStack 初期リリース(2.0)のバージョンから GUI は直ぐにユーザに提供可
能な完成度があり、動作も軽快だった。
また、仮想ルータ、システム VM など当時の他のクラウド基盤ソフトウェアで
はなかった独自のアーキテクチャであった。
LoadBalancer と Firewall、
コンソール(VNC)機能が標準で提供されているのも
大きかった。
スケーラビリティと拡張性に配慮しつつ、しかも中規模クラウド事業者向けの
堅実なアーキテクチャだった。
(2) マーケティングの上手さ
【Cloud.com】ドメインの取得と、
【CloudStack】ソフトウェアの名称。
ステルスモード解除のタイミングなどマーケティングにインパクトがあり、ま
た素早かった。
(3) ソースコードの丁寧さ
当時は斜め読み程度ではあったが、
丁寧な仕事(プロの仕事)で拡張性にも配慮さ
れていると感じた。
個人的には少し残念だったこととしては、
1. オープンソース系のクラウド基盤ソフトウェアが
【OpenStack】 CloudStack】
【
という軸つの 2 つできたこと。
2. OpenStack Nova がサービスとして利用できるレベルの機能?品質に至まで
時間がかかったこと
が挙げられる。
Java と Python でプログラム言語の違いはあるが、
CloudStack のソースコード
が OpenStack で採用されるという話もあったらしいのですが、この辺りは当時
OpenStack プロジェクトの発足をリードした NASA の思惑が大きく影響してい
ると思います。もし CloudStack + Swift という枠組みで発足し、OpenStack
のような多くの開発者を巻き込んだ場合、その後のオープンソースによるクラ
ウド基盤構築とそれに伴う業界変化はもっと早く起きたのではないかと思って
みたりしています。

CloudStack、OpenStack の今後
以降は、完全に個人的な「想像」になりますが、
【CloudStack】
【OpenStack】
という大きな 2 つの軸ができたこと、プライベートクラウドの根強いニーズと
今後のパブリッククラウド?プライベートクラウドのハイブリッドクラウド運
用を考慮すると、将来的には以下のような構造があり得るのではないかと思っ
ています。
	
  【AWS + CloudStack 陣営】 vs 【OpenStack 陣営】
今後、
クラウド上で構築されるシステムおいては IaaS 機能よりも PaaS(どちら
かという MaaS: Middleware as a Service)の機能を活用する事が重要になると
見ています。
特に個人的に注目しているのは、AWS Data Pipeline(データ駆動型ワークフロ
ー管理システム)、
AWS OpsWorks(DevOps アプリケーション管理?自動化)、Amazon Elastic
MapReduce(Hadoop の解析ジョブ管理システム)ような環境構築、
ワークフロー
/ジョブ管理機能を有した Middleware サービスで、プライベートクラウド環
境やハイブリッドクラウド環境でも利用したいというユーザニーズは今後ます
ます増えて来て、無くてはならないサービスになると思われます。
Amazon Web Services は、2012 年にプライベートクラウドの基盤として
Eucalyptus を利用したシステムと、パブリッククラウドとして提供される
Amazon クラウドの相互運用性を高めるとして、 Eucalyptus と提携を発表し
と
ましたが、パブリッククラウドとプライベートクラウドを両方カバーする
OpenStack に対するリードを堅持するため、また更なる市場開拓をすすめるた
めに実績?機能に優れた CloudStack(CloudPlatform?)を採用したプライベート
クラウド基盤との提携または連携機能の提供などがあり得るのではないかと個
人的に想像(というよりも妄想?)しています。

最後に
今後もオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアは「Linux」のように IT 業
界を動かす大きな力になると見ています。
CloudStack、OpenStack(もちろん、Eucalyptus、Wakame-vdc)のより一層の
発展と品質向上を期待しつつ、今年もコミュニティ活動を皆様と盛り上げてい
ければと考えております。

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  • 4. 特に個人的に注目しているのは、AWS Data Pipeline(データ駆動型ワークフロ ー管理システム)、 AWS OpsWorks(DevOps アプリケーション管理?自動化)、Amazon Elastic MapReduce(Hadoop の解析ジョブ管理システム)ような環境構築、 ワークフロー /ジョブ管理機能を有した Middleware サービスで、プライベートクラウド環 境やハイブリッドクラウド環境でも利用したいというユーザニーズは今後ます ます増えて来て、無くてはならないサービスになると思われます。 Amazon Web Services は、2012 年にプライベートクラウドの基盤として Eucalyptus を利用したシステムと、パブリッククラウドとして提供される Amazon クラウドの相互運用性を高めるとして、 Eucalyptus と提携を発表し と ましたが、パブリッククラウドとプライベートクラウドを両方カバーする OpenStack に対するリードを堅持するため、また更なる市場開拓をすすめるた めに実績?機能に優れた CloudStack(CloudPlatform?)を採用したプライベート クラウド基盤との提携または連携機能の提供などがあり得るのではないかと個 人的に想像(というよりも妄想?)しています。 最後に 今後もオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアは「Linux」のように IT 業 界を動かす大きな力になると見ています。 CloudStack、OpenStack(もちろん、Eucalyptus、Wakame-vdc)のより一層の 発展と品質向上を期待しつつ、今年もコミュニティ活動を皆様と盛り上げてい ければと考えております。