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「意思決定層のダイバーシティ」を起点とした
ダイバーシティ経営の始め方
2021年12月21日
はじめに
本資料は、ダイバーシティ&インクルージョンの観点で取り組むと決めたものの、
何から手をつけていいか模索されている皆さまに向けて作成したものです。
価値観の違いが大きい本領域において、いざ取り組もうとしたときに、
「難しいよね」といつも話が終わってしまう。
関係者の合意形成がいまいちで、なかなか優先順位が上がらない。
施策をやってはみたものの単発で終わってしまった。
私自身、上手く進められずに失敗したことも多いですし、
はじめの一歩を踏み出したばかりです。
こうありたいと描いた未来は、一朝一夕には成しえませんが、
描いた未来を願って、小さなトライを止めないでいたいと思います。
杉之原明子
※本資料は、作成者のこれまでの経験や理解の域を出ないことをご理解いただけますと幸いです。
社内コミュニケーションのための引用は自由になさってください。
伝えたいこと
ダイバーシティ&インクルージョンに 取
り組むことは、中期的に組織にも事業
活動にも価値をもたらす。
経 営 層も少なくとも知 識としては分
かっているはずだが、いまいち優先順
位が上がらない。その状況で取り組む
には壁があるだろう。
人は実体験が伴って初めて腹落ちす
るものであり、人それぞれのタイミング
がある。腹 落ちする時 差を折り込ん
で、気長に取り組んでいくマインドが大
切。
腹落ちする時差を認識し、気長
な心構えを
個々人のこれまでの経験に基づく価値
観により、「難しい問題だよね」で話が
止まることが多い。いざ取り組むとなる
と、これまで良しとしてきた価値観に影
響がでるため、なおさら。
仮置きでもロードマップをつくって実験
を始めることで、重要だが緊急ではな
い位置づけから引き上げていきたい
。
仮置きでもロードマップをつくって
実験を始める
現実問題として経営層がほとんど男性
であるため、女性が先頭に立つと「女
性による女 性のための」という見られ
方になりやすい。さらに、少数派である
提案者が孤立しやすい構図。
トップのコミットが 欠 かせないことは 当
然のこととして、社内外で同様のチャ
レンジをしている 人 、サポートしてくれ
る人を見つけたい。
協力?応援してくれる人を見つけ
る
01
02
Who
自己紹介
Why
なぜやるか
04 How
どうやるか
05
Appendix
参考資料
What
なにをやるか
03
Who
01
Why
02
What
03
Appendix
05
How
04
資料の構成
01 Who
自己紹介
杉之原明子
早稲田大学教育学部理学地球科学専修卒
自己紹介
2008年 
 株式会社ガイアックスにインターンとして入社。
 学校向け新規事業立ち上げチームに営業として配属される
2010年
 株式会社ガイアックスに新卒入社
2014年
 アディッシュ株式会社設立及び取締役就任(現任)
 管理本部の立ち上げを担い、2020年3月に東証マザーズ上場
2021年
 特定非営利活動法人みんなのコードCOO就任(現任)
 スローガン株式会社社外取締役就任(現任)
 「ベンチャー企業における意思決定層のジェンダーギャップ」を
 テーマに スポンサーシップ?コミュニティを設立
社外のつながり、”スポンサーシップ?コミュニティ”
https://sponsorship.team/
2021年4月に、「ベンチャー企業における意思決定層のジェ
ンダーギャップ」をテーマに、スポンサーシップ?コミュニティを
設立。
社会の動き、社外の動き、社内の動き、会社メンバーの価値
感の変化を行き来しながら取り組んでいく必要がある。活動
の芽を絶やさないことが大切。
アディッシュについて
『つながりを常によろこびに』をミッションに掲げ、インターネット上で人と人がつながるからこそ生まれる課題を解決す
るサービスを提供しています。
アワード受賞歴
D&Iアワード「ベストワークプレイス」認定
リモートワーク×健康アワード「グローバルキャリア賞」
2021年
2020年
2018年
2016年
ウーマンエンパワー賛同企業アワード「大賞」(従業員1000名未満の部)
第三回 WOMAN’s VALUE AWARD「優秀賞」(企業部門)
ウーマンエンパワー賛同企業アワード「特別賞」を受賞
JAPAN WOMEN AWARD2016「総合ランキング第4位」(300名未満の部)
02 Why
なぜやるか
取り巻く動き
気候変動と取締役会の多様性を重視。取り組まれていな
い場合、反対票を積極的に投じることを表明する機関も。
海外投資家の動向
2021年6月に改定された東証コーポレートガバナン
スコードでは、管理職の多様性確保を目的に、管理
職への女性や外国人の登用についても数値目標
の策定と達成状況の公表が追加された。
2021年8月、米国証券取引委員会がナスダックが
策定した取締役会の多様化方針を承認。少なくとも
2人の多様な取締役(女性1人と、黒人、ラテン系ア
メリカ人、またはLGBTQ+を含むマイノリティグルー
プ1人)が必要。そうでない場合は要説明。
取締役会の多様化が要請されている
2020年7月時点の上場企業における女性役員比率は
6.2%。ジェンダーギャップ指数は世界120位(経済分野
117位)。
2020年11月、経 団 連は「。新 成 長 戦 略」において、
2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にす
ることを目指す旨発表。
「2020年までに指導的地位に占める女性の
割合30%」を先送り
2021年6月に改正育児?介護休業法が成立。2022年4
月から、男性の育休取得に関して周知?意向確認が義
務化される。SDGsでも、無償のケア労働をいかに認識
?評価するかが課題に挙げられている。
男性の育休取得を促進する必要
顔認証や採用を目的としたAIシステムにおいて性別や人種
差別が発覚。学習データの時点で偏りが発生している。AI倫
理に関する姿勢が求めらる。
採用AIシステム開発中止
cv
他にもっとやることあり
ますよね
本当に必要なんですか
ね
女性だけ、というのは違
和感
母集団が男性のほうが多いの
で、そもそもいません
管理職になりたがる女性
がいません
業績にどんな影響がある
の?
いまのままでも裁量を持って
働けてます
男性管理職を減らす基準を設け
るということ?
なぜやるか
うちの会社は出来てい
ると思う
ダイバーシティ&インクルージョンとは
[議論]ダイバーシティー阻む「どうせ私なんか」意識を壊すには?(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/forum/19/00036/100600007/
数値的に把握可能な見える属性の分類。「%」
で示せるもの。
役員における女性比率や、社員における日本
人以外の人の割合など
お互いに相手の価値観を認め、刺激しあう関
係性のこと
ダイバーシティ インクルージョン
ダイバーシティ&インクルージョン
経営による価値創造
従来の経営サイクル
価値提供/プ
ロダクトアウ
ト
企業理念
経営計画
事業戦略
体制
カルチャー/
働く人
経営サイクルのイメージ
取り組まないとどうなるの?
価値提供/プ
ロダクトアウ
ト
企業理念
経営計画
事業戦略
体制
カルチャー/
働く人
働く人に選ばれなくなる
プロダクトが選ばれなくなる
特効薬はない。強い意思とアクションの積み重ねが必要
1
取締役会あるいは経営会議
にて、中長期的なありたい姿
が議論されていること
2
3
少なくとも経営者が「なぜやる
か」が腹落ちしていること
4
”あたりまえでなかったこと”を
受け入れ、刺激し合う関係性
をつくること
施策を絶やさないこと。
実験を続けること
What
なにをやるか
03
会社設立 「ひとりひとりが、働き方?
キャリアを自 分でつくる会
社へ」を会 社 基 盤ミッショ
ンに掲げる。カルチャーづ
くり?制度設計を開始
組織課題7つのターゲット
に関して従業員が議論す
る「委員会」の仕組みをス
タート。
うちひとつのテーマが「 働
き方委員会」
意思決定層における女性
比率目標を決算説明資料
に掲載
取締役会にて「経営?管理
職 層 におけるジェンダー
ギャップへの 取 り 組 み 方
針について」議 論 及び合
意
2020 2021
ダイバーシティに関するこれまでの取組み
2014 2018
2015
ダイバーシティの視点
土台づくり
従 業 員 が 参 加 するプロ
ジェクトを 複 数 発 足 。 社
名 、ミッション/ビジョン/バ
リューを策定
「コミュニケーションデザイ
ンチーム」発足
従業員発案で「働き方検
討委員会 D&Iチーム」が
発足
トップダウンの動き
ボトムアップの動き
厂迟别辫1:土台づくり
Step2:ダイバーシティの視点
Step3:ダイバーシティ&インクルー
ジョンの視点
方針を策定する
?働き続けられる土台?選択肢がある
?
?対話する文化がある
制度設計、残業時間、育児休業取得?復帰率、賃金
ギャップ、組織診断結果等?
?組織及び事業活動における構造の歪みに向き
合う?
?「無意識の偏見」に取り組む
管理職に占める女性の割合、候補者に占める
女性比率?
事業活動において新たな提供価値を
模索する(プロダクトインクルージョ
ン)
1
3 2
厂迟别辫1:土台づくり
?従業員情報
?残業時間
?制度利用率
?組織診断結果 など
データ
現 在 のカルチャーの 良 いところ
は何か
?弊害は起きていないか
カルチャー
会社全体から個別1on1まで、ど
のようなコミュニケーション 経 路
があるか。適切か
コミュニケーション設計
制度として表現されているか
?制 度があることによる弊 害は起
きていないか
制度設計
取組みの糸口を見つける
現在地を考察し、取組みの糸口を見つける
「ひとりひとりが、働き方?キャリアを自分でつくる会社へ」を基盤ミッションに掲げ、
そのための土台?選択肢を作ってきた。
特に、①ライフステージに合わせた制度設計、②キャリア開発支援、③情報発信に力を入れてきた。
時間単位
有給休暇制度
休業ウェルカムバック
制度
レビュー
(1on1)
研修受講?資格
取得補助制度 英語学習補助 社内補助
社内留学制度 意思表明制度 社内公募制度 キャリア面談
これまでの取組み
データ
※特に残業時間を改善
気づいたこと
「〇〇制度」「〇〇研修」等を実施したとして、それらを打
ち上げ花火で終わらせず、炎を絶やさない仕組みが大
切。道は長い。継続することが難しい。
継続することの難しさ
2014年から働き続けられる土台をつくることに注力してきたが、管理職の
女性比率は上がらなかった。引き上げていく構造に取り組む必要がある。
働き続けられるカルチャーをつくることと、
意思決定層のダイバーシティはイコールではなかった
制度が実際に使われるかはさておき、表現されているだ
けで働くメンバーに安心感を与える側面がある。
一方、制度の存在に甘んじて、コミュニケーションをサボ
ると「制度の条件に合わないから諦める」が生じ、本末転
倒。
制度は、あくまでも対話の補助ツール 組織や人材にまつわる課題に対応していくにあたり、
従業員によって構成された委員会を組成して推進し
た。従業員が自分ゴト化する機会としても良かった。
自分ゴト化する機会をつくれた
アワードの応募基準と照らすことで、なぜやるか、あ
りたい姿、大切にする比率など、改めて考えて表現
する機会になった
アワード応募を活用して、
大切にしていることを表現していけた
Step2:ダイバーシティの視点?
?
?
執行役員?事業部長
統括?部長?室長
社員
役員
15%
20%
60%
9%
指導的地位に占める女性の比率
女性の割合
※2020年度実績値
はしごの一段目が壊れている
なぜ構造の歪みが発生するか
人は、自分に似た人を引き上げる現象のこと。
自分に似た人を引き上げる(Mini-Me文化)
● 違うタイプの人を引き上げられない
● いつまでもロールモデルがいない
● カルチャーフィットの重視により、同質化が進む
● 同質性が高く、無意識の偏見が認識されない
● 事業活動においても、決裁プロセスで違和感に気づ
けない
結果として、
連鎖は上から起きている
どのように引き上げていくか
キャリアにおける「スポンサーシップ」とは、対象者が持つ潜在能力を本人に認識させて解き放ち、人脈をつな
ぎ、機会を提供することで引き上げていく関係性のことを指す。
スポンサーシップという考え方
「スポンサー」とは、庇護の対象とする部下のために労を惜しま
ず昇進を後押しし、少なくとも次のうち2つを行う上司のこと。
● 対象者の潜在能力を本人に認識させ、解き放つ
● 上級幹部とのコネクションを持たせる
● 幹部のあいだで認知度を高める
● 昇進のチャンスを増やす
● 幹部らしく振る舞う方法を教える
● 社外とのコネクションを持たせる
● さまざまな助言を与える
「メンター」と「スポンサー」の大きな違い
(ハーバード?ビジネス?レビュー
)
https://www.dhbr.net/articles/-/2046
「スポンサー」とは
無意識バイアスにいかに気づいていくか
これまでの組織運営に潜む「無意識の偏見」を知るとこ
ろから始める必要がある。その上で、採用から経営まで
に潜む無意識バイアスの存在が会話に出るようにして
いきたい。
組織面
ダイバーシティや無意識バイアスを認識した上で、多面
的に社会構造や事業活動を見ていけるようになりたい。
見逃していたペインや歪みに気づき、新しい価値を提供
していきたい。
事業面
2021年2月に株 式 会 社メルカリが「無 意 識バイアスワーク
ショップ」資料を公開
https://about.mercari.com/press/news/articles/20210
225_unconsciousbiasworkshop/
バイアスがあるから迅速な意思決定が出来る。物事が早く進む。
一方、バイアスがあるから排除していることがある。自分ではそれに気づけない。
“ 意図的に、じっくりと積極的に包摂しなければ、
無意識に排除してしまう ”
joe gerstandt
Step3:ダイバーシティ&インクルージョンの視点?
?
?
?
?
ダイバーシティの深度
性別、年齢、人種、障害、言語など
表層のダイバーシティ(外見から識別可能)
パーソナリティ、考え方、性格、習慣、趣味、スキルレ
ベル、障害、健康状態、性自認など
深層のダイバーシティ(外見から判断しにくい)
組織のダイバーシティから新しい価値に気づいていきたい
多面的な視点を養う必要
組織、社会、データを”マス”で捉えてきた? 組織あるいは社会を”多様な人たちが構成す
る”その解像度が上げていく必要?
※例えば、2030年には3人に1人が65歳以上の高齢者に
なる予測。社会の構造は確実に変わっていく
同質性の高いモノの見方 解像度を上げていきたい
“ プロダクトインクルージョンの最低限の基準さえ
満たせないようなグローバル?プロダクトをデザイ
ンしても許される時代は、とっくに終わった ”
プロダクトインクルージョン
04 How
どうやるか
01 02 03 04 05
経営戦略へ
の組み込み
06 07
推進体制の
構築
ガバナンス
の改革
全社的な環
境?ルールの
整備
管 理 職の行
動 ? 意 識 改
革
従 業 員の行
動 ? 意 識 改
革
労働市場?資本
市 場への情 報
開示と対話
経済産業省『ダイバーシティ
2.0行動ガイドライン』
ダイバーシティ実践のための7つのアクション
行ったり来たりしながら実験をすることが大切
ロードマップを作成
取締役会にて「経営?管理職層
におけるジェンダーギャップへ
の取り組み方針について」議論
及び合意
2027 2030
2020
職能や国籍等の観点
で取り組み、グローバ
ルカンパニーとして価
値創造を目指す
意思決定層における女
性の比率30%の実現
を目指す
土台づくりは引き続き取り組む。加えて、ダイバーシティに取り組むことで価値創造をしていける組織
を目指す。ロードマップを作成し実行していく。
「組織構造」「無意識の偏見」に取り組み、意思決定層における女性比率を向上
土台をアップデートし続ける
インクルージョンによる価値創造を目指す
推進体制
中期経営計画に盛り込み、進
捗確認していく
年2回開催される、全メンバー
を見 渡す会 議 体のこと。メン
バー育成状況について確認し
ていく
組 織 拡 大 フェーズにおいて「ア
ディッシュにチーム 力 を。」をミッ
ションに、チームと個人の成長を
サポート
多様性に適応できる風土づくり、
セーフスペースの拡 大を目 指し
て情報発信等に取組む
取締役会
コミュニケーションデ
ザインチーム
働き方検討委員会?
D&Iチーム?
?
人材未来会議
ダイバーシティ&インクルージョン
経営による価値創造
従来の経営サイクル
価値提供/プ
ロダクトアウ
ト
企業理念
経営計画
事業戦略
体制
カルチャー/
働く人
経営サイクルのイメージ
05
Appendix
参考資料
ダイバーシティ&インクルージョン関连おススメの书籍

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