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高安動脈炎経過中にともなう
浮動性めまいの一症例
鴨頭輝、藤本千里、木下淳、江上直也、牛尾宗貴、菅澤恵子、岩﨑真一
東京大学耳鼻咽喉科学教室
症例
? 43歳男性
? 【主訴】
– くらっとしためまい。倒れそうになる。
? 【現病歴】
– 2013年1月から20~30分持続する浮動性めまいを自覚。安
静臥位でめまいは改善。めまいがある時、首のこり、頭に血が
いかない感じ、動悸、息切れがある。眼前暗黒感はない。
かかりつけの病院で頭部CT?MRI撮影し、特に問題なし。
その後、常にめまい感を感じるようになった。特に起立時に増
悪。失神のエピソードなし。めまいの時に頸の後のハリを感じる
ことが多い。左手挙上?運動等によるめまい増悪はなし。
蝸牛症状なし。
– 2014年8月、当科を紹介受診。
症例
? 【既往歴】
– #高安動脈炎 (2011年発症)
左鎖骨下動脈領域の狭窄あり。
– #高血圧
? 【アレルギー】なし
? 【生活歴】 喫煙なし 飲酒:週2~3回ビール1缶
? 【内服薬】 プレドニン(5)2.5T1X ディオバン(40)2T1X
ボナロン(35)1T1X
? 【局所所見】
鼓膜)両側正常
頸部)両側で明らかな頸動脈狭窄音は聴取せず
身体所見)指鼻指陰性、手回内回外陰性
20130516 CT
R
20131220 CT
R
20140313 MRA
R
20140313 MRI
R
20140313 MRI
R
検査所见
AC-cVEMP(burst)
左
右
BC-cVEMP
左
右
AC-oVEMP(burst)
左刺激
右誘発
右刺激
左誘発
BC-oVEMP
右刺激
左誘発
左刺激
右誘発
2014年1月~4月頃にやや炎症が高いが、
かかりつけではステロイド継続経過観察。
炎症の高い時期に症状が強い等はなかった。
闭眼?暗算负荷
开眼?暗算负荷
运动视标追跡
运动视标追跡
运动视标追跡 水平 矩形
运动视标追跡 垂直 矩形
视运动性眼振検査
カロリック?右 VS 56%
カロリック?左 VS 52%
V-HIT
そのほかの検査所见
? 【重心動揺計】
? 【心理検査】 SDS 34点、DHI 48点、QIDS-SR 2点
ラバーありラバーなし
外周面積 (cm^2) 3.04 / 8.00
ロンベルグ率 2.63
総軌跡長 (cm) 86.62 / 127.93
ロンベルグ率 1.48
外周面積 (cm^2) 5.72 / 14.16
ロンベルグ率 2.48
総軌跡長 (cm) 111.12 / 220.90
ロンベルグ率 1.99
経過
? 初回処方
メリスロン(6) 3T3X、ミオナール(50) 3T3X
屯用 デパス(0.25)1T10回分、トラベルミン1T10回分
? 再診 2014/8/29
プレドニンの量は特に変わらず。症状が和らいだ気がする。注視?
頭位変換眼振なし。処方継続希望。めまい症状により休職中。
? 再診 2014/10/31
高安動脈炎は特に変わりなしとのこと。
風呂でのぼせてふらふらするような感じがある。朝からは、はっきり
とはしないが、浮動性が時々。デパスは3Tのみ使用。
頭位変換眼振 仰臥位時、左下頭位で左向き2発程度のみ。頭位
変換時のめまい症状はなし。処方継続希望。12月復職準備中。
JCS 2008 高安動脈炎診断基準
JCS 2008 高安動脈炎診断基準
高安動脈炎とめまい
? ステント留置術を施行した高安動脈炎の1例
– 脳神経外科速報 vol.15 no.7 pp681-7
– 26歳,女性
– 主訴:眩暈,意識消失
– 現病歴: 2002 年 9 月頃より体動時のめまいを繰り返すように
なり,数秒から 2 分程度の意識消失を計 3 回きたしたため,
当院内科を受診.受診時に両側頸部の血管性雑音と炎症反応
の上昇を指摘され,精査の結果 TA と診断された.ステロイド
および抗血小板剤の内服で全身状態は安定したものの,経過
観察中の頸動脈超音波検査で頸動脈狭窄を指摘され,2004
年 1 月に治療目的で脳神経外科へ紹介された.
高安動脈炎とめまい
? A unique presentation of Takayasu’s arteritis in a 39-
year-old male with chest pain, vertigo, and blindness
– J Vasc Surg 2011;54:529-32
– 39歳男性
– めまい、発汗、間欠的な左上肢の痛み、胸痛、息切れを主訴に
救急受診。subclavian steal syndromeを疑われ精査。左
目に一過性黒内障の既往あり、左内頸動脈からの血栓と思わ
れた。
高安動脈炎とめまい
? Bilateral subclavian steal syndrome with vertigo
– Toshiaki Yamanaka, Yachiyo Sawai, Hiroshi
Hosoi
– Auris Nasus Larynx 41 (2014) 307–309
– 52歳, 女性
– 主訴:めまい
– 2年間のめまいエピソードにて2008年にかかりつけより紹介。
頭位変化、上肢挙上(シャンプー、洗濯物干し)等で悪化する
めまいがあった。運動による悪化もあり、特に右より左の運動で
悪化する。蝸牛症状なし、神経学的有意所見なし。20代より原
因不明の風邪様の症状あり。自発?頭位変換眼振なし。PTA?
カロリック?VEMP?電気性身体反射検査?OKN?ETTにて問題
なし。両上肢血圧差なかったが、3D-CTにて左鎖骨下動脈の
狭窄あり、PSL 50mg/dayより治療開始。
まとめ
? 高安動脈炎の症状 (UpToDate)
– 初発は疲労感?体重減少?風邪様症状 (主にIL-6による症状)
頸部痛?上気道炎症状
– 動脈閉塞症状(冷える?痛み?跛行)は進行してから現れる
– 鎖骨下動脈盗血症候群は多彩な症状を呈する
? めまい、浮動感、失調、意識消失発作、眼振、複視、
視覚異常、耳鳴り、難聴
? 症例では、高安病診断後2年目からの浮動性めまいのみで意識
消失、視覚異常等の他の症状はなかった。
? 末梢前庭機能はBC-cVEMPの右低下、動脈狭窄側(左)とは逆。
ETTはsaccadic。
? DHIは高く、めまい症状により休職。
? 高安動脈炎の経過中に浮動性めまいを認めた一例を経験した。

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