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下腿コンパートメント症候群後の 
足部変形に装具療法が著効した1例
はじめに 
コンパートメント症候群は筋区画内の筋壊死や 
神経障害を起こし,前腕のVolkmann拘縮で知られる 
不可逆性の阻血性拘縮を引き起こす.(鈴木ら,2013) 
? 下腿近位部開放骨折後に下腿コンパートメント症候群を併発し, 
足部変形,足関節ROM制限を呈した症例を経験. 
? 良肢位保持,歩行獲得を目的とした装具療法が変形改善に 
効果的であった.
症例50歳代男性 
?診断名右脛骨近位部開放骨折(AO 41-C3.3 Gustilo typeⅡ) 
右下腿コンパートメント症候群 
右母趾基節骨骨折 
?現病歴 
ワゴン車助手席乗車中に前方のトラックに衝突し受傷. 
ダッシュボードに右下腿以遠が挟まれ救出に約1時間要した. 
同日前医へ救急搬送され緊急手術施行. 
?既往歴 
HCV ASO(右F-P Bypass) 
?患者背景 
妻,娘と3人暮らし.職業は鳶職.
前医での経過前医では理学療法介入なし 
受傷同日緊急手術:創外固定術筋膜切開術母趾pinning 
受傷後12日当院紹介入院 
当院入院時 
外観 
母趾X線
画像所見 
関節面に及ぶ下腿近位部粉砕骨折
受傷後13日リング式創外固定術施行 
? 感染リスク高 
→ 内固定NG 
Taylor Spatial Frame(TSF) 
?三次元的に変形矯正が 
可能な創外固定 
?荷重可能 
●術翌日~理学療法開始 
?膝,足関節ROM運動許可 
?疼痛自制内荷重許可 
?母趾非荷重
初期評価(術後2-3日受傷後15-16日) 
?内反尖足変形 
非荷重位後足部回外20°底屈25° 
?右足関節ROM(他動) 
背屈-5° 
底屈30° 
後足部回内-10° 
回外20° 
?右膝関節ROM 
屈曲80° 伸展-10° 
?MMT 
前脛骨筋0 長趾伸筋0 長母趾屈筋不明 
下腿三頭筋2 後脛骨筋2 腓骨筋群2 長趾屈筋2 
?感覚 
浅?深腓骨神経領域重度鈍麻(1/10) ?ADL 車椅子レベル自立
理学療法コンセプト 
? 足部変形の改善 
○装具療法-報告としては対症療法としてSHBを使用したものしかない. 
○足趾,足関節周囲筋の反復収縮&伸張 
-罹患筋への選択的反復収縮,ストレッチングは阻血筋の血流障害改善, 
拘縮予防に有効. (整形外科運動療法ナビゲーション下肢?体幹,2009) 
○荷重を利用した持続伸張 
? 膝関節機能の向上 
周囲軟部組織の癒着予防膝関節ROM運動筋力トレーニング 
? 患部外機能の維持 
実用歩行獲得
装具療法 
①日常生活での良肢位保持(足背屈位,回内外中間位) 
②母趾免荷での歩行を可能とする 
③荷重時に後足部回内を誘導→荷重による変形改善を期待 
両側のバンドで下垂足予防 
外側バンドを強く引き内反予防 
足底外側が高い 
高めのアーチサポ-ト 
母趾の部分は低く 
外側ヒールウェッジ追加 
外側荷重を促し足部回内を誘導 
且つ,母趾の免荷を保持
経過 
術後1週装具完成装具療法開始 
5週松葉杖荷重歩行自立 
10週足部内反変形改善 
12週自宅退院 
松葉杖歩行レベル 
16週下垂足改善(自動背屈可能) 
装具除去.後足部回内誘導インソールでの歩行継続
術後19週TSF抜去→ 骨癒合不全認める 
23週内固定術(外側plating)施行 
術後疼痛自制内で荷重許可 
32週独歩自立 
40週最終評価
最終評価 
?右足関節ROM(自動/他動) 
背屈10/10 底屈35/40 
後足部回内0(健側10) 回外20(健側25) 
?右膝関節ROM 
屈曲135 伸展-5 
?MMT 
下腿三頭筋2+ その他の足関節周囲筋5 
?感覚浅腓骨神経領域軽度鈍麻(8/10) 
?階段昇降手すり使用し1足1段 
?しゃがみ動作背屈制限により困難 
?後足部アライメント 
健側に比べ回内が低下 
?JSSF scale 82点/100点
考察 
深腓骨神経麻痺 
(下腿近位部骨折に合併?コンパートメント症候群による阻血性神経麻痺?) 
内反尖足変形●前医での2週間の不動期間 
→骨格筋は1,2週間という短期の不動期間でもコラーゲン線維の 
増生と配列変化を認める(沖田ら,2012) 
●コンパートメント症候群の影響 
?浮腫による関節周囲軟部組織の線維化 
?循環障害による筋の拘縮 
高度なROM制限 
?装具療法 
?運動療法を併用して改善を図った
考察 
長時間の圧挫,初診時に循環障害や筋力低下がある例では 
後遺症を残すコンパートメント症候群の可能性がある.(飯島ら,2011) 
本症例では‥ 
後遺症(ROM制限)は残ったが最小限に留められた 
装具療法の役割が大きかったと考える
考察 
深腓骨神経麻痺改善までの間に 
? 日常生活中良肢位を保持できたこと(足関節背屈,回内外中間位) 
歩行においては足関節背屈ROMが重要なので背屈ROMを重視 
? 荷重歩行により頻回な足関節運動を促せたこと 
? 荷重時に後足部回内を誘導できたことが効果的であった

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