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TMI 総合法律事務所
弁護士 大井哲也
2021年11月27日 情報ネットワーク法学
「システム開発モデル契約」
~変更管理手続きにおけるベンダからの解約権~
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システム開発モデル契約の紹介
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変更管理手続き
第37条 甲又は乙は、相手方から第34条(システム仕様書等の変更)、第35条(中間資料のユーザによる承
認)、第36条(未確定事項の取扱い)に基づく変更提案書を受領した場合、当該受領日から○日以内に、次の
事項を記載した書面(以下「変更管理書」という。)を相手方に交付し、甲及び乙は、第12条所定の連絡協議
会において当該変更の可否につき協議するものとする。
① 変更の名称
② 提案の責任者
③ 年月日
④ 変更の理由
⑤ 変更に係る仕様を含む変更の詳細事項
⑥ 変更のために費用を要する場合はその額
⑦ 検討期間を含めた変更作業のスケジュール
⑧ その他変更が本契約及び個別契約の条件(作業期間又は納期、委託料、契約条項等)に与える影響
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変更管理手続き
2. 第1項の協議の結果、甲及び乙が変更を可とする場合は、甲乙双方の責任者が、変更管理書の記載事項(
なお、協議の結果、変更がある場合は変更後の記載事項とする。以下同じ。)を承認の上、記名押印するもの
とする。
3. 前項による甲乙双方の承認をもって、変更が確定するものとする。但し、本契約及び個別契約の条件に影
響を及ぼす場合は、甲及び乙は速やかに変更管理書に従い、第33条(本契約及び個別契約内容の変更)に基づ
き変更契約を締結したときをもって変更が確定するものとする。
4. 乙は、甲から中断要請があるなどその他特段の事情がある場合、第1項の協議が調わない間、本件業務を
中断することができる。
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変更の協議不調に伴う契約終了
第38条 前条の協議の結果、変更の内容が作業期間又は納期、委託料及びその他の契約条件に影響を及ぼす等
の理由により、甲が個別契約の続行を中止しようとするときは、甲は個別業務の未了部分について個別契約を
解約することができる。
2. 甲は、前項により個別業務の未了部分について解約しようとする場合、中止時点まで乙が遂行した個別業
務についての委託料を支払うとともに、解約により乙が出捐すべきこととなる費用その他乙に生じた損害を賠
償しなければならない。
3. 前条の協議の結果、作業期間又は納期、委託料及びその他の契約の条件に重大な影響を及ぼす等の理由によ
り、【個別契約を続行することが困難となる事情が客観的に認められる場合】は、乙が当該事情及びその理由
を明示したうえで書面により中止を提言することができるものとする。
4. 乙による前項の提言にもかかわらず、【甲が合理的な期間内に合理的な理由を提示することなくこれに応じ
ない場合、】乙は、個別業務の未了部分について個別契約を解約することができるものとする。
5.前項に基づき、乙が個別契約を解約した場合、甲は乙に対し、当該解約時点まで乙が遂行した個別業務につ
いての委託料を支払うものとする。
6.第4項に基づいて個別業務の未了部分について個別契約が解約される場合であっても、甲及び乙は、債務不
履行その他の事由に基づき、相手方に対して損害賠償を求めることは妨げられない。
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合理的な理由が認められる場合
①ベンダが変更協議においてユーザ都合の追加機能が発生していると主張しているが、システム仕様書には
該当する機能が記載されている場合
②ユーザによる変更提案が追加開発を伴うが、それがもっぱらベンダによる仕様の検討が不十分だったことに
よって生じたものである場合
③ベンダが当該情報に基づき適切な見積を行わなかったために、提示した変更のために要する費用またはそれ
に要する工数、あるいは作業期間の延長 期間が、従来の個別契約に示されていた見積と比較して想定以上
に高額である(あるいは工数が多い、期間が長い)場合
④開発が必要となったことについてユーザとベンダの双方に一定の帰責事由が認められる場合であるにもかか
わらず、ベンダがユーザに対し当該追加開発の費用全額の負担を要求し、その減額に応じない場合
⑤ベンダが提示した変更提案の内容が短期間に甚だ多くのSEを投入するなど、ユーザから見てもベンダのプ
ロジェクトマネジメントが機能しない場合
⑥ベンダが提示する変更提案が高額(あるいは工数が多い、期間が長い)であり、その差異の理由についてベ
ンダが合理的な説明を行っていない場合
契約の継続が困難なケースの分析
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システム開発の継続が困難なケース
問題となるのは2つのケースは、
①新機能追加などユーザ都合からの過大なオーダー ←ユーザに帰責事由があるケース
②ベンダの当初見積りの甘さ、追加工数の高額提案 ←ベンダに帰責事由があるケース
①のケース:個別契約の続行は不可能
?ベンダからの中止提言
?ベンダからの解約権の行使
②のケース:このケースでも個別契約を続行は不可能と考えられる。
∵ベンダが契約の続行が不可能であると主張する状況下で、契約の続行を強いるのは困難、
ベンダからの解約を認めてしまう方がデスマーチを回避、損害拡大を回避できるのではないか?
?ベンダからの中止提言
?ベンダからの解約権の行使
?ユーザからベンダへの損害賠償請求で処理
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システム開発の継続が困難なケース
帰責事由の所在 本条における処理
もっぱらベンダに帰責事由がある場合 ?第4項の「合理的な理由」に該当し、その事情を合理的な期間内にユーザからベンダ
に提示すれば、そもそも解約が認められない
?ベンダからの解約を認めてしまう方がデスマーチを回避、損害拡大を回避できるので
はないか?
ベンダに帰責事由がある場合には、ユーザは、ベンダに対して、損害賠償請求による精
算を図る方法は?
ユーザとベンダの双方に帰責事由があ
る場合
?第4項の「合理的な理由」に該当する事情が存在し、かつその事情が合理的な期間内
にユーザからベンダに提示されない限り、第4項に基づく解約は認められ、当該解約時
点までにベンダが遂行した個別業務についての委託料支払義務は生じる。
?ただし、ベンダの義務違反(帰責事由)によってユーザに損害が生じた場合には、ユ
ーザから別途損害賠償請求をすることは可能(ユーザの帰責性の程度に応じた過失相殺
もありうる)
?ユーザの義務違反(帰責事由)によってベンダに損害が生じた場合には、ベンダから
別途損害賠償請求をすることが可能(ベンダの帰責性の程度に応じた過失相殺もありう
る)
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システム開発の継続が困難なケース
もっぱらユーザに帰責事由がある場
合
?第4項の「合理的な理由」に該当する事情が存在し、かつその事情が合理的
な期間内にユーザからベンダに提示されない限り、第4項に基づく解約は認め
られ、当該解約時点までにベンダが遂行した個別業務についての委託料支払義
務は生じる
?ユーザの義務違反(帰責事由)によってベンダに損害が生じた場合には、ベ
ンダから別途損害賠償請求をすることが可能
ユーザとベンダのいずれにも帰責事
由がない場合
?第4項の「合理的な理由」に該当する事情が存在し、かつその事情が合理的
な期間内にユーザからベンダに提示されない限り、第4項に基づく解約は認め
られ、当該解約時点までにベンダが遂行した個別業務についての委託料支払義
務は生じる
TMI 総合法律事務所パートナー 大井 哲也
-TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング株式会社 代表取締役
‐経済産業省商務情報政策局情報セキュリティ政策室有識者ワーキンググループ
- クラウド利用促進機構(CUPA)法律アドバイザー
- プライスウォーターハウスクーパース株式会社サイバーセキュリティセンターアドバイリーボード
Tel:03-6438-5554
Mail:toi@tmi.gr.jp
www.tetsuyaoi.com Facebook,Twitter “大井哲也”
講師紹介 ~ご質問は下記まで~
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主な取扱分野
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SNS、アプリ?システム開発、情報セキュリティーの各産業分野における
実務に精通し、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証
機関公平性委員会委員長、社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)
法律アドバイザー、経済産業省の情報セキュリティに関するタスクフォー
ス委員を歴任する。情報漏えい対応、ビッグデータ活用、情報管理体制の
整備を専門とする。
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理体制の構築及びその監査
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ベンダ及びユーザ間のシステム?アプリ開発訴訟
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クラウド?コンピューティング導入?利用契約
インターネット?インフラ、コンテンツ、SNS に関する法務
マイナンバー法対応、マイナンバー法に対応した個人情報管理体制の
見直し
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