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性を超える医療技術 
-イスラームの規範 
子宮移植から再生医療まで 
伊東 聰 
AL-QASAS株式会社
1.はじめに 医療倫理とイスラームの関係 
?人間の価値観よりイスラームを優先する 
政治政策から個人の生活すべてにおいて優先 
すべてのものが「等価で平等」、本来は少数者/異端者に優しい宗教 
最大公約数を考慮に入れ、排除、排斥、無視は厳禁 
?盲信は禁止、理性を働かせて考えることを推奨 
考えるためのツール(イジュティハード)がある 
医療倫理の問題をフレームワークとしてとらえる 
?しかし、弱点がある 
問題解決のスピードが遅く、功利主義のアメリカに負ける 
間違ったイスラーム原理主義は日本より厳しい「管理主義」になる 
イスラームの欧米に対する危機感が「現実」と「教え」の乖離に現れる 
日本のなかでも増えてきた嫌イスラームの原因になる(偏見の拡大)
2.「アラブの春」、イスラームの最近の動向 
?「アラブの春」の「自由」 
リビアのカダフィ議長の殺害は「保護的な」「父的なもの」への反抗、父親ごろ 
しか 
エジプトのムスリム同砲団出身のムルシ大統領の誕生、 
そしてそれを歓迎するアフマディネジャド大統領の歓迎 
?イスラームの基本理念を政治政策に反映できる「自由」を得た 
?イスラームの科学技術思考での勝利 
イランは幹細胞移植医療の臨床応用数では世界一といわれる 
  ?末梢血幹細胞移植:アルデシール?ガヴァームザーデ氏 
    安易に利用しているとの日本からの批判もある 
?イスラーム主義者でない若者の欧米文化への憧れ 
イスラーム主義者の想定を超えたトラブルが起こる危険性 
ネット上でのイスラーム的に間違ったアクティビティの蔓延(エジプト女性の 
ヌード) 
間違ったイスラームによる非人道的な政治政策の暴走(タリバンの少女銃撃) 
イスラームの「寛容」が失われ、 
少数者/異端者にダメージを与える懸念あり
3.医学の発展スピードの「想定外」 
?生殖医療 
?再生医療 
★性同一性障害をテーマにしてみると見えてくるもの 
従来の性同一性障害問題の基本思考 
?当事者「一代限り」で「自己完結」する 
「性別変更」の「子なし要件」はそれが前提になる 
2010年からの変化 
?当事者が家族をつくるという問題 
 しかも性別変更後に実子を得られる可能性が医学的に出てきた。 
?医学をはじめとする科学の発展は早いが、 
 そこに人間の社会意識、倫理観がついてこれていない時代になった。
4.子宮移植ーMTFが実母になる可能性 
?世界初の子宮移植手術 
◆2000年、サウジアラビア 
26歳の女性に閉経後の46歳の女性から移植、施術後99日目に子 
宮内に血栓が発生、摘出(生体移植による) 
◆2011年、トルコ 
デルヤ?セルトさん(21歳)子宮欠損症の当事者 
2011年10月3日 AFP 
アンタリヤ県のアクデニズ大学病院(死体移植) 
?イスラームのファトワ(法的見解)は? 
「子宮が他人のものであったとしたら、 
その子供は他の家系の特徴を帯びて 
生まれてくることになり、 
血統を受け継いでいくのが困難になる」
5.iPS細胞から精子ーFTMが実父になる可 
能性 
?2011年、斉藤通紀?京都大教授の研究チーム 
?2012年には卵子の作成にも成功 
★FTMに「実子ができる」の意味の変化 
2006年は FTMの卵子をつかった実子ができるだった??? 
文部科学省の「科学技術?学術審議会生命倫理?安全部会特定胚及びヒ 
トES細胞等研究専門委員会人クローン胚研究利用作業部会(第21 
回)配付資料」 
?「SRS後のFTMの卵巣をES細胞研究に使用す 
る」 
2012年 iPS細胞でFTMが精子をつくることができる 
?現在人への応用は時間がかかるが、遠くない将来 
FTMが医学的には男性としての生殖能力をもつこ 
とが可能となるs 
?たった6年の間に生殖医療研究がここまで進んで 
いる
6.iPS細胞とは FTMとES細胞 
?iPS細胞とは 
iPS細胞は、どんな臓器にもなれる「万能細胞」である 
生物はひとつの細胞から分化して胎児になる。 
細胞をその状態に「初期化」できるのがiPS細胞である。 
そのため、FTMからSRS後の卵巣の提供をうけることも検討されていた 
ES細胞の倫理的な問題もクリアした、といわれる。 
参考:伊東聰「FTMTSと難聴をつなぐもの-ES細胞研究」(2006) 
ブクログID:http://p.booklog.jp/book/67873 
?切除した卵巣の使用に興味のない「勝手にしやがれ派」 
?非当事者がイメージするFTMはこちら 
?「実は自分の実子を持ちたい派」 
「できれば冷凍保存して現在の人工授精の技術をつかって、もしくはそ 
のクーロン技術を使って彼女の未受精卵に自分の胚をいれて(精子と 
卵子の受精と同じように)自分の子を彼女に産んでほしい。」 
?当事者としてはこちらのほうが多いだろう
7.イスラームのファトワはどう答えている? 
?生殖医療 
1. 代理母はOKか? ? NG 
2.AID(非配偶者間人工授精)はOKか?? NG 
婚姻関係の混乱をさけるため 
「女性の子宮を夫以外の精子や他人の受精卵、胎児などにつかうこと 
は認められない」 
冷凍した夫の精子を夫の死後に受精 ? NG 
「死とともに婚姻関係が消滅するため」 
?再生医療 
「受精卵を破壊し、ES細胞研究を行うことは許可できる」 ? OK 
女性の子宮のなかという自然環境にないため、 
ヒト受精胚の段階では人間ではない。  
ただし、胚の不正使用に厳しい規則を確立する必要がある。 
?キリスト教の場合は人間であるため、NGである。
8.FTMのAID(非配偶者間人工授精) 
?生殖医療関連の法整備はいかにあるべきか? 
AID男性の子供AIDFTM の子供IPS男性の子供IPSFTM の子供 
嫡出子非嫡出子嫡出子非嫡出子???? 
生殖医療の使用によるきりわけか??現行では不可能 
DNAデータの強制登録によるチェックは??かえって家族関係に問題がおき 
る 
現行のAID男性と同じように「すべて嫡出子」ではだめなのか? 
FTMと男性を区別する必要があるのか? 
?私見 
立法の考え方を変える時期にきている。 
人間を管理するために際限ないパラメータで人間を定義し、細分化している 
分ければ分けるほど法の「想定外」がでてくる 
排斥/無視していくシステムをいつまで続けるか 
医学の発展の速さと法整備の遅れとのいたちごっこはいつまで続くのか 
困るのは当事者が変えられない問題で人生が数十年にわたり停滞する
9.未来の性同一性障害の治療はこうなる? 
?再生医療でできるのか? 
2012年12月1日「臓器を再生する新たな医療の実現をめざして」(葛 
飾区) 
東京理科大学?辻孝教授にきいてみた 
Q.性分化異常で途中で成長が止まっているケースで 
iPS細胞で性分化を巻き戻してあるべき姿に育つことは可能か? 
★質問の意図: 
ホルモンを作れないなどで健康に影響のある性分化異常もあるため。 
A.すぐに答えられない、難しい。 
?あるべき姿に育つ幹細胞を発見できるかにかかっている。 
?現在ホルモン療法で投与している性ホルモンを自己生産できるか? 
?形成外科療法で形成している生殖器の自前での製造、移植できるか? 
?性別変更の手段が性別適合手術でなくなる? 
?しかし上記は移行先の性に分化する 
 正しい遺伝子の設計図をもつ細胞が存在するかどうかが、鍵になる。
10.現在の法的動向 
?2006年 厚生労働省告示第425号 
?2009年 文部科学省告示代88号 
「ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う 
研究に関する指針」 
iPS Trend (http://www.ips-network.mext.go.jp/) 
第2回 iPS細胞の生殖細胞研究への応用 2012年7月25日の記事より 
(抜粋)「日本ではヒトの生殖細胞を作る研究は2010年5月まで法律で禁止 
されていました。しかし、生殖細胞を大量に得ることができれば不妊症の 
原因解明や治療法の開発研究に利用できることから、現在は受精させない 
ことなどを条件に解禁されています」 
?2013年1月29日 「再生医療規制法」 
厚生労働省案「再生医療?細胞治療の安全性の確保等に関する法案(仮 
称)」 
?「再生医療」も「医療ツーリズム」に組む込む 
か? 
日本の成長戦略。しかし… 
2011年4月 多くの欧州諸国において幹細胞治療のガイドライン強化によ 
り、商業ベースの幹細胞投与が不可に 
日本では幹細胞の輸注、投与、移植等の所謂、再生?細胞医療と称する医療 
が
11.最後に 意見 
?「悪法もまた法なり」(ソクラテス)だが??? 
ほかのみんなはOKだが、お前だけはだめだという法を 
個人が従容として受け入れる時代ではない。 
今の現代人は完成された医療技術があるのに、それを使わせてもらえな 
いということを受容するような個人ではない。 
「アラブの春」がひきおこした行動は個人のうちなる衝動の集合体であ 
る。 
かつて日本で暗黙に禁止された性別適合手術がそうであったように必ず 
当事者はなんらかの手段で個人の意思を実現しようとする。 
それを第三者をはじめとする国家や法、社会意識、社会倫理がとめるこ 
とはできない。その事実を認める必要があるだろう。 
法で「誰にとってダメである」という定義を打ち出すとかつて障害者の 
欠格事項が問題になったように医療?工学的技術が障害を緩和しても 
社会の障害を乗り越えることができなくなる。?それが倫理的問題のあ 
る医療の横行につながる 
必要な法は「その医療技術の手段が安全かつ完成されているものか」 
「臓器移植による人身売買などの誰かの犠牲のもとになりたつものでな 
いこと」を確認?保障する手続きについての明文化であると思われる
伊東 聰 
AL-QASAS株式会社 
医療?美容戦略部

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性を超える医療技術 Medical_technology_for_TG_2013

  • 2. 1.はじめに 医療倫理とイスラームの関係 ?人間の価値観よりイスラームを優先する 政治政策から個人の生活すべてにおいて優先 すべてのものが「等価で平等」、本来は少数者/異端者に優しい宗教 最大公約数を考慮に入れ、排除、排斥、無視は厳禁 ?盲信は禁止、理性を働かせて考えることを推奨 考えるためのツール(イジュティハード)がある 医療倫理の問題をフレームワークとしてとらえる ?しかし、弱点がある 問題解決のスピードが遅く、功利主義のアメリカに負ける 間違ったイスラーム原理主義は日本より厳しい「管理主義」になる イスラームの欧米に対する危機感が「現実」と「教え」の乖離に現れる 日本のなかでも増えてきた嫌イスラームの原因になる(偏見の拡大)
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  • 5. 4.子宮移植ーMTFが実母になる可能性 ?世界初の子宮移植手術 ◆2000年、サウジアラビア 26歳の女性に閉経後の46歳の女性から移植、施術後99日目に子 宮内に血栓が発生、摘出(生体移植による) ◆2011年、トルコ デルヤ?セルトさん(21歳)子宮欠損症の当事者 2011年10月3日 AFP アンタリヤ県のアクデニズ大学病院(死体移植) ?イスラームのファトワ(法的見解)は? 「子宮が他人のものであったとしたら、 その子供は他の家系の特徴を帯びて 生まれてくることになり、 血統を受け継いでいくのが困難になる」
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  • 8. 7.イスラームのファトワはどう答えている? ?生殖医療 1. 代理母はOKか? ? NG 2.AID(非配偶者間人工授精)はOKか?? NG 婚姻関係の混乱をさけるため 「女性の子宮を夫以外の精子や他人の受精卵、胎児などにつかうこと は認められない」 冷凍した夫の精子を夫の死後に受精 ? NG 「死とともに婚姻関係が消滅するため」 ?再生医療 「受精卵を破壊し、ES細胞研究を行うことは許可できる」 ? OK 女性の子宮のなかという自然環境にないため、 ヒト受精胚の段階では人間ではない。  ただし、胚の不正使用に厳しい規則を確立する必要がある。 ?キリスト教の場合は人間であるため、NGである。
  • 9. 8.FTMのAID(非配偶者間人工授精) ?生殖医療関連の法整備はいかにあるべきか? AID男性の子供AIDFTM の子供IPS男性の子供IPSFTM の子供 嫡出子非嫡出子嫡出子非嫡出子???? 生殖医療の使用によるきりわけか??現行では不可能 DNAデータの強制登録によるチェックは??かえって家族関係に問題がおき る 現行のAID男性と同じように「すべて嫡出子」ではだめなのか? FTMと男性を区別する必要があるのか? ?私見 立法の考え方を変える時期にきている。 人間を管理するために際限ないパラメータで人間を定義し、細分化している 分ければ分けるほど法の「想定外」がでてくる 排斥/無視していくシステムをいつまで続けるか 医学の発展の速さと法整備の遅れとのいたちごっこはいつまで続くのか 困るのは当事者が変えられない問題で人生が数十年にわたり停滞する
  • 10. 9.未来の性同一性障害の治療はこうなる? ?再生医療でできるのか? 2012年12月1日「臓器を再生する新たな医療の実現をめざして」(葛 飾区) 東京理科大学?辻孝教授にきいてみた Q.性分化異常で途中で成長が止まっているケースで iPS細胞で性分化を巻き戻してあるべき姿に育つことは可能か? ★質問の意図: ホルモンを作れないなどで健康に影響のある性分化異常もあるため。 A.すぐに答えられない、難しい。 ?あるべき姿に育つ幹細胞を発見できるかにかかっている。 ?現在ホルモン療法で投与している性ホルモンを自己生産できるか? ?形成外科療法で形成している生殖器の自前での製造、移植できるか? ?性別変更の手段が性別適合手術でなくなる? ?しかし上記は移行先の性に分化する  正しい遺伝子の設計図をもつ細胞が存在するかどうかが、鍵になる。
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  • 12. 11.最後に 意見 ?「悪法もまた法なり」(ソクラテス)だが??? ほかのみんなはOKだが、お前だけはだめだという法を 個人が従容として受け入れる時代ではない。 今の現代人は完成された医療技術があるのに、それを使わせてもらえな いということを受容するような個人ではない。 「アラブの春」がひきおこした行動は個人のうちなる衝動の集合体であ る。 かつて日本で暗黙に禁止された性別適合手術がそうであったように必ず 当事者はなんらかの手段で個人の意思を実現しようとする。 それを第三者をはじめとする国家や法、社会意識、社会倫理がとめるこ とはできない。その事実を認める必要があるだろう。 法で「誰にとってダメである」という定義を打ち出すとかつて障害者の 欠格事項が問題になったように医療?工学的技術が障害を緩和しても 社会の障害を乗り越えることができなくなる。?それが倫理的問題のあ る医療の横行につながる 必要な法は「その医療技術の手段が安全かつ完成されているものか」 「臓器移植による人身売買などの誰かの犠牲のもとになりたつものでな いこと」を確認?保障する手続きについての明文化であると思われる