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自殺生起過程のモデルと インターネットを用いた自殺予防の取り組み 
和光大学現代人間学部心理教育学科 
末木新
本発表の目的 
「自殺」生起プロセスに関する基礎知識の提供+ インターネットを使った自殺予防活動の紹介 
? 関連する疑問 
‐自殺ってどういうプロセスをへて生じるの? 
‐危険性のアセスメントはどうやる? (アルコールとか薬物と関係あるの?) 
‐結局どう支援すればいいの? 
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本発表で伝えたいこと(結論) 
3 
?アルコール?薬物への依存は自殺の危険因子である 
?アルコール?薬物への依存が自殺の危険因子となる理由は、 「自殺の対人関係理論」を理解すると明確になる 
?我々が行っている活動が、皆さんの日常的な臨床/研究の 参考になると良いのですが…
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1.自殺生起のプロセスと介入 
2.ネットを使った自殺予防活動 
本日の目次
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1.自殺生起のプロセスと介入 
2.ネットを使った自殺予防活動 
本日の目次
満たされない欲求 解決策の模索 より良く生きたい!=両価性 
耐えがたい(心理的)痛み 例:無価値感 極度の孤立感 
苦痛に関する意識の停止 
(≒ 自殺) 
自殺の生起過程|シュナイドマン?モデル 
痛みに耐える ことのできない 自己像 
窮状が 
永遠に続く 
という確信 
全能感 
絶望感?諦め (解決策はない) 
心理的 
視野狭窄 
怒り
自殺の対人関係理論|ジョイナー?モデル 
7 
自殺 潜在能力 
負担感の 知覚 
所属感の 減弱 
自殺企図の恐怖や疼痛に耐える力 変化には時間が必要 
孤独感や疎外感とほとんど同義 
短期で変化する可能性あり 
他者にとって自らが負担になっている感覚 
短期で変化する可能性あり
自殺の対人関係理論|ジョイナー?モデル 
8 
自殺 潜在能力 
負担感の 知覚 
所属感の 減弱 
自殺企図歴 
自傷経験 
事故傾性 
軍事経験 
身体的虐待 
恐怖心の低下 
職業(無職) 
受刑経験 
低自尊心 
自責傾向 
代替可能と 扱われること 
婚姻状態 ソーシャル? サポート ひきこもり 虐待、DV 家族間葛藤
自殺のリスクとアルコール?薬物との関係 
9 
自殺 潜在能力 
負担感の 知覚 
所属感の 減弱 
自殺企図歴 
自傷経験 
事故傾性 
軍事経験 
身体的虐待 
恐怖心の低下 
職業(無職) 受刑経験 低自尊心 自責傾向 代替可能と 扱われること 
婚姻状態 
ソーシャル? サポート 
ひきこもり 
虐待、DV 
家族間葛藤 
アルコール?薬物依存 
アルコール?薬物依存
自殺企図のプロセス?モデル|自殺の対人関係理論 
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所属感 の減弱 
負担感 の知覚 
自殺 願望 
自殺 意図 
到死的 
自殺 企図 
自殺潜在能力 
絶望感 
This will never change. 
死の恐怖の低下 
疼痛耐性UP 
Van Orden KA, et al (2010). Psychol Rev, 117, 575-600.
危機介入に関する考え方 
自殺潜在能力を下げるのは難しい(やるなら物理的な制限) 
まずは、所属感の減弱や負担感の知覚に介入 
? 介入に関する心得(優先順位のつけ方) 
‐アセスメントの精度を完璧にするのは不可能 
‐所属感の減弱は「共感」「傾聴」によって直接介入 
‐負担感の知覚への介入はその次(認知を変えるのは大変) 
‐自殺潜在能力は自殺潜在能力を高めるようなことをしない ことによってしか下がらない 
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自殺の対人関係理論の利点?問題点 
簡便で覚えやすい、実感にも合っている しかし、全てが実証されているわけではない 
? 問題点 
‐理論が先にあり、それを段階的に実証している 
‐三要素によって自殺関連行動の生起を予想できるところ までは複数の研究で実証されている 
‐プロセスについては、理論的なものと考えるべき ※とはいえ、他の理論に比べれば実証性は高い 
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1.自殺生起のプロセスと介入 
2.ネットを使った自殺予防活動 
本日の目次
実践中の自殺予防活動|夜回り2.0 
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Step 1. 検索連動型広告 
Step 2. 特設サイト 
Step 3. メール相談 
Step 4. 対面援助資源へ 
相談を促す情報提供 
自殺関連語への広告 
評価&援助希求行動の促進 
死にたい… 
NPO法人OVA 
Jiro ITO (Social Worker) 
どうされましたか?
活動の結果(2013年) 
? 広告運用効果 
‐相談率 約5.3% 
‐相談者獲得単価 約133円 
?メール相談の概要(n = 139) 
‐男性:女性=1:5 
‐平均年齢 23.8歳 (SD = 9.7) 
‐メール数/事例 中央値:6(最小2、最大137) 
‐相談を通じた変化率(気分の変化、援助希求意図?行動) 25.9% 
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※ 詳細は以下の資料を参考にして下さい 
末木新?伊藤次郎 (2014). 検索連動型広告を活用したオンライン?ゲートキーパー活動による自殺予防の実践―予備的研究― 
日本心理学会第78回大会. (査読なし, ポスター, 京都, 同志社大学)
活動の背景にある研究 
? 自殺予防の観点から 
‐まず共感、問題解決はその後(発表前半より) 
‐ネット上の共感?相談では自殺予防的効果は生まれない (Sueki et al., Plos One, 2014) → 自助グループ活動のあり方への示唆 
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? 情報疫学(Infodemiology)の観点から 
‐ネット上の行動から自殺ハイリスク者を特定可能 → アルコール?薬物にも使える? 使えない? 
Sueki, H., et al. (2014). The impact of suicidality-related internet use: a prospective large cohort study with young and middle-aged internet users. PloS one, 9(4), e94841.
結論|繰り返し 
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?アルコール?薬物への依存は自殺の危険因子である 
?アルコール?薬物への依存が自殺の危険因子となる理由は、 「自殺の対人関係理論」を理解すると明確になる 
?我々が行っている活動が、皆さんの日常的な臨床/研究の 参考になると良いのですが…
ご清聴ありがとうございました 
質問がある方は個別にどうぞ! 
※ 本日の資料は以下のアドレスで公開予定です。 
http://www.slideshare.net/Hajime_SUEKI/

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