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2015-07 02015-07
荒川直哉
ヒト并みの人工知能と现象学
2015-07-11
エンボディード?アプローチ研究会
心の科学の基礎論研究会
2015-07 1
今日お話しすること
ヒト並みの人工知能
○ 背景、課題とアプローチの紹介
○ 身体論?現象学との関連
○ 発表者の最近のアクティビティから
2015-07 2
発表者の略歴
?大学関係
? 学部:生物工学:脳と神経回路モデル
? 修士:システム科学
? 博士:言語哲学
指示の自然化:機械が言葉を使ってものごとを指し示すことができるか
?仕事関係:主に自然言語処理
? 機械翻訳
? 対話システム
? 意味解析?日本語オントロジー
? 最近は「汎用人工知能」関連の活動
? 心の科学基礎論研究会世話人(’08?)
2015-07 3
構成
1. 背景:人工知能
● ヒトのような機能を持つ人工知能
● 近年の「AIブーム」
● 2つの対立軸
2. 解決すべき課題
3. ヒト並みの人工知能の作り方
4. 発表者の最近のアクティビティからの話題
2015-07 4
ヒトのような機能を持つ人工知能
● 人工知能分野元来の目標の一部(野望)
○ 「ピグマリオン?コンプレックス」?
○ 「認知科学」としての人工知能 ↓
● ヒトの「構成的」理解
○ 真に何かを理解するには作ってみるべき
○ 現状分析的に理解するのは困難…
2015-07 5
近年の「AIブーム」
● メディアによる注目
● テレビや雑誌での特集
● 一般向け「AI本」の出版ラッシュ
● 新しい研究所:産総研、千葉大、etc.
● 技術的背景
○ 計算機の性能向上
○ 知識源となるデータの爆発的な増加
○ いくつかの成果:IBM, Google, etc.
チェス、クイズ、自動運転、…
○ 機械学習分野の発展
Deep Learning! ?
2015-07 6
機械学習分野の発展
● 基本的にニューラルネットの逆襲
● Deep Learning
● 多層ニューラルネット(深層学習)
● 画像認識や音声認識で成果
● 自動的に概念形成?
Googleのネコ(Google Brain)、Google Dreams (Inceptionism)
● RNN (Recurrent Neural Network)
● 時系列学習
● 深層学習も使って画像に説明文付加(Stanford大)
● 強化学習
● 報酬に基づく行動系列の学習
● Deep Q Network (深層強化学習):ゲームをプレイ
2015-07 7
2つの対立軸
● 汎用人工知能 vs. 特定課題型人工知能
● Artificial General Intelligence(AGI)
● さまざまなスキルを習得しうるという意味で「general」
● ヒト並みの人工知能もまた AGI
● 本来の「野望」しかし難しい?
● Narrow AI?個別の課題の解決:現在の研究の主流
● 古き良き人工知能 vs. 創発的人工知能
● 古き良き(記号的)人工知能(GOFAI)
● ドレイファスやレイコフらの批判
● 知識獲得で行き詰まり
● 創発的人工知能
● 知識は与えられるものではなく学ぶもの
● アナログ(統計)的
※機械学習の進展?AGI/ヒト並みのAI実現に光明!?
2015-07 8
構成
1. 背景:人工知能
2. 解決すべき課題
● 知識獲得=学習=認識論
● 認知機能
3. ヒト並みの人工知能の作り方
4. 発表者の最近のアクティビティからの話題
2015-07 9
ヒト並みのAIを作るために解決すべき課題
知識獲得=学習=認識論
● いかにして我々は知識を得るのか
● いかにして機械は知識を得るのか
● より具体的には
● 概念獲得(←知覚?運動)
● 行為の知識獲得(praxis/pragmatics←運動?知覚)
● 言語(知識)の獲得
○ 語彙の獲得(記号接地問題)
○ 文法の獲得
2015-07 10
ヒト並みのAIを作るために実現すべき認知機能
○ ヒト並みの人工知能?ヒトの認知機能の棚卸し
○ 学習?知識獲得
■ パターン認識(主に教師あり)
■ 概念学習(主に教師なし)
● 「クラスタリング」
● Deep Learning による「表現学習」
■ 強化学習:報酬に基づく行動系列の学習(cf. オペランド条件付け)
■ エピソード記憶:ワンショット学習
○ 行動計画、実行
■ 創発的人工知能:大脳前頭前野からヒントを得てみる?
○ 言語機能
■ 生成的(統語論的問題)
■ 社会的(語用論的問題)
■ 記号接地(意味論的問題)
2015-07 11
構成
1.背景:人工知能
2. 解決すべき課題
3. ヒト並みの人工知能の作り方
● 三つの柱
● 構成的アプローチ
4. 発表者の最近のアクティビティからの話題
2015-07 12
ヒト並みの人工知能の作り方
1.三つの柱(私見)
i. 認知アーキテクチャ
総合的な認知モデル:知能の「仕組み」
記号的なものはいろいろ提案されている。
脳の仕組みからも学べる。
ii. 機械学習
経験から学ぶための数理モデル
iii. 認知ロボティクス
身体を持って世界の中で発達的に学ぶ。
2.構成的アプローチ
仮説?作ってみて検証
i. 認知ロボティクス
ii. 人工脳
2015-07 13
認知ロボティクス
? 認知科学としてのロボティクス
? 認知には身体性が必要という立場
? 認知の「構成的」理解
真に何かを理解するには作ってみるべき
? ジャンル
– 認知発達ロボティクス
? 人間の子どものように認知能力を発達させる
– 記号創発ロボティクス
? 環境とのインタラクションから言語を学ぶ
– 社会知能ロボティクス
? コミュニケーション研究
2015-07 14
認知発達ロボティクス
? 人間の子どものように認知能力を発達させる
? ロボットは環境との相互作用から学んでいく
(倫理的にも)難しい幼児への心理実験を補完
? 日本での研究
–大阪大学浅田研
–東京大学國吉研
–新学術領域研究「構成論的発達科学」
–など
? 参考文献
– Cangelosi, A. et al.: Developmental Robotics
-- From Babies to Robots, MIT Press (2015).
– Asada M. et al.: “Cognitive developmental robotics: a survey,” in IEEE
Transactions on Autonomous Mental Development, Vol.1, No.1,
pp.12--34 (2009)
2015-07 15
記号創発ロボティクス
? 環境とのインタラクションから言語を学ぶ
? ヒト:個別文法も語彙も与えられない
? ref. 発達言語学
– Tomasello, Meltzoff, Spelke, …
– Chomskians(最近のマージ理論)
– cf. 進化言語学(動物の認知機能研究)
? 記号接地問題:記号と世界とのマッピング
? さまざまな機械学習手法を駆使
– ノンパラメトリックベイズ、Recursive Neural Net…
? 他者の意図理解が必須(←発達言語学)
? 言語獲得の実現はこれから...
2015-07 16
社会知能ロボティクス
● ロボットによるコミュニケーション研究
● 身体を前提とするコミュニケーションを扱う
● 模倣
● 共同注意
● エンパシー
2015-07 17
認知ロボティクスと現象学的身体性
? 認知ロボティクス研究者の興味?
身体性研究者の興味
? 共通して使用される概念
? 身体イメージ?身体図式, etc.
2015-07 18
人工脳
● 人工的に脳っぽいものを作って認知機能を再現
1. 脳シミュレーション
○ ニューロンレベルから生理学的に忠実なモデル
○ Blue Brain Project, Neurogrid Project,
革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト, …
2. 脳にヒントを得た認知アーキテクチャ
○ 認知アーキテクチャ:総合的な認知モデル
○ 例
■ Nengo/SPAUN (C. Eliasmith et al.)
■ Leabra (O’Reilly et al.)
■ 全脳アーキテクチャ(後述)
2015-07 19
脳研究の現状
● 脳機能イメージング(fMRI)などの発達
● 認知神経科学者たち
○ A. Damasio:ソマティック?マーカー仮説(情動の役割)
○ V.S. Ramachandran:さまざまな認知障害の紹介と解釈
○ E. Kandel:記憶の研究
○ E. Goldberg:左右大脳半球と前頭前野の機能の解釈
● 各器官の機能の解明とモデル化
○ 大脳皮質の構造と諸領野(認識、運動制御、計画、...)
大脳皮質の構造は領野にかかわらず一様 [Mountcastle]
○ 大脳基底核(線条体など:強化学習、作業記憶、...)
○ 大脳辺縁系(扁桃体など:情動?報酬)
○ 海馬(エピソード記憶、空間表現)
○ 小脳(運動制御、高次認知機能への寄与)
? そろそろ統合的な絵が描けるかも
2015-07 20
脳と認知機能(図)
前頭前野:計画
運動野:運動系列
大脳基底核:強化学習
小脳:フィードフォワード予測?
運動(+高次認知機能?)
海馬:エピソード記憶(齧歯類では場所の記憶)
Where Path
What Path
扁桃体など:情動
言語野
こうした機能が有機的にヒトの知能を構成するような「アーキテクチャ」を考えたい
2015-07 21
構成
1. 背景:人工知能
2. 解決すべき課題
3. ヒト並みの人工知能の作り方
4. 発表者の最近のアクティビティからの話題
● 意味論の問題
● 全体的な目標
● 人工物の現象学(マニフェスト)
● 時間の現象学
● 人工物による言語獲得へ向けて
● 汎用人工知能関連の活動
2015-07 22
意味論の問題:前歴からの疑問
? 日本語オントロジー(意味辞書)の作成
? 多義性
? 一つの語にいくつの意味?
? 区別できない境界的な用例
例)助詞の「で」?「ディスプレイで」
? そもそも人間は語の意味をどうやって獲得?
? 発達に鍵?
? 認知言語学者レイコフ(『認知意味論』)の忠告
自然言語の意味を記号によって扱うことは不可能!
? 根本から問い直す必要がある!
2015-07 23
全体的な目標:知(cognition)の解明
? 正確には「意味論のグラウンディング」
? 意味論は認識論を包含
? 外界の知識なしに意味を把握できない。
? 副産物:汎用人工知能/ヒト並みの人工知能
? 構成的手法をとるため、副産物が手段となる
?方法論的なループ
2015-07 24
アプローチ
1. 生物から学ぶ
? 脳モデル?動物(比較心理学?進化言語学)
2. 現象学的?発達的
? 個体に与えられる情報からの知識獲得
3. 構成的
? 機械学習
? ロボティクス(シミュレーション)
4. 言語獲得
? 言語:知の重要項目
? 上記 1?3 を使った説明
2015-07 25
人工物の現象学
? Husserl の現象学?認識論(知識の基盤)
? 第1人称的視点からの認識論
? ロボットも第1人称的視点を持つ
ビデオ:MIT Atlas robot - first person view sensor visualization ?
? kinesthetic を持つロボット
? 外界との相互作用で発達的に知識を獲得
? ロボットは情報処理過程を inspect 可能
? 数理的に検証可能な人工物の情報処理
? ロボット(人工物)を使って現象学を再構築?
cf. 戸田山和久:“アンドロイド認識論” in「知識の哲学」(産業図書 2002)
Android Epistemology (1995) という本もあるが内容がちと古い…
Naturalizing Phenomenology, Stanford (1999)
(マニフェスト)
2015-07 26
時間の現象学
● Husserl の時間意識:原印象、予持、把持
● 時系列学習?時系列予測
○ RNN (recurrent neural network)
○ 時系列的大脳皮質モデル:HTM, DeSTIN, etc.(cf. akinetopsia @V5野)
○ D?rner(認知心理学者)の PSIモデル
Bach J.: Principles of Synthetic Intelligence -- PSI: An Architecture of Motivated Cognition, Oxford U.
○ LLoyd, M.: “Time after Time -- Temporality in the dynamic brain,” Being Time: Dynamical Models of Phonomenal
Experience, John Benjamins Pub. Co. (2012)
● 時系列学習と時間の現象学
○ 予持:未来の記憶(予測)
○ 把持 :文脈の記憶(状態)
○ 原印象?時間微分+予測された現在
cf. 谷淳
○ ロボット工学者
○ 時系列学習器(RNN)
○ フッサールの時間の現象学への言及:縦の志向性、横の志向性
2015-07 27
人工物による言語獲得へ向けて
? 発達ロボティクス in 仮想世界
? 幼児の言語獲得から学ぶ
?Spelke
?事物概念:一定の制約
–cf. Quineのギャヴァガイ
–事物全体制約など
cf. Husserl 裏側に回ってみる?三次元物体概念
?Tomasello
?参照(言葉)の理解:他者の意図の理解が必須
?用法を積み上げて文法を構築(反生得文法)
?Meltzoff
?乳児の他者の意図理解の研究
?自分の意図的運動をまずモデル化?
2015-07 28
人工物による言語獲得へ向けて(続き)
? 動詞の獲得
?動詞は文構造の要
?物体?名詞的概念よりやや後
?まず自分の意図的な動作の概念(←Meltzoff)?
cf. sense of agency
自分の意図は「所与」
?動詞とのマッピング
→「親」の動詞使用
← 自らの発話の(社会的)成功?失敗
? 構文の獲得
? 前後の構造の連接?マージ?
? 創発的言語獲得?機械学習
2015-07 29
汎用人工知能関連の活動(宣伝 :-)
? ドワンゴ人工知能研究所
● 脳モデリング、言語獲得など
? 全脳アーキテクチャイニシアティブ(NPO)
● 脳にヒントを得た認知アーキテクチャを目指す
● 教育?啓蒙
? 汎用人工知能研究会(←人工知能学会)
● 輪読会
● 教科書も企画中…
? Webサイト: 汎用人工知能と技術的特異点
● www.sig-agi.org
● Facebook グループ
「汎用人工知能について語ろう!」
ご興味がありましたらご連絡ください:naoya.arakawa@nifty.com
2015-07 30
ご清聴ありがとうございました!

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