狠狠撸

狠狠撸Share a Scribd company logo
大久保慧悟(ディップ株式会社)
竹橋 洋毅(関西福祉科学大学)
2017/10/29
日本社会心理学会 第58回大会
@広島大学
就職活動における暗黙の才能観の役割
ー困難を乗り越える心のメカニズムー
0
重要で大変な就職活動を乗り切るには?
新卒での就職はキャリア
形成において重要課題
就職活動の研究では…??
-就職活動はストレスフル
(e.g.,藤井,1999; Song et al, 2005)
-就活の成功と高負荷な
活動量(学外セミナー参加数,
OBとの接触量等)が関連
(e.g.,平沢,1995; 藤里?児玉,2011)
背景
暗黙の才能観は就職活動の積極性を説明する理
論的な枠組として有効か?
暗黙の才能観 (Dweck, 2011)
-能力は生まれつき
変わらない(実体理論)
-努力で成長可能(増大理論)
困難に直面したとき、
増大理論は粘り強さを発揮
-学業上の能力を中心に、
交渉能力?人間関係等を
説明(e.g., Hong et al., 1999)
-介入研究の蓄積
(e.g., Blackwell et al., 2007)
背景
就職活動が本格化する前の3年生(春/秋)を
対象に複数の状況下で検討
概要
研究1
職業適性検査の返却
目的:動機づけへの
影響を検討
研究2
内定者座談会
目的:原因帰属への
影響を検討
就職活動が本格化する前の3年生(春/秋)を
対象に複数の状況下で検討
概要
研究1
職業適性検査の返却
目的:動機づけへの
影響を検討
研究2
内定者座談会
目的:原因帰属への
影響を検討
希望する職種の適性が無いと感じたとき、才能
観の個人差により就活への積極性は異なるか?
研究1
目的
暗黙の才能観は「困難」
に直面した時の動機づけ
に影響する
(e.g., Robins & Palsm,
2002; Blackwell et al., 2007)
研究1では、
Hong et al(1999)を参考
にネガティブな適性検査
を受け取った状況での
夏季インターンシップ
参加意図に注目
仮説②「適性がない」
と知覚した場合、増大
理論者は実体理論者よ
りもインターンシップ
参加意図が高い
仮説①「適性がある」
と知覚した場合、増大
理論者も実体理論者も
インターンシップ参加
意図に差はない
職業適性検査の結果返却会(キャリアセンター
主催)で調査を実施
研究1
手続き
測定時期
- 2014年5月
調査協力者
- 学部3年生 81名
(男性23名、女性58名)
分析対象
- 75名
(男性22名、女性53名)
職業適性検査に回答
検査結果の返却
1時間の検査結果解説
本調査の実施(任意)
目的の解説
約1ヶ月後
以下の項目を用いた
研究1
項目
②暗黙の才能観(Dweck, 1994; 及川,2005訳) 6件法
1.私は一定の才能をもって生まれてきており、それを変えることは実際に
はできない
2.私の中で、才能はほとんど変えることのできないものだと思う
3.新しいことを学ぶことはできても、基本的な才能は変えられない
①インターンシップ参加意図 4件法
1.私は、今後インターンシップに参加したい
2.私は、現状、勉強やアルバイト?サークルなどが忙しく、
インターンシップに参加するのは難しい *
③希望する職種への適性知覚 9件法
先ほどあなたが選んだ最も希望する職種にどの程度、
適性があると評価されたと感じますか
増大理論者は「希望職種に適性が無い」と感じ
た時、直近のインターンシップ参加意図が高い
研究1
結果
図 グループごとのインターンシップ参加意図の評定値の平均
F(1,71) = 6.39, p <.05
F(1,71) = 0.72, n,s,
F(1,71) = 7.17,p<.01,
就職活動の困難直面時、増大理論者は粘りづさ
を発揮した
研究1
考察
増大理論者は「適性がない」
という困難に直面した場合
でも粘り強く取り組む
-Hong et al(1999)の知見
と概念的に一致
就活の一側面しか扱えておら
ず、才能観による認知の違い
は明らかにされていない
就職活動が本格化する前の3年生(春/秋)を
対象に複数の状況下で検討
概要
研究1
職業適性検査の返却
目的:動機づけへの
影響を検討
研究2
内定者座談会
目的:原因帰属への
影響を検討
才能観によって、先輩の成功要因の帰属と、
情報収集の方略は異なるか?
研究2
目的
実体理論者は失敗原因を
コントロールしにくい要因
に、増大理論者はコントロ
ールしやすい要因に帰属
(e.g., Hong et al., 1999;
Blackwell et al., 2007)
就活において他者に支援を
求めることが有用だが、
実体理論の意味体系では
無能さを露見することに?
仮説② 困難さを知覚す
るほど、増大理論者は
他者を頼る情報収集意
図が高まり、実体理論
者は単独での情報収集
意図が高まる
仮説① 先輩の成功要因
を増大理論者は「努
力」に、実体理論者は
「人柄」に帰属する
就活を終えた4年生が登壇する内定者座談会
(キャリアセンター主催)で調査を実施
研究2
手続き
測定時期
- 2015年10月
調査協力者
- 学部3年生 45名
(男性9名、女性36名)
分析対象
- 学部3年生 44名
(男性9名、女性35名)
希望する先輩の体験談③
本調査の実施(任意)
希望者に個別で解説
希望する先輩の体験談①
希望する先輩の体験談②
座談会の趣旨説明
以下の項目を用いた
研究2
項目
②「暗黙の才能観」(Dweck, 1994; 及川,2005訳)
研究1と同様
①「原因帰属」(Hong et al., 1999を参考に作成)
今日、話を聞いた先輩が内定を得られたのは何故だと思いますか?
以下の項目について、合計で100点になるように点数を振り分けてください
1.懸命な努力 2.もともとの人柄
3.周りから得た支援 4.めぐってきたチャンス
③「就活の困難さ知覚」
就職活動は、簡単にはいかなさそうだ
④「情報収集意図」
1.近いうちにインターネットで、就職活動の情報を調べるつもりだ
2.近いうちに周りの先輩から、就職活動に関する話を聞くつもりだ
成功要因の秘訣を増大理論者は努力に、
実体理論者は人柄にあると捉えた
研究2
結果
F(1,99) = 7.69,
p<.01
図 グループごとの原因帰属得点の平均値
F(3,99) = 4.42, p <.01
F(1,99) = 5.62,
p<.05
F(1,99) = 2.79,
p<.10
F(1,99) = 1.60,
n.s.
増大理論の協力者は、就活の困難さを受け止め
るほど他者を頼ることに対して積極性をみせた
研究2
結果
表 才能観ごとの情報収集方略と困難さの相関係数
原因帰属という認知的側面においても、
先行研究と整合する結果が得られた
研究2
考察
増大理論者は先輩の成功を
「努力」に、実体理論者は
「人柄」に帰属
-Hong et al(1999) と整合
困難な時の情報収集意図は、
増大理論者は他者を頼るが、
実体理論者ではネットを頼る
-努力方略の違いを示唆
本研究の貢献と課題
総合
考察
本研究の貢献
- 理論の適応範囲を広げ、
実体理論の努力方略に対
する知見が得られた
- 就活研究の成功要因を促
しうる認知的要因
- 支援において考慮すべき
点を示した
今後の課題
- 就活の成果との関係性、
介入の有用性の検証

More Related Content

社心2017_ 就職活動における暗黙の才能観の役割ー困難を乗り越える心のメカニズムー