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研究活動を通じた
科研費取得の 1 モデル
大阪市立大学医学部附属病院
片山 豊
エンジニア?技師としての自己紹介
……………………… 開 発 業 ………………………
? 1998 年 : オートバイ用マフラーの開発?製造
……………………… 放射線技師 ………………………
? 2003 年: 大阪大学医学部附属病院 (Intern)
? 2004 年: 市立泉佐野りんくう総合医療センター (非常勤)
? 2006 年: 社会医療法人仙養会 北摂総合病院 (医療情報に従事)
? 2007 年: 大阪市立大学医学部附属病院 (核医学と MR に従事)
? 2018 年: 人工知能研究会 (大阪市立大学 放射線診断学?IVR 学 に設立)
……………………… 研 究 内 容 ………………………
? EGS4 を用いた低エネルギー領域の視野外 X 線のモンテカルロシミュレーション
? Bilateral Filter を用いた核医学画像の画質改善1
? Super-Resolution による放射線画像の高解像度化2
? Compressed Sensing を用いた CT の被曝低減処理
? 深層学習を用いた Detection/Classification
? 敵対的生成ネットワーク (Generative Adversarial Networks: GAN) を用いた放射線画像の生成
1) 片山 豊, 上田健太郎, 日浦慎作, 他.
骨シンチグラフィへのバイラテラルフィルタの適用.
日本放射線技術学会雑誌, 2013, 69.12: 1363-1371.
2) 片山 豊, 上田 健太郎, 日浦 慎作, 他.
PET 画像に対する超解像を用いたデノイズ手法の適用.
日本放射線技術学会雑誌, 2018, 74.7: 653-660.
脳神経外科との共同研究
? アルゴリズムの受諾開発
? 科学研究費助成事業への応募をするという前提で,
「脳動脈瘤コイル塞栓術中にコイルの位置を把握したい」という依頼
? 1 つの X 線管から撮影された透視像を使用し,コイル位置を推定
? 1 方向からの透視像から特徴点を抽出し,各コイルをマッチング
? カルマンフィルタを用いたコイル位置の推定
科学研究費助成事業
? 日本の研究機関に所属する研究者の研究を格段に
発展させることを目的とする文部科学省および
その外郭団体である独立行政法人日本学術振興会の事業
? 国内の研究機関に所属する研究者が
個人またはグループで行なう研究に対し,
ピアレビュー審査による競争的資金を提供
科学研究費助成事業の主な種目 [1/2]
? 新学術領域研究 (研究領域提案型)
? 多様な研究者ク?ルーフ?により提案された,
我か?国の学術水準の向上?強化につなか?る新たな研究領域について,
共同研究や研究人材の育成,設備の共用化等の取組を通し?て発展させる
? 期間 5 年間 - 1 領域単年度当たり 1,000 万円~ 3 億円程度
科学研究費助成事業の主な種目 [2/2]
? 特別推進研究 - 期間 3 ~ 5 年 - 1 課題 2 億円 ~ 5 億円程度 (優れた研究成果が期待される人材)
? 基盤研究 (1 人又は複数の研究者が共同して行う独創的?先駆的な研究)
? 基盤研究 (S) - 期間 5 年 - 5 千万円以上 2 億円以下
? 基盤研究 (A) - 期間 3 ~ 5 年 - 2 千万円以上 5 千万円以下
? 基盤研究 (B) - 期間 3 ~ 5 年 - 500 万円以上 2 千万円以下
? 基盤研究 (C) - 期間 3 ~ 5 年 - 500 万円以下
? 挑戦的研究 (開拓: 学術の体系を大きく変革 / 萌芽: 転換させる?探索的性質の強い研究)
? 開拓研究 - 期間 3 ~ 6 年 - 500 万円以上 2 千万円以下
? 萌芽研究 - 期間 1 ~ 3 年 - 500 万円以下
? 若手研究 (39 歳以下の研究者が 1 人で行う研究)
? 若手研究 (A) - 期間 2 ~ 4 年 - 500 万円以上 3 千万円以下
? 若手研究 (B) - 期間 2 ~ 4 年 - 500 万円以下
? 若手研究 (博士の学位取得後 8 年未満の研究者が 1 人で行う研究) - 期間 2 ~ 4 年 - 500 万円以下
? 研究活動スタート支援 (新採用者や育児休業等から復帰する研究者等か? 1 人て?行う研究)
- 期間 2 年以内 - 単年度当たり150万円以下
? 奨励研究 (学術の振興に寄与する研究を行っている者か? 1 人て?行う研究)
- 期間 1 年間 10 万円以上 100 万円以下
科学研究費助成事業への応募
? 科研費で基本的な研究種目は「基盤研究」と「若手研究」
? 年齢と実績によって基盤研究か若手研究から1つを選択
? 新学術領域研究に自分の研究に適した研究領域 (公募)
? 上記に応募するのが基本的な流れ
? 9 月の第 1 週に科学研究費助成事業の公募が開始
? 9 月から 11 月までの 2 カ月の間に申請
研究種目 期間 助成金額
基盤研究 (S) 5 年 5 千万円以上 2 億円程度まで
基盤研究 (A) 3 ~ 5 年 2 千万円以上 5 千万円以下
基盤研究 (B) 3 ~ 5 年 500 万円以上 2 千万円以下
基盤研究 (C) 3 ~ 5 年 500 万円以下
若手研究 (A) 39 歳以下 2 ~ 4 年 500 万円以上 3 千万円以下
若手研究 (B) 39 歳以下 2 ~ 4 年 500 万円以下
科学研究費助成事業への応募資格
? 科学研究費助成事業への応募には
研究者番号の取得 (e-Rad への登録) が必須
? e-Rad への登録は所属機関の事務担当に依頼
e-Rad の研究機関
a. 府省内外局,国立試験研究機関,特殊法人及び独立行政法人
b. 大学,高等専門学校,大学共同利用機関
c. 地方公共団体,都道府県立試験研究機関
d. 公益法人 (財団法人,社団法人,その他)
e. 民間企業
f. その他,科研費機関番号を有する研究機関
科学研究費助成事業への応募 (審査区分)
科学研究費助成事業の審査区分 (小区分)
小区分
科学研究費助成事業の審査区分
審査区分を「放射線科学関連」ではなく,「脳神経外科学関連」として応募
? 自分の所属学会の領域?分野に必ずしも応募する必要はない.
? 申請書の内容にふさわしく,正確に審査してくれる領域に応募すること.
? 視覚的にわかりやすい図表が大切
? 学術的独自性や創造性を求められるので新規性が重要
? サンプルプログラムで大まかな倾向を出しておく
採択された研究课题
採択された研究课题
脳動脈瘤
? 脳動脈瘤は破裂するとクモ膜下出血を来し,
重度の後遺症を引き起こす
? 脳動脈瘤コイル塞栓術は脳動脈瘤に対する標準治療の一つ
? 非侵襲的であるが,瘤の大きさや形状によっては十分な治療効果が
得られず,重篤な虚血性合併症を起こす可能性がある
脳動脈瘤コイル塞栓術
? 治療は瘤内に複数の塞栓用コイルを密な状態で充填し
瘤への血流を遮断するが,一度挿入されたコイルは
血管造影像では単一のコイル塊として確認されるだけで,
個々のコイルの形状を認識し,コイル同士の干渉を
リアルタイムに把握することは困難
研究の目的
? 本研究では
より安全で効率の良いコイル塞栓術を実現するため,
術中に得られる一連の画像より,コイルを識別しながら
個々のコイルの形状やこれらの相互干渉を
可視化するための方法と装置?ソフトウエアの開発
科研費研究の課題へのアプローチ [1/2]
? 脳動脈瘤コイル塞栓術は年間 50 件程度
? 大量のデータを取得することが困難
? 各コイルを留置後に Computed Tomography (CT) 撮影を行わないので,
教師データの取得が不可能
? ファントムを作成しモデル化することで学習は可能だが,
全てのパターンを学習することは困難
? 深層学習に用いる教師データは通常の臨床検査から取得したい
? 深層学習を用いたアプローチはできない
深層学習を用いられない理由
? 医用画像処理では深層学習がトレンド
? 深層学習では,End to End Training が一般的
? End to End Training
入力データが与えられてから結果を出力するまで多段の処理の全てを学習
? 中間で行う処理も学習させるため沢山のデータセットが必要
? End to End Training で解決できる課題はわずか
? 機械学習と深層学習が流行りすぎて「画像処理 = 深層学習」
? OpenCV で 10 行程度の処理でも深層学習を用いて解決しようとしている傾向
? 学習データが 100 件程度だと精度が出ない
? Computer Vision を用いて課題を解決するアプローチを考える
科研費研究の課題へのアプローチ [2/2]
? コイル塞栓術に得られる画像を用いたコイル位置の可視化
? 1 方向からの画像のみではコイル位置の予測しかできない
? 2 方向からの画像があればコイル位置の予測精度が向上
? 2 つの X 線管からの画像を取得したいが,
手技中はロードマップのアプリケーションが実行中のため,
「透視保存」や「2 方向からの動画の取得」が不可能
? 装置の改修は非現実的
? 2 方向からの動画を保存できるようにシステムを改修
? 2 方向の血管造影像から三次元形状の復元
Computer Vision
? コンピュータが
「動画像を如何によく理解できるか」を扱う研究分野
? 人間の視覚システムが行えるタスクを自動化することを追求する分野
? コンピュータが
実世界の情報を取得する全ての過程を扱う
? センシングのためのハードウェアから
情報認識のための人工知能的理論まで幅広い適用
Computer Vision Task
工学系技術 放射線技術への応用
三次元形状の復元 ステレオ計測 画像の表示や再構成
物体検出 人物などの対象検出 病変や異常の検出
位置合わせ パノラマ画像合成 長尺撮影をつなぐ技術
医療画像処理にも直接適用されている技術
二次元画像から三次元形状復元
? Structure from Motion (SfM)1, 2
? Visual Hull3
? 複数の二次元画像から三次元形状を復元
1. Akira Shibata, Hiromitsu Fujii, Atsushi Yamashita and Ha jime Asama:
“Scale-Reconstructable Structure from Motion Using Refraction with a Single Camera”,
Proceedings of the 2015 IEEE International Conference on Robotics and Automation, pp. 5239–5244, 2015.
2. Akira Shibata, Hiromitsu Fujii, Atsushi Yamashita and Hajime Asama:
“Absolute Scale Structure from Motion Using a Refractive Plate”,
Proceedings of the 2015 IEEE/SICE International Symposium on System Integration, pp. 540–545, 2015.
3. Laurentini, Aldo:
"The visual hull concept for silhouette-based image understanding.”,
IEEE Transactions on pattern analysis and machine intelligence 16.2, pp. 150-162, 1994.
Structure from Motion (SfM)
? 一連の二次元画像から三次元シーンの構造を推定するプロセス
? Shape from Motion,Visual SLAM
(Simultaneous Localization And Mapping) とも呼ばれる
? 三次元スキャンや拡張現実など,多くのアプリケーションに応用
y
x
z
? 2 つのビューからの Structure from Motion
? カメラ 1 が基準点にあり,
その光学軸は z 軸に沿っていると仮定
camera 1
(0, 0, 0)
camera 2
(x, y, z)
Visual Hull
? 物体のシルエットに基づいて,三次元モデルを推定する方法
? 視体積交差法や Shape from Silhouette とも呼ぶ
? 対象は任意の視点から撮影して得られる
物体の二次元シルエットを
実空間に投影して得られる
錐体 (視体積) の中に含まれる
視点 1
視点 2
ボクセル空間
シルエット画像
? 複数からのデータが欲しいが臨床検査を対象としているので,
2 方向の血管造影像からコイルのみを抽出
? 入力画像 (コイルのみにトリミング)
前処理
三次元形状の復元
? 三次元形状を復元しているので任意方向に回転可能
? 三次元形式のファイル形式 (stl file) で出力可能
? 吸収の高い頭蓋骨がアーチファクトとして抽出
科学研究費を使った物品購入
? 開発環境の構築検証
? コンピュータの購入
? Mac
? ソフトウエアの購入
? Matlab
? 物品は事務を通して購入 (大阪市大病院の場合)
? 大学と口座のある企業からのみ購入可能
? 購入が少々煩雑
? 生協を経由すると事務的な手間が低減
科学研究費を使った物品購入
? 2 つの X 線管から撮影された透視像からコイルの三次元形状の復元
? 患者被曝の増加や手技が煩雑にならないように 2 つの X 線管から
動画を取得できるように装置メーカーにシステムの小規模改修依頼
? コーディングにはコイル塞栓後の透視保存した画像で対応
? 検証のために既知の動脈瘤を設置したファントムの作成
? コイルを挿入し,CT を撮影して得たデータと解析結果を比較
? 3D Printer を用いて動脈瘤ファントムを作成
3D Printer により作成したファントム
メーカ:米国 Stratasys 社
機種名:J750
積層厚:0.027 mm
素材名:アクリル系樹脂
解像度:600 dpi (0.042 mm)
第47回日本放射線技術学会秋季学術大会にて発表
継続した研究活動から科研費の獲得 [1/2]
? 継続した研究活動が大切
? 2016 年以降,所属学会の全ての学術大会で口述発表
? 研究での評価は業務評価に比べて比較的フラットな状態での評価
? 医療系では一般的でない Computer Vision が研究テーマ
? 工学系に目を向ければ医用系では用いられていない様々な処理がある
? 医用画像に最適化されているプログラムは少なくコーディングが必要
? 深層学習のアルゴリズムを書くのでなければ動作速度がそれほど重要ではない
? Computer Vison は比較的計算コストが低いので美しいコードを記載は不要
? コーディングすることで,古い装置でも (比較的最新の) 研究が可能
継続した研究活動から科研費の獲得 [2/2]
? インプットとアウトプットのサイクルを続ける
? 研究におけるインプット (成果につなげるための勉強)
? 新たな技術 (理論,プログラミングなど) の習得
? 関連論文 (技術) のサーベイ
? 研究におけるアウトプット (成果を形にする)
? 性能向上や新たな発見
? 研究発表や論文投稿
? アウトプットからの反省と行動がインプットに直結
? 課題の欠点を補う手法を次回アイディアにできる
? 放射線技術以外への興味が継続した研究に繋がった
? 継続して研究を続けることが科研費の取得に繋がった

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