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第2回 Q&A編
～頂いた質問にお答えします～
2020年度社会調査論
地域協働学部湊邦生 30/IV/2020

Q&A編について
? 当方担当講義では、授業終了後に受講生からリアクションカード
の提出を求め、質問に回答しています
? 本講はオンライン授業のため、moodleでのリアクションコー
ナーに出された質問について、PowerPoint資料で回答します
? 今回は第1回リアクションで寄せられた質問にお答えします
? ただし質問全てにお答えする保証はできかねます
Social Research AY2020-II (c) MMXX MINATO, Kunio Ph.D. 2

［コメント1］前半のパワーポイントに書いてあった、社会調査
士AやB,C…とはどういう意味ですか。
（回答）
一般社団法人社会調査協会が「社会調査士資格課程」として
定めた科目です。科目Aから科目Gまでがあり、社会調査士資格
を取得する場合、科目AからDと科目Gが必修、科目Eと科目Fは
どちらかを選択することになります。
ただし、具体的な科目名は大学によって異なります。本学部
の場合、例えばA科目に対応するのがこの「社会調査論」で、以
下B科目対応、C科目対応……と、それぞれ開設されています。
詳しくは、オリエンテーションで配布された（と聞いていま
す）社会調査士資格に関する資料をご覧ください。

［コメント2］社会調査士の資格は、将来どのように生かしてい
けますか？
（回答）
まず、在学中に取得できる「社会調査士（キャンディデイ
ト）」という、本資格取得見込みを示すものがあり、履歴書に
資格として明記できます。取得のための努力や得られたスキル
も含め、就職活動でのアピールで活用してください。この点は
社会調査協会のページもご参考になります
(http://jasr.or.jp/students/jobhunting.html)。
また、卒業後に取得する社会調査士資格自体は、調査に関わ
るスキルやデータを読み解く能力を示すものです。仕事で調査
やデータ分析等に関わりたい人には、有利に働くことでしょう。

［コメント3］社会調査を行うことにメリットがあるのか。
（回答）今回（第2回）の授業の内容と重なりますので、ここで
あらためて詳しく述べるのは控えます。むしろ大事なのは、今
回の授業での議論について、納得いった点、疑問が残った点を
ご自身で整理しておくことです。
ただし、われわれが自身の社会について、合理的な根拠に基
づく理解を試みることは、われわれが社会を自らの手でより良
くするために不可欠なことです。社会調査がそのために有益な
手段であることは、ここで強調しておきたいと思います。

［コメント4］収集したデータを個人的?組織的に錯覚等を用い
て印象操作を行うことは、社会調査と言えるのでしょうか？
（回答）
「社会調査の悪用」と言うべきでしょうね。前回後半で述べ
た基準には沿っていますが、それ以外の手続きが悪意を持って
なされているわけですから。
調査自体やデータ分析、結果の見せ方等を細工することで、
事実を捻じ曲げて示す例は後を絶ちません。とりわけ、結果の
見せ方のトリックを示した古典的名著として、ダレル?ハフ
著?高木秀玄訳(1968)『統計でウソをつく法―数式を使わない
統計学入門』講談社ブルーバックスはぜひお読みください。

［コメント5］nhkの調査方法が電話法だと書いていましたが、
電話をかける対象はnhkを受信している人だけなのでしょうか？
（回答）
受信の有無は一切関係ありません。簡単に言うと、この世論
調査では無作為（ランダム）に電話番号を生成して電話を掛け
て、掛かった先からテレビの利用状況に一切関係なく対象者を
選びます。
ちなみに、ここでいう「無作為／ランダム」という用語は後
半の授業で大事になってきます。

［コメント6］社会調査のデータの二つ目にあるブルーカラーと
ホワイトカラーがなにか気になります。
（回答）
ブルーカラーは「現場の労働者」、つまり工場等の生産?作
業現場で体を使って働く人々です。一方のホワイトカラーはオ
フィスや学校等で事務的?専門的作業を行う人や、店舗で接
客?受付を担当する人々をさします。
社会学ではこのような職業のカテゴリに基づく人々の社会に
おける位置づけ（「社会階層」と言います）を非常に重要して
いて、さまざまな社会現象のデータ分析で取り扱います。
ちなみに、このカラーは「色」の意味じゃないですからね！

［コメント7］私の高校ではグループに分かれて１年間課題探求
というものをやり、調査結果をまとめて発表したのですが、そ
れが社会調査の定義に沿っていれば社会調査としてとらえてよ
いのですか？
（回答）
人々に対する調査を行ったのであれば、社会調査と判断して
よいと思います。例えば、調査票を使った調査のほか、インタ
ビューや行動観察等が上記の調査に当たります。もしそうでな
い場合でも、文書や写真?映像の分析の中には社会調査だと言
えるものもあります。こちらについては後半の授業で「ドキュ
メント分析」として登場します。

［コメント8］今まで見た社会調査の中で1番面白い内容、調査
結果のものは何かありますかまた、1番よく分からなかったも
のはありますか。
（回答）
実はこういう質問に答えるのが非常に難しいです。国内外の
膨大な調査から特定のものを選ぶことの難しさに加え（しかも
調査も研究も分からないものだらけ！）、個人的に調査結果よ
りも方法論に関心があり、結果だけ取り出して議論することの
もどうか、という考えもあるためです。
ですので、この問いへの直接の答えはできかねるのですが、
強いて言えば、私自身は統計的（量的）調査の仕事が多い分、
質的な調査に面白さや難しさを感じるのかな、とは思います。

［コメント9］おもしろいと思う政治系の社会調査のテーマは何
ですか？調査方法も詳しく知りたいです。
（回答）
先のコメント同様、何かを選ぶのは正直なところ非常に難しいです。
膨大な社会調査を「政治系」かそうでないかに二分することは、そも
そも「政治系」という区分けの基準があいまいなこと、単一の調査が
政治とそれ以外双方のトピックを扱うことも普通にあることから、ま
ず不可能なのも理由の一つです。
ただし、おそらく皆さんが比較的よく目にする世論調査であれば、
現在は電話法（第1回後半のNHK世論調査が用いていた手法です）に
よるものが主流です。それ以外では、対面での面接、郵送等によるも
のもあります。この辺の詳しい方法は「社会調査方法論」で登場する
と思いますので、授業内容をよく聞くようにしましょう。

［コメント10］「個人的な問題が社会的な問題である場合もあ
る」というケースは自殺以外にもあるのかと少し気になりまし
た。
（回答）
極論すれば、（無人島で一人きりで暮らしているのでもない
限り）人々にかかわるあらゆる問題の背景に、社会的な問題を
見出すことは不可能ではありません。もちろん皆さん自身が生
きている中で抱える問題もです。
個人的な問題から出発して社会（的背景）の存在を見出すこ
とは、社会を理解するだけでなく、課題を発見し、解決の方法
を探り、社会をより良くしていくための原動力でもあります。

［コメント11］後半の講義資料で「社会的な問題意識に基づい
てデータを収集」とありましたが、どこからが「社会的」でど
こからがそうでないのかの区切りがイメージしにくかったです。
（回答）
厳密に考えだすと哲学的な議論にまで行きつくので簡単にと
どめておきますが、自己を超えた周囲の人々や「他者」への理
解を目指すか、自己の感情や感覚、価値観や利害の充足に止ま
るか、というのが一つの指針になるでしょう。調査によっては
自らを対象にすることもあり得ますが、その場合も自信を理解
することで「他者」への理解をも目指すのがあるべき姿です。

［コメント12］私の中でデータ＝根拠という考えがあります。
なので、語りや身振り手振りなどでは正確なデータを得ること
ができないのではないかという疑問があります。
（回答）
データは根拠そのものではありません。データはあくまで
データそのものでしかありません。そこになにがしかの根拠を
見出すのは分析者であり、それに正当性を付与するのが理論や
合理的推論、既存の研究で得られた知見です。

［コメント13］沖縄のヤンキーについて書かれていた調査は何
の調査だったのか。
（回答）
もともとは沖縄の暴走族の調査だったようですが、さまざま
な理由から、困難を抱えながらも「地元」にとどまることにな
る少年?若者の姿を描き出したものです。インタビューもある
ので、読んでみてはいかがでしょうか
(https://book.asahi.com/article/12371855)。

［コメント14］「社会調査は発信するまでが調査」とありまし
たが、それはなぜか。社会の反応を見るためですか？
（回答）
それも大事な理由ですが（ただし、たいていの場合は反応ら
しい反応はない）、さらに重要なのが、調査に協力していただ
いた方々への礼儀という面です。調査は大なり小なり時間等の
負担を協力者に強いるものです。ですので、調査によって分
かったことを自分だけの持ち物に留めず、協力者を含む社会に
還元することは調査者の責務です（もっとも、そううまくいか
ない時もままあるのですが……）

［コメント15］今、話題のビックデータは社会調査にあたるの
ですか？
（回答）
データそのものが調査になるわけではありません。大事なの
はデータの収集?分析?結果発信というプロセスによって、社
会における事実を明らかにしようとするかどうかです。その点
で、ビッグデータ（この定義も簡単ではありませんが）を用い
た社会調査は可能です。とはいえ、データの特長と限界を理解
しておかないと、的外れな結果を生み出しかねません。

［コメント16］調査やデータのなかには必要のないもの…と
いったようなものが気になります。活動を進めていたなかでそ
れらにあったことがありますか？また、それは「社会」に関係
していない、という意味か、それともデータとして不十分だっ
たということですか？
（回答）
両方の可能性がありますが、個人的には後者の方が深刻だと
思います（データとして不十分、あるいは有害な場合も）。
個別具体の名前は出しませんが、ウェブサイト上でよくある
「意見投票」、は社会を理解する上で意味のあるデータを出す
ことはまずなく、むしろ誤解をもたらす危険すらあります。

［コメント17］実際に公的機関が発行する統計などが改ざんさ
れているとした場合には、ある程度正確な推測をすることは可
能なのですか？また、その場合はどういった手法が考えられる
のですか？
（回答）
意図的な改ざんがあった場合、その統計を用いた推測の質は
落ちます。元のデータがどのような改ざんがあったかが詳しく
分からない限り、結果がどう偏っているのか、信頼できる判断
が下せないからです。その場合、別のデータを探すことが考え
られますが、それも難しければ、推測を放棄するか、一定の留
保をつけた上で推測を試みるか、どちらかになるでしょう。

［コメント18］私はこれまでの生活で社会調査を受けたという
自覚があまりないのですが、自分にも当てはまりそうな様々な
データが出されているのも目にします。これらは答える人に
よって偏りが出たりと、正確なものなのかどうか気になりまし
た。（類似コメントあり）
（回答）
確かに、特に標本調査において偏りをゼロにすることは理論
的にも不可能です。ですが、無作為抽出（ランダムサンプリン
グ）という方法を採ることによって、偏りがどの程度になるの
か事前に計算したり、コントロールしたりすることが可能とな
ります。これについては後半の授業でお話しします。

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（オンデマンド授業サンプル）社会調査論2020-2 Q&A篇

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