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特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター
〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456
E-mail: staff@infogapbuster.org
URL? https://www.infogapbuster.org
2024 年 9 月 19 日
厚生労働大臣 武見敬三殿
特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター
理事長 伊藤 芳浩
聴覚障害者に関するパワハラ防止策要望
時下、ますますご清祥のことと存じます。日頃より、障害者雇用の拡充とインクル
ーシブな職場環境の推進にご尽力いただき、厚く御礼申し上げます。
さて、聴覚障害者に対する合理的配慮の欠如が精神的ストレスを引き起こし、精
神病や精神障害をもたらすことが多い現状を鑑み、労災認定基準とパワハラ基準
の見直しと改善を求めます。
記
【要望理由】
1. 認定率の低さ
令和 2 年度から令和 4 年度にかけて、精神障害に関する労災請求件数は増加し
ている一方で、支給決定件数の割合(認定率)は約 20%台に留まっており、3 割
にも満たない状況です。(*1)
これは、現行の認定基準が厳格であり、労災認定される
べき多くの請求が棄却されることが原因です。
(*1)精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(令和5年7月)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000256196
2. 労災認定基準の問題点
現行の精神障害に関する労災認定基準は、「心理的負荷」を「強」「中」「弱」の 3 段
階で分類し、「強」に該当する場合のみ支給決定されます。しかし、「強」と判断され
るための条件が厳しく、特に「特別な出来事」に該当するケースが限られています。
また、長時間労働以外のケースでは、「強」の具体例、「中」の具体例は限定的に過
ぎるため、その結果、多くの請求が不当に認定されない現状があります。
3. 聴覚障害者特有の問題
現行の認定基準は一般的な労働者を対象としており、聴覚障害者が直面する特
有のストレス要因が考慮されていません。例えば、筆談や手話通訳などの合理的配
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慮が不足することで生じるストレスや孤立感が、精神障害の原因となることが多々
あります。合理的配慮の欠如は、聴覚障害者にとって職場環境を極めてストレスフ
ルなものとし、その結果として精神病や精神障害を引き起こすリスクが高まりま
す。
4. 具体的事例の不足
現行認定基準は、聴覚障害者の職場でのハラスメントや合理的配慮の欠如につい
て何ら議論されず改定された経緯があり、聴覚障害者特有の問題に関する具体例
が現行の認定基準には含まれていません。聴覚障害者が労災申請を行った際に、
聴覚障害者特有の問題が考慮されず、適切な労災認定が困難となるケースが多く
存在します。
【具体的改善要望】
1. 労災認定基準の改訂
聴覚障害者が直面する特有のストレス要因を認定基準に追加することを求めま
す。具体的には、業務による心理的負荷評価表(別表 1)(*2)
の(具体的出来事)の
「出来事の類型」⑤パワハラの「心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」と判断する具体
例」に以下の(1)(2)の新設と、(3)(4)(5)の事例の拡充を提案します。
(1) 合理的配慮としてのコミュニケーションサポートの申出の拒否
- 手話通訳や筆記通訳など、必要なコミュニケーションサポートを提供しない行為
- 情報へのアクセスが制限されることで、業務を遂行する上での不確実性と不安
が増大
(2) 合理的配慮としてのコミュニケーションサポートの不履行
- コミュニケーションサポートを適切に行わないために、業務上必要かつ重要な会
議や業務に必要な情報を十分に伝えない行為
- 情報へのアクセスが制限されることで、業務を遂行する上での不確実性と不安
が増大
(3) 無視や人間関係からの切り離し
- チーム活動や社会的イベントからの正当な理由がない排除
- 社会的孤立は精神健康にとって重要なリスクファクターであり、長期的には社会
的不安、うつ病、自尊心の低下を引き起こす可能性有り
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(4) 過小な要求
- 障害などを理由に労働能力を適正に評価しないで職務を制限する行為
- 職場内での自己実現の機会が制限され、職業的成長や昇進の機会が奪われます
(5) 過大な要求
- コミュニケーションの障壁に対して合理的配慮をせずに遂行が困難な業務を強
制する行為
- 不適切または誤解を招く情報を提供し、職場での信頼関係を損ねる原因となり
ます
(*2) 心理的負荷による精神障害の認定基準について(令和 5 年 9 月 1 日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001140929.pdf
2. パワーハラスメントの具体例の見直し
現行のパワーハラスメントの具体例として、合理的配慮としてのコミュニケーシ
ョンサポートを拒否することは、それ自体が精神的攻撃に該当することを明記す
べきです。具体的には以下の点を見直すことを求めます。
パワーハラスメントに当たりうる6類型のうち、「精神的な攻撃」に、以下のケー
スの追加を提案します。
?業務上必要かつ重要な会議や業務に必要な情報を伝えなかったり、コミュニケ
ーションを適切に行わなかったりすることで、業務遂行を妨げ、精神的苦痛を与え
る
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?特に障害者の場合、「建設的対話を怠る」「建設的対話を拒否する」などにより、
障害者雇用促進法により義務付けられている合理的配慮を提供せずまたは不十
分な提供しか行わないことにより、精神的苦痛を与える
これにより、合理的配慮が不足することで生じる精神的ストレスや苦痛がハラス
メントとして認識されるようになります。
3. ハラスメント防止対策の強化
聴覚障害者を含む全ての障害者が安心して働ける職場環境を実現するために、
ハラスメント防止対策を強化する必要があります。具体的には以下の対策を講じ
ることを求めます:
(1) 教育と研修
厚生労働省の「ハラスメント防止対策ポータルサイト」(https://www.no-
harassment.mhlw.go.jp/)を活用し、企業や組織に対して定期的な教育と研
修をより一層啓発してください。特に、聴覚障害者特有のニーズや合理的配慮の
重要性を強調する内容を追加し、より実践的な研修を実施することが求められま
す。
(2) 相談窓口の設置
現在、各都道府県の労働局や労働基準監督署など、窓口が分散しているためわか
りにくい現状があります。これを解消するために、障害者差別に関する相談窓口
「つなぐ窓口」(内閣府設置)を活用し、ここで労災やパワハラに関する相談も受け
付けられるようにすることを提案します。これにより、相談窓口が一本化され、障
害者がより迅速かつ適切にサポートを受けられるようになります。
(3) 監査と評価
企業や組織の障害者に対する対応状況を定期的に監査し、適切な措置が講じら
れているかを評価する仕組みを整備する。
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4. 調査結果の反映
NPO 法人インフォメーションギャップバスターの調査結果によれば、聴覚障害者
の 73.7%がハラスメントや差別を経験しており、その多くが解決されていない実
態があります。この結果を踏まえ、労災認定基準において聴覚障害者の特有の問
題を反映する必要があります。
これらの改善により、聴覚障害者を含むすべての労働者が公正に労災補償を受け
ることができる環境を整えることが期待されます。厚生労働省の迅速かつ適切な
対応を強く要望いたします。
【弊団体について】
NPO 法人インフォメーションギャップバスターは、主に聴覚障害などによりコミ
ュニケーションに困難を覚える会社員や弁護士、薬剤師、言語聴覚士、臨床心理士
などの専門職で構成されるコミュニケーションバリアフリーを推進する団体です。
当団体は、業務や生活で電話が使用できないために、職場での活躍の範囲が狭め
られ、また、生活上様々な困難と不便を経験した本人及び家族などのメンバーで
構成されています。
―以上―

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2024年9月19日厚生労働大臣宛提出「聴覚障害者に関するパワハラ防止策要望书」

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  • 3. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL? https://www.infogapbuster.org (4) 過小な要求 - 障害などを理由に労働能力を適正に評価しないで職務を制限する行為 - 職場内での自己実現の機会が制限され、職業的成長や昇進の機会が奪われます (5) 過大な要求 - コミュニケーションの障壁に対して合理的配慮をせずに遂行が困難な業務を強 制する行為 - 不適切または誤解を招く情報を提供し、職場での信頼関係を損ねる原因となり ます (*2) 心理的負荷による精神障害の認定基準について(令和 5 年 9 月 1 日) https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001140929.pdf 2. パワーハラスメントの具体例の見直し 現行のパワーハラスメントの具体例として、合理的配慮としてのコミュニケーシ ョンサポートを拒否することは、それ自体が精神的攻撃に該当することを明記す べきです。具体的には以下の点を見直すことを求めます。 パワーハラスメントに当たりうる6類型のうち、「精神的な攻撃」に、以下のケー スの追加を提案します。 ?業務上必要かつ重要な会議や業務に必要な情報を伝えなかったり、コミュニケ ーションを適切に行わなかったりすることで、業務遂行を妨げ、精神的苦痛を与え る
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  • 5. 特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター 〒222-0001 神奈川県横浜市港北区樽町 3-7-15-456 E-mail: staff@infogapbuster.org URL? https://www.infogapbuster.org 4. 調査結果の反映 NPO 法人インフォメーションギャップバスターの調査結果によれば、聴覚障害者 の 73.7%がハラスメントや差別を経験しており、その多くが解決されていない実 態があります。この結果を踏まえ、労災認定基準において聴覚障害者の特有の問 題を反映する必要があります。 これらの改善により、聴覚障害者を含むすべての労働者が公正に労災補償を受け ることができる環境を整えることが期待されます。厚生労働省の迅速かつ適切な 対応を強く要望いたします。 【弊団体について】 NPO 法人インフォメーションギャップバスターは、主に聴覚障害などによりコミ ュニケーションに困難を覚える会社員や弁護士、薬剤師、言語聴覚士、臨床心理士 などの専門職で構成されるコミュニケーションバリアフリーを推進する団体です。 当団体は、業務や生活で電話が使用できないために、職場での活躍の範囲が狭め られ、また、生活上様々な困難と不便を経験した本人及び家族などのメンバーで 構成されています。 ―以上―