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2012/03/27




植物生理学 第3回
      温度?宇宙
(絵とき植物生理学入門(オーム社)2章環境 より)




                    担当:山口
植物生理学第3回
植物の生活と温度
     気温と植物の分布
植物の分布は気温と降水量の影響を強く受ける!!
植物の生活と温度
   植物の生存?生育温度範囲
最適温度
 =最も好適な生活ができる範囲
 ?光合成の最適温度は
        原産地に準ずる
致死温度
 =比較的短時間で回復不能に




植物の生活と温度の関係

 1.基本的な代謝(呼吸?光合成など)と温度
 2.植物の生活環の完結に不可欠な温度
植物の生活と温度
             温度と代謝
 温度係数
           10℃上昇したときの反応速度
    Q10=
           ある温度での反応速度


植物の生化学反応では???
 5℃~40℃(だいたい)???Q10≒2
 40℃以上 ??耐高温タンパク質合成でしのぐ
 45℃以上 ??最初Q10は1より大きいが、
           時間経過とともにQ10減少(酵素不活性化によって)

 植物の生理活性における個々の反応は異なった温度係数を持つ
 →同じ温度でも、反応によって有利?不利に働く
植物の生活と温度
        温周性
温周性

 日周期性
      昼夜の温度が日変化すると順調に生長
      メカニズム(説)
        夜低温→根の生長>地上部の生長→糖転流
      役割:
        ?細胞内のガス環境変化(低温ほど溶けやすい)
        ?酵素反応の温度特異性

  季節周期性
      春に花をつける温帯樹木は、
      花芽の休眠が冬の低温で破られる
植物の生活と温度
                  低温適応
●
    冷害?凍結害
    ●   例:イネの冷害(開花期に17℃くらいになると不稔に)
    ●   例:細胞内凍結
●   耐凍性対策
    ●   細胞外凍結
        –   (細胞質は脱水されて濃くなる)
    ●   気温の低下による低温耐性の獲得
        –   特性:細胞微細構造変化
        –   (細胞質増加、液胞小型化、ショ糖濃度上昇など)
    ●   サイトカイニンが耐凍性獲得に作用
植物の生活と温度
              高温適応
●
    高温障害
    ●   蒸散増加による脱水症状(1次的)
    ●   タンパク質の変性(本質)
        →さまざまな代謝過程に影響
●   高温限界は一般的には50℃

●   普通、呼吸の最適温度>光合成の最適温度
    →呼吸速度>光合成速度になる
    →貯蔵栄養物が消費しつくされてしまう
植物の生活と温度
                  高温適応
●
    高熱植物
    ●
        形態的?生理的環境適応
        –   葉の針葉化
        –   多肉化
        –   陥没型気孔
        –   気孔を夜のみ開く
        –   ↑光合成はCAM(夜CO2を固定し、昼光合成を行う)
●
    休眠組織の方が耐熱性が強い
春化とその机构
            春化
春化(バーナリゼーション)とは?
  植物が一定期間低温にであうと、花芽を形成する現象
秋まきコムギの例
         秋          冬          春
一般   まく →  発芽     生長停止   生長   → 開花?結実
極寒地  まく →  発芽      凍死
温室育成 まく →  発芽      生長   (畑に出す)→花芽形成
                                 しない!
Lysenko 水を含ませて    袋詰めにし まく    → 開花?結実
        発芽させる      雪中へ

                 一旦冷やすことが大事!
春化とその机构
          バーナリゼーションの機構
●   春化のPoint
    ●   低温処理は0~5℃が最適
    ●
         処理後すぐ高温下に置くと効果がなくなる →脱春化
    ●
         若い胚や分裂中の細胞にのみ有効
           ※休眠種子には効果なし


●
    花芽形成には低温に続く長日が必要
    ●   長日が先だとダメ
春化とその机构
   バーナリゼーションの機構
春化はどうしておきる?
 ?春化によって植物ホルモン「バーナリン」が作用?
 ?ジベレリン処理で低温処理の代わりになる植物(ニンジンなど)も
   →バーナリン=ジベレリンかも?


一連の流れ
红叶现象
          秋のもみじ
红叶现象
  ?日最低気温が8℃を下回ると始まる
  ?陽葉は鮮やかに紅葉するが、
    陰葉は一層低温にならないと紅葉しない

鮮やかな红叶现象のための環境条件
  ?昼間の気温が20~25℃、夜間は5~10℃
  ?日差しが十分(紫外線を豊富に受ける)
  ?適度な湿度(枯死防止)

         紅葉には温度差?日差しが必要!
红叶现象
          秋のもみじ
赤い葉の場合???クリサンテミン
 ?水溶性で、液胞中に溶けている

 生成過程
  昼夜温度差   クロロフィル分解   タンパク質→アミノ酸

   光合成生産物(高分子炭水化物)→糖
                     クリサンテミン生成
黄色い葉の場合
  昼夜温度差
     クロロフィル分解
      黄色色素(ルテインなど)残存
红叶现象
  冬のもみじ-針葉樹の紅褐色化-
針葉樹の紅葉?????ロドキサンチン
落葉針葉樹(メタセコイヤなど)
  ????紅褐色化後、落葉
常緑針葉樹(杉?檜など)
  ????厳冬期に紅褐色化し、春に緑に戻る
紅葉するには、十分な光 低温
         十分な光と低温
         十分な光 低温が必要

メカニズム
クロロフィル消失 + ロドキサンチン生成
         ↓
葉緑体内にロドキサンチンが顆粒状に生成される
 =(有色化する)
          ↓
常緑針葉樹???気温の上昇とともに元通りに
落葉針葉樹???有色体崩壊→拡散→落葉
植物生理学第3回
微力重力
宇宙 = 微小重力
      (重力は完全にはゼロではない)


 微小重力では、
 植物はどう成長するのか
   前提:植物の根は正の重力屈性を、
           茎は負の重力屈性を示す




 結果:
  成長するが、地上とは違う
  決定的な結論はまだ不明

地上では植物の姿勢は重力屈性に従って制御される
過重力
過重力???過分に重力がかかっている状態
       遠心分離機を使用することで実現可
       微小重力とは逆の反応かも?

過重力での生育結果
 ?植物の生長抑制
 ?細胞壁の伸びやすさ低下


         微小重力では生長が促進されるかも?
         ※ 微小重力と過重力は異なる機関を通して
            成長に影響が出る可能性も
本日のまとめ
●
    植物の分布は気温と降水量の影響を強く受ける
●   温度は代謝と生活環完結に不可欠
●   徐々に気温が下がることで耐凍性獲得
●   高温障害になると、タンパク質が破壊されさまざま
    な代謝に影響する
●   春化処理は一定期間低温にさらすこと
    ● 処理後すぐに高温にさらしてはダメ


●   紅葉には温度差と日差しが必要
●
    陸上植物は重力を姿勢の制御に積極的に利用
    ●   根は正の、茎は負の重力屈性

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  • 19. 本日のまとめ ● 植物の分布は気温と降水量の影響を強く受ける ● 温度は代謝と生活環完結に不可欠 ● 徐々に気温が下がることで耐凍性獲得 ● 高温障害になると、タンパク質が破壊されさまざま な代謝に影響する ● 春化処理は一定期間低温にさらすこと ● 処理後すぐに高温にさらしてはダメ ● 紅葉には温度差と日差しが必要 ● 陸上植物は重力を姿勢の制御に積極的に利用 ● 根は正の、茎は負の重力屈性