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未来シナリオの描出と価値基準の構築
のためのワークショップ手法の提案
~「看護ロボットの医療現場への導入」をテーマとした
試行的実践を踏まえて~
北海道大学高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター
科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)准教授
石村源生
E-mail: ishimura@costep.hucc.hokudai.ac.jp
Twitter: @gnsi_ismr
2015/9/25人工知能学会 第2種研究会 ことば工学研究会(第49回)
未来シナリオの描出
? 来るべきテクノロジーを我々の社会の中にどのように位置づけていく
べきか、といった問題を考えるための手がかりとして、 具体的な未来
シナリオを複数描出し、それらを比較検討する、という手法がある。
? この手法の典型例として、としては「フューチャーサーチ」「シナリオプラ
ンニング」などのワークショップがある。
フューチャーサーチ
1. ワークショップの参加者として、フォーカスを当てている状況(例:地
域社会の少子高齢化)のステークホルダーを過不足無く集める。
2. 当該の状況をとりまく過去と現在について、参加者が協同的に記
述する。
? 過去:環境/組織/自己
? 現在:自己
3. 記述した過去と現在を踏まえて、望ましい、かつ実現可能な未来の
物語、シナリオを協同的に描出する。
シナリオプランニング
1. 一定の不確実性を有する現在の状態にもとづいて、未来に起こり
うる事態を予測する。
2. 「起こりうる事態」とは単発の事象ではなく、個々の事象の蓋然性、
事象間の因果関係?相関関係、両立可能性などを考慮することに
よって想定される「一連の事象群」である。
3. 「起こりうる事態」は複数存在する。
4. これらを「シナリオ」と呼ぶ。
5. これらの複数のシナリオに対して現在の段階から準備を行っておく
ことによって、未来の問題に適切に対処することができる、と考えれ
らている。
これらの手法の問題点
? これらの手法は大きな意義はあるものの、全体性、包括性、ストーリー
としての理解可能性を重視するあまり、個々の評価基準が暗黙のも
のとなりがちであり、選択されたシナリオを分析的?実際的に扱えない
という問題がある。
? 例)
? 複数の評価基準を切り分けてシナリオを描出したり比較検討したりするにはど
うすればよいのか
? 結果として選択されたシナリオが、誰に、そのシナリオのどの側面が、どの程度
評価されたものであり、どの部分を重視してそれを実現していけばよいのか
? 機能的に等価な代替案はありえないのか
? 複数のシナリオを組み合わせて実施するときにどのような指針を採ればよいの
か
? そもそもシナリオ選択の基となるワークショップの参加者自身の価値基準はど
のようなものか
問題解決のための提案
? そこで筆者は、参加者が複数のシナリオ (=選択肢) を多様な評価基
準に沿って考えたり議論したりすることによって、 シナリオの扱うテー
マそのものについての理解を深めると同時に、 参加者自身の価値基
準の枠組みを再構築することを目的としたワークショップ手法を開発
することとした。
? 筆者はこのワークショップ手法のプロトタイプを、「看護ロボットの医療
現場への導入」 という具体的なテーマを設定して試行した。本論文で
は、 この試行結果を踏まえながら、プロトタイプの妥当性や応用?発
展可能性について議論する。
供給 需要リソース拡大 効率化 抑制
? 質の高い看護サービスの安定供給
? 看護サービス従事者の負担適正化
? 社会全体の医療コスト適正化
等々
前提:看護サービスのリソース?供給?需要の関係
目的(条件)
⑥遠隔医療などIT技術の活用
⑦特定行為の認定による看護師の裁量拡大
⑧看護ロボット等による機械化?自動化
予防医学の推進等
①看護大学の設置
②外国人看護師の雇用
③看護師の待遇改善による離職防止
④介護福祉士による医療的ケア実施
⑤在宅医療の推進(施設→家族介護へ)
ワークショップの目的
? 看護ロボットの医療現場への導入について、多様な評価基準に沿っ
て考えたり議論したりすることによって、問題の理解を深める。
? 看護ロボットの問題を考えたり議論したりするための適切な評価枠組
みを、自ら構築する方法を身に付ける。
ワークショップの概要
? 実施日時:2015年8月29日 15:00~17:00
? 実施場所:北海道大学大学院保健科学研究院1階 多目的室
? 参加者数:10名
? 全体構成:
1. 専門家による話題提供
2. グループワーク
3. 発表
グループワークのテーマ
? 看護ロボットを、医療現場にどのような形で導入すべきか?
グループワークの内容
? 作業1:看護ロボットの「導入案」を考える 15分
? 作業2:「導入案」のアイディアを絞り込んで「選択肢」をつくる 15分
? 作業3:「選択肢」の「評価基準」をつくる 15分
? 作業4:「評価基準の重み付け」をする 5分
? 作業5:「選択肢」を「評価基準」ごとに評価する 15分
? 作業6:各選択肢の「総合得点」を計算する 5分
? 作業7:結果を考察?共有する 15分
(時間の目安)
グループワークの手順
? グループワーク
? 準備
? 参加者は3グループに分かれる。
(※実際には5名、4名のグループを1つずつ作り(A班、B班)、さらにゲストの専門家のうちの一
人が単独で回答した。)
? 机と椅子を動かして3つの島を作り、グループごとに席につく。
? ファシリテーター
? 各グループにはスタッフがファシリテーターとしてつく。
? メインファシリテーターが各グループを巡回する。
? 付箋紙の活用
? 参加者は、付箋紙を使いながらアイディアを出し、ディスカッションする。
? ワークシート
? ワークシートに評価点や計算結果を打ち込んでいく。
? 発表
? グループごとに発表し、全体で共有する。
作業1:看護ロボットの「導入案」を考える
? 導入案の例
1. 看護師のパワードスーツ
2. 洗髪ロボット
3. 患者との対話ロボット
4. 判断支援ロボット
引用
http://homepage3.nifty.com/tompei/WorldRobots1.htm
http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/newtech/20120608_537759.html
http://www.softbank.jp/robot/products/
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20150605/421761/?ST=ndh&P=6
作業1:看護ロボットの「導入案」を考える
? 例えば、以下のような導入案が例として考えられるでしょう。
1. 看護師のパワードスーツ
2. 洗髪ロボット
3. 患者との対話ロボット
4. 判断支援ロボット
? 他にどのような導入案が考えられますか?自由にアイディアを出し合って
みてください。
? アイディアは同じ色の付箋紙に1つずつ書き、それをテーブルに貼りなが
ら口に出して発表してください。
? それぞれの導入案に対して、「その案にどのような効果が期待されるか」
を短くまとめて付箋紙( 「導入案」とは別の色のもの)に書き、導入案の
付箋紙のそばに貼ってください。
? 「その案にどのような効果が期待されるか」については、導入案のアイ
ディアを出した人だけではなく、他のメンバーも考えてください。
作業2:「導入案」のアイディアを絞り込んで
「選択肢」をつくる
? グループで考えた導入案のアイディアを、よいと思う順に並べて上位4つを選
んでください。
? それらに、前述の4つの導入案(※)を加えて合計8つとし、全体をよいと思う
順に並べてください。
? これら8つを「選択肢」と呼びます。
? 8つの選択肢を、ファシリテーターはワークシートの所定の欄に入力してくださ
い。「その選択肢に期待される効果」もあわせて入力してください。
※前述の導入案
1. 看護師のパワードスーツ
2. 洗髪ロボット
3. 患者との対話ロボット
4. 判断支援ロボット
作業3:「選択肢」の「評価基準」をつくる
? 引き続いて、これらの選択肢を評価する際に重要だと思われる「評価
基準」を考えます。「評価基準」とは、例えば以下のようなものです。
? 看護師の負担軽減
? 質の高い看護サービスの提供
? 導入コストを低く抑えられるか
? どれだけ早期に実現できそうか
? これら以外に重要だと思う評価基準について、アイディアを出しあい
ましょう。
? アイディアは同じ色の付箋紙に1つずつ書いてください。
? グループで話し合って、新しく出たアイディアの中から重要だと思うも
のを最大4つ選んでください。
? 選んだ評価基準のアイディアを、ファシリテーターはワークシートの所
定の欄に入力してください(評価基準は肯定形で表現してください)。
作業4:「評価基準の重み付け」をする
? 次に、書き加えた評価基準も含めた全ての評価基準を比較して、そ
の相対的な重要度を決めましょう。
? それぞれ1点~10点の範囲で採点し、付箋紙に書いて評価基準の
右横に貼ってください。
? 全部採点し終わったら、もう一度全体を見渡して全体のバランスを確
認して下さい。ここで採点を変えてもかまいません。
? 採点結果が確定したら、ファシリテーターはワークシートの「評価基準
の重み付け」の列にそれらの数字を入力してください。
作業5:「選択肢」を「評価基準」ごとに評価する
? 次に、全ての評価基準について、8つの選択肢をそれぞれ評価してみ
ましょう。
? まず、1番目の評価基準にてらしあわせて、8つの選択肢がどれだけ
優れているか、それぞれ1点~10点の範囲で評価してください。
? このとき、他の評価基準のことは一切考えないでください。
? ファシリテーターはそれぞれの評価点をワークシートの所定の欄に入力
してください。
? 2番目以降の評価基準についても同じ作業を繰り返してください。
作業6:各選択肢の「総合得点」を計算する
(※今回はこのセクションの作業はエクセルの自動計算で代替した。)
? それぞれの選択肢について、8つの評価点の「合計点」を所定の欄に
書き込んでください。
? 次に、それぞれのマスの点数と一番左の列の「評価基準の重み付け」
の数字を掛けあわせ、それを一番右の列の「合計点」で割り、計算結
果(小数点以下1桁未満四捨五入)をそれぞれのマスの右隣のマスに
記入してください。
※掛け合わせるのは、重み付けを点数に反映させるためです。また、合計点で割るのは、点数
の付け方のばらつきをならすためです。
(※エクセルの自動計算では「評価基準の重み付け」も正規化。)
? この作業を全ての点数について行ってください。
? 最後に、これら計算結果を縦に合計して、一番下の「総合得点」の行
に記入してください。
ワークシート (work sheet)
選択肢
合計点
看護師のパワード
スーツ
洗髪ロボット 患者との対話ロ
ボット
判断支援ロボット ? ?
期待される選択肢の効果 看護師の肉体労
働負荷を軽減する
患者の洗髪を支
援し、看護師の負
荷を軽減する
患者のコミュニ
ケーションを支援
する
患者の状態を把
握し、看護師の判
断を支援する
? ?
選択肢の順位(評価前)
1 2 3 4
評価基準 重み付け
看護師の負担
軽減
A×B
÷C
5 7 10
質の高い看護
サービスの提
供
10 6 6×10
÷24
6 4 8 6+6+4+
8=24
導入コストを
低く抑えられ
るか
5 9 9×5
÷24
5 9 1 9+5+9+
1=24
どれだけ早期
に実現できそ
うか
5 9 9×5
÷22
5 7 1 9+5+7+
1=22
?
?
総合得点
合計
選択肢の順位(評価後)
1 3 2 4
B A C
作業7:結果を考察?共有する
? 最初に考えた選択肢の順位(評価前)と、計算結果に基づいた選択肢
の順位(評価後)とを比較してみてください。
? どちらの順位のほうが納得がいきますか?
? この2つの順位の食い違いは、どうして生まれたのだと思いますか?
? 評価基準の重み付けをどのように変えたり、どのような新しい評価基準
を組み込んだりすると、より納得のいく順位になりそうでしょうか?
? 結果的に「上位4つ」には選ばなかった導入案を、改めて評価基準と照
らしあわせてみましょう。高い評価を与えられそうな導入案があります
か?
? これらについて議論した結果を、各グループで発表してください。
総合得点:B班
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
0.16
0.18
0.2
評価点
選択肢
評価(評価基準ごと/重み付けなし):B班
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
0.35
評価点
選択肢
長時間使えるか 16時間くらい
耐久性
適正な重さ、サイズ
10万円前後以下のコスト
看護師の負担軽減
質の高い看護サービスの提供
導入コストを低く抑えられるか
どれだけ早期に実現できそうか
評価基準の重み付け:B班
0
2
4
6
8
10
12
重み付け
評価基準
評価(評価基準ごと/重み付けあり):B班
0
0.005
0.01
0.015
0.02
0.025
0.03
0.035
0.04
0.045
0.05
評価点
選択肢
長時間使えるか 16時間くらい
耐久性
適正な重さ、サイズ
10万円前後以下のコスト
看護師の負担軽減
質の高い看護サービスの提供
導入コストを低く抑えられるか
どれだけ早期に実現できそうか
総合得点:B班
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
0.14
0.16
0.18
0.2
評価点
選択肢
提案された選択肢のリスト
班 選択肢 期待される効果
A 1 自動記録システム 記録時間の節約
2 針分別システム 感染予防
3 ゴミ分別システム 感染予防
4 リネン分別システム 感染予防
5 ベッドサイド物品搬送支援システム 時間節約
6 オムツ交換支援システム 感染予防
7 看護師メンタルケアロボット 離職予防
8 自動シャワーロボット 在宅支援
B 1 運搬等の雑務(看護助手ロボット)
2 人肌ロボット
3 癒し目的の歌うロボット
4 複数の症状から治療や薬などを教えてくれるロボット
5 注射部位を探しやすくしてくれるロボット
6 巡回ロボット
7 配役し、内服まで介助するロボット
8 文字を見て言語化するロボット
C 1 在宅で発熱?脱水など異常を発見してくれるロボット 患者の命を守る?介護者の安心感
2 診察の順番待ちをしてくれるロボット 時間と労力の削減
3 患者のパワードスーツ 患者の生活の自由度を高める
4 患者?介護者のコンシェルジュ 愚痴?やつあたりを聞いてくれる
5 話せない患者の気持ちがわかるロボット 対人間にはできないことができる
6 患者がオーダーメイドで作れるロボット 医療を受けるのが楽しくなる
7 独り言の多いぬいぐるみ 癒される。人間には無理
8 床ずれしないベッドロボット 家族の負担が減る
提案された選択肢のリスト:A班
選択肢 期待される効果
1 自動記録システム 記録時間の節約
2 針分別システム 感染予防
3 ゴミ分別システム 感染予防
4 リネン分別システム 感染予防
5 ベッドサイド物品搬送支援システム 時間節約
6 オムツ交換支援システム 感染予防
7 看護師メンタルケアロボット 離職予防
8 自動シャワーロボット 在宅支援
提案された選択肢のリスト:B班
選択肢 期待される効果
1 運搬等の雑務(看護助手ロボット)
2 人肌ロボット
3 癒し目的の歌うロボット
4 複数の症状から治療や薬などを教えてくれるロボット
5 注射部位を探しやすくしてくれるロボット
6 巡回ロボット
7 配役し、内服まで介助するロボット
8 文字を見て言語化するロボット
提案された選択肢のリスト:C班
選択肢 期待される効果
1 在宅で発熱?脱水など異常を発見してくれるロボット 患者の命を守る?介護者の安心感
2 診察の順番待ちをしてくれるロボット 時間と労力の削減
3 患者のパワードスーツ 患者の生活の自由度を高める
4 患者?介護者のコンシェルジュ 愚痴?やつあたりを聞いてくれる
5 話せない患者の気持ちがわかるロボット 対人間にはできないことができる
6 患者がオーダーメイドで作れるロボット 医療を受けるのが楽しくなる
7 独り言の多いぬいぐるみ 癒される。人間には無理
8 床ずれしないベッドロボット 家族の負担が減る
総合得点(全体?得点順)
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18 0.2
診察の順番待ちをしてくれるロボット
注射部位を探しやすくしてくれるロボット
自動記録システム
独り言の多いぬいぐるみ
癒し目的の歌うロボット
文字を見て言語化するロボット
ベッドサイド物品搬送支援システム
患者?介護者のコンシェルジュ
ゴミ分別システム
在宅で発熱?脱水など異常を発見してくれるロボット
リネン分別システム
オムツ交換支援システム
針分別システム
人肌ロボット
複数の症状から治療や薬などを教えてくれるロボット
患者のパワードスーツ
自動シャワーロボット
床ずれしないベッドロボット
運搬等の雑務(看護助手ロボット)
巡回ロボット
話せない患者の気持ちがわかるロボット
看護師メンタルケアロボット
配役し、内服まで介助するロボット
患者がオーダーメイドで作れるロボット
提案された評価基準のリスト
班 評価基準
A 1 看護師の負担軽減
2 看護師のコアコンピテンシー集中化
3 看護の質の向上
4 あらゆる環境に応用可能
5 評価が可視化できる
6 使いやすさ
7 持続可能性 環境への配慮
8 どれだけ早期に実現できるか
B 1 長時間使えるか 16時間くらい
2 耐久性
3 適正な重さ、サイズ
4 10万円前後以下のコスト
5 看護師の負担軽減
6 質の高い看護サービスの提供
7 導入コストを低く抑えられるか
8 どれだけ早期に実現できそうか
C 1 コストがかからない
2 邪魔にならない(軽い?小さい?場所をとらない)
3 実現可能性
4 リサイクル
5 人との関わりが負担にならない
6 災害耐久性が高い
7 操作性
8 QOLの向上
提案された評価基準のリスト:A班
評価基準
1 看護師の負担軽減
2 看護師のコアコンピテンシー集中化
3 看護の質の向上
4 あらゆる環境に応用可能
5 評価が可視化できる
6 使いやすさ
7 持続可能性 環境への配慮
8 どれだけ早期に実現できるか
提案された評価基準のリスト:B班
評価基準
1 長時間使えるか 16時間くらい
2 耐久性
3 適正な重さ、サイズ
4 10万円前後以下のコスト
5 看護師の負担軽減
6 質の高い看護サービスの提供
7 導入コストを低く抑えられるか
8 どれだけ早期に実現できそうか
提案された評価基準のリスト:C班
評価基準
1 コストがかからない
2 邪魔にならない(軽い?小さい?場所をとらない)
3 実現可能性
4 リサイクル
5 人との関わりが負担にならない
6 災害耐久性が高い
7 操作性
8 QOLの向上
評価基準(全体?重み付け順)
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18 0.2
看護師の負担軽減
コストがかからない
実現可能性
人との関わりが負担にならない
QOLの向上
適正な重さ、サイズ
看護師の負担軽減
看護師のコアコンピテンシー集中化
看護の質の向上
長時間使えるか 16時間くらい
導入コストを低く抑えられるか
あらゆる環境に応用可能
評価が可視化できる
耐久性
使いやすさ
持続可能性 環境への配慮
どれだけ早期に実現できるか
質の高い看護サービスの提供
どれだけ早期に実現できそうか
邪魔にならない(軽い?小さい?場所をとらない)
災害耐久性が高い
操作性
10万円前後以下のコスト
リサイクル
まとめ(ワークショップ参加者に提示したもの)
? 最善の選択肢を選ぶには、複数の評価基準を考慮しなければならない。
? 選択肢を評価する際、複数の評価基準を同時に考えるのは不可能だ
が、一方、他の評価基準を無視して一つの評価基準だけを考えるのも
難しい。
? そもそも、今回用意した選択肢群や評価基準群が最適かどうかはわか
らない。
? 評価基準群にも選択肢群にも「正解」があるわけではなく、ましてや「最
善の選択肢」に正解があるわけでもない。何度も試行錯誤を繰り返す
ことが必要。
まとめ(ワークショップ参加者に提示したもの)
? その過程で、自分たちの価値観を自覚し、互いに議論することでそれら
を共有し、よりよい選択を目指していく。つまり、大切なのは「プロセス」
である。
? この「プロセス」は、時々「暫定的な結論」を生み出しながらも、半ば永
遠に続けていかなければならない。
? 未来について考えたり、議論したり、意思決定したり、合意形成したり
といった行為を行うときには、行為の対象そのものだけではなく、「行為
の方法」についても考えなければならない。
? その一つの例として、今回のワークショップの手法を参考にしてほしい。
補足
? 今回のワークショップの手法はAHP(Analytic Hierarchy Process:階層
分析法)と呼ばれる手法を大きく簡略化したもの。
? 正式なAHPでは、選択肢群に対して一気に評価点をつけるのではなく、
1つずつ選択肢を比較して評価点をつけ、それらを特定の計算式で統
合して各選択肢の総合評価を決める(=一対比較法)。
? 一対比較法
? 利点
? 一つ一つの評価点をつけやすい
? 欠点
? 回答者の負荷が大きい
? 時間がかかる
? あまり多くの選択肢や評価基準を扱えない
結論
? 筆者は、参加者が複数のシナリオ (=選択肢) を多様な評価基準に
沿って考えたり議論したりすることによって、 シナリオの扱うテーマその
ものについての理解を深めると同時に、 参加者自身の価値基準の枠
組みを再構築することを目的としたワークショップ手法を開発した。
? さらに、このワークショップ手法のプロトタイプを、「看護ロボットの医療
現場への導入」 という具体的なテーマを設定して試行した。
結論
? 本ワークショップ手法は、参加者がテーマについての理解を深めるだけ
ではなく、自分らの価値観を自覚し、互いに議論することでそれらを共
有し、よりよい選択を目指していくことを目的とした。つまり、大切なの
は「意思決定の結果」ではなくむしろそこに至るまでの「プロセス」である。
? この「プロセス」は、時折「暫定的な結論」を生み出しながらも、半ば永
遠に続けていかなければならない。未来について考えたり、議論したり、
意思決定したり、合意形成したりといった行為を行うときには、行為の
対象そのものだけではなく、「行為の方法」についても考えなければなら
ない。そこには当然、参加者の長期的なスパンでの「学習」の要素も含
まれる。
結論
? 本手法は、ワークショップのテーマとして提示された科学技術と社会に
関わる問題について、グループワークによってその解決策としての複数
の選択肢とそれらを比較衡量するための評価基準を考案し、さらに
個々の評価基準の重み付けを決定し、それらに基づいて各選択肢に
得点を与えていくものである。
? したがって、異なるグループ間で結果を比較することで、それぞれのグ
ループの持っている価値基準の枠組みをあぶり出すことができる。本手
法のこの機能は、特定のテーマに関する異なる立場のステークホルダー
間の比較や、多文化間(国際)比較への道を開き、意思決定のベースと
なる価値基準の多様性についての本質的なデータを得ることができる
と考えられる。今後、そういった異なる集団の比較を目的としたワーク
ショップを展開していくことは大変有意義であろう。
結論
? また本手法は、各選択肢の「総合得点」における、各評価基準に照らし
あわせた価値の「配合比率」を明らかにすることができるので、複数の
選択肢を同時に実施するだけのリソースが確保できている場合、単に
総合評価が高かった順に一位、二位の施策を行うのではなく、一位の
選択肢の中で「配合比率」が低かった「価値」を補完するのに最も適し
た選択肢はどれか、という観点から二番目の選択肢を選ぶことができ
る。
? つまり、政策オプションのポートフォリオを提案できるということになる。
課題
? 選択肢や評価基準がグループごとにほとんど重複していない場合、グループ
間の相互比較は不可能である(今回実際、そのような結果が見られた)。
? 前述の「政策オプションのポートフォリオ」についても、参加者が個々の選択肢
に対して与える個々の評価基準ごとの評価の間に顕著な差が見られなかっ
た場合、「どれを選んでも価値の配合比率は同じ」という状態になるため、
ポートフォリオを組む意味がなくなってしまう。
? 総合評価を計算する際、評価点を評価基準ごとに正規化することが適切か
どうかについては議論の余地がある(評価基準によっては、どの選択肢も低
い評価、ということがありうる)。
? 評価基準ごとの評価点は必ずしも比例尺度ではない。評価が一定水準以下
の選択肢はそもそも考慮に値しなかったり、一定水準以上の評価の選択肢
は評価点に差をつけることにさしたる意味がなかったりする場合がある。
? 総合評価の計算の際に採用している評価基準ごとの評価点の「線形性」は、
必ずしも自明のものではない。
今後の展望
? 今後は、こういった実践的な課題をどう克服してくかを検討しながら、
さらに手法開発につとめていきたい。
? そのためには、様々なテーマや対象者に対して同様のワークショップを
実施してフィードバックを得ることが重要であると考える。
? また、こういった課題そのものをワークショップにおけるディスカッション
の重要な議題として位置づけることにも大きな意義がある。あえて実態
に比して形式的な枠組みで評価を行うことによって初めて、それだけで
は救い取れない実態の複雑性への本質的な気付きを得ることが期待
される。
? 本手法は、フューチャーサーチ、シナリオプランニングなどの未来シナリオ
描出型ワークショプに「取って代わる」ことを目指すものではなく、それら
と補完し合いながら、全体としてより質の高い意思決定、合意形成、熟
議、そして社会的学習(個人が社会的機会を通じて学習する、社会全
体が集合的に学習する、という二つの意を含む)を実現していくことを
目標としたい。

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