狠狠撸

狠狠撸Share a Scribd company logo
聴力測定技術講習会
ABRとASSR
東京大学耳鼻咽喉科
狩野章太郎
なぜ小児期に難聴を発見する必要があるのか
アヴェロンの野生児(アヴェロンのやせいじ)とは、1797年頃に南フランスで
発見され、捕獲された少年(野生児)。捕獲当時11から12歳程度だったとさ
れる。
発見当時は完全に人間らしさを失っており、軍医だったジャン?イタール
(Jean Itard) によって正常な人間に戻すための教育が行われた。5年間にわ
たる教育の結果、感覚機能の回復などいくつかの改善はみられたものの、
完全に回復することはできなかった。言語については、アルファベットを順序
立てて並べることに成功したが、「牛乳」(レ、lait)という言葉をなんとか発声
した程度で会話は不可能のままだった。
これは神経言語学で言われる「言語獲得の臨界期」を過ぎてしまったためで
あると考えられている。
言語獲得のCritical Ageは4歳~5歳
中途失聴後の言語の崩壊
乳幼児の難聴の1-3-6ルール
現在では生後1カ月で聴覚スクリーニング検査終了
生後3カ月までに精密検査で難聴の診断確定
6カ月までに補聴器を使った療育訓練開始
が望ましいと考えられている。
早期発見された児は、遅れて発見された児に比べて、言語能
力に有意に高い。
Pediatrics. 1998 Nov;102(5):1161-71.
Language of early- and later-identified children with hearing loss.
Yoshinaga-Itano, Sedey AL, Coulter DK, Mehl AL.
生後6か月までに聴力を推定できる方法はABRなど聴性誘発反
応に限られる。
1 2 3 4 5 6歳
聴性行動反射
Behavioral Observation Audiometry: BOA
条件詮索反射
Conditioned Orientation Response Audiometry: COR
ピープショウテスト(スピーカ)
純音聴力検査
ピープショウテスト(受話器)
聴性誘発反応
生後6か月までに難聴の診断をつけて
補聴器のフィッティングを開始するには
乳幼児の聴力検査
聴性誘発反応 Auditory Evoked Potential
他覚的聴力検査
蝸電図 Electrocochleography: ECochG
外耳道深部ないしは中耳腔に電極を置いて、内耳と蝸牛神経由来の電気信号を記録
頭頂部反応 Vertex Response
頭頂部に電極を置いて、脳由来の電気信号を記録
聴性脳幹反応 Auditory Brainstem Response: ABR
周波数追随反応 Frequency Following Response: FFR
中間潜時反応 Middle Latency Response: MLR
頭頂部緩反応 Slow Vertex Response: SVR
等々
聴性定常反応 Auditory Steady-State Response: ASSR
蝸電図
AP: Compound Action Potential は蝸牛神経を構成する数多くの神経線維各々
の活動電位(single unit AP)の重複電位である。
SP: Summating Potential は刺激音の持続に一致して基線の陽?陰性側への変
位として記録される電位である。SPは蝸牛有毛細胞の受容器電位である。
-SP
AP 0.2μV
1ms
蝸電図:外耳道誘導
-SP/AP比0.41以上を異常増大と判定
吉江信夫 1984
外耳道の鼓膜輪付近に関電極と
して銀ボール電極を留置。
同側の乳様突起部に不関電極を、
前額正中部に接地電極を置き、音
刺激には95 dB nHLのクリック音を
使用した。
1000回加算波形
聴覚伝導路の模式図
蝸牛神経核
下丘
内側膝状体
聴覚皮質
橋
中脳
間脳
大脳皮質
外側毛帯
外側上オ
リーブ核
内側上オ
リーブ核
単純な音への反応であるABRであ
れば新生児からも記録することが
でき、髄鞘化が進行すると潜時は
短縮する
ABRの各ピークの起源
Ⅰ波:聴神経遠位端
Ⅱ波:蝸牛神経核
Ⅲ波:上オリーブ核
Ⅳ波:外側毛体核
Ⅴ波:下丘
8
聴性脳幹反応ガイドブック(舩坂宗太郎)
波形のピークは多くの神経細胞が同時に発火していることを反映する。
音刺激に応答する多数の活動電位およびシナプス後電位(細胞外電位 Near Field Potential)
として観測できる)が重畳したものが頭皮上で遠隔電場電位(Far Field Potential)として記録され
る。
シナプス後電位と活動電位
活動電位
9
細胞外電極による電位記録の
空間的変化
(Gold 2006)
波形のピークは多くの神経細胞が同時に発火していることを反映する。
音刺激に応答する多数の活動電位およびシナプス後電位(細胞外電位 Near Field Potential)
として観測できる)が重畳したものが頭皮上で遠隔電場電位(Far Field Potential)として記録され
る。
シナプス後電位と活動電位
活動電位
10
Far Field Potential
10μV
Near Field Potential
Ⅱ波 蝸牛神経核
500μV Near Field Potential
Ⅲ波 上オリーブ核
500μV Near Field Potential
Ⅳ波 外側毛帯
500μV
波形のピークは多くの神経細胞が同時に発火していることを反映する
音刺激に応答する多数の活動電位およびシナプス後電位が重畳したものが頭皮上で遠隔
電場電位(電極を少し動かしても得られる波形に本質的な差がない)として記録される
11
持続音 短音
波形の
加算平均
波形の
加算平均
時間的加算の効果 空間的加算により強い電位を形成する
ニューロンの配列
ネコ内側上オリーブ核
(Smith 1995)
12
おおよその潜時 反応の起源 発達
聴性脳幹反応(ABR) 1 – 12 ms 脳幹の聴覚路 在胎24週で基本的な波
形は既にみられる
聴性中間反応(MLR) 12 – 70 ms 脳幹-聴覚皮質 Po-Naは33週頃から
Paは2歳頃から
頭頂部緩反応(SVR) 50 – 300 ms 聴覚皮質 N1は6-9歳
主な聴性誘発反応
(市川ら 1983)
P0
Na
遠隔電場電位として
頭皮から計測した場
合、
大脳皮質からの電位
はμVのオーダーで
あるが、脳幹の電位
は1μVを超えること
はない。
13
ABRの導出
導出電極=関電極 →頭頂中心部(Cz)
基準電極=不関電極(Referenceの訳語):脳波を拾いにくい場所が選ばれる
→刺激側と同側の耳垂(Ai: A ipsilateral)あるいは乳様突起
接地電極 →鼻根部あるいは前額部(Fz)
Ten-twenty electrode systemによる命名
Ai – Cz 誘導
ABRの誘導
Neuropackでは
Electrode(-) につないだ電極 - Electrode(+) につないだ電極
を計算し、負が上にくるように表示している。
AiをElectrode(-) につなぎ、CzをElectrode(+) につなぐことにより
Ai – Cz 誘導で
負 – 正 = 負で
負になる電位Ⅰ波からⅤ波が上向きになる。
Ai側が負になる反応が上向き
基準電極(不関電極)Ai―導出電極(関電極)Czの極性で計算す
るのは脳波としては異例だが、ABRではAi側が負になる反応が
主なので、これを上向きに見やすくするのが目的
ABRのⅠ波~Ⅴ波では
Aiは負の電位の影響を受けやすい
と覚えてよいだろう。
(市川ら 1983)
Cz側が正の反応が上になるようにまとめて表示すると
Cz側が負の反応が上になるようにまとめて表示したMLR
P0
Na
MLR, SVRの誘導
Neuropackでは
Electrode(-) につないだ電極 - Electrode(+) につないだ電極
を計算し、負が上にくるように表示している。
CzをElectrode(-) につなぎ、AiをElectrode(+) につなぐことにより
Cz – Ai 誘導で
負 – 正 = 負で
負になる電位No, Na, Nbが上向きになるようにしている。
Cz側が負になる反応が上向き=Ai側が正になる反応が下向き
導出電極(関電極)Cz―基準電極(不関電極)Aiの極性で計算するの
は脳波として普通。
Cz – Ai 誘導
(市川ら 1983)
MLR, SVRの誘導
Neuropackでは
Electrode(-) につないだ電極 - Electrode(+) につないだ電極
を計算し、負が上にくるように表示している。
CzをElectrode(-) につなぎ、AiをElectrode(+) につなぐことにより
Cz – Ai 誘導で
負 – 正 = 負で
負になる電位No, Na, Nbが上向きになるようにしている。
Cz側が負になる反応が上向き=Ai側が正になる反応が下向き
導出電極(関電極)Cz―基準電極(不関電極)Aiの極性で計算する
のは脳波として普通。
ABRの誘導
Neuropackでは
Electrode(-) につないだ電極 - Electrode(+) につないだ電極
を計算し、負が上にくるように表示している。
AiをElectrode(-) につなぎ、CzをElectrode(+) につなぐことにより
Ai – Cz 誘導で
負 – 正 = 負で
負になる電位Ⅰ波からⅤ波が上向きになる。
Ai側が負になる反応が上向き=Cz側が正になる反応が上向き
基準電極(不関電極)Ai―導出電極(関電極)Czの極性で計算す
るのは脳波としては異例だが、ABRではAi側が負になる反応が
主なので、これを上向きに見やすくするのが目的
Ai – Cz 誘導
Cz – Ai 誘導
Cz側が正の反応が上になるようにまとめて表示すると
P0
Na
ABRのような遠隔電場電位はCz positiveを上向きに
大脳皮質由来のEEGのような近接電場電位はCz negativeを
上向きに
表示するという習慣が一般的
聴性誘発反応の刺激音
クリック
Click durationが2s-0.3sでは閾値は変
わらなかった。
Click durationが0.3s-0.1sでは閾値が
2.5dB大きくなった。
RarefactionとCondensationでは閾値に
差がなかった。
(Stapells 1982 JASA)
刺激間隔 (ISI)?頻度
クリックを使って刺激頻度を5Hzから
80Hzまで増加させていくと、頻度が10
倍になると閾値が4.5dB小さくなった。
(Stapells 1982 JASA)
トーンバースト
Rise/Fall time
Plateau
Duration
周波数
トーンピップ
クリック音によるABR閾値は、会話音域
の聴力レベルを反映するものではない。
Duration
Plateau
Rise Fall
Decay
音圧の較正、ヘッドホンについて
ABR測定に用いるヘッドホンも、オージオメータの場合
と同様に較正が必要で、刺激装置+ヘッドホンの組み
合わせで販売しているメーカーで較正している。
人工耳
イヤホンを校正するための装置。音圧を測定するため
の校正されたマイクロホンと,ある周波数帯域内にお
いて全音響インピーダンスを正常な人間の耳に類似さ
せた音響カプラとからなる。
計測例:A社製ヘッドホンとB社製ヘッドホンの周波数
特性を比較すると厳密には一致しないことが分かる。
→自施設における正常値を決めておく。
90
95
100
105
110
115
120
125
130
135
100 1000 10000
吉江信夫 1984
dBnHL
ABRの潜時に影響する因子
被験者
聴力像
蝸牛?中枢聴覚路の障害
性差、頭の大きさ、体温、年齢
刺激音
音圧、Rise/Fall time
周波数、刺激頻度、マスキング
薬剤
麻酔薬
動物実験ではイソフルランで潜時延長の
報告があるが、脳外科の術中モニタリング
ABRでは吸入麻酔薬セボフルランも静脈麻
酔薬プロポフォールも維持投与量では影
響しないという報告。
中枢神経系薬剤(抗てんかん薬フェニトイ
ンやカルバマゼピン)
記録系
フィルタ
→自施設における正常値を決めておく。
(市川ら 1983)
MLR, SVRの誘導
Neuropackでは
Electrode(-) につないだ電極 - Electrode(+) につないだ電極
を計算し、負が上にくるように表示している。
CzをElectrode(-) につなぎ、AiをElectrode(+) につなぐことにより
Cz – Ai 誘導で
負 – 正 = 負で
負になる電位No, Na, Nbが上向きになるようにしている。
Cz側が負になる反応が上向き=Ai側が正になる反応が下向き
導出電極(関電極)Cz―基準電極(不関電極)Aiの極性で計算する
のは脳波として普通。
ABRの誘導
Neuropackでは
Electrode(-) につないだ電極 - Electrode(+) につないだ電極
を計算し、負が上にくるように表示している。
AiをElectrode(-) につなぎ、CzをElectrode(+) につなぐことにより
Ai – Cz 誘導で
負 – 正 = 負で
負になる電位Ⅰ波からⅤ波が上向きになる。
Ai側が負になる反応が上向き=Cz側が正になる反応が上向き
基準電極(不関電極)Ai―導出電極(関電極)Czの極性で計算す
るのは脳波としては異例だが、ABRではAi側が負になる反応が
主なので、これを上向きに見やすくするのが目的
Ai – Cz 誘導
Cz – Ai 誘導
Cz側が正の反応が上になるようにまとめて表示すると
P0
Na
ABRのフィルター
100Hz - 3000Hz
10ms – 0.33ms
MLRのフィルター
20Hz - 1000Hz
50ms – 1ms
単純な音への反応であるABRであれば新生児からも記録することができ、髄鞘化が進行すると潜時は
短縮する
Ⅰ波は新生児期から既に成人と同じ値を示す。Ⅴ波の潜時は2-3歳までに成人と同じになる
先天性難聴で1歳以降に人工内耳を挿入した子供では、その後Electrically evoked ABRのⅤ波の潜時
は健聴児の0-2歳と同様の短縮過程を示した(Thai-Van 2007) →聴覚路の成熟が”Frozen”
未熟児のABR波形の継時的変化
(Krumholz 1985)
30週
32週
34週
36週
38週
40週
0.1μV
1ms
Ⅰ Ⅲ Ⅴ
出生後のピーク潜時の継時的変化
(Zimmerman 1987)
11.1クリック
/s
22
単純な音への反応であるABRであれば新生児からも記録することができ、髄鞘化が進行すると潜時は
短縮する
Ⅰ波は新生児期から既に成人と同じ値を示す。Ⅴ波の潜時は2-3歳までに成人と同じになる。
市川 聴覚検査の実際
音圧を小さくするとABRのⅠ波以降の成分も遅れる
De Boer 2003 JASAのモデル
蝸牛基底板の進行波
頂回転
低周波
基底回転
高周波
低周波成分ほど遅れる
蝸牛基底板の進行波
頂回転
低周波
基底回転
高周波
4kHzのトーンバーストの場合
ちょうど4kHzの部位だけでなく前後の部位も振動する
蝸牛基底板の進行波
時間
1kHzで持続時間4msのトーンバーストの場合
音圧が小さい場合は1kHz担当の付
近のみ振動し神経も発火
音圧を大きくすると、特に基底回
転側(高周波担当)の部分も振動
し神経も発火
早く反応する成分が加わる
蝸牛基底板の進行波
時間
臨床的には、CE-Chirp?音により、より大きな振幅波形が得られ、
より容易に閾値の特定が可能となった。
より大きいABRの振幅(通常従来の2倍)によって低入力に対す
る閾値をより迅速で簡単に検出
ASSR測定でも迅速かつ信頼性の高い閾値付近の検出
新生児聴覚スクリーニングにおける迅速な自動ABR検出
Clickは広い範囲の周波数成分を
含む。
音圧を大きくすると高周波成分に
反応する基底回転側がより動員
される。
しかし低周波成分に反応した神経
発火ほど遅れるので重なりにくい。
Dau 2003 JASA
Chirpは低周波成分ほど早く始ま
るように合成されているので
重なりやすい。
反対側の耳にマスキングをかける。純音聴力検査と同様に、約50-55dBの減衰で検耳への刺激音が、反対側の耳に
伝わって、偽のABRを出すことがある(陰影反応:shadow response)
ABRの刺激音はクリックが普通であり、至適マスキング量の決定が難しいが、一般的には
検耳に90dBnHLのクリックを使うと、反対側に50dBnHL (90-40=50)のマスキング(スピーチノイズ)が入るプログラムが
よく使われている。
聴性誘発反応の臨床応用
ヘッドホンやイヤホンを正確に装着する。
電気抵抗を極力小さくおさえる。
反対側の耳にマスキングをかける。
他覚的聴力検査
(ABRとASSRでは睡眠の影響が異なるので注意)
聴性誘発反応による他覚的聴力検査
新生児聴覚スクリーニング、乳幼児の聴力検査
詐聴?機能性難聴の診断
伝音難聴と感音難聴の鑑別
補充現象、後迷路性難聴の診断
自動ABR
聴性誘発反応の臨床応用
他覚的聴力検査
(ABRとASSRでは睡眠の影響が異なるので注意)
聴性誘発反応による他覚的聴力検査
新生児聴覚スクリーニング、乳幼児の聴力検査
自動ABR Automated ABR: AABR
誘導は前額部正中部に関電極, うなじに不関電極, 肩に
接地電極を置いて記録。
音刺激は専用のイヤーカプラーを通して, クリックを用い,
刺激音圧35dBnHL, 周波数帯域700~5000Hz, 極性は交
互, 刺激間隔は右37回/sec, 左34回/secで両側同時に刺
激。
その反応の左右は刺激間隔によって認知される。 解析
時間は25msecで, 反応は脳波の極性だけで記録される2
項式確率法による波形として入力され, すでに入力されて
いる正常波形と比較検定される。 相似性の比率である尤
度比が160以上になり, 正常波形と一致していると検定さ
れた段階で一側ごとにディスプレイ画面上にPASSと表示
され終了となる。 最大15000回刺激しても一致しない場合
REFERが表示される。 市販されているALGO? 3i?
(Natus Medical Incorporated)
聴性誘発反応の臨床応用
伝音難聴と感音難聴の鑑別
乳幼児の難聴の1-3-6ルール
現在では生後1カ月で聴覚スクリーニング検査終了
生後3カ月までに精密検査で難聴の診断確定
6カ月までに補聴器を使った療育訓練開始
が望ましいと考えられている。
早期発見された児は、遅れて発見された児に比べて、言語能力に有意に高い。
Pediatrics. 1998 Nov;102(5):1161-71.
Language of early- and later-identified children with hearing loss.
Yoshinaga-Itano, Sedey AL, Coulter DK, Mehl AL.
生後6か月までに聴力を推定できる方法はABRなど聴性誘発反応に限られる。
聴性定常反応
ASSR: Auditory Steady-State Response
反応波形の主たる成分の周波数と一致する頻度で刺激音を呈示すると、
各反応波形が干渉しあい、一定の振幅の正弦波状の波形が得られる。
クリックを用いたMLR
クリックは1秒間に10回提示していて、100msの範囲の反応を加算平均
している。
ⅤはABRのⅤ波を示す。
解析区間を100msにしたまま、クリックを1秒間に40回の頻度に増やす
と25msの区間の反応が重なってしまうが、もともとPa、Pbの波形の間隔
が25msであるために、40Hzのピークは残る。
(Galambos 1981)
→40 Hz ASSRの起源はMLR
→ 80 Hz ASSRの起源はABR
(市川ら 1983)P0
Na
25ms
12.5ms
記録電極
ABRと同様の脳波用電極
片耳刺激の場合はABRに準ずる
両耳同時刺激の場合は関電極を前額部(Fz)、不関電極を後頸部正中(C7)、接地電極は眉間あるいは鎖骨上が推奨
されている。
極性:波形の形状から極性はどちらでもよい。
記録用フィルタ:1-3000 Hz
市販されているAudera? (Interacoustics A/S) 市販されているNavigator? Pro MASTER II
(Natus Medical Incorporated)
音刺激
トーンピップや、正弦波的振幅変調音(SAM: Sinusoidally Amplitude-Modulated tone)
搬送周波数(CF: Carrier Frequency)を、「聴力検査の周波数」として用いる。
一般的に500, 1000, 2000, 4000 Hzが用いられる。
刺激頻度はSAMなどの場合、変調周波数(MF: Modulation Frequency)にあたる。反応波
形のうち、この周波数の成分を判定することになる。
覚醒時検査には40Hz
睡眠時検査には80-100Hz
が使われる。
MASTER: Multiple Auditory STEady-state Response
4つのCF(500, 1000, 2000, 4000 Hz)を各々異なるMFで変調した4種のSAMをミックスした
複合SAMを用いて、左右同時に各々4周波数の検査を行う。
正弦波的振幅変調音(SAM: Sinusoidally Amplitude-Modulated tone)
搬送周波数CF (Carrier Frequency) = 1000 Hz
変調周波数MF (Modulation Frequency) = 40 Hz
周波数のピークは
1000-40 (Hz), 1000 (Hz), 1000+40 (Hz)
AMを2重にかける(Navigator Proで採用)と立ち上がりが急になって反応が出やすくなるが、周波数特異性は悪くなる
AMの1周期は1000ms/40=25ms
正弦波的振幅変調音(SAM: Sinusoidally Amplitude-Modulated tone)
搬送周波数CF (Carrier Frequency) = 1000 Hz
変調周波数MF (Modulation Frequency) = 83 Hz
周波数のピークは
1000-83 (Hz), 1000 (Hz), 1000+83 (Hz)
MF=40Hzの場合より周波数特異性は悪い
AMを2重にかける(Navigator Proで採用)と立ち上がりが急になって反応が出やすくなるが、周波数特異性は悪くなる
AMの1周期は1000ms/83=12ms
Picton 2003
AuderaはMixed Modulationを採用
ここでは100%AM and 25%FM
Navigator ProはSAMを重ねている
AMを2重、3重にかけることによって、envelopeの立ち上がりが急峻になる。
→反応の振幅は大きくなり、潜時は短くなるが、周波数特異性は低くなる=スペクトルが
拡がる。
Navigator ProではN=2が使われている。
クリックも、反応の振幅は大きくなり、潜時は短くなるが、周波数特異性は低くなる=スペ
クトルが拡がる、ことを思い出す。
John 2002
刺激音の位相と反応
波形の位相がそろっ
ている(Phase Lock)
刺激音の位相と反応
波形の位相がそろっ
ていない(Random)
周波数别に閾値を推定
CSM: Component Synchrony Measure
反応の各周波成分が
MF: Modulation Frequencyに対して
位相固定しているかを表す
(Aoyagi 1993)
完全に位相固定だと1
位相がランダムになると0に近づく。
覚醒時の成人だと
MF=40Hzに対して
位相固定しやすい
睡眠時の成人だと
MF=40Hz, 80-100Hzに対して
位相固定しやすい
睡眠時の幼児(2-4歳)だと
MF=80-100Hzに対して
位相固定しやすい
覚醒時の成人だとMF=40Hzに対して位相
固定しやすい。
ノイズレベルより振幅が大きいのは40Hz
だけ。
睡眠時の成人だとMF=40Hz, 80-100Hz
に対して位相固定しやすい。
しかし睡眠時には40Hzの反応の振幅が
小さくなってノイズレベルに隠れてしまう。
80-100Hzでは睡眠時にはノイズレベル
が小さくなってASSRが見やすくなる。
睡眠時の幼児(2-4歳)だとMF=80-100Hz
に対して位相固定しやすい。
睡眠時には40Hzの反応の振幅が小さく
なってノイズレベルに隠れてしまう。
80-200Hzでは睡眠時にはノイズレベルが
小さくなってASSRが見やすくなる。
覚醒時の成人だとMF=40Hzに対して位相
固定しやすい。
ノイズレベルより振幅が大きいのは40Hz
だけ。
睡眠時の成人だとMF=40Hz, 80-100Hz
に対して位相固定しやすい。
しかし睡眠時には40Hzの反応の振幅が
小さくなってノイズレベルに隠れてしまう。
80-100Hzでは睡眠時にはノイズレベル
が小さくなってASSRが見やすくなる。
睡眠時の幼児(2-4歳)だとMF=80-100Hz
に対して位相固定しやすい。
睡眠時には40Hzの反応の振幅が小さく
なってノイズレベルに隠れてしまう。
80-200Hzでは睡眠時にはノイズレベルが
小さくなってASSRが見やすくなる。
MF=40HzのASSR
覚醒時の検査
睡眠時には振幅が減少する
MF=80Hz-100HzのASSR
睡眠時にも振幅が変わらない
睡眠時にはノイズが小さくなるので
反応が出やすくなる。
MF=80-100Hzの範囲でも、MFが小さ
い方が周波数特異性が高くなるの
で
幼児聴力検査では
80Hz ASSRが適している。
80Hz ASSRでの推定閾値●と純音聴力検査での閾値の比較(3-15歳)
ASSR閾値と聴力レベルの差は、軽度難聴ほど大きく、高度難聴では小さい。
(Aoyagi 1999)
1000Hz-4000HzではASSRの閾値と聴力レベルの差は5-10dB程度だが、500Hzではその差
が大きいという報告が多い。
(Vander Werff 2005)
乳幼児のASSRでの閾値(dBnHL)
CFが0.5, 1, 2 and 4 kHz
MFが95, 98, 101 and 105 Hz
ABRを用いた場合と同様に、ASSRで推定される聴覚閾値は生後に小さくなる。
(Savio 2001)
左右の耳で4-5周波数のASSR閾値を求めるためには長時間を要す。1-2時間かか
ることもある。
MASTER: Multiple Auditory STEady-state Response
4つのCF:搬送周波数(500, 1000, 2000, 4000 Hz)を
各々異なるMF:変調周波数で変調した4種のSAMをミックスした複合SAMを用いて、左
右同時に各々4周波数の検査を行う。
惭础厂罢贰搁の模式図(青柳2012)
惭础厂罢贰搁の模式図(青柳2012)
惭础厂罢贰搁の模式図(青柳2012)
複合SAM音
4種類のCFの近傍にスペクトル
惭础厂罢贰搁の模式図(青柳2012)
MASTERによる閾値推定の例
(Herdman 2003)
左右4種類の周波数あわせて8種類の
周波数における反応を測定できるが、お
音圧は変化させて測定しなければなら
ない。
CF=500Hz
MF=77Hz
CF=1000Hz
MF=85Hz
CF=2000Hz
MF=93Hz
CF=4000Hz
MF=101Hz
础厂厂搁のまとめ(青柳2012)

More Related Content

聴力測定技術講習会 ABRとASSR

Editor's Notes

  • #9: Ⅰ波:聴神経遠位端の活動電位 Ⅱ波:蝸牛神経核のシナプス後電位 Ⅲ波:上オリーブ核 Ⅳ波:外側毛体核 Ⅴ波:下丘
  • #10: 诱発电位は时间分解能に优れていること、また聴覚系自体が音刺激の时间情报の伝达に优れていることから、诱発电位は聴覚研究の広い范囲に応用される。
  • #11: 诱発电位は时间分解能に优れていること、また聴覚系自体が音刺激の时间情报の伝达に优れていることから、诱発电位は聴覚研究の広い范囲に応用される。
  • #12: Thirty rats (350-450 g) of the Sprague-Dawley strain (Hilltop Labs, Scottsdale, PA) were anesthetized with urethan (1.5?g/kg; Sigma) and placed in a stereotaxic apparatus. The body temperature of the rat was kept constant by a small animal thermoregulation device. The scalp was removed, and a small (1.2?×?1.2?mm) bone window was drilled above the hippocampus (centered at AP?=?3.5 and L?=?2.5?mm from bregma) for extra- and intracellular recordings. A pair of stimulating electrodes (100??m each, with 0.5-mm tip separation) were inserted into the left fimbria-fornix (AP?=?1.3, L?=?1.0,?V?=?3.95) to stimulate the commissural inputs. Extracellular and intracellular electrodes were mounted on two separate manipulators on opposite sides of a Kopf stereotaxic apparatus. The horizontal axes of the two manipulators were parallel. The manipulator of the extracellular electrode was mounted at a 10° angle from vertical to permit the subsequent placement of the intracellular electrode. The optimal distance between the electrodes at the brain surface to cause the tips to arrive at the same point at the level of the hippocampus (2?mm deep) was calculated to be ~370 ?m. The extracellular electrode was lowered into the cell body layer of CA1 by monitoring for the presence of unit activity and evoked field potentials. Once the intracellular and extracellular electrode tips were placed in the brain, the bone window was covered by a mixture of paraffin (50%) and paraffin oil (50%) to prevent drying of the brain and decrease pulsation. The intracellular micropipette was then advanced into the region near the extracellular electrode, and an intracellular recording from a CA1 pyramidal cell was obtained. If no extracellular and intracellular pairs were encountered after advancing the micropipette through the CA1 pyramidal layer and stratum radiatum, the intracellular electrode was withdrawn, and a new intracellular electrode track was made from the cortical surface.
  • #23: 27-29週からABR 在胎24週で基本的な波形は既にみられる。 未熟児では28-34週にかけて急速に潜時が短縮する。 下部脳幹由来のピーク潜時の短縮は小さく、上部脳幹由来のピーク潜時の短縮は大きい。 1歳以降の後天性難聴では難聴になる前にmaturationが既におきており、その後は5波の短縮は少なかった。
  • #37: Figure 8. Stimuli used to evoke auditory steady-state responses. This figure shows various types of stimuli that have been used to evoke the auditory steady-state responses. The stimulus waveforms are plotted in the time domain on the left, and the spectra of the stimuli (based on a much longer time sample) are shown on the right. These data were obtained by calculation; electric and acoustic waveforms would be basically similar, with some filtering effects during passage through the signal generators and transducers. The TONES represent brief tone-bursts of 1000 Hz with the commonly used 2-1-2 envelope, with rise and fall times of two cycles (2 ms) and a plateau of 1 cycle (1 ms). The spectrum shows a broad splatter of energy into frequencies far removed from the nominal frequency of the tone. The BEATS were obtained by adding together continuous tones of 958 and 1042 Hz. The sinusoidally amplitude-modulated (SAM) tone used a carrier of 1000 Hz and a modulation frequency of 84 Hz. There are spectral peaks at the carrier frequency and at one sideband above and below the carrier, separated from it by the modulation frequency. The SIN? tone used a modulation envelope based on the third power of the usual sinusoidal envelope (John et al, 2002a). The spectrum contains three sidebands on either side of the carrier. The FM tone is sinusoidally modulated with a depth of modulation of 25%. The MM tone has mixed modulation (100% AM and 25% FM), with both modulations occurring at 84 Hz. The bottom set of data represent independent amplitude and frequency modulation or IAFM, with 50% amplitude modulation at 84 Hz and 25% frequency modulation at 98 Hz. The spectrum shows a complex set of peak but all the energy remains concentrated around 1000 Hz. All the time waveforms are plotted so that they have the same peak amplitude. The spectra are plotted logarithmically over a range of 50 dB relative to the maximum peak in the spectrum.
  • #38: Figure 1. Exponential envelopes. The left column of the figure shows the exponential envelopes used in this study. The middle column shows the slope of the envelope and the third column shows the acceleration of the envelope. The maxima for both slope and acceleration occur at a later latency as the power of the exponential envelope increases (indicated by the arrowheads). The right column shows the spectrum of the envelope signal (left column), plotted using a linear scale, at twice the size of the time signal in the left column. The amplitude at 0 Hz, which indicates the offset of the signal, increases with increasing N. In addition the amplitudes at the harmonics of fm increase with N > 1.