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観光診断に資する「ビッグデータ」研究の内外動向
2019年10月19日 地理情報システム学会
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1.研究目的
目的は「オーバーツーリズムの状態を指標化する方法を検討すること。」
?ただし、オーバーツーリズム(以下OT)現象の把握は一筋縄ではいかない。
【UNWTO 2018による指摘の中から】
①入込数の多寡だけでなく、地域のキャパシティに左右される。
②市全域の問題でなく、局所的に発生している。
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1.研究目的 キャパシティに関して
TI > TC ?
TI
旅行者による影響
(∝入り込み数)
TC
観光地のキャパシティ
Peeters, P.M.et al. (2018)p25 fig.2
【観光地のキャパシティ】
キャパシティは、エコロジカ
ル、経済的、政治的、社会的、
心理的な側面によって拡縮す
るものとして捉えられる。
→心理測定尺度や大規模な社
会調査で把握する問題
OVERTOURISM
YES
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1.研究目的 局所性に関して
?最近の主なOT測定
1 McKinsey & Company(2017)COPING WITH SUCCESS 世界68都市
2 Roland Berger (2018) Protecting your city from overtourism 欧州52都市(左下)
3 Peeters, P.M.et al. (2018)欧州281領域(NUTS2 約80-300万人)(右下)
都市やそれより大きな集計単位で測定している!
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2.方法
①データ収集:TripAdvisorに投稿された国内観光地のスコア付日本語レビュー
観光スポット別にレビュー(テキスト)
とスコア(5段階)が投稿される。
日本語レビューの多くは、国内観光客
(近隣居住者含む)によるもの。
居住者と外国人観光客の中間的な意見
を想定。
データ収集
OT表現の
特定、抽出
OTレビュー
の集計
OT傾向の
指標化
近隣居住者
国内観光客
外国人
観光客
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2.方法
②OT表現の特定:OT的な状況を記述し、かつレビュースコアにネガティブな
効果を与えているものを「OT表現?語群」とする。
③OTレビュー: 「OT表現?語群」 が含まれるものをOTレビューとする。
OT表現?語群の一例
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2.方法
④OT化傾向の指標化:スポット別にOTレビューのスコアに対する引き下げ効
果を算出。
非OTレビュー
OTレビュー
非
OT
レ
ビ
ュ
ー
の
ス
コ
ア
平
均
OT
レ
ビ
ュ
ー
の
ス
コ
ア
平
均
非OTレビュー数 OTレビュー数
OT効果量
減
点
効
果
総 レ ビ ュ ー 数
【不満の数】
OTレビュー数
OTレビューの比率
【不満の程度】
減点効果
【不満体験の大きさ】
OT効果量
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3.結果
レビューとスコアの分布(国内の全レビュー対象)
OTレビューでは、スコア50(最高得点)の構成比は低い。
(スコアに対してネガティブに影響するOTレビューが上手く抽出されている)
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3.結果
レビューとスコアの分布(国内の全レビュー対象)
一般に総レビュー数が増加すれ
ば、OT効果量も増加する。
ただスポット間のバラツキも大
きい。
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3.結果
OT率と減点効果の分布(レビュー数上位20観光スポット)
またOT率が高いのに、減点効果はそれほどでもない場所。逆にOT率は低いが減点効果
はそれほどでない場所が存在する。
3.結果 ?京都市の観光地区別OT効果量
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3.結果 小地域指標としての検討 OTレビュー数 1kmメッシュ
OT率はバラツキが大きく、OTレビュー数
(上図)は広範囲に現れるため、そのま
までは小地域指標として使用しにくい。
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3.結果 小地域指標としての検討 減点効果 1kmメッシュ
減点効果は、比較的特定の観光地に強
く現れる。
減点効果とOTレビュー数を掛け合わせ
たOT効果量は妥当な指標だと思われる。
?スコア付きレビューデータを用いてOT現象の局所的な出現状況を可視化する
ことを試みた。
?新たな視点として、広く浅いOT(OT率大、減点効果小)、狭く深いOT( OT
率小、減点効果大)の別があるらしいことが示唆された。
?含意として少数の旅行者(居住者)にのみ認識されるOTについても注意を払
うべきだと思われる。
?今回の手法を一般化して、OTに限らず旅行者の観光体験に対してネガティブ
(ポジティブ)な効果をもたらす要因を抽出することが可能であるものと思わ
れる。
?今回、用いたデータからは、当然ながら居住者の生活満足度や外国人の訪日
体験の質に対してOTがもたらすネガティブな効果について把握できない。今後
の課題とする。
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4.まとめ

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