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山本ペロ 
愛と涙の 
はじめに 
やっと最近、入会して、1 年がたったわたくしたち親子(息子もうすぐ4 歳)…。この1 年を振 
り返ると、本当にいろんなことがありました。もしかしたら、この文を読んでいただいている、 
自主保育に興味がある方の参考になれば、と思い、正直に記します。 
STEP0 なぜ、入ろうと思ったか… 
自治体の方に発達の遅れを指摘されて、パニくったのと、家族が保育園を検討しはじめたのと、 
息子の「友達がほしい」思いが絶頂に達したのが、わりと 
一気にやってきた。保育園はピンと来ず「どういった環境 
が、一番息子の育ちにいいのだろうか」と考えて考えた結 
果「やっぱり『自然』だ」と思い当った。木や空や土。都 
市で一生を送るとしても、私たちの住んでいる世界の基盤 
は、やはり自然。人間の構築した都市より、自然に触れ合った経験があったほうが、「まっとう 
に」育つと感じていた。私は週5 日、昼間4 時間の仕事をしていて、他のお母さんのように見 
守り当番に入れないから、ムリかもしれない…と思いながらも、決まった曜日を休みにし、当 
番に入ることを前提に、なんとか頼み込んで、参加させてもらった。 
STEP1 自然保育ってこうなのね…ウフフ~期 
そうして、のぞんだぺんぺんぐさ第一回。息子がいきなり他の子をまね、木の股に溜まった水 
たまりにジャボン。「やっていいのかな~」とおそるおそるじゃぼじゃぼしはじめた。少し前に 
ぺんぺんぐさが主催した上映会の映画「さあ、のはらにいこう」 
を見て、すっかり「自然保育ってステキね!」って思っていた 
私。通常なら「まあまあ、やめてこっちやろうよ…」とか言う 
ところを、「そうよね~! これを見守るってことが、自然保 
育なのよね~! ウフフ~!」と、若干ひきつりながら息子を 
見ていた。息子が土で汚れることがかなりうれしい&怖い時期。 
教訓:頭で知ったことを、自分の生活に当てはめると、最初は若干勘違い。
STEP2 「他人の子」と仲良くなっちゃった! 期 
ぺんぺんぐさの子どもたちは、知らない大人がいると、なんだかんだと話しかけてくれて、私 
は息子のことも忘れて子どもたちと遊ぶこともあった。私も、たとえるならば「ホームステイ 
に来た日本語のできない小さい外国人とそのホストファミリー」みたいな生活を長らく送って 
いたので、子どもと会話できることがとってもうれしかった。楽しく活動を終えたあと、一人 
の子がやってきて「これあげる」。何かと思ったら、4 つ折りにした葉っぱと、BB 弾だった。 
この葉っぱとBB 弾は、いまだに瓶に入れて、仏壇に置いてある。仲間と認めてもらったようで、 
うれしかった。 
教訓:他人の親に預けられることに慣れているぺんぺんっ子は、大人にはすごく人懐っこい 
STEP3 息子、いじめに?! 期 
私は、着実に子どもたちに慣れてい(るように思え)たが、息子は、いまひとつだった。入会 
した頃は春。息子は、保育者のみえこさんにタンポポを摘んでもら 
ったり、自分で摘んだりして、花束のようになった草花を持ってい 
た。しかし、その花束は、3 人の子どもたちにはたき落とされ、「ダ 
メだ、お前はダメだ」の声とともに、3 本の足にメッタメタに踏ま 
れた。それこそ、タンポポがペースト状に道路になじむまで。しば 
らくの沈黙のあと、泣く息子。みえこさんがあとでそっと私に「子どもっていうのは、ちょっ 
と野生そのままなところがあるから、ああいうことは、よくあることなの、でも、こういうこ 
とを乗り越えて仲良くなっていくの」と言った。私は「こんな大人でもトラウマになりそうな 
辛いことを何回も乗り越えないと仲良くなれないのが人だなんて、そんなこと、あっていいん 
だろうか。そんな生き物の摂理があるのなら、人間とは、かなり悲しい生き物なんじゃないで 
しょうか、母さん…」と、思わず『北の国から』の純ばりにひどりごちていた… 
教訓:子どものケンカは正直びっくりするけど、そこでパニックになっちゃああかん 
STEP4 仲良すぎて辛いかも…? 期 
ノリのよいのがウリのわたくし、子どもたちと一緒に遊んでいると、ついついヒートアップし 
てしまうことが多かった。はじめてしばらくした当初は、私に子どもが4 人乗ったこともあっ 
て、さすがに4 人は「骨折する…」と思った。 
教訓:ノリがよくて気が弱いと、骨折する危険がある
STEP5 はじめての見守り当番 期 
ぺんぺんに参加すると、まずは親子で参加し、その後預け(親が保育時間おらず、他の親や保 
育者が保育をすること)がスタートする。息子は、そもそも友達を非常に欲していたので、わ 
りとすぐに預けには慣れた。そして、その次にやってくるのが、母親の見守り当番デビューだ。 
自分の子どもだけではなく、他人の子どもも、一緒に当番で見るのだ。 
子どもを産む前はシュタイナー教育に興味があり、講座を受けたりしていた。そして、子供の 
頃から親の叱責にも心の中で突っ込みを入れ、小学生の頃には、就園前の子の面倒を見たりし 
ていたので、すっかり「ある意味経験者」だと思っていた。しかし、実際、当番に入ると、ま 
ずは「子どもの安全を守る」が第一。そして「子どもと向き合う」が第二だと感じた。私はど 
っちも苦手だった。今までの経験も思考も、通用しなかった。 
小さい子どもが泣いて、「どうしたの」と聞いたり、触ろうとしたら「お母さんがいい」と泣き 
やまない。そんなこと言ったって、お母さんは当番じゃないから、お迎えの時間まで来ない。 
そんな時、私はほおっておいた。すると、さっ、と先輩ママが嫌がる子を抱っこしていった。「あ 
っ」と思った。 
わたしは「母性」にあこがれていた。なんでもこい、誰でも抱きしめる、みたいな人になりた 
かったが、どうも気難しいところがあった。「嫌がっても抱っこするんだ!」「保育って、見守 
りって、徹底的に問題と向き合いまくるってことなんだ!」と、なんだか、目ウロコだった。 
教訓:人間と人間が向き合うってことなのか、保育って! 
STEP6 どうもうまくいかない 期 
私は、とにかく子供たちと調子を合わせて遊ぶことがとにかく楽しかった。人生でこんなに楽 
しかったか?! ってくらい、最初は楽しかった。しかし、そのうちだんだんぺんぺんが楽しくな 
くなってきた。 
最初は「自然のあるところでのびのび、遊べればいい」と思っていた。ぺんぺんに通っている 
うちに、自分には「ああであるべきこうであるべき」という、微妙な「好き嫌い」が存在して 
いた。たくさんの違和感があったが、しかし今では、『保育』がなんだかわかっていなかった、 
ということもあると思う。 
どうすればいいのか? 問題を解決するには、自分の意識や生活スタイルを変えるしかないと 
は思っていた。それか、新しく自分の思うような自主保育を立ち上げるのか? …物理的に無
理かも…。 ついには、出ぺんぺん拒否症になったこともあった。 
教訓: 今では「思うようにならない状況を、自分で地道に行動する」しかないとは思っている。 
STEP7 腹を割って話す 期 
困りに困って占いに行った。「今のところは、とても環境がいいから、別のところにもしも行っ 
たら、あなたは絶対後悔する。周りの人に腹を割って話しなさい。そうすれば、運命の輪が動 
き出す…」 
…誰かに話すって?! 誰に…。いや、無理!! 
そしてついにある日。見守り当番に入っていた私は、見守りの振りかえりメモをみんなの前で 
「読みたくない」と強情を張った。帰りに息子と手をつないで歩きながら「ああ、もう絶対嫌!! 
もう、息子を保育園にぶちこんじゃおうか…」と思ったら、涙が止まらなくなった。道を歩き 
ながら大声で泣いた。息子は隣でびっくりしながらも優しく笑っていた。 
何人かのママが私の様子がおかしいと気づき、話を聞いてくれたり、電話をもらったりした。 
質問されると、ついつい正直に答えてしまうのが性分の私…。だんだん心がほどけていくのが 
わかった。 
それで、ぺんぺんママたちの考えていることがなんとなくわかってきた。今まで「ママ友」が 
怖かった。「ママ友」は、アニメ「ガンバの大冒険」でいう、「ノロイ(イタチ)」のようなもの 
だと思っていた。少しずつ怖くなくなっていった。 
教訓:「ママ友」が怖いけど、考えてみたら俺も他のママから見たら「ママ友」だった 
STEP8 息子も闘っていた 期 
その少し前、息子も闘っていた。息子は、どんどん暴力にうったえる子だった。うまくいかな 
いことがあると、誰彼かまわず、すぐひっかいた。息子について、保育者のミエコさんをはじ 
め、いろんな方に気にしてもらった。たぶん、幼稚園や保育園では「問題児」のレッテルを貼 
られそうなところを、なんとなく「成長過程」としてとらえてもらったところは、本当にあり 
がたいと思っている。 
教訓:子どもは長期的視点で見ることも大事、と教えてもらって、すごく納得した。「そのよう 
な発言や行動の元には、何があるのか」を考えることも。
STEP9 腹をくくる 期 
年を越し、2014 年。その頃には、新年度には会員増、そしてベテランママの卒会、そしてママ 
たちの半分が妊婦という状態で、見守りをできる人が少なくなっていることがわかっていた。 
そのうえ、私が入会時に本当にいろいろ教えてもらって、たよりにさせてもらっていたママの 
一人である、M さんが退会するとのこと…。今後、気配り屋のM さんがいないと、みんなやはり 
忙しいし、余裕がないし、いろいろ不都合なことが起きるのではないか…。そう思った時に、 
ちょっと心に引っかかったら、すぐメールするようになっていた。「あの人、今大丈夫かな…」 
と思ったらすぐ聞いた。集まりには、積極的に出かけるようにした。そして、仕事先に休日を 
増やしてもらえるようにお願いした。 
そうした「おせっかい」は、すぐ自分の容量がいっぱいになってしまって、できなくなってし 
まったが、結果的に、仲良く話せる人が増えた。「ああ、この人はこういう価値観で生活してい 
るのか~」とわかると、なんだかすごく楽に話せるようになった。 
すわ退会? と思われていたM さんは、その後、奇跡の復活を果たし、ぺんぺんでなおも大活 
躍している。 
教訓:「間違っても、自分がそのときやりたいと思ったことをやり続けよう」と腹をくくった時、 
なんかすごくよかった気がする。 
ところで:この文集を読むかもしれない、ぺんぺんぐさのような場所 
に参加したいと思っている方へ 
私は、仕事であまり活動に参加できなかったから、ぺんぺんぐさの活動歴としては、実際のも 
のよりも、もっともっと短いと思う。でも、ぺんぺんについてはずっと考えてきたから、ひと 
りの母親として、あらためてまとめると、普通すぎることかもしれないが、言えることを書い 
てみる。 
その1/子ども関係のことは、悩んでいるうちに、あっという間に時間が経つから、悩んでる 
ヒマはない!!! 
その2/違和感があったら、子どもがその集団で楽しそうに遊ぶ前に(~STEP3)、別の最善の 
道を考えたほうがいい!!! 
(…あっ?! その辺クリアーできなかったから、仕方なく居る、ということではないですよ?!) 
その3/常にうっすら、幼稚園のことは考えて置いたほうがいい!!!(2 年保育? 3 年保育?
どんな幼稚園だったらOK? それともいかない?!!) 
その4/親のニーズと、子どものニーズを両方心地よく満たしているのか? 振り返ってみる 
参加する前に「親のやりたかったことを子どもにさせようとしてないか? 本当に子どもにと 
っていいことなのか?」って振り返ることは、すごく大事だと思う。そもそも、こういう保育 
の方法って、今の時代には「ぜいたく」でもあると思う。 
STEP10 そして、きっとまだまだつづく… 
本当に「ぺんぺんをやめたい…」と思った時に、踏みとどまった出来事がある。保育園に入れ 
たい、と、ときどき漏らしていた夫が、ぺんぺんに息子を迎えに行き、1 時間ほど遊ぶのを見て 
いた。「すっごいいい感じだと思った。友達とすごく自然に遊んでいるし、周りの子も言葉が遅 
いのを気にしていない。本当は保育園に入れたいと思っていたけど、もうしばらくここでいい 
んじゃないか」と、私にうれしそうに話した時、すごくほっとした。「いつも私のやりたいこと 
を反対してきた夫が、これだけ乗り気なら、辛い今の状況も、乗り越えられるかもしれない」 
と思った。 
その他、そんな小さな偶然が積み重なって、どうにも続けざるを得ない状況が続き(笑)、今が 
ある。 
この1 年間、二語文もあまり言えなかった息子は、今ではたまに三語文もいい、友達の名前を 
言うようになってきました。本当に息子が「友達が欲しい」と思っていたタイミングで、ぺん 
ぺんと出会うことができてよかった。そして、友達になるまでの障害と果敢に向き合い続けた 
息子よ。ほんとにエライ(ひっかいたり、突き倒したりしたみんな、ごめん)。 
最後に、この変わった家族を受け止めてくれて、話を聞いてくれて、本当にぺんぺんのみなさ 
んありがとう。ぺんぺんの子たちも、いつも遊んでくれてありがとう。「寒い」「濡れた」とい 
って泣いていても、時間が経つと、いつか自分で遊びに向かって行くところ。転んだ子に声を 
かけようとしたら、違う子が助けに来たり。本当に、人間の生きる力、素晴らしさを、いつも 
感じています。

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  • 1. 山本ペロ 愛と涙の はじめに やっと最近、入会して、1 年がたったわたくしたち親子(息子もうすぐ4 歳)…。この1 年を振 り返ると、本当にいろんなことがありました。もしかしたら、この文を読んでいただいている、 自主保育に興味がある方の参考になれば、と思い、正直に記します。 STEP0 なぜ、入ろうと思ったか… 自治体の方に発達の遅れを指摘されて、パニくったのと、家族が保育園を検討しはじめたのと、 息子の「友達がほしい」思いが絶頂に達したのが、わりと 一気にやってきた。保育園はピンと来ず「どういった環境 が、一番息子の育ちにいいのだろうか」と考えて考えた結 果「やっぱり『自然』だ」と思い当った。木や空や土。都 市で一生を送るとしても、私たちの住んでいる世界の基盤 は、やはり自然。人間の構築した都市より、自然に触れ合った経験があったほうが、「まっとう に」育つと感じていた。私は週5 日、昼間4 時間の仕事をしていて、他のお母さんのように見 守り当番に入れないから、ムリかもしれない…と思いながらも、決まった曜日を休みにし、当 番に入ることを前提に、なんとか頼み込んで、参加させてもらった。 STEP1 自然保育ってこうなのね…ウフフ~期 そうして、のぞんだぺんぺんぐさ第一回。息子がいきなり他の子をまね、木の股に溜まった水 たまりにジャボン。「やっていいのかな~」とおそるおそるじゃぼじゃぼしはじめた。少し前に ぺんぺんぐさが主催した上映会の映画「さあ、のはらにいこう」 を見て、すっかり「自然保育ってステキね!」って思っていた 私。通常なら「まあまあ、やめてこっちやろうよ…」とか言う ところを、「そうよね~! これを見守るってことが、自然保 育なのよね~! ウフフ~!」と、若干ひきつりながら息子を 見ていた。息子が土で汚れることがかなりうれしい&怖い時期。 教訓:頭で知ったことを、自分の生活に当てはめると、最初は若干勘違い。
  • 2. STEP2 「他人の子」と仲良くなっちゃった! 期 ぺんぺんぐさの子どもたちは、知らない大人がいると、なんだかんだと話しかけてくれて、私 は息子のことも忘れて子どもたちと遊ぶこともあった。私も、たとえるならば「ホームステイ に来た日本語のできない小さい外国人とそのホストファミリー」みたいな生活を長らく送って いたので、子どもと会話できることがとってもうれしかった。楽しく活動を終えたあと、一人 の子がやってきて「これあげる」。何かと思ったら、4 つ折りにした葉っぱと、BB 弾だった。 この葉っぱとBB 弾は、いまだに瓶に入れて、仏壇に置いてある。仲間と認めてもらったようで、 うれしかった。 教訓:他人の親に預けられることに慣れているぺんぺんっ子は、大人にはすごく人懐っこい STEP3 息子、いじめに?! 期 私は、着実に子どもたちに慣れてい(るように思え)たが、息子は、いまひとつだった。入会 した頃は春。息子は、保育者のみえこさんにタンポポを摘んでもら ったり、自分で摘んだりして、花束のようになった草花を持ってい た。しかし、その花束は、3 人の子どもたちにはたき落とされ、「ダ メだ、お前はダメだ」の声とともに、3 本の足にメッタメタに踏ま れた。それこそ、タンポポがペースト状に道路になじむまで。しば らくの沈黙のあと、泣く息子。みえこさんがあとでそっと私に「子どもっていうのは、ちょっ と野生そのままなところがあるから、ああいうことは、よくあることなの、でも、こういうこ とを乗り越えて仲良くなっていくの」と言った。私は「こんな大人でもトラウマになりそうな 辛いことを何回も乗り越えないと仲良くなれないのが人だなんて、そんなこと、あっていいん だろうか。そんな生き物の摂理があるのなら、人間とは、かなり悲しい生き物なんじゃないで しょうか、母さん…」と、思わず『北の国から』の純ばりにひどりごちていた… 教訓:子どものケンカは正直びっくりするけど、そこでパニックになっちゃああかん STEP4 仲良すぎて辛いかも…? 期 ノリのよいのがウリのわたくし、子どもたちと一緒に遊んでいると、ついついヒートアップし てしまうことが多かった。はじめてしばらくした当初は、私に子どもが4 人乗ったこともあっ て、さすがに4 人は「骨折する…」と思った。 教訓:ノリがよくて気が弱いと、骨折する危険がある
  • 3. STEP5 はじめての見守り当番 期 ぺんぺんに参加すると、まずは親子で参加し、その後預け(親が保育時間おらず、他の親や保 育者が保育をすること)がスタートする。息子は、そもそも友達を非常に欲していたので、わ りとすぐに預けには慣れた。そして、その次にやってくるのが、母親の見守り当番デビューだ。 自分の子どもだけではなく、他人の子どもも、一緒に当番で見るのだ。 子どもを産む前はシュタイナー教育に興味があり、講座を受けたりしていた。そして、子供の 頃から親の叱責にも心の中で突っ込みを入れ、小学生の頃には、就園前の子の面倒を見たりし ていたので、すっかり「ある意味経験者」だと思っていた。しかし、実際、当番に入ると、ま ずは「子どもの安全を守る」が第一。そして「子どもと向き合う」が第二だと感じた。私はど っちも苦手だった。今までの経験も思考も、通用しなかった。 小さい子どもが泣いて、「どうしたの」と聞いたり、触ろうとしたら「お母さんがいい」と泣き やまない。そんなこと言ったって、お母さんは当番じゃないから、お迎えの時間まで来ない。 そんな時、私はほおっておいた。すると、さっ、と先輩ママが嫌がる子を抱っこしていった。「あ っ」と思った。 わたしは「母性」にあこがれていた。なんでもこい、誰でも抱きしめる、みたいな人になりた かったが、どうも気難しいところがあった。「嫌がっても抱っこするんだ!」「保育って、見守 りって、徹底的に問題と向き合いまくるってことなんだ!」と、なんだか、目ウロコだった。 教訓:人間と人間が向き合うってことなのか、保育って! STEP6 どうもうまくいかない 期 私は、とにかく子供たちと調子を合わせて遊ぶことがとにかく楽しかった。人生でこんなに楽 しかったか?! ってくらい、最初は楽しかった。しかし、そのうちだんだんぺんぺんが楽しくな くなってきた。 最初は「自然のあるところでのびのび、遊べればいい」と思っていた。ぺんぺんに通っている うちに、自分には「ああであるべきこうであるべき」という、微妙な「好き嫌い」が存在して いた。たくさんの違和感があったが、しかし今では、『保育』がなんだかわかっていなかった、 ということもあると思う。 どうすればいいのか? 問題を解決するには、自分の意識や生活スタイルを変えるしかないと は思っていた。それか、新しく自分の思うような自主保育を立ち上げるのか? …物理的に無
  • 4. 理かも…。 ついには、出ぺんぺん拒否症になったこともあった。 教訓: 今では「思うようにならない状況を、自分で地道に行動する」しかないとは思っている。 STEP7 腹を割って話す 期 困りに困って占いに行った。「今のところは、とても環境がいいから、別のところにもしも行っ たら、あなたは絶対後悔する。周りの人に腹を割って話しなさい。そうすれば、運命の輪が動 き出す…」 …誰かに話すって?! 誰に…。いや、無理!! そしてついにある日。見守り当番に入っていた私は、見守りの振りかえりメモをみんなの前で 「読みたくない」と強情を張った。帰りに息子と手をつないで歩きながら「ああ、もう絶対嫌!! もう、息子を保育園にぶちこんじゃおうか…」と思ったら、涙が止まらなくなった。道を歩き ながら大声で泣いた。息子は隣でびっくりしながらも優しく笑っていた。 何人かのママが私の様子がおかしいと気づき、話を聞いてくれたり、電話をもらったりした。 質問されると、ついつい正直に答えてしまうのが性分の私…。だんだん心がほどけていくのが わかった。 それで、ぺんぺんママたちの考えていることがなんとなくわかってきた。今まで「ママ友」が 怖かった。「ママ友」は、アニメ「ガンバの大冒険」でいう、「ノロイ(イタチ)」のようなもの だと思っていた。少しずつ怖くなくなっていった。 教訓:「ママ友」が怖いけど、考えてみたら俺も他のママから見たら「ママ友」だった STEP8 息子も闘っていた 期 その少し前、息子も闘っていた。息子は、どんどん暴力にうったえる子だった。うまくいかな いことがあると、誰彼かまわず、すぐひっかいた。息子について、保育者のミエコさんをはじ め、いろんな方に気にしてもらった。たぶん、幼稚園や保育園では「問題児」のレッテルを貼 られそうなところを、なんとなく「成長過程」としてとらえてもらったところは、本当にあり がたいと思っている。 教訓:子どもは長期的視点で見ることも大事、と教えてもらって、すごく納得した。「そのよう な発言や行動の元には、何があるのか」を考えることも。
  • 5. STEP9 腹をくくる 期 年を越し、2014 年。その頃には、新年度には会員増、そしてベテランママの卒会、そしてママ たちの半分が妊婦という状態で、見守りをできる人が少なくなっていることがわかっていた。 そのうえ、私が入会時に本当にいろいろ教えてもらって、たよりにさせてもらっていたママの 一人である、M さんが退会するとのこと…。今後、気配り屋のM さんがいないと、みんなやはり 忙しいし、余裕がないし、いろいろ不都合なことが起きるのではないか…。そう思った時に、 ちょっと心に引っかかったら、すぐメールするようになっていた。「あの人、今大丈夫かな…」 と思ったらすぐ聞いた。集まりには、積極的に出かけるようにした。そして、仕事先に休日を 増やしてもらえるようにお願いした。 そうした「おせっかい」は、すぐ自分の容量がいっぱいになってしまって、できなくなってし まったが、結果的に、仲良く話せる人が増えた。「ああ、この人はこういう価値観で生活してい るのか~」とわかると、なんだかすごく楽に話せるようになった。 すわ退会? と思われていたM さんは、その後、奇跡の復活を果たし、ぺんぺんでなおも大活 躍している。 教訓:「間違っても、自分がそのときやりたいと思ったことをやり続けよう」と腹をくくった時、 なんかすごくよかった気がする。 ところで:この文集を読むかもしれない、ぺんぺんぐさのような場所 に参加したいと思っている方へ 私は、仕事であまり活動に参加できなかったから、ぺんぺんぐさの活動歴としては、実際のも のよりも、もっともっと短いと思う。でも、ぺんぺんについてはずっと考えてきたから、ひと りの母親として、あらためてまとめると、普通すぎることかもしれないが、言えることを書い てみる。 その1/子ども関係のことは、悩んでいるうちに、あっという間に時間が経つから、悩んでる ヒマはない!!! その2/違和感があったら、子どもがその集団で楽しそうに遊ぶ前に(~STEP3)、別の最善の 道を考えたほうがいい!!! (…あっ?! その辺クリアーできなかったから、仕方なく居る、ということではないですよ?!) その3/常にうっすら、幼稚園のことは考えて置いたほうがいい!!!(2 年保育? 3 年保育?
  • 6. どんな幼稚園だったらOK? それともいかない?!!) その4/親のニーズと、子どものニーズを両方心地よく満たしているのか? 振り返ってみる 参加する前に「親のやりたかったことを子どもにさせようとしてないか? 本当に子どもにと っていいことなのか?」って振り返ることは、すごく大事だと思う。そもそも、こういう保育 の方法って、今の時代には「ぜいたく」でもあると思う。 STEP10 そして、きっとまだまだつづく… 本当に「ぺんぺんをやめたい…」と思った時に、踏みとどまった出来事がある。保育園に入れ たい、と、ときどき漏らしていた夫が、ぺんぺんに息子を迎えに行き、1 時間ほど遊ぶのを見て いた。「すっごいいい感じだと思った。友達とすごく自然に遊んでいるし、周りの子も言葉が遅 いのを気にしていない。本当は保育園に入れたいと思っていたけど、もうしばらくここでいい んじゃないか」と、私にうれしそうに話した時、すごくほっとした。「いつも私のやりたいこと を反対してきた夫が、これだけ乗り気なら、辛い今の状況も、乗り越えられるかもしれない」 と思った。 その他、そんな小さな偶然が積み重なって、どうにも続けざるを得ない状況が続き(笑)、今が ある。 この1 年間、二語文もあまり言えなかった息子は、今ではたまに三語文もいい、友達の名前を 言うようになってきました。本当に息子が「友達が欲しい」と思っていたタイミングで、ぺん ぺんと出会うことができてよかった。そして、友達になるまでの障害と果敢に向き合い続けた 息子よ。ほんとにエライ(ひっかいたり、突き倒したりしたみんな、ごめん)。 最後に、この変わった家族を受け止めてくれて、話を聞いてくれて、本当にぺんぺんのみなさ んありがとう。ぺんぺんの子たちも、いつも遊んでくれてありがとう。「寒い」「濡れた」とい って泣いていても、時間が経つと、いつか自分で遊びに向かって行くところ。転んだ子に声を かけようとしたら、違う子が助けに来たり。本当に、人間の生きる力、素晴らしさを、いつも 感じています。