狠狠撸

狠狠撸Share a Scribd company logo
E N o G
颜面神経麻痺の検査と贰狈辞骋の基础
JR東京総合病院 耳鼻咽喉科 鴨頭 輝
2022-07-26
E l e c t r o n e u r o g r a p h y
目次
顔面神経麻痺について
顔面神経麻痺の生理学的検査
01
02
顔面神経麻痺について
01
01 顔面神経麻痺
? 原因は単純ヘルペルウイルス?帯状疱疹ヘルペルウイルスの再活性化
によると言われている
? ステロイド治療により自然経過に比べてより良い治癒率
? 抗ウイルス薬の併用はより良い予後をもたらす可能性がある
? 予後を診断する上では検査が重要
Bell麻痺 (特発性の末梢性顔面神経麻痺)
? 顔面神経麻痺のうち7割前後
? 自然治癒7割以上
Ramsay Hunt症候群
(3徴:片側末梢性顔面神経麻痺 / 耳介帯状疱疹 / 難聴?めまい)
? 顔面神経麻痺のうち2割前後
? 自然治癒4割程度
01 顔面神経麻痺の障害部位や予後の推定のための検査
麻痺スコア
? 柳原法(40点法)
? House-Brackmann法
? Sunnybrook法
電気生理学的検査
? Electroneurography (ENoG)
? 神経興奮検査 (Nerve excitability test: NET)
? 最大興奮性検査 (Maximal stimulation test: MST)
? 瞬目反射 (Blink Reflex)
電気味覚検査
アブミ骨筋反射 (Stapedial reflex: SR)
01 顔面神経の走行
『解剖学講義』より
茎乳突孔を出て側頭枝?頬骨枝?頬筋枝?下顎縁枝?頸枝に分岐するが、分岐様式には個人差がある
01 表情筋 (顔面筋)
『ネッター解剖学図譜』より
電気生理学的検査による顔面神経検査では眼輪筋や口輪筋を対象とすることが多い
01 麻痺スコア - 柳原法 -
耳喉頭頸 82(5) :137-143, 2010
? 1976年柳原 et al.
? 10項目を評価し、40点満点中20点以上を伝導ブロック(軽症)、18~12点を部分脱神経(中等
症)、10点以下を完全脱神経(重症) (点数の重症度分類にはいくつかある)
? 自動判定のための携帯アプリの開発に関する報告がある
01 麻痺スコア - House-Brackmann法 -
? 1983年House et al.
? 病的共同運動,拘縮や痙攣などの麻痺後遺症も考慮した 6 段階のgross system
耳喉頭頸 82(5) :137-143, 2010
01 麻痺スコア - Sunnybrook法 -
? 1996年Ross et al.
? 随意運動の回復、安静時非対称性、病的共同運動(随意運動時の顔面非対称性)の 3 つの要素から構成されており、
随意運動の回復点から安静時非対称点と病的共同運動点を引き算した複合点を求める
耳喉頭頸 82(5) :137-143, 2010
01 神経障害部位と評価部位
標準的神経治療:Bell麻痺 (2019)
? 茎乳突孔から末梢において神経変性が完成するまでには1~2週間かかる
? 方法によっては、発症1~2週間以内での評価は不適切であることに注意する
01 神経障害の重傷度
Stewart CE, J Biol Eng (2020)
伝導ブロック
Waller変性
Bell麻痺、Huntでは
起きない
Sunderland分類
(Grade)
Seddon分類
Neurapraxia 神経無動作
Axonotmesis 軸索断裂
Neurotmesis 神経断裂
? Grade IIでは神経は完全に再生するが
Grade IIIでは過誤支配やエファプス形成が
起こり、病的共同運動、拘縮などの後遺症
を生じる。
? Grade IIとGrade IIIの鑑別が重要であるが、
正確に予測する方法はない。
01 顔面神経麻痺の障害部位
? 解剖学的な経路に基づき、
障害部位を推測できる
? 中枢障害では味覚?SR正常
耳展 42:5;531~534, 1999
01 顔面神経麻痺の障害部位
? 顔面の上半分は両側支配、
顔面の下半分は片側支配
? 額のしわ寄せが中枢性の障害の判断
に重要
イラスト解剖学 第5版
顔面神経麻痺の生理学的検査
02
ENoG
NET
瞬目反射
表面筋電図
02
誘発電位記録装置を使用 用意するもの
?角質除去 (NuPrep) ?電極ペースト (Ten20)
?固定用テープ ?濡れタオル
?ガーゼ
準備
02 ENoG -記録電極- (瞬目反射等も含め)
通常の誘発筋電図検査では関電極(-) 筋腹、基準電極(+) 腱とするが、
眼輪筋?口輪筋にはっきりとわかる腱は存在せず、筋に近い方を関電極(-)とする。
電極の装着位置は施設によって若干異なる。
02 ENoG -記録電極- (正中法)
左右別の電極の代わりに正中に置く方法があり、従来法と比較して優位性があるとする報告が複数ある。
ANL 48 (2021); 566
正中法
標準的
な方法
02 ENoG -計測条件-
? 刺激持続時間 0.2ms
? 出力限度を設定
? 本施設では50mAを使用している
? 周波数 20-1.5kHz
? 感度 200?V
02 ENoG -刺激電流について-
Supramaximal stimulation 最大上刺激
? 筆者の所属する大学の顔面神経外来での採用値
? もともと山形大学 戸島均先生が立ち上げられた
検査セットに基づくとのこと
ANL 48 (2021); 568
何度も行うと痛いので、
ほぼ飽和していると考えられる値で
数回程度のみ行うことが多い
施設により異なる値が使われている
確定した電流量ではない
本施設での採用値:50mA
正中法
通常の方法
02 ENoG -刺激電流について-
完全な100%刺激はできないことを念頭に置く
? 正中法では健側35mA以上、麻痺側30mA以上であれば有意な上昇はない
? 通常の方法では健側35mA以上、麻痺側25mA以上であれば有意な上昇はない
(Ayani 2021)
強すぎる刺激では、三叉神経の刺激による
咬筋の活動が見られることがあることに注意する
? 21mAを超えると咬筋の活動が見られると報告されている (Coker 1990)
正中法では通常の方法に比べて低い刺激電流でも良いとされている
02 ENoG -刺激位置について-
末梢神経伝導速度等では陰極を中枢側、陽極を末梢側に置く。
顔面神経の刺激の際は茎乳突孔を中枢側(陰極)とし、
陽極はそこから遠い所に置く。
施設によって、陽極の位置は、耳後部、
あるいは耳垂をはさんで耳珠の前等、複数の方法がある。
陽極を陰極の前側に置いた場合は、顔面神経の各枝を
個別に刺激可能。
02
? 戸島先生の論文や一部の海外の文献では耳の前に陽極を配置する方法が記載されている。
? 関西の施設からは耳後部に陽極を配置する方法が多く報告されている。
ENoG -刺激位置について-
右口輪筋に至る頸枝を刺激
(JOHNS:7:11:164, 1991)
NET刺激方法
(JOHNS:16:3:336, 2000)
AudiologyOnline
02 複合筋活動電位 –CMAP (compound muscle action potential)-
複数の神経活動の総和としての波形
耳喉頭頸 82(5) :149-154, 2010
02 ENoG 計測例
? ENoG値は、患側振幅 / 健側振幅 X 100 (%) を計算
? 計測条件によって陰性波?陽性波が逆になることがある
左 1.29 mVpp
右 2.50 mVpp
ENoG 51.9 %
左 4.26 mVpp
右 1.59 mVpp
ENoG 37.4 %
症例1 症例2
02 ENoG 計測例
? 障害が強い場合は、患側の反応の判読が困難なことがある。
? 基本的には患側の潜時は健側より遅い。
顔面神経 - ENoG
左 Postauricular
50.0mA
1.1
200?V 2ms
顔面神経 - ENoG
右 Postauricular
50.0mA
2.2
500?V 5ms
左 0.2 mVpp
右 2.5 mVpp
ENoG 6.1 %
L R
症例3
02 ENoG 計測例
? 障害が強い症例等で、初期陽性波が混入し判読が困難なことがある。
? 電極位置をずらしたりして改善を試みるが、難しい場合は参考値として判読することもある。
左 0.03 mVpp
右 0.61 mVpp
ENoG 4.2 %
R
顔面神経 - ENoG
左 Postauricular
50.0mA
1.1
右 Postauricular
5ms 50.0mA
2.2
200?V 2ms
症例4
02 予後の判定
40%以上
1ヶ月以内に治癒
20%以上40%未満
2ヶ月以内に治癒するものの、
後遺症が残る可能性がある
10%以上20%未満
4ヶ月以内に治癒するが、
後遺症の可能性が高い
10%未満
半数は治癒せず、半年以上して治
癒しても後遺症が残る
40≦
20≦
10≦
10>
ENoG値
02 注意点
刺激についてよく説明してから行う
最大刺激に達していない刺激電流で評価しない
初回検査後に増悪する可能性を念頭に
発症後一週間程度してから評価する
02 NET
波形は記録しないが、
閾値の記録のためにセットを用意している
下顎縁枝を刺激し、目視で筋運動を確認する
02 NET 計測方法 基準値例
NED (nerve excitability difference) = (患側電流量)-(健側電流量)
報告者 刺激 正常値
(ms) (mA) 完治 部分変性 完全変性
Campbellら 2 3-8 <2 ≦2 NR
Leclaireら 1 0.9-11.0 <2 ≦2
Laumansら 0.3 2.4-16.2 <3.5 3.5≦, ≦20 20<
羽藤ら 0.1 <3.5 grade1: 3.5≦, ≦10
1 grade2: ≦10
NR: no response
grade 2は0.1ms, 10mA刺激で無反応
NED (nerve excitability difference) (mA)
(JOHNS 2000 16(3) 335)
? NEDは3.5mAを変性の判断閾値とすることが多い
? スケールアウトは20mAとすることが多い
02 瞬目反射
? ENoGと同様の条件
? 周波数 20-1.5kHz
? 感度 200?V
? 刺激持続時間 0.2ms
? 出力限度を設定
? 本施設では18mAを使用している
? 閾値は3-4mA、記録には閾値の3-4倍(9-12mA)が
良いとされている(顔面神経麻痺診療の手引)
02 瞬目反射
? 眼窩上切痕付近を刺激
? 陰極は眼窩上切痕に、陽極はでき
るだけ外側におき、
反対側への刺激アーチファクトが
小さくなるようにする
耳鼻臨床 95(10) 985
? 眼輪筋?口輪筋の両方を同時計測する
02 瞬目反射
病的共同運動がある場合、口輪筋に迷入再生電位が見られる。
左 眼輪筋
左 口輪筋
右 眼輪筋
右 口輪筋
R2
R1
R2
右 眼窩上神経 - Nasalis, Orb Oculi, Orb Oris
Lt.Oculi
25.0mA
1.1
Lt.Oris
25.0mA
1.2
Rt.Oculi
25.0mA
1.3
Rt.Oris
25.0mA
1.4
200?V 10ms
R1 R2
R2
左 眼窩上神経 - Nasalis, Orb Oculi, Orb Oris
Lt.Oculi
25.0mA
1.1
Lt.Oris
25.0mA
1.2
Rt.Oculi
25.0mA
1.3
Rt.Oris
25.0mA
1.4
100?V 10ms
02 瞬目反射 -基準値例-
施設によって異なる基準値が使われる場合がある
顔面神経麻痺診療の手引
正常 正常上限 左右差 対側との差
同側 R1 10.5±0.8ms ≦13ms ≦1.2ms
同側 R2 30.5±3.4ms ≦41ms ≦5ms
対側 R2 ≦44ms ≦8ms
02 表面筋電図 - 計測条件 -
周波数 10-5kHz
感度 500?V
02 表面筋電図
左 眼輪筋
左 口輪筋
右 眼輪筋
右 口輪筋
左 眼輪筋
左 口輪筋
右 眼輪筋
右 口輪筋
顔面神経 - (2 Ch L+R) Nasalis, Orb Oculi
Lt-Ocri
2.63mA
1.1
Lt-Oris
2.63mA
1.2
Rt-Ocri
2.63mA
1.3
Rt-Oric
2.63mA
1.4
2.63mA
2.1
2.63mA
2.2
2.63mA
2.3
2.63mA
2.4
500?V 1s
麻痺側
麻痺側
慢性期では病的共同運動の
有無を確認する
02 検査の順序
検査の順序は定まったものはなく一例。
1) 表面筋電図
2) ENoG
3) NET
4) 瞬目反射
02 各検査の意義と結果が意味を持つ時期
1日 10
5 50 100 500
EMG
NET
MST
ENoG
麻痺程度の客観的評価
脱神経(予後)の評価
後遺症の評価
脱神経(予後)の評価
磁気刺激 予後良好例の評価
保険の算定について
ENoG
D239 2 誘発筋電図 200点+1神経追加につき150点加算
瞬目反射
D239 2 誘発筋電図 200点+1神経追加につき150点加算
表面筋電図
D239 1 筋電図検査 300点
一連の検査に対し
D241 神経?筋検査判断料 180点
02

NET
D239-2 電流知覚閾値測定 200点
02 参考書
顔面神経麻痺診療の手引
?Bell麻痺とHunt症候群?
? 検査についてまとまった本はなく、各雑誌の記事を検索して参考にすると良い

More Related Content

颜面神経麻痺の検査と贰狈辞骋の基础