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「環境人材」育成を通じた新たな企業価値の創出
~ESG投資の観点から~
産業調査部長 竹ケ原啓介
2016年12月8日
? 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の
採択(2015/9)
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2016年を環境経営の視点で振り返ると???
? COP21「パリ協定」の成立(2015/12)
? GPIFの責任投資原則(PRI)署名(2015/9)
エポックメーキングだった前年(2015年)のイベントの影響が
様々な形で顕在化した年
→企業のサステナビリティ報告体系の中への取り込みが本格化。Outside-inの視
点による課題再考等
→ハイレベルなトップダウン目標の設定とボトムアップアプローチというフ
レームワークの提示。必然的に、このギャップを埋めるためのイノベーショ
ンへの期待が拡大
→欧米に比べて遅れていたわが国でもESG投資のメインストリーム化が加速
3
1 環境経営を巡る外部環境の変化
2 国内情勢の変化とその影響
3 环境人材に求められる役割
【環境経営を巡る外部環境の変化】
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Section 1
5
トレンド:ESG投資のメインストリーム化
? 金融危機を契機に、過度のショートターミズム(短期主義)
が投資家、企業双方にもたらす弊害に対する認識が拡大。
? 短期間の裁定取引に対するアンチテーゼとして、企業の長期
的な成長に着目し、これにコミットする投資家(長期投資
家)の重要性を再確認する動きが活性化。
? 投資家にとって、企業の長期的な成長にコミットするために
必要な情報として、また、企業にとって、こうした長期投資
家を惹きつけるために重要な情報として、非財務情報(ESG
情報)が位置づけられつつある。この結果、ESG投資のメイ
ンストリーム化が進んでいる。
実績分析?短期予想
財務パフォーマンス
を生み出す諸元
?イノベーション
?技能伝承
?知財戦略
?ガバナンス
?環境対策 ?????
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財務パフォーマンスと非財務情報
長期予測
財務
パフォーマンス
世界のSRI市場
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地域 2012
(10億ドル)
2014
(10億ドル)
成長率
(%)
構成比
(2014 %)
ヨーロッパ 8,758 13,608 +55.4 63.7
アメリカ 3,740 6,572 +75.7 30.8
カナダ 589 945 +60.4 4.4
オーストラリア/NZ 134 180 +34.3 0.8
アジア(除く日本) 30 45 +50.0 0.2
日本 10 8 -20.0 0.0
合計 13,261 21,358 +61.1 100.0
(出所)Global Sustainable Investment Review 2014
欧米での拡大要因:機関投資家の積極的な関与によるESG投
資のメインストリーム化
メインストリーム化の背景 ①SRI自体の変質
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区分 時期 コンセプト 背景 手法
第1世代 1920
年代~
罪ある活動には投資
しない
(ethical investment)
?キリスト教的倫
理観
?ネガティブ
スクリーニング
第2世代 1970
年代~
社会運動の一形態 ?反人種差別
?反戦
?消費者課題
?ポジティブ
スクリーニング
?議決権行使(エン
ゲージメント)
第3世代 1990
年代~
長期的利益の追求 ?地球環境問題
?CSR概念の登場
?環境効率性概念
?ポジティブ
スクリーニング
?ESG投資
?インテグレー
ション
(出所)水口剛「責任ある投資」を基に作成
メインストリーム化の背景 ②ルール等の環境整備
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? 国連責任投資原則(PRI)の登場(2006)
? 規制?ルールの導入によるESG配慮への誘導
?石油ファンドのための倫理GL
?オランダ公務員年金の責任投資方針
?英国の年金法 etc.
? ESG投資の合理性を支える研究の進展
?UNEP FI「機関投資家によるESG問題の統合に関する
法的フレームワーク(2005、2009)」
?ESG配慮と企業価値の相関性に関する様々な研究
メインストリーム化の背景 ③情報開示の充実
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? 企業のESG情報開示に係るツールの充実
? ESG情報プロバイダーの充実と影響力の拡大
?CDPの影響力拡大(→有償化へ)
?ISO26000, GRI G4, IIRC Integrated Reporting Framework,
SASB, SDGs
?ESG Rating の影響力拡大
? 企業のESG情報開示を促すルールの整備
?非財務情報および多様性の開示に関するEU指令(2017年~)
取締役会の多様性と並んで非財務情報(環境、社会、従業員等)に関する方針、実績、
主要リスク、KPIについて開示を要請(サプライチェーン等に関するDDプロセスも含む)
?証券取引所でのESG情報開示の要請
ヨハネスブルグ証券取引所が上場企業への統合報告書適用を制度化。ブラジル、メキシ
コ、香港(2015年~)などCSR報告義務化に向けた動き
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? レーティング機関の信頼性評価
影響力を増すESG-Rating
(出所)SustainAbility 「The 2013 Ratings Survey」
http://www.sustainability.com/library/the-2013-ratings-survey-polling-the-experts
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ESG Rathingの特徴
?環境、社会、ガバナンスのバランス
?「マテリアリティ」重視
?公表情報に基づく評価が主流
?パフォーマンス重視
【国内情勢の変化とその影響】
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Section 2
? 2014/2の日本版Stewardship Codeを機に、これまで
SRI/ESG投資に熱心とはいえなかった日本の機関投資家
の間でも、非財務情報への関心が高まっている。この傾向
は、2015/9のGPIFによるPRI署名を受けてより顕著に。
? 機関投資家が独自のESG評価ツールを持たない過渡期の
現在、代替手段としてESG Ratingの影響力が拡大してい
る。現在、多くの情報提供企業は、公開情報により企業の
対応を評価する傾向にあるため、今後、ESG情報開示の
巧拙が安定株主の確保や企業評価面に影響を与える可能性
がある。
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トレンド:ESG投資への関心の高まりと過渡期ゆえの課題
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?市場に乗りにくいテーマを取り扱う、いわば外部不経済
のディスクローズ
?社会貢献活動(Philanthropy)
?マネジメント対象としての社会的責任(ドラッカー)
?社会的課題解決の事業化(戦略的CSR/CSV: Creating
Shared Value)
? 「CSR」の変化
? Sustainability Reportの位置づけの変化
DisclosureからBrandingへ
?社会課題の解決も市場の中で、ビジネスの一環として
やっていこうというトレンド
非財務情報を開示する意義の変質
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?いずれもポイントは、「事業を通じた社会価値創造」、
「社会的課題解決の事業化」
? 大陸欧州式CSR, 戦略的CSR, CSV
? 非財務的価値と事業とを統合するためのロジック
今後のキーワードは「統合的思考」とその実装?深化
非財務的価値と事業との統合
?マテリアリティ, KPI, ステークホルダーエンゲージメント
財務情報と非財務的価値との統合
? ESGという切り口, 統合報告の6つの資本概念
非財務的価値の統合
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統合報告のフレームワーク
? 広範な資本(財務、製造、知的、人的、社会?関係及び自然資本
? 外部性も含めたOUTCOME→投資家へ
国際統合報告審議会「国際統合報告<IR>フレームワークコンサルテーション草案」より
プロジェクトベースの例(熱供給事業)
?イニシャル投資負担の大きさ
?社会的課題の解決に貢献
→「点」であるプロジェクトが、エリア全体
に様々なコベネフィットをもたらす(外部性)。
?BLCPの強化(エリアのレジリエンス)
?エネルギー効率改善による低炭素化
?エリアの魅力増加(経済波及効果)etc.
→コストは「点」に帰属。ベネフィットは、供給エ
リアに関係する様々な主体に分散。
?公益事業(事業許可、料金認可等)→自由化へ
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地域熱供給の 都市環境?防災への各種効果
経済産業省資源エネルギー庁「地域熱供給事業の現状」より
プロジェクト型企業の資金調達を巡る課題
一つの方向性:
事業の公益性に則したスキーム構築の可能性
→従来:①の役割分担に基づく資金調達方法の検討
→今後:②、③に基づく新たな資金調達スキームの
工夫(新たな公民連携のあり方etc.)
①主要なステークホルダー間での役割分担調整
②ステークホルダーの拡張(受益の見える化)
③拡張されたステークホルダー間での分担調整
地方債(レベニューボンド)からの検討例
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連邦 / 州政府
投資?開発対象
(TIF指定地区)
金融機関 民間投資家
補助金等 融資等
ポート
ランド市
行政庁
TIF債
(PDCの事業資金の
90%の資金を調達)
納税
インフラ整備
民間企業
(デベロッパー等)
開発投資
投資からの収益
引受機関
(証券会社?
金融機関等)
債券
発行
利息?
償還
PDC
(Portland Development Commission)
(再開発実施主体)
資金の流れ 財?サービスの流れ 利益?配当の流れ
TIF(租税増収財源債)を活用したポートランド市都市再開発事業スキーム
(出所)エネルギーイノベーティブタウン調査報告書(2014年6月)
【环境人材に求められる役割】
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Section 3
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?ESG Rating等を活用した「見え方」の不断の修正
?公表情報から確認できる「外形」での差別化が
早晩困難になることへの備え(「質」の見せ方)
非財務情報開示の方向性
?能動的IRの一環としての環境?CSR情報の位置づけ
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そのための人材像
→極めて高い専門性を備えた「雑学系」という人材像
? 強みである「環境」を、守り(環境管理)と攻め(CSV/価
値創造シナリオ)両面から対外訴求する専門性
? 多様なステークホルダーとのコミュニケーション
→異業種交流、ステークホルダーダイアログ、ESG?Rating
への対応等、様々な機会の活用
? 同時にESG全体のバランスを取り、社内の他の部署とも連
携して、IRを通じた企業価値につなげていく調整力
著作権(C)Development Bank of Japan Inc. 2016
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