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2013GISA学術研究発表Web大会

自動車利用者の時空間分布からみた
大地震時の様相に関する考察
東京工業大学 ○沖 拓弥
大佛 俊泰
(ご意見?ご質問: oki.t.ab@m.titech.ac.jp)
本発表の構成
1.研究の背景と目的
2.自動車利用者の時空間分布推定方法
①推定方法の概要
②交通量推定精度の検証
3.大地震時の様相に関する考察
①道路の渋滞状況に関する考察
②自動車利用者が帰宅困難となる可能性
4.まとめと今後の課題
※本発表においては,ドライバー?同乗者の別を問わず,
自動車で移動中の人を「自動車利用者」と呼ぶ。
本発表の構成
1.研究の背景と目的
2.自動車利用者の時空間分布推定方法
①推定方法の概要
②交通量推定精度の検証
3.大地震時の様相に関する考察
①道路の渋滞状況に関する考察
②自動車利用者が帰宅困難となる可能性
4.まとめと今後の課題
研究の背景と目的
大地震発生時には,建築物が倒壊することで
発生する瓦礫によって,多くの道路が閉塞する
ことが予想される。

人々の広域避難のほか,初動対応機関(警察?
消防?医療等)や広域輸送拠点,備蓄倉庫等を
発着する輸送に大きな影響を及ぼす可能性が
高い。
研究の背景と目的
東京都(2012年4月)
特定緊急輸送道路の耐震診断実施を義務化
(場合によっては耐震改修等の費用を助成)
※特定緊急輸送道路???特に沿道の建築物の耐震化を推進する必要
のある道路として,東京都が定める。

緊急輸送道路が建築物の倒壊によって
閉塞する可能性を低減する試み
研究の背景と目的
大地震時に緊急車両の円滑な走行を妨げる原因
①建築物の倒壊によって生じる瓦礫 都条例
②道路の損壊
③自動車による交通渋滞 (深刻?)

自動車での移動を断念せざるを得なくなり,
予期せぬ場所で帰宅困難となる人々が多数
発生することにもつながる!
研究の背景と目的
大地震発生時に,どこで,どの程度の
?交通渋滞 が発生するか?
?自動車利用者が帰宅困難となるか?
自動車利用者の時空間分布を道路単位で精緻
に推定する必要がある。

自動車利用者の存在は,従来の具体的な減災
計画において考慮されてこなかった。
研究の背景と目的
大地震発生時に,どこで,どの程度の
?交通渋滞 が発生するか?
?自動車利用者が帰宅困難となるか?

本研究で
定量的分析
を試みる

自動車利用者の時空間分布を道路単位で精緻
に推定する。

H10東京都市圏パーソントリップ(PT)調査データと
H9道路交通センサスデータを用いたアプローチ
本発表の構成
1.研究の背景と目的
2.自動車利用者の時空間分布推定方法
①推定方法の概要
②交通量推定精度の検証
3.大地震時の様相に関する考察
①道路の渋滞状況に関する考察
②自動車利用者が帰宅困難となる可能性
4.まとめと今後の課題
(大佛?島田,2009)

自動車利用者の時空間分布推定方法
PTデータから乗用車?軽乗用
車(運転者)のトリップを抽出

START(道路速度=法定速度)
道路速度の調整

交通量の収束計算

(距離/道路速度)が最小となる
経路を各トリップについて推定

全ての自動車利用者について
(距離/道路速度)が最小と
なる経路を推定

交通センサスの全観測地点に
おける交通量を集計

一定時間毎に位置座標を出力

24時間交通量の推定値が
実測値に十分近づいたか

自動車利用者の時空間分布を
道路単位で得る

Yes
END(道路速度の確定)

No
今回の改良点

より広域かつ詳細な
時空間分布の推定
が可能となった!

PTデータから乗用車?軽乗用
車(運転者)のトリップを抽出

東京都全域対象 → 首都圏全域対象

交通量の収束計算

収束計算16回 → 収束計算200回

全ての自動車利用者について
(距離/道路速度)が最小と
なる経路を推定

全サンプルの1/10 → 全サンプルの1/1

一定時間毎に位置座標を出力

10分ごとに出力 → 1分ごとに出力

自動車利用者の時空間分布を
道路単位で得る

東京都全域 → 首都圏全域

計
算
プ
ロ
グ
ラ
ム
の
改
良
PTデータの対象地域と
交通センサス対象道路の空間分布

50km

■ PTデータの対象地域
━ 交通センサス対象道路
※黒線は都府県界,白線はPT
データにおける最小の空間単位
である「小ゾーン」境界を示す。
本発表の構成
1.研究の背景と目的
2.自動車利用者の時空間分布推定方法
①推定方法の概要
唯一,検証が可能
である交通量の
②交通量推定精度の検証
推定精度を検証し,
3.大地震時の様相に関する考察
モデルを評価する。
①道路の渋滞状況に関する考察
②自動車利用者が帰宅困難となる可能性
4.まとめと今後の課題
交通量の絶対推定誤差とR2値の推移
24時間交通量の
絶対推定誤差の
合計値 ? S ? S?
*
i

ik

i

24時間交通量の
*
実測値 Si と推定値
?
Sik の間のR2値
k

k
( i はセンサス道路または小ゾーンを表す)

各センサス道路?各小ゾーンの推定精度が
全体的に向上していく様子が見てとれる
24時間交通量の推定精度
(センサス道路単位 N=3,766)

?
Sik

?
Sik

Si*

Si*

推定精度は向上するものの,推定値は実測値よりも
幾分低くなる傾向にある。
24時間交通量の推定精度
(PT小ゾーン単位 N=1,317)

?
Sik

道路速度調整の
対象外である
細街路に流れる
ためと考えられる

?
Sik

Si*

Si*

推定精度は向上するものの,推定値は実測値よりも
幾分低くなる傾向にある。
小ゾーンごとの24時間交通量の誤差率
道路密度の高い地域
や低い地域における
特定の道路で,大きな
推定誤差が発生する
傾向がある。

推定値-実測値
誤差率(%)=━━━━━━━
実測値
小ゾーンごとの24時間交通量の誤差率
道路密度の高い地域
や低い地域における
特定の道路で,大きな
推定誤差が発生する
傾向がある。

非確率型の確率モデルを
用いていることで,特定の
道路に偏って交通量が
配分されているため。

推定値-実測値
誤差率(%)=━━━━━━━
実測値
本発表の構成
1.研究の背景と目的
2.自動車利用者の時空間分布推定方法
①推定方法の概要
②交通量推定精度の検証
3.大地震時の様相に関する考察
①道路の渋滞状況に関する考察
②自動車利用者が帰宅困難となる可能性
4.まとめと今後の課題
自動車利用者の時空間分布
(=大地震発生直後の道路渋滞状況)

08:00
(通勤?通学時間帯)
都心部と郊外部を結ぶ
放射線状の道路が混雑
する傾向にある。
自動車利用者の時空間分布
(=大地震発生直後の道路渋滞状況)

12:00
(お昼)
都心部の道路が比較的
混雑している様子が見
てとれる。
自動車利用者の時空間分布
(=大地震発生直後の道路渋滞状況)

18:00
(帰宅時間帯)
都心部と郊外部を結ぶ
放射線状の道路が混雑
する傾向にある。
センサス道路における自動車利用者数と
道路占有面積割合の関係
08:00

● 特定緊急輸送道路

12:00

○ その他のセンサス道路

渋滞の深刻な道路(領域Ⅱ~Ⅳ)は,
特定緊急輸送道路に多く含まれている!

18:00

渋滞
深刻

Ⅲ

Ⅳ

Ⅰ

Ⅱ
人数 多
センサス道路における自動車利用者数と
道路占有面積割合の関係

横軸:時刻別領域構成比(%)

特に朝夕の通勤時間帯で深刻

渋滞の深刻な道路(領域Ⅱ~Ⅳ)は,
特定緊急輸送道路に多く含まれている!

渋滞
深刻

Ⅲ

Ⅳ

Ⅰ

Ⅱ
人数 多
自動車利用者数と道路占有面積割合
からみたセンサス道路の評価(都内)
大地震時の広域輸送に
おける障害となる
可能性が高い!

08:00
※太線は特定
緊急輸送道路

(通勤?通学時間帯)
都心部から放射線状に伸びる
道路と環状道路の交点付近が
渋滞しやすい。
自動車利用者数と道路占有面積割合
からみたセンサス道路の評価(都内)

12:00
※太線は特定
緊急輸送道路

(お昼)
渋滞箇所はほとんどなく,自動
車がスムーズに流れている様
子が見てとれる。
自動車利用者数と道路占有面積割合
からみたセンサス道路の評価(都内)
早急な対策が必要!

18:00
※太線は特定
緊急輸送道路

領域Ⅳに含まれる道路は,
大地震発生時の総合危険度
(建物倒壊や火災延焼の危険
性)が高い地域に多い。
本発表の構成
1.研究の背景と目的
2.自動車利用者の時空間分布推定方法
①推定方法の概要
②交通量推定精度の検証
3.大地震時の様相に関する考察
①道路の渋滞状況に関する考察
②自動車利用者が帰宅困難となる可能性
4.まとめと今後の課題
自動車利用者が帰宅困難となる可能性
自宅からの距離帯別?
時刻別自動車利用者数
のグラフ

以下では,大地震発生後には,道路閉塞や交通渋滞の影響により
自宅から20km以上離れた地点にいる人は帰宅困難であると仮定する。
自動車利用者が帰宅困難となる可能性

移動目的別?時刻別
自動車利用者数のグラフ
(自宅から20km以上)
通勤?通学以外の目的で遠出している

人の割合が比較的多い。

性別?年齢階層別?時刻別
自動車利用者数のグラフ
(自宅から20km以上)
数は相対的には多くないが,こうした
人々は比較的体力が乏しい傾向にあり
大地震時に特別なケアが必要である。
自宅から20km以上離れた地点にいる
自動車利用者の時空間分布

08:00

12:00

いずれの時刻においても,自宅から
20km以上離れた地点にいる自動車
利用者は広範囲に分散している。
18:00
自宅から20km以上離れた施設にいる
ドライバーの時空間分布
都心部に非常に
多く存在する!

08:00
自宅から20km以上離れた施設にいる
ドライバーの時空間分布
都心部に非常に
多く存在する!

12:00
自宅から20km以上離れた施設にいる
ドライバーの時空間分布
都心部に非常に
多く存在する!

18:00

運転中の人のみならず,
こうした施設内にいる
ドライバーが,何とか帰宅
しようと大地震発生後に
一斉に自動車を利用する
ことで,大渋滞が発生する
可能性がある!
本発表の構成
1.研究の背景と目的
2.自動車利用者の時空間分布推定方法
①推定方法の概要
②交通量推定精度の検証
3.大地震時の様相に関する考察
①道路の渋滞状況に関する考察
②自動車利用者が帰宅困難となる可能性
4.まとめと今後の課題
まとめ①
? PTデータと交通センサスデータを用いて,自動車利
用者の時空間分布を首都圏全体で推定した。
? 大地震発生直後の道路の渋滞状況や,自動車利
用者が帰宅困難者に転じる可能性について,基礎
的な分析?考察を行った。
? 本発表で用いた時空間分布推定方法によれば,同
乗者等の存在を考慮できるだけでなく,自動車利用
者の詳細な移動目的や属性情報を把握し,様々な
分析に応用することができる(→センサスデータその
ものやVICS等の道路交通情報だけでは不可能)。
まとめ②
? 特定緊急輸送道路は,朝夕,都心と郊外を結ぶ放
射線状道路や環状道路との交点付近で,他の主要
道路と比較して深刻な渋滞が発生する可能性が高
いことを示した。大地震発生に備え,沿道建築物の
耐震化だけでなく渋滞対策も急務である。
? 自動車利用中に帰宅困難となる可能性のある人々
(最大で約18万人)は広範囲に分布している。一方,
施設内にいるドライバーは都心部に集中しており,
こうした人々が大地震発生後に自動車で帰宅を試
みることで,渋滞のさらなる深刻化が予想される。
今後の課題
? 大地震発生後の交通渋滞状況の変化を予測する
手法を構築する。
? 現時点では検証が難しい細街路レベルの時空間分
布を推定し,広域避難シミュレーションや緊急車両
走行シミュレーションに自動車の存在を組み込む。
? 曜日や天候の違いを考慮した時空間分布を推定す
る。
など
参考文献
? 東京都(2011):東京における緊急輸送道路沿道建
築物の耐震化を推進する条例,
http://www.taishin.metro.tokyo.jp/pdf/dl_003.pdf
? 大佛俊泰?島田廉(2009):地域防災計画のための
自動車利用者の時空間分布推定,「日本建築学会
計画系論文集」,74,641,1561-1568.
? 東京都(2008):地震に関する地域危険度測定調査
報告書(第6回),
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_
6/download/houkoku.pdf

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