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シーズ集 配布用
                                                          平成21年度シーズ発掘試験採択課題の研究成果




                            糖尿病モデルブタの確立と生殖細胞の
                                                                                            保存

                                           ―新しい治療薬、治療方法の開発に役立つ動物の作出―

     キーワード
     糖尿病モデル動物、遺伝子改変動物、ブタ



     研 究 概 要

                            我々は若年発症成人型糖尿病(MODY)の原因遺伝子である変異型ヒト Hepatocyte
     Nuclear Factor-1α遺伝子を導入したトランスジェニッククローンブタを作出した(図
     1)。このブタは、糖尿病の診断基準である「随時血
     糖値 200mg/dl 以上」の血糖値を示し(図 2)、経口
     糖負荷試験でもヒト糖尿病患者と同じ血糖値推移
     を示した。病理組織像では膵臓ランゲルハンス島の
     形成異常(図 3a, 3b)、高血糖の影響と推定される
     腎糸球体の硬化と肥大が確認された(図 3c, 3d)。
     これらの症状から、作出したブタは糖尿病モデル動
     物としての特性を備えていると言える。このブタは
                                                                                                       図1 糖尿病発症トランスジ
     遺伝子組み換えにより作出された世界初の糖尿病
                                                                                                       ェニッククローンブタ
     を発症する大型動物モデルである。現在、糖尿病ブ
     タを研究に供給できるように、生殖細胞(精子)を
     得るための作業を進めている。
                            700


                            600
    Blood glucose (mg/dl)




                            500


                            400


                            300


                            200
                                                                                                          3a         3b

                            100


                             0
                                  0   14   28   42   56   70   84   98   112   126   140   154
                                                     Days after birth
                                                                                                          3c         3d

                                      図 3 病理組織象  3a:正常ブタ膵臓(抗??
       図 2   随 時 血 糖 値 の 推 移   青線はコントロ???抗体染色)、3b:糖尿病ブタ膵臓(抗?????
       ール群(n=3)、その他は個別の糖尿病発症ブ抗体染色)、3c:正常ブタ腎臓(HE 染色) 、
       タ                              3d:糖尿病ブタ腎臓(HE 染色)、黒矢印:正
                                                                                                 常糸球体、青矢印:硬化した糸球体、緑矢印:
                                                                                                 肥大した糸球体、サイズバー:100?m
课题番号:04-叠24  JSTイノベーションサテライト茨城




                                   表1 48 日齢時の血漿生化学値
セールスポイント

 ブタは生理学的、解剖学的、病理学的に
                                                              48日齢
ヒトと似ている事、また体の大きさがヒ                             糖尿病     糖尿病
                                               ブタ#17   ブタ #21 コント     ロール(n=3)
トに近い事から、大型動物モデルとして            LD H    ( ts/L) 2683.
                                       uni         6   2475. 1922. ± 274.
                                                            7       3         6
                              AST     ( ts/L) 37.
                                       uni         2     61.7    52. ±
                                                                    9       5.8
医療研究分野で注目されてきた。近年の
                              A LT    ( ts/L) 33.
                                       uni         3     36.9    34. ±
                                                                    2       4.9
遺伝子操作技術、発生工学技術の進歩に            A LP    ( ts/L) 1342.
                                       uni         3    769. 1334. ±
                                                            4       0      99.8
                              g-G TP ( ts/L) 29.
                                       uni         7     26.0    40. ±
                                                                    9      12.8
より、遺伝子改変ブタの作出が可能とな            A LB     (g/dL)    2.3      2.3     3. ±
                                                                    8       0.2
                              Ig       (g/dL)    2.5      2.6     1. ±
                                                                    6       0.2
り、それらを新しい治療方法や新薬の開            TP       (g/dL)    4.9      4.9     5. ±
                                                                    3       0.2
発に利用することも注目されている。             TB      ( g/dL)
                                       m         0.1      0.1     0. ±
                                                                    3       0.1
                              T-C H O ( g/dL)
                                       m        92.5     87.4    73. ±
                                                                    9      13.6
 我々の開発した糖尿病モデルブタはイ            TG      ( g/dL)
                                       m        26.5     34.1    24. ±
                                                                    4      11.2
                              PL      ( g/dL) 107.
                                       m           2     93.5    91. ±
                                                                    6      25.5
ンスリン投与による血糖コントロールが            CK      ( ts/L) 3628.
                                       uni         0   3984. 2212. ± 1307.
                                                            6       8         2
                              C hE    ( ts/L) 241.
                                       uni         6    233.0 240. ±4      26.1
可能なので、長期間生存させることも可
                              BUN     ( g/dL)
                                       m        21.3     11.3     9. ±
                                                                    1       2.0
能で有る。また、恒常的に高血糖値を示す           CRE     ( g/dL)
                                       m         0.8      0.7     0. ±
                                                                    7       0.1
                              UA      ( g/dL)
                                       m        0.02     0.02    0.
                                                                  04 ±     0.03
事から、糖尿病治療薬の開発、糖尿病治療           G LU    ( g/dL) 508.
                                       m           0    239.1    80. ±
                                                                    3      14.9
                              Ca      ( g/dL)
                                       m        11.1     11.1    11. ±
                                                                    6       0.4
を目的とする新規療法?ティバイス開             IP      ( g/dL)
                                       m         4.4      6.8     9. ±
                                                                    6       0.5
発、膵臓(膵島)の移植?再生医療など            Na      ( Eq/L) 143.
                                       m           2    154.2 140. ±5       2.7
                              K       ( Eq/L)
                                       m         5.8      6.3     5. ±
                                                                    9       0.5
の前臨床的研究に有用である。                Cl      ( Eq/L) 105.
                                       m           7    112.6 101. ±0       3.2
                              1, G (
                                5-A    μg/m l)   1.8      3.1     8. ±
                                                                    8       2.2




将来の展望や応用?用途

 我々が既に報告した(Transgenic Research Vol.18 697-706, 2009)糖尿病発症ブ
タは体細胞核移植により作出されたクローン個体なので、作出できる頭数には限界があ
った。現在、糖尿病発症ブタの精子保存に取り組んでいる。精子凍結保存が完成した際に
は、糖尿病発症ブタを実験動物として大量供給することが可能となり、同時に糖尿病発
症大型実験動物としての系統が樹立されることになる。
课题番号:04-叠24  JSTイノベーションサテライト茨城



研 究 者          明治大学  長嶋比呂志
研究テーマ          クローンブタの作出
               遺伝子改変ブタ(トランスジェニックブタ)の作出
               ブタの繁殖技術研究
問い合わせ          独立行政法人科学技術振興機構 JSTイノベーションサテライト
  先            茨城
(Tel/Fax/Ema   (Tel: 029-898-9533 Fax: 029-898-9663 Email: jimu_1@ibaraki-jst-
    il)        satellite.jp)

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H21年度シーズ集(04 B24)「長嶋比呂志」(明治大学)改訂版

  • 1. シーズ集 配布用 平成21年度シーズ発掘試験採択課題の研究成果 糖尿病モデルブタの確立と生殖細胞の 保存 ―新しい治療薬、治療方法の開発に役立つ動物の作出― キーワード 糖尿病モデル動物、遺伝子改変動物、ブタ 研 究 概 要 我々は若年発症成人型糖尿病(MODY)の原因遺伝子である変異型ヒト Hepatocyte Nuclear Factor-1α遺伝子を導入したトランスジェニッククローンブタを作出した(図 1)。このブタは、糖尿病の診断基準である「随時血 糖値 200mg/dl 以上」の血糖値を示し(図 2)、経口 糖負荷試験でもヒト糖尿病患者と同じ血糖値推移 を示した。病理組織像では膵臓ランゲルハンス島の 形成異常(図 3a, 3b)、高血糖の影響と推定される 腎糸球体の硬化と肥大が確認された(図 3c, 3d)。 これらの症状から、作出したブタは糖尿病モデル動 物としての特性を備えていると言える。このブタは 図1 糖尿病発症トランスジ 遺伝子組み換えにより作出された世界初の糖尿病 ェニッククローンブタ を発症する大型動物モデルである。現在、糖尿病ブ タを研究に供給できるように、生殖細胞(精子)を 得るための作業を進めている。 700 600 Blood glucose (mg/dl) 500 400 300 200 3a 3b 100 0 0 14 28 42 56 70 84 98 112 126 140 154 Days after birth 3c 3d 図 3 病理組織象  3a:正常ブタ膵臓(抗?? 図 2   随 時 血 糖 値 の 推 移   青線はコントロ???抗体染色)、3b:糖尿病ブタ膵臓(抗????? ール群(n=3)、その他は個別の糖尿病発症ブ抗体染色)、3c:正常ブタ腎臓(HE 染色) 、 タ 3d:糖尿病ブタ腎臓(HE 染色)、黒矢印:正 常糸球体、青矢印:硬化した糸球体、緑矢印: 肥大した糸球体、サイズバー:100?m
  • 2. 课题番号:04-叠24  JSTイノベーションサテライト茨城 表1 48 日齢時の血漿生化学値 セールスポイント ブタは生理学的、解剖学的、病理学的に 48日齢 ヒトと似ている事、また体の大きさがヒ 糖尿病 糖尿病 ブタ#17 ブタ #21 コント ロール(n=3) トに近い事から、大型動物モデルとして LD H ( ts/L) 2683. uni 6 2475. 1922. ± 274. 7 3 6 AST ( ts/L) 37. uni 2 61.7 52. ± 9 5.8 医療研究分野で注目されてきた。近年の A LT ( ts/L) 33. uni 3 36.9 34. ± 2 4.9 遺伝子操作技術、発生工学技術の進歩に A LP ( ts/L) 1342. uni 3 769. 1334. ± 4 0 99.8 g-G TP ( ts/L) 29. uni 7 26.0 40. ± 9 12.8 より、遺伝子改変ブタの作出が可能とな A LB (g/dL) 2.3 2.3 3. ± 8 0.2 Ig (g/dL) 2.5 2.6 1. ± 6 0.2 り、それらを新しい治療方法や新薬の開 TP (g/dL) 4.9 4.9 5. ± 3 0.2 発に利用することも注目されている。 TB ( g/dL) m 0.1 0.1 0. ± 3 0.1 T-C H O ( g/dL) m 92.5 87.4 73. ± 9 13.6 我々の開発した糖尿病モデルブタはイ TG ( g/dL) m 26.5 34.1 24. ± 4 11.2 PL ( g/dL) 107. m 2 93.5 91. ± 6 25.5 ンスリン投与による血糖コントロールが CK ( ts/L) 3628. uni 0 3984. 2212. ± 1307. 6 8 2 C hE ( ts/L) 241. uni 6 233.0 240. ±4 26.1 可能なので、長期間生存させることも可 BUN ( g/dL) m 21.3 11.3 9. ± 1 2.0 能で有る。また、恒常的に高血糖値を示す CRE ( g/dL) m 0.8 0.7 0. ± 7 0.1 UA ( g/dL) m 0.02 0.02 0. 04 ± 0.03 事から、糖尿病治療薬の開発、糖尿病治療 G LU ( g/dL) 508. m 0 239.1 80. ± 3 14.9 Ca ( g/dL) m 11.1 11.1 11. ± 6 0.4 を目的とする新規療法?ティバイス開 IP ( g/dL) m 4.4 6.8 9. ± 6 0.5 発、膵臓(膵島)の移植?再生医療など Na ( Eq/L) 143. m 2 154.2 140. ±5 2.7 K ( Eq/L) m 5.8 6.3 5. ± 9 0.5 の前臨床的研究に有用である。 Cl ( Eq/L) 105. m 7 112.6 101. ±0 3.2 1, G ( 5-A μg/m l) 1.8 3.1 8. ± 8 2.2 将来の展望や応用?用途  我々が既に報告した(Transgenic Research Vol.18 697-706, 2009)糖尿病発症ブ タは体細胞核移植により作出されたクローン個体なので、作出できる頭数には限界があ った。現在、糖尿病発症ブタの精子保存に取り組んでいる。精子凍結保存が完成した際に は、糖尿病発症ブタを実験動物として大量供給することが可能となり、同時に糖尿病発 症大型実験動物としての系統が樹立されることになる。
  • 3. 课题番号:04-叠24  JSTイノベーションサテライト茨城 研 究 者 明治大学  長嶋比呂志 研究テーマ クローンブタの作出 遺伝子改変ブタ(トランスジェニックブタ)の作出 ブタの繁殖技術研究 問い合わせ 独立行政法人科学技術振興機構 JSTイノベーションサテライト 先 茨城 (Tel/Fax/Ema (Tel: 029-898-9533 Fax: 029-898-9663 Email: jimu_1@ibaraki-jst- il) satellite.jp)