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ジャンルベースアプローチ(GBA)を用いた
スポークンディスコース指導の実践報告:
社会文化理論の観点から
―海外でのサッカーコーチング実践を見据えて―
2017 JACET関西春季大会
西条 正樹 (立命馆大学)
発表要旨
? 研究の背景
? 本研究の位置づけ
? 研究の目的
? メソッド
? 結果
ジャンルベースアプローチ
―選択体系機能言語学を素地とするシドニー学派―
?社会文化理論に基づいた足場(scaffolding)を形成
し、最初は、教員と学習者が共同で学習を進め、除
々に学習者だけで学習を進めていけるようにする。
?実際に社会で用いられているオーセンティックマ
テリアルを教材として使用し、実際の語彙文法資源
使用パターンを明示指導する
(Burns et al, 1996)
1) 学習とは(社会文化理論の観点から)
Learning is a social process constructed from
different kinds of social interaction, not
through individual activity. That is, an
individual can progress through zones of
proximal development (ZPD) to more abstract
and complex use of language in collaboration
with ‘more capable others’.
(Vygotsky, 1987)
2) オーセンティック教材の推奨
“コミュニカティブティーチングは、現実的でオーセンティックなシチュ
エーションを想定して行われるが、そこで使われる教材やタスクは、そ
の大部分が書き言葉としてのテクストが用いられている” (発表者による
翻訳)
(Burns et al, 1996)
“いわゆる学習書に掲載されているテクストは、教室外で実際に人々が使
用しているテクストとは大きくかけ離れている。こうした教材は、学習
者がスポークンディスコースのレパートリーに触れる機会を制限してし
まう。なぜならば、このような教材は、特定の言語形式や言語機能を学
習することが主な目的となっているからである。” (発表者による翻訳)
(Goh & Burns, 2012)
世界を目指すサッカープレーヤー?コーチ
のための英語力向上コース(2017年4月?@立命館大)
本発表の目的
将来、海外のサッカーリーグに選手もしくはコーチと
して留学することを目標としている日本人を対象とし
たGBAのよる言語支援プログラム(Football English
Session)を2017年4月より立命館大学びわこくさつキ
ャンパスにて実施している。本発表では、GBAの中核
的概念である社会文化理論の枠組みに基づいて、どの
ような足場(scaffolding)が形成され、それがどのよう
に学習者たちの自律学習を促しているのか、学習者の
コメントを中心に紹介する。
方法
実施場所:立命館大学びわこくさつキャンパス
時間帯:毎週水曜日11:00?12:30(全15回)
参加者:将来、海外でサッカープレーヤー?コーチ留学を
目指している社会人、大学生、専門学校生、合計12名
モデルコーチ:海外でのプロ経験がある英語のネイティブ
スピーカー2名(森安コーチ、オリバーコーチ)
受講生プロフィール
所属 目的 英語レベル
U君 立命館大学スポ健 海外でのコーチング TOEIC 355
K君 立命館大学スポ健 将来Fリーグの監督を目
指している
TOEIC490点
Uさん 立命館大学文学部
立命館サッカー部(女子)
大学で卒業後、アメリカ
でプレーしたい
TOEFL iBT28点
F君 立命館大学国際経営
立命館サッカー部(男子)
海外でプロサッカー選手
になりたい
TOEIC 570点
O君 立命館大学スポ健 クラブ運営を学ぶ中で英
語が必要
TOEIC 550点
I君 立命館大学経営
立命館サッカー部(男子)
海外でプレーしたい 英検準2級
D君 ASラランジャ京都 海外でのプレーに興味 なし
N君 専門学校生 語学留学に興味ある なし
Y君 社会人 アメリカサッカー留学の
準備
英検2級
UT君 専門学校生 英会話 なし
FR君 専門学校生 好きなサッカーで英語を
学びたい
英検3級
FESスケジュール
内容 フェーズ データ収集方法
1 オリエンテーション Setting the context
and building the field
学習ログ
2 屋外実習(アイスブレーク) Setting the context
and building the field
学習ログ
3 教室学習(field) Modeling and
deconstruction
学習ログ / アンケート
4 屋外実習(ドリブル) Setting the context
and building the field
学習ログ
5 教室学習(generic structure) Joint construction 学習ログ
6 屋外実習(パス) Setting the context
and building the field
学習ログ
7 特別セミナー 学習ログ
8 学生実技(第一回目) NF / 半構造面接法 / PT
9 屋外実習(シュート) Setting the context
and building the field
学習ログ / アンケート
10 教室学習(tenor) Joint construction 学習ログ
11 屋外実習(グループ練習) Setting the context
and building the field
学習ログ
12 教室学習(mode) Independent construction 学習ログ
13 学生実技(第二回目) NF / 半構造面接法 / PT
14 レビュー 学習ログ / アンケート
分析対象者
対象者 所属 参加動機 参加回数
(8回中)
保有英語資格 データ種別
U君 立命館スポ健
海外でサッカー
コーチングを学
びたい
9回 TOEIC 355点
インタビュー
Y君 社会人
(英語教員志望)
夏からアメリカ
にサッカー留学
をするからその
準備をしたい
8回 英検2級
インタビュー
インタビュー質問項目
インタビュー(半構成的面接法)
講座全体に関
する質問
Q1:英語をスポーツを通して学ぶという活動に参加してみてどうでしたか?
Q2: これまでの英語の学習方法と比べてどうでしたか?
Q3: 参加から得たこと(楽しかったこと、有意義だったことなど)は何です
か?
Q4: 今後、どのようなことを重点的に学びたいですか?要望など。
Q5: 自分のキャリアを見た時に、どのように役に立つと思いますか?
英語学習に関
する質問
Q6: コーチング実践に向けて何をどのように準備しましたか?
Q7: コーチング実践に向けて、役に立ったと思うアクティビティは?
リサーチクエッション
1: 受講生2名への参加と自律性に関するイン
タビューデータ分析(帰納法によるコーディ
ング分析)から、社会文化理論とGBA指導法
の関係性がどのように示されるのか?
2: 現時点での教育?研究的示唆は何か?
結果(U君 中間インタビュー①)
Q: ここまでで、役に立ったこと、有意義だったことは?
?西条さん始め、みなさんの経験談などが、ものすごく僕の中で、
知らなかった部分も多かったんで、刺激になったというか、こうい
う道もあって、こういう方法があるんだって気付きがあったことが
、ものすごく良かったかなと思いますね。この前来られた今矢さん
とか。
?今後は、西条さんとか、森安さんとか、オリバーさんの経験とか
、楽しみというか、僕の知らない世界ですし、そういう話をまたし
ていただけると、色々な世界が見えてきて良いなと思います。
初心者としての
気持ち/行為
媒介(mediation) 学び
GBAへの言及
参加したい気持ち
結果(U君 中間インタビュー②)
Q: 今までの英語学習法と比べてどうですか?
?コーチは、ネイティブな人なんで、自分も海外に行って、練習
参加してみて、表現などが似ている部分もあって。ドイツ人も英
語を話す時があったので、それを理解というか、全部は聞き取れ
なかったんですけど、雰囲気とかは似たような感じだったんで、
これが日本でできるのはありがたいなあと思いました。
?サッカーの英語って、表向きに習うことはないんで、それを知
れたというのは大きいかな。この前、教室で森安コーチに、僕が
個人的に聞いたんですけど、ポジションの名前とか、ぜんぜん違
うので、海外と日本では。トップ下をナンバー10と言ったり。
初心者としての
気持ち/行為
媒介(mediation) 学び
GBAへの言及
参加したい気持ち
結果(U君 中間インタビュー③)
Q: コーチング実践に向けて、どのように準備している?
まずは練習メニューを日本語で考えて、それの日本語を英語に、持って
いくようなやり方を考えています。まずは、教材も何も使わずに、自分
で言いたいことを頭の中で英語に訳して、サッカー独特の表現があると
思うので、それは今まで使った教材を見直して、そこを使っていくよう
な形でやっています。
Q:具体的に教材のどのような部分を見直した?
穴埋めのところですかね。accuracyとか、覚えやすいし、使えそうだと
思います。
初心者としての
気持ち/行為
媒介(mediation) 学び
GBAへの言及
参加したい気持ち
分析結果(Y君 中間インタビュー①)
Q:コーチング実践に向けて、どのように準備している?
頭で考えたことを一応、ワードで文を起こしています。あとは今ま
でのプリント見たりとかしながら、時々オリバーさんとかにも表現
聞きながら。
Q:オリバーコーチには、いつ聞いた?
いつだったかな。こないだ、先週の月曜、火曜ぐらいに一回、LINE
して「こういうの何て言ったらいいですか?」って聞きました。
初心者としての
気持ち/行為
媒介(mediation) 学び
GBAへの言及
参加したい気持ち
結果(Y君 中間インタビュー②)
Q:プリントのどの部分を見直した?
森安さんの言葉とかですね。今(6/10 10:30am)やっ
てたのは、Opening stageのところをずっと参考にし
ながら。その、「はじめのときとかってどういうふ
うに言うのかな」って。「今から??するよ」とか
って言うのは、すごい参考になりました。
初心者としての
気持ち/行為
媒介(mediation) 学び
GBAへの言及
参加したい気持ち
結果(Y君 中間インタビュー③)
Q:今までのアクティビティで役に立ったと思うことは?
コーチの英語を書き起こしてくれたあのプリントはすごい参考にな
りました。特に、Opening stageを参考にさせてもらっています。要
点を絞るとか簡潔に伝えるとか、自分で準備してて「ながっ」とか
思ったので、そういうのをうまく省略している文を見ながら、この
単語はいらんなとかやってるんで、それですごい参考にさせてもら
っています。
あとはネットの動画も見ながら、実際に自分が動くとしたら、あー
実際にどういうふうに動くかなーって、こういうときはどういうふ
うに指示をしてるのかなーっていうのは参考にさせてもらっていま
す。
初心者としての
気持ち/行為
媒介(mediation) 学び
GBAへの言及
参加したい気持ち
結果(Y君 中間インタビュー④)
英語を教えるときって、日常で使い分けるんじゃなくて、ただ文
法の順番で教えるだけだから、命令文は命令文、平叙文は平叙文
みたいな、別々で教えてるんですよ。それをミックスするという
のは、よりリアリティがあるなっていうのは思いましたね。それ
がこういうことやってることの一番の強みかなって思いました。
初心者としての
気持ち/行為
媒介(mediation) 学び
GBAへの言及
参加したい気持ち
結果まとめ
U君は、New comerとして、本講座への参加により、インストラ
クターという媒介を経て、対象コンテクスト(海外のスポーツコミ
ュニティ)自体への参加度合いを高め、学びにつなげていった。ジ
ャンルに関する認識は弱い。→Peripheral learner
Y君も、New comerとして、本講座に参加した。インストラクタ
ーや動画による媒介の中で、学びを高めていった。特に、英語学習
法に対して、「単語や文法を個別に学習する」という認識を持って
いたが、「実際の場面に応じて文法項目を使い分けていく」という
手法があることに気付き、自身のスピーキングタスク準備への応用
を試みるようになった。さらに、ステージ構築(generic structure
)や言語使用域(register)という概念を用いたGBA学習法を取り
入れつつあることが確認できた。→Active learner
コンテクストと言語を分析するための
フレームワーク(SFL)
(Eggins, 1994)
Context
闯补肠别迟2017スライト?のコヒ?ー
You Tubeで
「Football English 厂别蝉蝉颈辞苍」で検索!
References
Burns, A., Joyce, H., & Gollin, S. (1996). I see what you mean, using spoken discourse in the classroom: A handbook for
teachers. Sydney: National Center for English Language Teaching and Research.
Council of Human Resource for Globalization Development, Japan (2011). An interim report of The Council of Human
Resource for Globalization Development (draft). Accessed 21 September 2016,
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/global/dai2/sryou1.pdf
Eggins, S. (2004). An inroduction to Systemic Functional Linguistics (2nd ed.). New York London: Continuum.
Feez, S., & Joyce, H. (2012). Text-based language literacy education: Programming and methodology. New South Wales:
Phoenix Education.
Halliday, M. A. K. (1994). An introduction to funcional grammar (4th ed.). London: Edward Arnold.
Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology Japan (2012). Numbers of Japanese studying overseas.
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/02/1330698.htm Accessed 04 October 2016.
Author, (2015). https://www.youtube.com/watch?v=7lGe9qHOnvo Accessed 21 September 2016.
Author, (2016). oral presentation at JACET Kansai, June 25 2016, Notre Dame University, Kyoto, Japan.
http://researchmap.jp/yakimareds/
Paltridge, B. (2001). Genre and the language learning classroom. Michigan: University of Michigan.
Tsuji, K. (2013). Mouhitotsu no kaigaigumi. Tokyo: Wani Books. In Japanese.
Vygotsky, L. S. (1987). Thinking and speech (N. Minick, Trans.). In R. W. Rieber & A. S. Carton (Eds.), The collected works
of L.S. Vygotsky, Vol.1 Problems of general psychology (pp. 39-285). New York: Plenum Press.
Yasuda, S. (2011). Genre-based tasks in foreign language writing: Developing writers’ genre awareness, linguistic knowledge,
and writing competence. Journal of Second Language Writing, 20(2), 111-133.
Appendix
self-productivity
According to Halliday (1994, p. 213), our experience of linguistic expressi
Putt and Verspoor (2000, p. 73) argued that "One can never know the objec
SFLと伝統文法の相互補完性(西条, 2017)
SFL 伝統文法
命令
文
助動
詞
仮定
法
football coaching
助動
詞
仮定
法
疑問
文
命令
文
不定
詞疑問
文
不定
詞

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Editor's Notes

  • #23: ここに龙城先生からの引用も