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Lilien, G.L. & Rangaswamy, A.
Marketing Engineering (2004), Chapter 9
小野滋 (インサイト?ファクトリー)
Marketing Engineering 読書会: 2018/03
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 1 / 57
目次
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
8. 要約 (略)
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 2 / 57
1. 販売組織モデルとは
1. 販売組織モデルとは
1.1 販売-反応モデルによる販売活動の効果の表現
1.2 販売組織管理の意思決定
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 3 / 57
1.1 販売-反応モデルによる販売活動の効果の表現
1. 販売組織モデルとは
1.1 販売-反応モデルによる販売活動の効果の表現
1.2 販売組織管理の意思決定
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 4 / 57
1.1 販売-反応モデルによる販売活動の効果の表現
販売はマーケティングミクスのなかでもっとも重要な要素である。多
くの企業はマーケティング戦略の実現に際して販売組織に依存して
いる。
ヒトの力による販売は次の性質をもっている:
マーケティング努力のターゲティングが可能
メッセージのカスタマイズが可能
ヒトが関与するので、投資を簡単には変えられない
コストが高い
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 5 / 57
1.1 販売-反応モデルによる販売活動の効果の表現
他のマーケティング投資と同様、販売努力と売上の間の関係を理解す
ることが求められるが、それは困難である。なぜなら販売員の機能が
多岐にわたるから。
見込みをつける
コミュニケーションする
売る
問題を解決する
サービスを提供する
関係を築く
情報を集める
分析し配分する
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 6 / 57
1.1 販売-反応モデルによる販売活動の効果の表現
伝統的には、マーケティング部門と経営層は利益に注目するいっぽう、
販売員は「目標売上」をつくることに注力していた。しかし企業が市
場駆動的になるにつれて、販売員の目標も多重的になっている (顧客
満足、利益への貢献、顧客のシェア、顧客維持、etc.)。
本章では、販売組織?マーケティングチャネルの生産性を高めるため
のいくつかのモデルについて述べる。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 7 / 57
1.2 販売組織管理の意思決定
1. 販売組織モデルとは
1.1 販売-反応モデルによる販売活動の効果の表現
1.2 販売組織管理の意思決定
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 8 / 57
1.2 販売組織管理の意思決定
販売組織が責任を持つ意思決定は3つにわけられる。
組織についての意思決定。本章では GEOLINE モデルを紹介する。
販売努力の配分についての意思決定。Syntex モデル, CALLPLAN
モデルを紹介する。
販売員の動機づけ?統制についての意思決定。MSZ モデルを紹介
する。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 9 / 57
1.2 販売組織管理の意思決定
Exhibit 9.1 販売組織管理の意思決定についての概念図
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 10 / 57
1.2 販売組織管理の意思決定
販売の組織に関して、まず決定が求められるのは、どれだけ外注する
かである。
販売組織の内製化が望ましい場合とは:
販売員が市場ではなかなか手に入らない特殊なノウハウを持って
いるとき
売上と販売努力の関係が明確でないとき (外部の販売員のパフォ
ーマンスを評価しにくい)
製品ラインが複雑で、販売員が詳細な知識を持たなければならな
いとき
環境が競争的で、変化が激しいとき
販売成績を高めるために販売以外のスキルが必要なとき (サービ
スとか)
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 11 / 57
1.2 販売組織管理の意思決定
販売組織を内製化する場合、その構造をどうするかを決めなければな
らない。答えは企業の全体的な戦略によって決まる。
Exhibit 9.2 販売組織の構造をつくるときの考慮事項
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 12 / 57
2. 販売組織のサイズ決定と配分
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
2.1 直観的方法
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 13 / 57
2.1 直観的方法
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
2.1 直観的方法
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 14 / 57
2.1 直観的方法
販売組織のサイズ決定にあたって...
多くの企業は「いくらまで予算を割けるか」に依存している。販
売員の人数は、(売上に占める販売費)/(販売員一人当たり平均コ
スト) で決まることになる。先行研究では、販売組織への支出は
平均して売上の 3.7% だとか 6.8% だとかいわれている。
「ブレイクダウン法」で決めている会社もある。販売員の人数は
(予測される売上)/(一人当たり平均売上) となる。
直観的方法には以下の欠点がある:
取引先?見込客のなかに、他とは異なる反応をするものがあるか
もしれない
販売努力を効率的に配分していない。Exhibit 9.3(a) をみよ。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 15 / 57
2.1 直観的方法
Exhibit 9.3 販売組織のサイズ決定のジレンマ
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 16 / 57
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
2.1 直観的方法
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 17 / 57
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
「販売エンティティ」に対する販売努力と売上の関係を推定し、これを
用いてサイズ?配分を決める方法。ここで「販売エンティティ」とは、
顧客、見込客、セグメント、地域、製品、などなど。
こうした方法として Lodish ら (1988) の Syntex モデルがある。これは
製薬開発企業 Syntex Laboratories のために開発されたモデルである。
マネジメントチームのメンバーが個々に、それぞれの販売エンテ
ィティについて売上反応関数を推定する
チームで議論し、売上反応関数について合意する
モデルを走らせる
シナリオごとの利益について検証する
結果が変だったらチーム議論に戻る
資源配分を決定する
販売成績を監視?評価する
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 18 / 57
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
Exhibit 9.4 Syntex モデルの構築?実装のステップ
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 19 / 57
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
売上反応関数の特定
Syntex モデルでは、販売エンティティとして市場セグメントが用いら
れた。まずマネージャーが次のような設問に回答した。
「製品 A の 1985 年の売上は、もし売上努力がゼロだったらどうな
ると思いますか?」
「もし売上努力が半分だったら?」
「1.5 倍だったら?」
「飽和するくらいのレベルだったら?」
回答と議論を 2 ラウンド繰り返し合意を得た。合意された回答を
ADBUDG 反応関数
ri(Xi) = bi + (ai ? bi)
Xci
i
di + Xci
i
に入力し、パラメータ ai, bi, ci, di を得た。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 20 / 57
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
Syntex モデル
maximize X =
∑
i
ri(Xi)Siai ? CF
subject to
∑
i
Xiei = F
Si: 販売エンティティ i の、計画されている売上
ai: 売上増あたりの利益増
ri(Xi): 販売努力 Xi の下での売上のインデクス
C: 販売員ひとりあたりコスト
F: 販売員の数
ei: 販売努力の計画されている配分
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 21 / 57
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
このモデルを、F を変えながら何度も推定し、限界利益が 0 になる F
を探す。
なお、さらにエンティティ別の制約を含めても良い。たとえば i ごと
に Xiei の上下限を決めるとか。
Syntex モデルの使い方
Syntex はこのモデルを使って、販売員を製品?診療科にどう配分する
かを最適化した。
またこのモデルは販売組織の全体的価値の評価にも使える。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 22 / 57
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
Exhibit 9.5 Syntex モデルから得られる結果
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 23 / 57
2.2 市場反応モデル (Syntex モデル)
Exhibit 9.6 サイズ決定?配分の効果
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 24 / 57
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 25 / 57
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
Syntex モデルにはいろいろ限界がある。静的であること、販売努力以
外のマーケティングミクス要素がないこと、競合を考慮していないこ
と、など。
我々の ReAllocator モデルでは次の2点が拡張されている。
販売努力以外のマーケティング資源を考慮。
セグメント (販売エンティティ) 間の相互作用を考慮。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 26 / 57
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
Maximize Z =
∑
i
?
?ri
?
?Xi +
∑
k?=i
bkiXk
?
? Siai ? diXiei
?
?
subject to
∑
i
Xiei ≤ F, LBi ≤ Xiei ≤ UBi
bki: 販売エンティティ k における支出増大が i に与える効果を、i にお
ける支出増大の直接的効果に対する比であらわしたもの。
di: Xi1 単位当たりのコスト
…とこのように拡張してみたけれど、このモデルにもいろいろ限界が
ある。このモデルは購買が反復され、取引先への訪問回数で売上が決
まるような状況に適している。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 27 / 57
4. 販売テリトリーの設計
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
4.1 テリトリー設計の GEOLINE モデル
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 28 / 57
4. 販売テリトリーの設計
地域が広い場合、企業はふつう地域をテリトリーに分け、販売員を割
り当てて責任を持たせる。
テリトリーを決める上での基本的な基準は、機会や業務負荷をテリト
リー間で平準化することである。特に歩合給の場合は機会の平準化が、
固定給の場合は業務負荷の平準化が重要になる。いったんうまく設計
されたテリトリーでも、地域や販売組織の変化によって不適切になる
こともある。
テリトリー設計のその他の基準として以下が挙げられる:
管理しやすさ
売上ポテンシャルの推定のしやすさ
テリトリー内の移動時間が短いこと
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 29 / 57
4.1 テリトリー設計の GEOLINE モデル
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
4.1 テリトリー設計の GEOLINE モデル
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 30 / 57
4.1 テリトリー設計の GEOLINE モデル
GEOLINE モデル (Hess & Samuels, 1971) は次の 3 つの目的を同時に最
適化するモデルである:
テリトリー間での業務負荷やポテンシャルの平準化
物理的に連続したテリトリー
移動時間が最小なテリトリー
このモデルは、標準的地理単位 (SGU; ZIP コードなど) をひとつない
し複数のテリトリーへと割り当てる。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 31 / 57
4.1 テリトリー設計の GEOLINE モデル
Exhibit 9.7 販売テリトリーの例
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 32 / 57
4.1 テリトリー設計の GEOLINE モデル
GEOLINE モデルでは…
テリトリー数と各テリトリーの中心は所与とする。
SGU を、まずは最も近いテリトリー中心に割り当てる。
目的関数を、すべての SGU からそれが属するテリトリー中心ま
での二乗距離の加重和とする。重みは SGU における活動の強度。
SGU の活動の指標の定義が鍵となる。販売ポテンシャル、業務負
荷などを用いる。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 33 / 57
4.1 テリトリー設計の GEOLINE モデル
minimize
∑
j
∑
i
cijXijaj
subject to
∑
j
Xijaj =
1
I
∑
j
aj for i = 1, . . . , I (活動量が等しい)
∑
i
Xij = 1 for j = 1, . . . , J (いずれかのテリトリーに割り当てる)
Xij ≥ 0 for i = 1, . . . , I and j = 1, . . . , J (割合は非負)
Xij: SGU j のうち、テリトリー i に割り当てられる割合
aj: SGU j の活動指標
cij: SGU j の中心から、テリトリー i の中心までの距離の二乗
このモデルを、複数のテリトリーに分割されてしまった SGU をひとつ
にまとめたりしながら何度も推定し直す。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 34 / 57
4.1 テリトリー設計の GEOLINE モデル
GEOLINE モデルにはさまざまな拡張案がある。
地域のいろいろな指標を提供するデータベース。商用のものがた
くさんある。
MAPS (商用ソフトウェア)。製薬?医療機器メーカーで良く使わ
れている。
COSTA モデル。販売員の訪問時間と移動時間を考慮。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 35 / 57
5. 販売組織への報酬
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
5.1 コンジョイント分析によるボーナス設計
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 36 / 57
5. 販売組織への報酬
報酬計画には以下の目的がある:
販売員の努力ないしパフォーマンスに対して報償を与える
販売員を動機付ける
企業にとって利益となる活動へと努力を方向づける
報酬には、金銭的報酬 (サラリー, 歩合, ボーナス) と、非金銭的報酬
(認知、コンテスト、非金銭的な賞) がある。もっともよく用いられて
いるのはサラリーとボーナスの組み合わせ。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 37 / 57
5. 販売組織への報酬
報酬の計画にあたっては以下の点に注意すべし。
販売員の努力は目に見えず、売上は努力以外の諸要因に影響され
る。売上が努力の結果なのか、販売員自身さえわからない。
報酬計画は、公平に感じられ、理解しやすく、単純であることが
必要。
現在の報酬計画を見直す必要があるか?図を描いてみるとよい
(Exhibit 9.8)。左上は報酬が高すぎ、右下は低すぎ。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 38 / 57
5. 販売組織への報酬
Exhibit 9.8 販売員へのインセンティブと成績
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 39 / 57
5.1 コンジョイント分析によるボーナス設計
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
5.1 コンジョイント分析によるボーナス設計
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 40 / 57
5.1 コンジョイント分析によるボーナス設計
Mantrala, Sinha, & Zoltner (1994) は、反復購買の状況におけるボーナ
ス計画を設計するモデルを提案している。
このモデルでは、個々の販売員に対して売上クオータを設け (その値
は販売員によって異なる)、このクオータを一定割合上回った販売員に
同額のボーナスを支払う。
このモデルに必要な情報は:
テリトリーごとの販売ポテンシャル指標。例, 製薬の場合はシン
ジケートデータがある。
各販売員について、努力に対する売上の反応関数と、収入 vs. 休
暇の選好。後述するコンジョイント分析で測定する。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 41 / 57
5.1 コンジョイント分析によるボーナス設計
MSZ モデルは以下の売上反応関数を仮定する。
rij(Xij) = bij + (aij ? bij)(1 ? exp(?cijXij))
Xij: 販売員 j のブランド i の販売努力
rij(Xij): 販売員 j のブランド i の期待売上
aij, bij: 販売員 j のブランド i の売上の上下限。外的に決める
cij: 販売員 j のブランド i の販売努力が売上に反映する程度
cij が決まれば、所与の販売クオータから、それを達成するために必要
な販売努力を求めることができるようになる。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 42 / 57
5.1 コンジョイント分析によるボーナス設計
cij はコンジョイント課題で推定する。下に例を示す。
Exhibit 9.9 調査票の例
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 43 / 57
5.1 コンジョイント分析によるボーナス設計
こうして、すべての販売員の効用関数 (ボーナスと販売努力のトレー
ドオフ) が得られる。これに基づき、企業の利益を最大化する、全員
共通のボーナス計画を求める。
この論文の著者らによれば、仮に販売員が調査票の回答を偽っても大
した問題にはならない。なぜなら
販売員はモデルについて良く知らないので体系的に偽ることがで
きない
販売員は経営者が個々人向けのボーナス計画ではなく共通のボー
ナス計画を策定しようとしていると知っている
販売員同士が結託するのは難しい
いずれは偽りはばれるし罰を与えることができる
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 44 / 57
5.1 コンジョイント分析によるボーナス設計
MSZ モデルやその拡張版は、多くの製薬?医療機器企業で用いられて
いる。
こうしたモデルの限界:
報酬を組み合わせた計画をうまく扱えない
売上やコストの製品間従属性を考慮していない
チームで販売する場合の報酬計画をつくれない
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 45 / 57
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 46 / 57
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
ふつう、販売努力に対する反応は、顧客?見込客によって異なる。販
売員はそのことを直観的に知っているが、それを扱う形式的な方法を
持っていない。
CALLPLAN モデル (Lodish 1971, 1974) は、顧客?見込客への訪問回数
を対話的に計画するシステムである。このモデルでは、
「反応期間」(例, 年) と、そこに含まれる「努力期間」(例, 月) を分
けて考える。
個々の顧客?見込客に対するある「反応期間」の売上の期待値が、
その期間に含まれる「努力期間」あたり訪問回数の平均の関数で
あると仮定する。
Syntex モデルと同様、ADBUDG 反応関数を仮定する。取引先 i に
対する訪問回数を Xi、売上のインデクスを ri(Xi) として
ri(Xi) = bi + (ai ? bi)
xci
i
di + xci
i
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 47 / 57
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
maximize Z =
∑
i
airi(Xi) ? e
∑
j
njcj
subject to∑
i
Xiti +
∑
j
njUj ≤ T
nj = max(Xi in area j)
LBi ≤ Xi ≤ UBi
nj: 地域 j への訪問回数
cj: 地域 j への一回の訪問にかかるコスト
e: 反応期間に含まれる努力期間の数
ai: 取引先 i への売上が企業の利益に貢献する程度を表す調整係数
ti: 取引先 i への訪問にかかる時間
Uj: 地域 j への訪問にかかる時間
T: 労働時間
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 48 / 57
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
Exhibit 9.10 CALLPLAN による最適化手続きの例
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 49 / 57
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
Exhibit 9.11 CALLPLAN による最適訪問ポリシー
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 50 / 57
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
販売員は、ポテンシャルの高い見込客に焦点をあてなければならない
と分かっていながら、往々にして親しみのある既存取引先ばかりを訪
問してしまうものだ。CALLPLAN モデルは販売員に努力の配分を変え
させるきっかけとなる。
近年では取引先管理の商用ソフトウェア?パッケージがあり、訪問ス
ケジューリングの機能を持っている。
CALLPLAN モデルは Syntex モデルと同様、反復購買の状況に適して
いる。また、「一匹狼」的販売員にもっとも適している。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 51 / 57
7. マーケティングチャネルについての意思決定
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
7.1 重力モデル
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 52 / 57
7. マーケティングチャネルについての意思決定
マーケティングチャネルについての意思決定は3つのエリアにわか
れる:
戦略。ターゲットとする市場に製品をどのように販売するか、そ
してどのような契約メカニズムを使うか。たとえば、直接販売、
子会社による販売、中間業者を通じた販売、など。
場所。製品を販売する店舗をいくつ、どこに置くか。
ロジスティックス。物理的な配荷をどうするか、在庫をどうす
るか。
本章では、場所についての意思決定に焦点を当てる。これはさらに 2
つに分かれる。
マクロ意思決定: 市場とするエリアの選択
ミクロ意思決定: そのエリアにおける店舗の位置の選択
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 53 / 57
7.1 重力モデル
1. 販売組織モデルとは
2. 販売組織のサイズ決定と配分
3. Syntex モデルの拡張: ReAllocator
4. 販売テリトリーの設計
5. 販売組織への報酬
6. 営業訪問の効率性?効果性の改善
7. マーケティングチャネルについての意思決定
7.1 重力モデル
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 54 / 57
7.1 重力モデル
重力モデル (Huff 1964) は離散選択モデルの枠組みに基づいている。
pij =
Vij
∑
n∈N Vin
Vij =
Sα
j
Dβ
ij
pij: 地域 i の人が位置 j の店舗を選ぶ確率
Vij: 地域 i の人にとっての店舗 j の魅力 (効用)
N: 店舗 j と競合する店舗の集合
Sj: 店舗 j のサイズ。広い店舗はふつう品ぞろえが良く、価格も安い。
(より一般的には、なんらかの店舗イメージ指標としてもよい)
Dij : 地域 i の中心から店舗 j までの距離。(より一般的には、Dij はア
クセスしやすさの表すなんらかの指標としてもよい)
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 55 / 57
7.1 重力モデル
Exhibit 9.12 重力モデルの例
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 56 / 57
7.1 重力モデル
実際には、顧客は遠い店、小さな店を好むこともある。こうした限界
にも関わらず、重力モデルは (少なくとも集計レベルでの) 店舗選択を
予測する、頑健な方法であることがわかっている。
重力モデルは魅力モデル (2 章) の特殊ケースであり、「無関係な
選択肢からの独立性」という仮定に基づいている。この仮定は往
々にして非現実的である。
重力モデルは移動の手段を無視している。複数の移動手段がある
場合にはうまくいかない。
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 57 / 57
7.1 重力モデル
店舗売上の説明のためには、売上を目的変数、店舗の諸特性を説明変
数にした重回帰モデルのほうが解釈しやすい。ただし競合のインパク
トについて説明するのは難しい。
小売業の世界では、メガストア、ネット販売、ダイレクト?マーケテ
ィングが成長している。買物行動に対する地理的制約はこれから弱く
なっていくだろう。
おしまい
小野滋 (インサイト?ファクトリー) Lilien & Rangaswamy (2004) Chapter 9 ME 読書会: 2018/03 58 / 57

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