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電子出版基礎講座

出版の明日はどっちだ




           2012/6/7 自由電子出版 長谷川 秀記
最初の電子出版元年
? 1983年(昭和58年)7月15日
 ? 「ファミリーコンピュータ」発売

 ? コンピュータがメディアになった日



? コンピュータはメディアとして旧来のメ
ディアにとって代わろうとしている。人
類の辿ってきた読み書きの歴史を振り
返りながら将来のメディアの姿を考え
る。                     Gleam (Wikipedia)
メディアが文化を変える
 ― 情报流通技术の歴史

?現在起こっている変化は数千年の時
間の流れの中で理解すべきこと

と考えると気が楽になる。

?変化の方向を確信しつつ、気長に時を
待つ。

?明日なのか10年後なのかそれは神の
みぞ知る世界
情报流通技术の歴史
    保存する技术と流通する技术
情報技術のふたつの側面

? 固定する――
  石碑
? 伝達する――
  のろし→インターネット


? 情報技術の発展は伝達
に重きが置かれている?
文字の発明
ことばの固定化
文字の発明
? 楔形文字 ヒエログリフ 漢字…
? 固定化→時間?空間の超越


? 時間の超越
  ? =硬く動かせないものに刻む
  ? メディア:石
? 空間の超越
  ? =軽いものに書いて運ぶ
  ? メディア:竹簡、パピレス
                              タルタリアのタブレット 紀元前4500年
                              Nikola Smolenski (Wikipedia)
? 「文字」に反対したしたソクラテス
   ? 書き留められた言葉「死んだ会話」(反論を許さず、柔軟性に欠けた沈黙)
   ? 書き言葉が記憶を破壊する
   ? しかしソクラテスの思想もプラトンなどによる文字により伝わった
文字を乗せる媒体の改良
        ―グーテンベルク前史
石
粘土板
パピルス
羊皮紙?紙
手写本
石に刻む
? 古来より愛用され現在に至るまで使わ
  れている技術
? 保存する技術はあまり変化していない




? 石鼓文(せっこぶん)
  ? 戦国時代の秦(紀元前374年頃?)
  ? 狩猟を描写した詩歌
  ? 「風雨欠剥苔蘚渋(風雨に削られ苔に蒸す)」
             韋応物(唐の詩人)「石鼓歌」
金色光沢陽極酸化処理アルミニウム合金
? 探査機パイオニアの人類からのメッセージ 1972~3




                               NASA
粘土板
媒体が文字を変化させる
粘土板
? 楔形文字
   ? 沃土=洪水=粘土
   ? 葦のスティック
? 素材が身近=無料
? 火災に強いメディア
? 型押しで複製できた


? 重い
? 綴じたり丸めたりできな
い
媒体が文字を変化させる
? 筆記するのではなく押しつける




                             Dbachmann (wikipedia)

 ?   新しいメディアは新しい文化を作る

 ?   ボールペン? ガリ版(謄写版)? ナール?
     ?   → 丸文字
 ?   コンピュータ
     ?   漢字の使用が楽→漢字使用頻度が増す
         ?   印刷標準字体
     ?   みんなが発信
         ?   CGM
粘土板が達成したこと
? 作成
   ? 情報作成の容易さ
   ? 書記という職業
? 蓄積
   ? 板を整理することで情報を蓄積
   ? 図書館
? 伝達
   ? 少し難、石よりはまし
パピルス
可搬性
情報パッケージ(巻子本)
パピルス                                  1. パピルス草(数mの高さがあ
                                         る草)の中程を切る
? 可搬性                                 2. 縦に薄く削ぎ、長い薄片を作
                                         る
? 情報の固定化?蓄積→伝達                        3. 水の中で少し腐敗させる
                                      4. 少しずつ重ねながら並べ,そ
                                         の上に直交方向に並べる
                                      5. 槌などで念入りに叩き組織を
                                         潰す。
                                      6. 圧搾機やローラーなどで脱
                                         水
                                      7. 4日~1週間、日陰で乾燥
                                      8. 表面を石や貝殻、動物の牙
                                         でこすって平滑にする

                                      ?   製造行程が複雑
                                      ?   生産地が限られる
                                      ?   →高価




            tato grasso (Wikipedia)
ヒエログリフの変化


                       ヒエラティック
                        (神官文字)




ヒエログリフ(聖刻文字)



        デモティック(民衆文字)
パピレス時代で達成したこと
? 作成 情報作成はより容易に
? 蓄積 巻子で整理
   ? アレクサンドリア図書館
   ? 燃えてしまう
   ? 保存性が悪い
? 伝達 良好




                                            “The Great Library of Alexandria“ O. Von Corven 19世紀
新アレクサンドリア図書館   Photo by Hajor (Wikipedia)
巻子本
? 情報パッケージング
? 巻く
  ? パピルスは綴じることができない
  ? 長くつなげることはできた
  ? 段組




                          本と人の歴史事典(髙宮利行?原田範行 柏書房)
              リンド数学パピルス
冊子体の発明
本のハードウェアの完成
冊子体の発明
? 冊子体の発明時期は明確ではない
  ? 西洋で一般的になって来たのは4世紀くらいか?
  ? 羊皮紙~紙


? 冊子体=ランダムアクセス
? 本のハードウェアの完成
  呼び出し番号としてのPage
  の確立はグーテンベルク以降
? 情報のパッケージ
  ? 本棚というアクセス装置
手写本の時代
? 本はたいへん高価で
貴重なもの

 ? 修行そのもの
   or
 ? 自分で書き写すもの


 ? 写字生




               本と人の歴史事典(髙宮利行?原田範行 柏書房)
手写本
(装飾写本)




 エウトロピウスのローマ史(15世紀)


                      本と人の歴史事典(髙宮利行?原田範行 柏書房)
锁付の本




       本と人の歴史事典(髙宮利行?原田範行 柏書房)
手写本時代の本
? 紀元前5世紀のアテネに本屋があった


? 通常は著者収入は無視
  ? 名声→経済的利益
? 1冊作っても1000冊作っても1部あたりのコストは同じ


? 公表されればコピーは自由
? 写本は修行?学習でもあった


? 印刷
  ? 巨額な初期投資 売れれば大きな儲け
印刷術の発明
 現在の出版の姿が出来上がる
   =大量コピー→流通
  1450年 グーテンベルク
印刷術の発明者は誰?
? 版木
  ? 百万塔陀羅尼(764年)
? 陶活字
  ? 北宋 1041~48年頃
? 朝鮮金属活字
  ? 12~13世紀 高麗


? グーテンベルク
  ? 1450年


? 嵯峨本
  ? 17世紀初頭 本阿弥光悦
  ? 連綿体の木活字
? 駿河版
  ? 17世紀初頭 徳川家康
                                ↑NDL
  ? 銅活字



                   ←IPA 教育用画像素材から
初期の印刷工场




          本と人の歴史事典(髙宮利行?原田範行 柏書房)
文选台
文选台
印刷術の発明は情報の流通革命だった
? Copy技術の革新
? 大量複製→情報流通
 ? 情報流通速度の革新
? 情報市場の成立
 ? 行商/貸し本屋/書店
 ? 新聞/雑誌


 ? 現在の印刷本の世界は基本的
   にこの時点から変化していない
 ? 現在、情報流通のための大量
   複製という方法論が行き詰まっ
   ている。

                    本と人の歴史事典(髙宮利行?原田範行 柏書房)
近代~現代の発明
物流の発展
文字以外のものを複製可能に
伝達の方法の革新
コンピュータ
近代~现代の発明1    物流の発展
? 物流の発展
 ? 駅馬車は郵便馬車でもあった
 ? 物体に固定した情報を世界中にばらまく


? →出版~マスコミの発展




   ? 駅馬車→ハイウェイ→情報ハイウェイ(イン
    ターネット)
近代~现代の発明2          画像?音声?動画
? 文字以外のものを複製可能に
   ? 画像
   ? 写真(1839年)
 ? 音声
   ? レコード(1877年)   テープレコーダー   CD
 ? 動画
   ? 映画(1891)   ビデオ
近代~现代の発明3    情報のもの離れ
? 伝達の方法の革新(情報のもの離れの始まり)
   ? 電話 無線 ラジオ テレビジョン


? しかし放送は少数者の強力な伝達手段だった
   ? ラジオを使った国民動員(ナチス)
   ? インターネットは多数が発信可能(弊害も)
   ? ジャスミン革命?
近代~现代の発明4    情報マシンとネットワーク
? コンピュータ
   ? 既存の記録方式を統合的に扱う技術
   ? 文字?画像?音声?動画
 ? インターネット
   ? 瞬時に
   ? 全世界に
   ? 安価に
   ? 誰でも

? 情報革命
コンピュータというメディア
エニアック
パーソナルコンピュータ
CD-ROM
インターネット
知識マシンの登場
? コンピュータ
   ? ENIAC:弾道計算を素早く行う必要性から開発された
DynaBook メディアとしてのコンピュータ
? パーソナルコンピュータの
究極の姿はメディア機械と
して描かれている。




                 アラン?ケイが提唱
                 "A Personal Computer for
                 Children of All Ages“
                 ( 1972年 ACM National Conference)
パーソナルコンピュータ
? パーソナルコンピュータは大衆に知的機械を提供した
                            1970年代末

                  ?   能力的には計算機の域をで
                      なかった

                  ?   PCゲームなどコンテンツ系
                      でも先駆的試み
CD-ROM DVD-ROM   1980年代後半~

? 「大量データ」を格納でき
  「大量に生産」できる媒体
? パッケージ媒体

? 電子出版の立ち上げのきっ
 かけとなる。


? 「もの」
 ? 流通は従前通り
   ? 管理手法
   ? 流通手法
   ? 保存
 ? ソフトショップ?書店
internet
           ? インターネットは世界中
           の知識へアクセスする道
           路を建設した。


            ? 情報のもの離れ
               &
            ? 多数が発信可能
              ? 情報流通のベクトルが
               大きく変化
携帯電話の時代
? もっとも普及した情報端末
? もっとも普及したユビキタ
ス端末
 ? 何時でも何処でも誰でも
スマートフォン?タブレット端末
          ユビキタス
          アプリ
          shop (AppStore etc)
          読書してくれるかなぁ…
読書専用端末 Kindle, Sony Reader …
e-Inkなど反射型電子ペーパー




 少なくともアメリカでは電子書籍がこの端末で普及した
 日本では???
グーテンベルク的方法論の行き詰まり
物流に頼った情報流通の破綻
インターネットなどの影響
物流に頼った情報流通の破綻
? 印刷本=大量Copyモデル
? 本という物体の大量生産
     ?店頭での見本展示


? 物流の破綻 ?   出版不況
 ? 出版売り上げ 15年続くダウン


 ? 新刊ラッシュ(年7~8万点?!)、注文品の遅さ、返品
 ? 在庫負担、絶版…
委託販売制
出版社                     書店        書店
      出版社   取 次           書店
出版社               取 次             書店        読
                             書店
      出版社    取 次                  書店        者
                        書店
出版社                          書店


新刊配本
(委託)
                         返品            販売
買切注文
新刊ラッシュの原因
? 重版は店頭に並ばない
 ? 類似本を新刊として発売する

? 委託販売は仮払い制度がある
 ? 資金繰りのための新刊=自転車操業



? 返品の増大
? コスト増大、採算悪化
? 本の質低下


? 大量Copyモデルの帰結
電子出版は出版不況脱却の解?
? 物流の破綻


? 情報のもの離れが必要


ネットワーク出版

? グーテンベルク的方法論の破綻から導き出される一つの解
? 10年くらい前まではこんな構図で電子出版を語ってきた


? しかしネット書店という解もあるわけで…
インターネットの時代に入り
? 時間の奪い合い
? コンテンツの競合
  ? 雑誌
 ? Web自体が雑誌的
 ? 広告を奪われる
? 実用書
  ? Webで事足りる
?…


? 即時性?無料?大量
? 真の問題は新しい情報媒体ではないのか?
本が解体する
? 情報のもの離れが必要


ネットワーク出版

? グーテンベルク的方法論の破綻から導き出される一つの解
? しかし、事態はもっと深刻かつ複雑



? 冊子体という便利な入れ物の限界



                     ? 「スライド 本が解体する」へ続く

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