狠狠撸

@xylnao11 浜田直樹
株式会社アックス

要旨

FPGAボード(Avnet Spartan-6)にOpenCoresの
PDP-11を移植した→実はたいしたことない。

FPGAボード1枚7,980円@秋月電子だけでここまで
遊べる。工作不要。

ソフト屋がハードウェアの基礎を理解する絶好の
チャンス。というわけで、ソフト屋視点の話。

私について

UNIX屋。386BSDあたりから本格的にUNIXをいじ
りはじめる。必要に迫られてFreeBSDのネットワー
クドライバーを書いたり。
Darwin/x86をApple社外で最初に動かしたり。
UNIX 32/V(元祖32bit UNIX)をVAXエミュレーター
上で動かしたり。
ハードウェアに関しては素人。
@syuu1228さんとは元同僚。

なんでこんな話をすることになったか
教訓：口は災いの元
Lions Commentary on UNIXの読書会にて。
PDP-11の回路図をこっそり読んだりしていた。
「FPGAでPDP-11が動くらしい」→共同購入
うっかり「別のアプローチをさぐってみる」と。
啖呵を切ったものの、どうしたものか。
安価なFPGAが出回ってるので何とかなるか？
→何とかなってよかった。

FPGAとは何か

Field Programmable Gate Array：
プログラム可能な
論理回路と
配線の塊。

要するにFPGAとは

レゴとかプラレールみたいなもの
　↓
めちゃくちゃ遊べる

最近流行りののろくろとはだいぶ違う。

名人芸が必要。
ASICに近い、のか？

FPGAの状況

XilinxとAlteraの2大巨頭でシェアの80%。Latticeや
Actelなど弱小メーカーもぼちぼち。
プログラミングのためにはプロプライエタリなツー
ルが必要。環境も強制(WindowsやLinux)。
FPGAは中身が完全に公開されているわけではな
い。中間フォーマットも非公開。
　↓
オープンなソフトウェアの世界の感覚からすると
ちょっと苛々。

FPGAボード

リッチで使い勝手の良いものは高い。
雑誌付録もあるが、使いやすくするには手間とお
金がかかる。
↓
Avnet Microboard：
I/Oは必要最低限のみ。
工作不要。
秋月電子通商で買える
(7,980円)。

PDP-11

1970年～1990年くらいに盛んに使われた16bit「ミ
ニコン」。大型冷蔵庫くらい→チップに。回路図など
の詳細なマニュアルが公開されている。

初期のUNIXのプラットフォーム。
ソースコードが公開されていて、UNIX第6版の詳細
な注釈(Lions本)も出版されている。

PDP-11/70のCPUコアのブロック図
http://bitsavers.org/pdf/dec/pdp11/1170/MP0KB11-C0_1170engDrw_Nov75.pdf

FPGAにPDP-11を実装する

目標は「PDP-11用のプログラムが動く」。PDP-11
の命令セットや周辺の回路をHDLで記述。オリジナ
ルとは違う構成だが、構造は自然と似てくる（内部
ロジックは比較的素直）。
昔と環境が違うので、インターフェースの切り口や
見せ方に工夫が必要(ここが工夫のしどころ)。

OpenCoresのw11のほか、POP-11など実装例が
いろいろ。それぞれ考え方が違っておもしろい。

HDL(Hardware Description Language)

見た目はプログラミング言語に似ている。
コンパイル?リンク?ロード→論理合成?配置実装?
プログラム
仕様記述から出発。テスト記述も意識。

主流はVHDLとVerilog HDL。
C++のクラスライブラリーでハードウェアを記述で
きるようにしたSystemC等もあるが、いまいち流行
らない。

VHDL

Adaベース。激しくダサい（個人の感想です）。
強い型付けの言語。カッチリ感あり。
library ieee;
use ieee.std_logic_1164.all;

entity XOR_ent is
port(x: in std_logic; y: in std_logic; F: out std_logic);
end XOR_ent;

architecture behavior of XOR_ent is
begin
F <= x xor y;
end behavior;

シミュレーション

HDLによる記述は簡単にシミュレーションできる。
ghdlなら無料。

?波形を見ると格好いい。
?目で見て理解できる。
?問題の発見に有効。

いろんなレベルがある。精度が高いほど遅い。

シミュレーション例

UNIXのブートの途中(ghdl + gtkWave)

何をやったか

w11(OpenCores)をAvnet Microboardに移植。
もともと同じFPGAを使っている別のボードでは動
いていた。入出力デバイスをフィッティング。
大変だったのは：
0) VHDLやFPGAの基礎。w11の構成の把握。
1) たいした作業ではない、ということを理解する。
2) FPGAの中でなにがおこっているかを見る。
3) プロプライエタリなツール?環境(CentOS!)に慣
れる。

デモ

先ほどのAvnet Microboardを使用。

CentOS上のコントローラー
?　お話ししながらUNIX Version 6を動かす。
FPGA上に実装したPDP-11コア

うまくいったらおなぐさみ。

のつもりだったんだけど

どうやらFPGAを壊した（１ヶ月ぶり２回目）

てへぺろ(?ω<)

なのでかわりに

もともと動いてたDigilent Nexys3で動かす。
Microboardの倍くらいのお値段。
I/Oが豊富で使いやすい。
MicroboardのFPGAは
Spartan-6のミニ盛り。
こっちは並。

けっこうハイブリッドに动いている

ソフト屋的アプローチ

構造の把握に、doxygen(VHDLに対応)が非常に役
立った。

他にも使える道具はいろいろあるはず。

ロジアナ

XilinxならChipScope(有料)
FPGAの中の信号線を特定のタイミングで読みだ
して記録。
リアルタイムの信号が見えてたのしい。
シミュレーション(見た目はよく似ている)と比較すれ
ばなにがおこっているかすぐにわかる。

FPGA内のRAMに書き込んでいるので制限が厳し
い。

こういうことをして何が嬉しいのか

「ソフト屋はマニュアル通りハードウェアを使えば十
分」か？
「ユーザーはマニュアル通りソフトウェアを使えば
十分」、ではないよね。
　↓
ソフト屋が深入りする必要はない。が、知っていれ
ばそのぶんだけお得。

かもしれない（absolutely no warranty）。

そう、PDP-11ならね。

マニュアル類はもちろん、回路図など詳細な資料
が公開されている。
FPGAやエミュレーターで動かせる。それぞれの
ソースコードが手に入る。
完成度の高いOS(各種UNIX)が動かせる。それぞ
れのソースコードが手に入る。
古いといえば古い。が、基本は今も同じ。むしろ昔
のほうがずっとシンプルでわかりやすい。レイヤー
の下から上まで縦断的に理解するチャンス。
? PDP-11でライバルに差をつけよう！

今後の予定

PDP-11そのものの中身について、まだよくわかっ
ていない。
↓
勉強会やります。
ものすごく大変ではない（たぶん）。
前提はちょっと厳しめ。でないとVHDL&PDP-11勉
強会になってしまう。
温泉＆合宿は重要。

野望

PDP-11の回路をFPGAでそのまま再現する(CPU
の理解にものすごく役立つ)

VAXを実装する(簡単ではない。工夫しがいあり)

無償で公開されているOpenSparcを理解(もはやプ
ロの領域。ちなみにVerilog HDLで記述)

?今ならやりたい放題！

蛇足

XilinxのLinux用開発環境(ISE)はRedHat
Enterprise Linux向け(ダサダサっ)。
→ 確認のため、まずはCentOS 6.2で動かす。
→ FreeBSD-8.3-stableのLinuxエミュレーションで
動きそう（ほぼ動いてる）。

作業環境の集約点をどう作るかは、案外難しい。
→ VMWare & さくらVPSが強い味方。

おしまい：论理合成、しませんか。

狠狠撸

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