20. 疑問①|「死にたい」とつぶやく人って本当に危ない?
? 20代のネット利用者への調査の結果(Sueki, 2015)
‐ 調査対象者全体(14529名)のうちツイッターアカウントを有する
者が8147名(56.1%)
‐ 1114名(7.7%)は過去に「死にたい」とつぶやいたことがあり、
361名(2.5%)は「自殺したい」とつぶやいたことがあった
‐ 「死にたい」とか「自殺したい」とつぶやいている人は、未婚で、
恒常的に飲酒をし、精神科に通院、抑うつ度がとても高く、自傷行為、
自殺念慮、自殺企図歴がある者が多い
「死にたい」等つぶやいている人は自殺のリスクを
有している可能性が高い
● Sueki, H. (2015). The association of suicide-related Twitter use with suicidal behaviour: A cross-sectional
study of young Internet users in Japan. Journal of Affective Disorders, 170, 155–160.
doi:10.1016/j.jad.2014.08.047
21. 疑問②|広告を通じて相談してくる人って本当に危ない?
? 事業の結果(Sueki & Ito, 2018)
‐ 三菱財団の支援による事業(2014-2015年)の支援対象は193名、
データ分析可能な者は154名(男性35.7%、年齢の中央値は20代)
‐ 主訴は、メンタルヘルスが38.3%と最も多く、家族問題(31.8%)、
その他(29.9%)、経済問題(27.3%)と続く
‐ 自殺念慮を有したことがある者は81.2%、
自殺企図歴がある者は42.9%
‐ 支援が奏功し、ポジティブな気分変容が見られた者が28.6%、
これまでに相談していない者へ援助要請した者が25.3%。
合計42.9%で支援が奏功
夜回り2.0での相談者はやはり自殺のリスクが非常に高い
● Sueki, H., & Ito, J. (2018). Appropriate targets for search advertising as part of online gatekeeping for
suicide prevention. Crisis, 39, 197–204. doi: 10.1027/0227-5910/a000486
27. 社会的問題の「人気」の格差
メンタルヘルス(自殺を含む)、難民、犯罪加害者、DV?
虐待、薬物?アルコール依存等への支援は「人気」がない
? 寄付が集まる「人気」の社会課題
‐ がん、国際協力、医療(がん以外)、動物保護、宗教、子ども等
‐ 医療分野内でも「人気」には大きな差がある(≒ 実際に死亡者数の
多い疾患に寄付が集まるわけではない)
‐ 寄付を支えている人は、40~60代、高学歴、専門職/管理職、
宗教に敬虔、経済的に発展した地域への居住
● Body, A., & Breeze, B. (2015). Rising to the challenge: a study of philanthropic support for unpopular
causes. Centre for Philanthropy at the University of Kent.
<https://www.kent.ac.uk/sspssr/philanthropy/documents/Rising_to_the_Challenge.pdf>
※日本語は「NPO法人OVA事務局スタッフブログ(2018年10月26日)」を参照
28. 統計的生命の価値(Value of Statistic Life)
ある事象に起因する統計的死亡を回避するための支払意思額
(Willingness to Pay)を集計し、便宜的に1人の統計的死亡を回避する
ための支払意思額を計算したもの
? 計算方法
‐ リスク削減幅に対するWTPをリスク削減幅で除したもの
例:自殺死亡のリスクを1/10万だけ小さくすることに対し
1000円の支払いをしても良いと考えた場合
統計的生命の価値:1000円÷1/10万=1億円
‐ 問題②の場合、皆さんがこのサービスに1000円支払っても良いと
考えたのであれば、1000円÷4/10万=2500万円
29. 統計的生命の価値の研究結果|自殺の場合
自殺をもとにしたVSLは交通事故より桁が一つ少ない…
? 「自殺学」受講生(大学生)の回答
‐ 組み入れ基準を満たした大学生111&106名分のデータを分析
‐ 自殺死亡リスクを20/10万人から16/10万人へ20%削減することに
対する支払意思額は、中央値で1000円 = 統計的生命の価値 2500万円
? ネット調査の結果
‐ 日本全国のネット利用者2000人からデータ取得、組み入れ基準を
満たした956名分のデータを分析
‐ 自殺死亡リスクを25%削減することに対する支払意思額は、
中央値で1,572円 = 統計的生命の価値 3144万円
● Sueki, H. (2016). Willingness to pay for suicide prevention in Japan. Death Studies, 40, 283–289.
● 末木 新 (2016). 大学生における自殺死亡リスク削減への支払意思額と自殺に関する態度の関係. こころの健康, 31(1), 71–79.
31. 自殺予防への支払意思額の上げ方
客観的知識を提供し、ニーズを明らかにした政策を打つ
? 方法1(Sueki, 2018a)
‐ 自殺対策に対する税金投入への否定的意識を変える
‐ 自殺に関する客観的知識を供与し、「自殺は予防できない」
「自殺は特別な人だけに起こる」といった考えを変える
‐ ただし、世帯年収が多い家に限るという問題も…
? 方法2(Sueki, 2018b)
‐ 国民のニーズに応じた自殺対策を提供する 例:自殺方法の制限
‐ おそらく「自由意志」に介入するかのように見える政策は嫌われている
● Sueki, H. (2018a). Impact of educational intervention on willingness-to-pay for suicide prevention: A quasi-experimental
study involving Japanese university students. Psychology, Health & Medicine, 23, 532–540. doi:
10.1080/13548506.2017.1371777
● Sueki, H. (2018b). Preferences for suicide prevention strategies among university students in Japan: A cross-sectional
study using full-profile conjoint analysis. Psychology, Health & Medicine, 23, 1046–1053.
doi:10.1080/13548506.2018.1478436