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2012/3/26 日本物理学会年会@関西学院大学
物理と社会シンポジウム「福島原発事故と物理学者の社会的責任」?


         原発事故のリスク
           を考える

             東京大学物性研究所?
        東京大学原発災害支援フォーラム(TGF)
                  押川正毅
               ※講演時に利用したスライドと内容は基本的に同じですが、
                       公開にあたり若干編集?補足を行いました
「3.11」以前の私
               や、たぶん皆さんの多く

原発: よく知らない?そんなに関心ない

原子核物理:学部の時習ったけど、かなり忘れた

放射線防護:全然知らない

物理学会に来ても「物理と社会」関係のシンポ
ジウムには出席したことない
「3.11」以降




 物理に携わる人間として、
何かするべき??発言すべき?
   何ができる?
「冷静かつ科学的な情报発信」?

            2011.3.11
         水野先生と早野先生
実际には、初期に1、2、3号机がメルトダウンして
    いたことが(5月になって)确定
有志による翻訳
                                 2011.3.19公開
    http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.html




しかし、私(押川)の見解では、このスライドの
   内容にはかなりの問題があった
注:3/15
文科省?航空機
モニタリングマップ
  (2011.9)
福島とチェルノブイリ事故による汚染比較(群馬大?早川氏)?




 チェルノブイリと「比較の対象になる」広範な汚染
現状でもかなりの汚染だが、これでも
 かなり幸運に救われている面も


いわゆる「最悪シナリオ」
現状よりも更に大規模な汚染の可能性もあっ
たことを考えても、多くの物理学者の事故当
  初の見解はかなり楽観的に過ぎた
物理学者からの情報発信
?全体的に楽観的な方向に誤っていたように見える
     ??    何故?
念のため:
ここで挙げた批判対象の方々は、研究者として尊敬
しており、だからこその疑問です。人格に問題があ
るとか意図的なデマという主張では全くないです。

余談: 普段、本業の物理の研究では、結構フランク
に相互批判を行なっているのでは?原発問題では
(たぶん私も含めて)感情的になりがち??何故?
考えられる要因
?災害時の正常性バイアス
      2003.2.18 韓国地下鉄放火事件
   煙の充満する中、じっと座って待機する乗客

      「冷静」≠ 適切

?今では原子力と物理研究は「別物」だが、歴史的
には物理学の「成果」である               被害が小さくあって
欲しいという心理的バイアス?
?原子力との研究予算等での関係(比較的少ないとは
言え私にもある)      心理的バイアス?
(自覚がなくても利害関係等によるバイアスはあり得る!)
一番大きな原因?
原子力の「専門家」のミスリードに影響された
?????????(責任転嫁かもしれないが…)
専門家は何を語ってきたか
原子炉格納容器が壊れる確率は、1億年に1回
??    大橋弘忠?東大教授 (2005.12.25 佐賀県プルサーマル公開討論会)

(「核分裂反応を止めても炉心の温度上昇は続く」との石橋
教授の指摘について、静岡県への回答)※岩波書店「科学」2011年7月号収録
燃料棒は常に水の中にあるべきである
万一の事故に備えて、緊急炉心冷却装置を備えてお
り…ウランが溶けないようにしている
   班目春樹 東大教授?静岡県アドバイザー(当時)
???????現?原子力安全委員長
実はわかってたけど利害関係のために真実を述べて/
伝えていなかったのか? 自分でも「神話」を信じこ
んでいたのか? ???両方あるようだ

わかっていて(社会一般に)伝えなかった例:
     近藤原子力委員長の「最悪シナリオ」

自身も「安全神話」に洗脳されてしまっていた
(と思われる)例:




            (日経 2012.2.27 民間事故調報告記事)
「専門家」の誤った言説

問題は「3.11」以前の発言に限るものではない

事故が起きたあとも、原発の状況や放射能汚染
の規模についての過小評価が、「専門家」(+
その他の科学者、行政、マスコミ…)によって
くり返されてきた
「AERA」2011.3.19発売号
「パニック?風評被害を     る」と批判
を受けたが… 実際に首都圏にまで「放
射能はきた」
政府は、実は3/21(首都圏の主要な汚染が起きた日)前日
から首都圏の雨に伴う放射能汚染を予見していた、
らしい




SPEEDI結果が公開されてい
れば避けられた被曝は多
かった、はず
2011.05.16 読売新聞
         「チェーンメールで放射線のデマ拡大」
千葉県の柏、(略)の計4市で、飛び地のように放射線の観測数
値が高くなる「ホットスポット」が発生しているといううわ
さが…
文部科学省(略)は「千葉と埼玉で測
定されている数値は平常時と変わら
ない」
「公的機関や報道機関などの根拠の
ある情報を…」
状況の把握と分析のため、デマなど
のメール転送を…
 と、いう大新聞の報道が「デマ」だった!
松戸市ホームページ Q&A (2011/6/15時点→2011/6/16削除)




                   [2011年5月時点]
       東大環境放射線対策プロジェクト(責任者?田中知?原子力国際専攻 教授)
                             ??? [原子力学会会長でもある]
天然石のせいで
も地質のせいで
 もない!




        (2011.11.24掲载)
放射能汚染を矮小化
現代のような厳しい時代に立ち向かう東京大学の役割を、私
は、「知の公共性」という言葉で示しておきたいと思います。
????- 東京大学 濱田総長 H21年度大学院入学式?式辞

意図的→ とっても問題
意図的でない→ 科学的判断力の欠如?とっても問題

                  教員有志要請で
                  ???一部修正
放射能汚染に関す
                       る同様の矮小化
                   は、東大に限らず
                   「専門家」によっ
                   て盛んに行われた




                             ?
中村尚司氏:
放射線審議会前会長、放射線量等布マップの作成等に係る
検討会主査 … 専門家中の専門家、のはず
http://twitpic.com/4wy6hm

  2011.5 押川編集




  福島県(双葉郡)
  2011.3月間降下量
    334万Bq/m2
    2011.12.14
   文科省追加発表
物理学会 第61回年次大会 2006年3月@松山大
       ※このとき、私(押川)は学会自体参加せず
田崎さんによる「ニセ科学」の定義
(シンポジウム講演スライドより)
原子力専門家の言説=ニセ科学?
  田崎さんの「ニセ科学」定義を採用すれば、
     しばしば該当するように見える

「ニセ科学」として議論されてきた例との違い:
????被害がより大きい
????大学や学会等の「権威」に支えられている

 (さらに悪質と言う意味で)通常の「ニセ科学」
   と区別して「ダメ科学」と呼ぶことを提案
物理学者とダメ科学
?(権威に支えられた)「ダメ科学」は「ニセ科
学」より深刻な問題!
?物理学者が「ニセ科学」に厳しく「ダメ科学」
に甘いことが数々あるように見えるのは何故か?(む
しろ逆であるべきではないか?)

一つの理由:物理学の世界に問題がないわけではな
いが、さすがにそこまで「権威」が間違っているこ
とはあまりないので、想像力が働かない
??…僕達の知らない世界もある!
物理は何故比較的マトモ?
?物理学者の人格が他分野に比べ高潔である
物理は何故比較的マトモ?
?物理学者の人格が他分野に比べ高潔である
ー?ということはたぶん無くて
?理学的研究は(比較的)利害関係のしがらみ
が小さい
?物理は(比較的)実験やシミュレーションに
よる検証がしやすい
?単に自分が物理屋なのでそう思ってるだけ
(正常性バイアス)?
まとめ
?原発事故のリスクは、事故の前後を通じて専門家に
何重にも過小評価されてきた?「ダメ科学」問題
?放射線の健康影響評価(本講演では議論できず)に
も、同様の問題がある可能性が高い
?直接の当事者ではなく「中立」であり得る筈の物理
学者も、専門家に引きずられてリスクを過小評価
?リスクを過小評価する構造的問題?→これ自体が原
発(事故)のリスクの一部??
物理学者はどうするべき?
 権威に縛られず、本質を捉えるのが物理学者の
(自己満足を多分に含むにせよ)特質だったはずでは?
   今こそ、そういう能力を発揮すべきでは?
牧野さん@東工大: 3/18の時点で事故の規模を
チェルノブイリの1/5程度とほぼ正しく予測




 別に難しいことはやっていない?「簡単」なオーダー評価
?税金    ?研究費、給与
 国民         政府        科学者

                    専門的知見、研究成果

一応このスキームが成立しているのは、科学?科学者
  への信頼がそれなりにある、からのはず
 「ダメ科学」の存在はこれを根底から覆しうる
専門家集団が信頼できないのであれば、社会が科学
      研究を支えることの正当化も困難に
 「専門」でない科学者にとっても他人事ではない、はず

 ※このスライドは物理学会講演では未使用ですが、質疑の際の議論に関係あるので掲載

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