狠狠撸

狠狠撸Share a Scribd company logo
サインズ?オブ?セーフティ?アプローチの
統計的根拠の検討
一時保護日数を対象とした
階層ベイズモデルによる推定
このスライドについて
? とある研究というか、分析の一部を起こしたものです
? 研究は今後も続いていくので、本結果が結論ってことではないです
? 平日の夕方くらいに謎の悪意をぶつけられて嫌な気持ちになりながら書
いたので、「よく頑張ったね」「殴らなくて偉かったね」と褒めてあげてくだ
さい
問題
? サインズ?オブ?セーフティ?アプローチ(以下SofS)は、1990年代、西オー
ストラリア州に始まり、以後、世界的に広がりを見せている児童虐待対応
ソーシャルワークの考え方
? 某県の一部ではこのフレームワークが広まりつつある
? ケースワーク、ソーシャルワークってどうやってやんの、っていうケース
ワーカーの力になれる技法?考え方として広まるといいなって層もいて、
そのお力になりたい感じ
? SofSをベースとしたソーシャルワークは主に児童相談所におけるケース
ワーカーの仕事のフレームワークの1つとして、その取り組みが各々に取
り入れられるよう、日々実践が積み重ねられている
? その有用性について、諸外国では組織的導入前後で、再虐待率、一時
保護児童数、社会的養護下の児童数の減少等が報告されている
? なお、日本では、SofSについて客観性をもって説明できるデータがない
?今回やってみた
? 本研究では、SofSの費用対効果の説明に値する根拠の検証、諸外国で
検討された“導入前後での数値の変化”以上の明確な根拠の検証を目
的として、分析を行いたい
? SofSの内容について知りたい人は、参考文献リストを見てもらえればと思
います。というかぶっちゃけ自分ケースワーカーじゃないので上手に説明
できないです。
方法
? 質問紙データ(極秘)を統計的に処理した。
? 統計ソフトはR-3.5.2を使用。
? 主な使用パッケージはRstan。
? 本分析はマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)を用いたベイズ推定に
より母数推定を行った。
? ベイズ推定を用いてサンプルサイズの少なさを補うため、一時保護日数
については過去の児童相談所事業概要に掲載されているデータを参照
可能であったため、平均値については平成28年度の全体の平均値であ
る40.7、標準偏差は平成29年度におけるある児童相談所のデータを使用
して62.1という値を使用し、事前分布として設定した。
? (※一時保護期間の性質上、極端に一時保護が長引くケース、つまり外
れ値となるケースが複数想定される。そのため、それを想定した分布とし
て平均値40.7、標準偏差62.1のcauchy分布を事前分布に設定した。)
仮説
? サインズ?オブ?セイフティ?アプローチで用いられる各技法を使用するこ
とにより、一時保護日数が減少する。
統計モデル
質問紙で採集した以下の項目
y:一時保護日数 / ds:デンジャーステイトメントを作った / sg:セイフティゴールを
作った / ssc:セイフティスケールを作った / sfa:ソリューションな質問を用いた
に加え、切片β1、個人の効果rと場所(児童相談所)の効果qも加えたモデルを作成
し、各変数がy:保護日数にどのように影響を与えるかを検討する。
単純なモデルとして、仮に一時保護日数をmuと置くと、
mu=β1+β2ds+β3sg+β4ssc+β5sfa+r+q の線形モデルが作られる。
まず、muは平均値40.7、標準偏差62.1の線形モデルの分布として
mu ~ normal(40.7,62.1) を設定した。
次に、場所の効果について検討する。
児童相談所によって一時保護日数の違いがあるかは、児童相談所事業概要より標準偏差
を算出することにより把握が可能である。また、分布については正規分布を想定する。
以上により、場所の効果qは
q ~ normal (0,10.2) とした。
個人の効果rについては平均0、標準偏差σの正規分布
r ~ normal(0,σ) とした。
一時保護日数yは、前述の外れ値の多さ等により、muの線形モデルを使用
したコーシー分布
Y ~ cauchy(mu,σ) と想定される
以上により、これまで出された統計モデルを整理すると、
mu = b1 + b2*ds + b3*sg + b4*ssc+ b5*sfa + q + r
q ~ normal(0,10.2)
r ~ normal(0,σ)
mu ~ normal(40.7,62.1)
Y ~ cauchy(mu[n],σ)
となり、このモデルを用いて一時保護日数についての階層ベイズモデルを求める。
Stanコード
data {
int N;
int<lower=0, upper=1> ds[N];
int<lower=0, upper=1> sg[N];
int<lower=0, upper=1> ssc[N];
int<lower=0, upper=1> sfa[N];
real<lower=0> Y[N];
}
parameters {
real b1;
real b2;
real b3;
real b4;
real b5;
real q[N];//場所差
real r[N];//個体差
real<lower=0> sigma;
real<lower=0> sigma2;
}
transformed parameters {
real mu[N];
for (n in 1:N)
mu[n] = b1 + b2*ds[n] + b3*sg[n] +
b4*ssc[n] + b5*sfa[n] + q[n] + r[n];
}
model {
for (n in 1:N)
q[n] ~ normal(0,10.2);
for (n in 1:N) r[n] ~normal(0,sigma2);
for (n in 1:N) mu[n] ~ normal(40,61);
for (n in 1:N) Y[n] ~ cauchy(mu[n],
sigma);
}
結果
SofSで用いられる各技法を使用することに
より、一時保護日数が減少するかを検討
した
得られたデータをもとに、指標とする技法
をデンジャーステイトメントを作った(ds)、セ
イフティゴール(sg)を作った、セイフティス
ケールを作った(ssc)、ソリューションな質問
を用いた(sfa)、の4つに絞り、階層ベイズ
モデルによる分析を行った
結果は、一時保護日数減少に寄与するの
はデンジャーステイトメントの作成であるこ
とが示された。
今後
? 「一時保護日数の減少」はアプローチの効果があった結果とみなすかは議論の余地あり。
? 家族がじっくり考える時間ができた結果、一時保護期間が長くなるというケースも現実にあ
り、有効性の指標に用いて良いのかは現在のところ結論は出ていない。
? しかし、本研究ではあくまでも一時保護期間の変化があるか、一時保護期間に当アプロー
チが影響を及ぼしたかという観点でみており、有効性という観点での議論は今後の課題と
なると思われる。
? ケース個々の状況に左右されやすく分散の大きい一時保護日数ではなく、面接回数や、
ケース全体を分母にした再受理?措置の比率を指標とすることも今後は検討すべき。
反省とか
? 階層ベイズモデルの中に事前分布を設定する際、この方法で正しいの
か????
? そもそも、muなんてものを置かずに、そのままYの中に事前分布を置いて
分析したらよかったんじゃないかと今更になって思いましたが、正直よく
わかんないので今度時間があるときにちゃんと勉強し直します…
? そんな状態の分析でも、優しく微笑んでくれた現場のケースワーカー様
は本当に素敵な方でした。神。
参考文献
? 菱川 愛(2013) サインズ?オブ?セーフティ?アプローチ ソーシャルワーク
研究39-1
? 菱川 愛(2013) サインズ?オブ?セーフティ実践のための面接技術 ソー
シャルワーク研究39-2
? 菱川 愛(2013) サインズ?オブ?セーフティ(SoS)のアセスメント ソーシャル
ワーク研究39-3

More Related Content

サインズ?オブ?セーフティ?アプローチの统计的根拠の検讨