2011年大会の「ソーシャルメディアと地球惑星科学」セッションでは、考古学と地理情報システム(GIS)のUstream番組「友引Night!!」のあらましを報告した。2010年夏に放送を開始した同番組は、六曜の友引の日2回に1回のペースで継続的に放送を続け、2012年2月16日時点で25回を数えた。生放送の視聴者数は1人から10人程度であるが、録画(http://ustre.am/fAyw)をいつでも視聴することができ、のべ視聴数は同日時点で884回を数える。
番組の特徴は、考古学とGISに関係する学会?研究会のリポートや研究関連機器の実演にくわえ、関連分野からゲストを招いてトークセッションをおこなうところにある。これまでの実績では、GISに関連して地理学?空間情報科学分野の研究者のべ5人がゲスト出演し、放送終了後のアフタートークの中から新しい研究展開が生まれることもあった。たとえば人文地理学のある研究者は、友引Night!!のゲスト出演がきっかけとなって、地理情報システム学会2011年度研究発表大会にて近藤が主宰した特別セッション「人文フィールドGISの現在?未来」での講演を引き受けてくれた。また、番組で修士論文の構想を語ってくれた大学院生ゲストには、フォローアップとして論文審査後にオフラインの報告会で論文の内容を発表する機会を設けた。
さらに、友引Night!!の視聴者(文化人類学)からの依頼を受け、フィールド系研究者のネットワーク「Fieldnet」が主催する写真術ワークショップでUstream中継の技術協力をおこなった。また、別の視聴者(医療GIS)とは、UstreamとTwitterによる交流がきっかけとなって「ノンジャンルのためのGIS勉強会」および開催地巡検の機会をもち、そこでの対話が発展して、GISを基盤とする離島の総合学術調査を計画中である。
これらのエピソードに共通するのは、UstreamあるいはTwitterというソーシャルメディアが媒介となって、研究会や共同研究プロジェクトというリアルな学術交流が実現した点にある。しかも、たとえばGISを共通の研究基盤とする考古学と地域医療のインタラクションや、野川を共通の研究対象地域とする考古学と人文地理学のインタラクションといったように、これまでの学問分野や学際研究の垣根を越えた研究展開が生まれることも特徴である。地球惑星科学と考古学のソーシャルメディアを介した結びつきにも、大いに期待するところである。