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甲状腺機能低下?腎機能障害を伴う
感音性難聴?めまいの一例
鴨頭輝、藤本千里、木下淳、江上直也、牛尾宗貴、菅澤恵子、岩﨑真一
東京大学耳鼻咽喉科学教室
症例
68歳男性
【主訴】 ふらつき
【現病歴】
19歳頃 右中耳炎の手術施行、その後より難聴
3年前 左難聴
2年前 近医耳鼻科受診したが原因不明
難聴症状は徐々に進行しているが PTA上は変化なし。
この間めまいなし。H25年11月に6級認定。
昨年 胆石の手術を受けてから、急に動作が緩慢になって
きた。良く転倒し、話すのも遅くなってきた。
(診察室に入った際も転倒)
2016.6.15 難聴外来よりめまい外来に精査依頼
耳鳴なし 耳漏なし 耳痛なし 騒音暴露歴 あり
【既往歴】椎間板ヘルニア、胆石 結核なし、抗癌剤なし
【内服薬】なし 【家族歴】兄が原因不明の難聴、姉DM
【生活歴】飲酒歴:焼酎3合/d 50歳まで30年、
喫煙歴:20本/d 20歳-、職業:解体業?メッキ業、アレルギー:なし
MRI 両側大脳白質に斑状のT2延長域が散見される。
加齢性変化から慢性虚血性変化と考えられる。拡散強調画像で
は異常高信号域なし。小脳橋角部および内耳に特記すべき所見
なし。左前額部に径10mm程度の境界明瞭な軟部陰影。質的診
断には至らない。MRAでは主要脳動脈に高度狭窄/閉塞、瘤を認
めなし
甲状腺机能低下?肾机能障害を伴う感音性难聴?めまいの一例
2013/10/24
2013/9/26
2015/3/20
2015/5/19
Ⅱ型
约10歩
右眼瞼下垂。眼球運動制限なし。
注視?頭位?頭位変換眼振なし。
歩行はゆっくり。左によろける傾向あり。
Romberg陽性。
足踏み検査は、10歩程度可能。
動作は緩慢。slurred speech。
FNT, DDK: wnl
下肢の振動覚軽度低下。下肢の筋力は両側低下。
DHI: 32, GDS 11, QIDS-SR 13
AC-cVEMP(burst)
左
右
背景筋電図
BC-cVEMP
左
右
AC-oVEMP
右刺激
左誘発
左刺激
右誘発
背景筋電図
BC-oVEMP
左誘発
右誘発
背景筋電図
自発 閉眼 暗算負荷 左向き
自発 開眼 暗算負荷 左向き
ETT(0.2) Saccadic pursuit
ETT(0.3) ataxic pursuit
Saccade水平 Square wave jerks
厂补肠肠补诲别垂直
OKN
右 左
カロリック?右
カロリック?左
初診後の経過
末梢前庭機能は問題なし。中枢性疑い、神経内科コンサルト
2015/06/25 神経内科
– SCA6の初期は可能性として残されるかもしれないが、
家族歴なし。まずはVitB1の補充。次回貧血、心機能精査。
2015/07/01 内分泌内科
– 原発性甲状腺機能低下症
TSH 140.85μU/mL↑, FT4 0.10ng/dL以下↓,
FT3 0.5pg/mL↓:チラーヂンS開始 12.5μg→3日後25μg
腎機能障害 G3bA1-2 (尿蛋白、潜血陰性、尿中Ca基準
値内)。入院精査は、家庭事情で難しいとのこと。
2015/12/17 内分泌内科
– 甲状腺機能は安定し、近医逆紹介。
甲状腺机能低下?肾机能障害を伴う感音性难聴?めまいの一例
甲状腺机能低下?肾机能障害を伴う感音性难聴?めまいの一例
鑑別疾患
SCA6
家族歴無し
感音性難聴+甲状腺機能低下
Pendredにしては発症が遅い
難聴+腎機能障害
カルシウム正常にてHDR症候群は否定的
脊髄小脳失調症6型
日本で最も患者数の多い優性遺伝性の脊髄小脳失調症
CAGリピートの異常伸長?異常たんぱく蓄積?神経炎
– α1A-カルシウムチャネル遺伝子(CACNA1A)
発症年齢
– 平均45歳(20~66歳)
経過は緩徐進行性で生命予後は比較的良好
失調性歩行、四肢運動失調、小脳性構音障害、注視眼振
Pendred症候群
先天性難聴+10才以後の甲状腺腫(一部で甲状腺機能低下)
常染色体劣性
半数はSLC26A4遺伝子変異、残りは不明
前庭水管拡大
Mondini奇形
HDR 症候群
常染色体優性遺伝
GATA3遺伝子
三主徴
– 副甲状腺機能低下症
– 感音性難聴
– 腎異形成
甲状腺机能低下?肾机能障害を伴う感音性难聴?めまいの一例
を経験した。
中枢性を疑う所見でも、内分泌疾患を常に念頭に置く。

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