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社会的費用の負担と
ローカルの可能性
持続可能性と政策
公共政策大学院2回生 森俊貴

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アウトライン

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1.問題意識
グローバリゼーションが環境問題に与える負の影響
① 環境問題はグローバルな課題
?地球温暖化
?越境汚染    etc..
② グローバリゼーションが環境問題に与える影響
植田和弘「地球環境問題と企業のグローバル活動」 2012 年
“ 企業活動か?ク?ローハ?ルに展開されるということは
、企業活動か?環境に及ほ?す影響も、さまさ?まな経路
を通じて多様な場て?生し?る可能性か?あることを意味
する” 
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1) 資本の自由化
途上国における開発と環境のジレンマ
対外直接投資と債務残高はほぼパラレルに増加
対外直接投資(米ドル ,BOP, 純流入)

債務残高(米ドル)

出所:世界銀行、世界開発指標、 Google Public Data

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1) 資本の自由化
途上国における開発と環境のジレンマ
外資の急激な流入は環境負荷を増大させる
メリット
?道路などの社会的インフラの整備。
?賃金収入の道を拓くこと
?安定的な外貨獲得の手段たりえること
?資本、技術、知識移転の可能性
?良好な外交関係の構築に資する
デメリット
?環境問題。公害、ナイルパーチなど
?環境関係の規制法の未整備
?格差の拡大、固定化
?森林などの自然資源の減少
?労働問題、フェアトレード

出所: Singh and Marzoli ,1995

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1) 資本の自由化
フェアトレードの背景
外資による開発が環境?労働問題に歯車をかけた
環境問題の原因
一次産品生産が根本の原因
1.土地所有制度
2.環境規制の未整備?未遵守。先
進国では禁止されている農薬使
用
3.貧困による負の連鎖
4.単一作物の大規模栽培。直接的
な森林伐採、大量の化学肥料?
殺虫剤使用。それに伴う塩害、
地下水位の上昇など

労働問題の原因
途上国の生産者は、限界生産費用以
下の所得に直面している。
1.交渉力の弱さ。 ( 生産側 ) 貯蔵?加
工する技術の不足。 ( 資本側 ) 寡占状
態。価格弾力性が低い品が多い。ゴ
ム、コーヒー、砂糖、綿など
2.ビジネス環境。貿易実務の不足、信
用通貨の不在、情報入手手段の不足
など
3.資金調達の難しさ、金融インフラ
4.付加価値がつかないサプライチェー
ンの構造

出所:根本志保子「グローバリゼーションと環境問題」日本大学経済科学研究所 ,2007

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1) 資本の自由化
越境する資本と租税回避行為
フリーライド防止が急務だが、仕方がない面も
課税回避の事例

課題

予定額

納税額

Apple

5 億 7000 万 ?

1440 万 ?

Google

2 億 2400 万 ?

600 万 ?

facebook
2100 万 ?
23 万 ?
☆ スターバックスの租税回避講座☆
1.サプライチェーンで利益を分散
2.子会社?関連会社間で融資し、市場
より利息上乗せ
3.知的財産使用料として英国の会社を
利用
出所:ロイター通信、イギリスの事例

?徴税できない≒社会的費用に回す財
源が不足する
?多国間での協調の枠組みづくりの難
しさ。むしろ法人税の引き下げ競争
が起きている。「ビジネスに適した
環境」として特区が設定されている
?そもそも企業を批判するのは無理筋。
企業の租税回避行為は、置かれてい
る状況を考えれば合理的

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2) 国際貿易
フード?ウッドマイレージ
グローバル農業は環境負荷が大きい
フードマイレージ、各国品目別比較

ウッドマイレージ、輸入元別比較

出所:京都府地球温暖化防止活動推進センター

出所:全国地球温暖化防止活動推進センター

国際間の賃金差や技術差に基づいた国際間
分業や専門化は、環境面で負の側面がある
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3) 消費の画一化
マクドナルド化
世界的に嗜好の画一化が進行している
マクドナルド化とは?
 予測可能性、効率性、計算可能
性、制御という要素を重視。

出所:ジョージ?リッツァ『マクドナルド化
する世界』 1999, 早稲田大学出版会

消費の画一化は世界的に進行

出所: washington post HP

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3) 消費の画一化
マクドナルド化
消費からの改革は難しい

個人的見解
環境に配慮した商品を購入
するという消費からの改革
は、大きな影響力を持ち得
ない。
?「安い」ことに敵わない
?最近は流通業者がますま
す力を持つようになってい
る
?人間の倫理観には期待で
きない。長続きしない。

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4) 社会的費用
環境問題への対処策
いわゆる「市場の失敗」への規制が必要
社会的費用とは
“ 社会的費用という語は生産過程
の結果、第三者または社会が受け
、それに対しては私的企業家に責
任を負わせるのが困難な、あらゆ
る有害な結果や損失” K.W.Kapp
≒ 外部不経済
? 企業などの経済主体に対し、環
境問題といった市場価格には算入
できない費用の相当分の負担を求
めるための概念。

環境政策のアプローチ
環境は、市場メカニズムが有効
に機能しないため、市場の失敗
が生じる。それを防ぐ政策。
1.環境規制…環境基準の設定
2.環境訴訟…コースの定理
3.環境税…炭素税など
4.排出権取引…市場化すること
? 基本的に国家がひとつの単位と
なって仕組みをつくる。社会的
費用をいかにして市場価格に組
み込むか、というアプローチ
出所:栗山浩一『環境経済学がよくわかる』
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4) 社会的費用
山西氏の4つの負担原則
グローバリゼーションにより問題の構造は複雑化。
それぞれに合わせた仕組みが必要
「共通だが差異ある責
任」をどう定義するか?
? 背景
 応因原理は筋が通って
いる一方で、原因の特定
が困難、原因者の負担能
力不足、国際社会におけ
る強制力の欠如など、運
用面で課題がある。
? 今後の方向性
 準司法的な機関など、
「調整コスト」を負担す
る国際的な枠組みが必要
出所:「環境にかかわる『社会的費用』をどう考えるか?環境経済学者?寺西俊一氏」『季刊?政
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策?経営研究』三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング ,2007,Vol.4
4) 社会的費用
環境会計、環境財取引
集合行為問題をどう乗り越えるかが鍵
環境会計
1.企業の財務パフォーマンスに関連
する環境保全コスト
2.環境保全活動に伴う経済効果
3.環境パフォーマンスである環境
保全効果
? 環境会計は、株式市場に有効に
組み込むことは可能か?

環境財取引(排出権取引)

EU ETS( 欧州連合域内排出権取引制度 )

出所: JA 共済研究所 ,2013 年

出所:「国内排出量取引制度について」 2013 年 7 月 , 環境省地球温暖化対策課市場メカニズム室 ,HP より

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アウトライン

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2. 環境政策の分類
主体別
誰がイニシアチブを取るかという分類

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1) 主権国家
依然として主役だが裁量の幅は狭まりつつある
強み

弱み

1.「主権」を持っている

1.意思決定に時間がかかる

2.強制力を持つ唯一の存在

2.当選?再選インセンティブが働

3.ある程度の凝集性が保たれている

かない政策は推進されにくい。

場合が多く、合意が調達しやすい

3.国境を越える問題には対処でき
ない
4.国益を巡って対立しがち

事
例
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2) 多国間の枠組み
世界政府ができないかぎり厳しい
強み

弱み

1.国境を越える問題に対処すること

1.調整?合意に至るのが非常に難し

ができる

い

2.先進国の姿勢次第で、国家の政策

2.時間がかかる

的資源を融通しあうことができる

3.基本的に国際社会はアナーキー

3.バイラテラルでは解決しにくい問

なので強制力が働かない

題を解決できる可能性

4.ツーレベルゲーム

事
例
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3)NGO( グレーゾーン組織 )
大きな可能性があるが、強制力という限界も?
強み

弱み

1.国際的な連帯意識を持ちやすい

1.財政的な制約

2.しがらみなく自由に動ける

2.政策決定過程に入り込むのが難

3.倫理観?責任感が強い

しい場合や、国の政治風土

4.活動の物質的なハードルという点

3.強制力の欠如

で、グローバリゼーションの恩恵を

4.倫理観?責任感に依拠

受けている

事
例
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4) 企業
環境配慮はあくまで副次的な要素に留まる
強み

弱み

1.資金力

1.本質的な目標は利益追求

2.技術革新の可能性

2.環境配慮が直接の利益につながら
ない企業が多い
3.株主
4.競争激化によりますます余裕がな
くなりつつある

事
例
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5) 消費者
貨幣経済から距離を取らない限り厳しい ?
強み

弱み

1.だれでもすぐ始められる

1.長続きしない。

2.ムーブメントになりやすい

2.金銭的なハードル

3.日常的に環境のことを考えるきっ

3.倫理観に依拠している

かけになる

4.生産側に対して劣位に立たされ
ている。情報不足など

事
例
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アプローチの急進性
徐々に離脱するのが現実的?

? 現在の資本主義の枠組み
市場メカニズムの中に環境
を組み込もうとする動き
?排出権取引
?環境税
?環境貿易条約
?技術革新

? 脱成長
 市場メカニズムから離れ
ようとする動き
?エコビレッジ
?エシカル消費
?節約?倹約
?身の丈にあった社会
?脱原発

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アウトライン

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3. ローカルからの可能性
社会的費用を負担せざるを得ない仕組みづくりが必要
? 現在の環境対策の問題点
1.対処療法的対応       
問題が明らかになった後から対策
を決定し、実行すること
2.考慮する時間軸の短さ    
瞬間的な価値に重点。排出権取引
など典型例。
3.個別的な合意形成の必要性  
温暖化、生物多様性、化石燃料な
ど、その都度異なる利害関係を調
整して仕組みをつくらなければな
らないこと
4.リヴァイアサン的視点の欠如 
見知らぬ他人への配慮などできる
わけがない、現実的な人間観の不
足

? 必要な要素
1.包括的?システム的な発想  
 個別的ではなく包括的な環境対
策の必要性
2.専門性よりも総合性     
専門性が高まりすぎると、不確実
性も高まる。一部のプロが解決す
るのではなくだれでも実践できる
ような方法論の確立。
3.長期的な比較衡量の視点   
同一の主体に対して、短期的に利
益を得ても、内外目で見ると損を
する状況を作り出すこと 
4.因果応報の原則
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3. ローカルからの可能性
急激なグローバリゼーションが根本的な原因
ローカルからの一提案
社会的な決定を、ある程度地理的
に限定されたローカルな範囲で集
約して行うべき。
具体的施策の例
?自由貿易に一定の制限
?資本の自由化 ( 国境をまたぐ移動 )
を制限
?地方分権を進める、
?ボトムアップ型の環境

ローカルのメリット
1.その領域内では社会的な決定が
強制力を持って完結する。
2.国境を越えることで薄れていく
責任の所在?当事者意識を取り戻
すことができる
3.一定の「地元」に対する縛り付
けの効果により、因果応報の論理
が働き、より長期的な射程で意思
決定を行うようになることで、環
境配慮の重みが相対的に増す。

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エコビレッジ
地域内での完結性が、社会的費用の包合を促す

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