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慢性肺疾患慢性肺疾患
Chronic Lung Disease (CLD)Chronic Lung Disease (CLD)
慢性肺疾患の概念と定義慢性肺疾患の概念と定義
<概念><概念>
新生児の慢性肺疾患は主に生後新生児の慢性肺疾患は主に生後 44 週以後の未熟児に認められ週以後の未熟児に認められ
る呼吸障害で、未熟な肺が基盤にあり、そこに子宮内の絨毛る呼吸障害で、未熟な肺が基盤にあり、そこに子宮内の絨毛
膜羊膜炎膜羊膜炎 (CAM)(CAM) 等の感染や炎症、長期の呼吸管理による酸等の感染や炎症、長期の呼吸管理による酸
素毒性や圧損傷、生後の感染などの侵襲が加わることで局所素毒性や圧損傷、生後の感染などの侵襲が加わることで局所
の炎症と損傷が生じ、それに対して不完全な修復が行われての炎症と損傷が生じ、それに対して不完全な修復が行われて
発症すると考えられている。現在は主に極低出生体重児、超発症すると考えられている。現在は主に極低出生体重児、超
低出生体重児の疾患である。低出生体重児の疾患である。
<定義><定義>
新生児早期から肺の換気障害が持続し、酸素療法が一定期間新生児早期から肺の換気障害が持続し、酸素療法が一定期間
以上必要となる新生児の呼吸障害で、上気道の疾患を除外す以上必要となる新生児の呼吸障害で、上気道の疾患を除外す
る。る。
①① 酸素療法が日齢酸素療法が日齢 2828 をこえて必要な状態をこえて必要な状態
②酸素療法が修正在胎②酸素療法が修正在胎 3636 週をこえて必要な状態週をこえて必要な状態
慢性肺疾患の疫学慢性肺疾患の疫学
19951995 年出生児対象の年出生児対象の CLDCLD 全国調査全国調査
概要:概要: 調査施設数調査施設数 252252 名名 出生体重別の出生体重別の CLDCLD 発症率発症率
入院患者数入院患者数 40,96640,966 名名 10001000 g未満g未満 46.246.2 %%
CLDCLD :: 発症児数発症児数 902902 例例 (2.3%)(2.3%)
10001000 ~~ 14991499 gg 9.79.7 %%
死亡児数死亡児数 5454 例例 15001500 ~~ 19991999 gg0.70.7 %%
在宅酸素療法症例在宅酸素療法症例 5858 例例
6.0%
87.6%
6.4%
死亡
在宅酸素あり
在宅酸素なし
慢性肺疾患の疾患分類基準慢性肺疾患の疾患分類基準 (( 改改
訂訂 ))
ⅠⅠ
新生児の呼吸窮迫症候群新生児の呼吸窮迫症候群 (RDS)(RDS) が先行する新生児慢性肺障害でが先行する新生児慢性肺障害で
、生後、生後 2828 日を超えて胸部日を超えて胸部 XX 線上びまん性の泡沫状陰影もしく線上びまん性の泡沫状陰影もしく
は不規則索状気腫状陰影を呈するものは不規則索状気腫状陰影を呈するもの
ⅡⅡ
RDSRDS が先行する新生児慢性肺障害で、生後が先行する新生児慢性肺障害で、生後 2828 日をこえて胸部日をこえて胸部
XX 線上びまん性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしくは不線上びまん性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしくは不
規則索状気腫状陰影には至らないもの規則索状気腫状陰影には至らないもの
ⅢⅢ
RDSRDS が先行しない新生児慢性肺障害で、臍帯血のが先行しない新生児慢性肺障害で、臍帯血の IgMIgM 高値、絨高値、絨
毛膜羊膜炎、臍帯炎などの出生前感染の疑いが濃厚であり、か毛膜羊膜炎、臍帯炎などの出生前感染の疑いが濃厚であり、か
つ、生後つ、生後 2828 日を超えて胸部日を超えて胸部 XX 線上びまん性の泡沫状陰影もし線上びまん性の泡沫状陰影もし
くは不規則索状気腫状陰影を呈するものくは不規則索状気腫状陰影を呈するもの
’Ⅲ’Ⅲ
RDSRDS が先行しない新生児慢性肺障害で、臍帯血のが先行しない新生児慢性肺障害で、臍帯血の IgMIgM 高値、絨高値、絨
毛膜羊膜炎、臍帯炎などの出生前感染の疑いが濃厚であり、か毛膜羊膜炎、臍帯炎などの出生前感染の疑いが濃厚であり、か
つ、生後つ、生後 2828 日を超えて胸部日を超えて胸部 XX 線上びまん性の不透亮像を呈す線上びまん性の不透亮像を呈す
るも、泡沫状陰影もしくは不規則索状気腫状陰影には至らないるも、泡沫状陰影もしくは不規則索状気腫状陰影には至らない
ものもの
慢性肺疾患の疾患分類基準慢性肺疾患の疾患分類基準 (( 改改
訂訂 ))
ⅣⅣ
RDSRDS が先行しない新生児慢性肺障害で、出生前感染に関してはが先行しない新生児慢性肺障害で、出生前感染に関しては
不明であるが、生後不明であるが、生後 2828 日を超えて胸部日を超えて胸部 XX 線上びまん性の泡沫線上びまん性の泡沫
状状
陰影もしくは不規則索状気腫状陰影を呈するもの陰影もしくは不規則索状気腫状陰影を呈するもの
ⅤⅤ
RDSRDS が先行しない新生児慢性肺障害で、生後が先行しない新生児慢性肺障害で、生後 2828 日を超えて日を超えて
胸部胸部 XX 線上びまん性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしく線上びまん性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしく
はは
不規則索状気腫状陰影に至らないもの不規則索状気腫状陰影に至らないもの
ⅥⅥ 上記Ⅰ~Ⅴのいずれにも分類されないもの上記Ⅰ~Ⅴのいずれにも分類されないもの
厚生省心身障害研究,慢性肺疾患班(小川雄之亮厚生省心身障害研究,慢性肺疾患班(小川雄之亮 19921992 ,藤村正哲,藤村正哲 1996)1996)従来の定義と研究班分類との関係従来の定義と研究班分類との関係
従来の一般的概念従来の一般的概念 研究班分類研究班分類
気管支肺異形成症気管支肺異形成症
Bronchopulmonary dysplasia(BPD)Bronchopulmonary dysplasia(BPD)
ⅠⅠ 型?Ⅱ型型?Ⅱ型
ウィルソン?ミキティ症候群ウィルソン?ミキティ症候群
Wilson-Mikity SyndromeWilson-Mikity Syndrome
ⅢⅢ 型(Ⅳ型は疑型(Ⅳ型は疑
診)診)
慢性肺疾患の疾患分類基準慢性肺疾患の疾患分類基準 (( 改改
訂訂 ))
病型病型 RDSRDS
<子宮内感染><子宮内感染>
IgMIgM 高値高値
絨毛膜羊膜炎絨毛膜羊膜炎
臍帯炎臍帯炎
<胸部<胸部 XX 線所見線所見
>>
生後生後 2828 日を超え日を超え
るる
泡沫状泡沫状 //
気腫状陰影気腫状陰影
ⅠⅠ ++ -- ++
ⅡⅡ ++ -- --
ⅢⅢ -- ++ ++
’Ⅲ’Ⅲ -- ++ --
ⅣⅣ -- 不詳不詳 ++
ⅤⅤ -- -- --
ⅥⅥ 上記以外上記以外
慢性肺疾患分類の新しい流れ慢性肺疾患分類の新しい流れ
新生児呼吸窮迫症候群 (RDS) に加え胎盤の絨毛膜羊膜炎 (CAM) に代表される
胎内の炎症が CLD の発症要因として重要であることは周知の事実であり、
現在用いられている厚生省分類は RDS や CAM の有無により分類されている。
最近になり CAM の中でも亜急性の CAM が CLD と強く関連することや、びま
ん性
絨毛膜羊膜ヘモジデローシス (diffuse chorioamniotic hemosiderosis, DCH) が
独立した CLD の危険因子であることが報告された。
参考文献:
1. 大山牧子、渡辺達也、田中祐吉:早産前期破水と新生児慢性肺疾患.
周産期医学 35 : 357-360 , 2005
2. 渡辺達也、大山牧子、豊島勝昭ら:胎盤病理と臨床像から見た新生児慢性肺
疾患
病型分類の再検討.日本未熟児新生児学会雑誌 18:72-78 . 2006
3. Ohyama M, Itani Y, Yamanaka M, et al. Re-evaluation of chorioamnionitis and
funisitis with a special reference to subacute chorioamnionitis.
Hum Pathol 2002; 33: 183-190
4. Ohyama M, Itani Y, Yamanaka M, et al. Maternal, neonatal, and placental
features associated with diffuse chorioamniotic hemosiderosis, with special
reference to neonatal morbidity and morality. Pediatrics 2004; 113: 800-805
慢性肺疾患分類の新しい流れ慢性肺疾患分類の新しい流れ
病理学的に以下のように分類し、 CLD 分類の病型ごとにその特徴を調べた。
①急性 CAM :好中球が絨毛間腔を中心に浸潤し、羊膜腔へ向かうもの
②亜急性 CAM :変性した好中球と単核球の混在した炎症細胞が絨毛膜板に浸潤
し、
          絨毛膜腔にはほとんどないもの
③ DCH :絨毛膜板に鉄染色陽性の顆粒がびまん性に認められるもの
(1)CLD I,II 型
母体合併症:早産前期破水 (PPROM) も性器出血も稀で、単純な切迫早産が多
かった。
胎盤病理: CAM を約 1/4 に認めたが、その 80 %は ACAM で、 CAM を合併し
ていても
RDS を発症しており、羊膜壊死や DCH は稀であった。
呼吸予後:胸部 X 線所見の有無に依存し、 I 型は在宅酸素療法 (HOT) 例が多
かった。
(2)CLD III,III’ 型
母体合併症: PPROM や性器出血が多かった。
胎盤病理:全例に SCAM と羊膜壊死を認めた。
呼吸予後:両者とも不良で、 III 型は半数が HOT へ移行した。
(3)CLD IV 型
慢性肺疾患分類の新しい流れ慢性肺疾患分類の新しい流れ
亜急性絨毛膜羊膜炎
(SCAM)
びまん性
絨毛膜羊膜
ヘモジデローシ
ス
(DCH)
新生児
呼吸窮迫症候群
(RDS)
慢性肺疾患の症例慢性肺疾患の症例
【妊娠分娩経過】【妊娠分娩経過】
妊娠妊娠 2323 週不正性器出血を認めたため週不正性器出血を認めたため
当院産科へ緊急母体搬送で入院。当院産科へ緊急母体搬送で入院。
母体感染症や基礎疾患はなかったが、母体感染症や基礎疾患はなかったが、
羊水過少と母体感染徴候も認めた。羊水過少と母体感染徴候も認めた。
子宮収縮抑制剤投与で管理したが子宮収縮抑制剤投与で管理したが
妊娠妊娠 2424 週週 33 日陣痛抑制不可となり、日陣痛抑制不可となり、
骨盤位のため緊急帝王切開で出生。骨盤位のため緊急帝王切開で出生。
【出生時経過】【出生時経過】
在胎在胎 2424 週週 33 日、出生体重日、出生体重 542g(SFD)542g(SFD) 。。
幸帽児で出生。破膜時羊水混濁なし。幸帽児で出生。破膜時羊水混濁なし。
その他臍帯異常も認めなかった。その他臍帯異常も認めなかった。
まもなく挿管されまもなく挿管され S-TAS-TA をを 1V1V 投与。投与。
【胎盤病理検査結果】【胎盤病理検査結果】
絨毛膜羊膜炎?臍帯炎とも絨毛膜羊膜炎?臍帯炎とも StageⅢStageⅢ
絨毛幹血管に出血性血管内膜症絨毛幹血管に出血性血管内膜症 (+)(+)
絨毛炎、梗塞は見られません。絨毛炎、梗塞は見られません。 出生時胸腹部出生時胸腹部 XX 線線
慢性肺疾患の症例慢性肺疾患の症例
【胸部【胸部 XX 線所見の変遷】線所見の変遷】
日齢日齢 1414 月齢月齢 1(1( 日齢日齢 45)45) 月齢月齢 44
慢性肺疾患の病態生理慢性肺疾患の病態生理
肺への何らかの障害因子
微生物?酸素?圧?量
↓
局所の炎症反応
インターロイキン等の放出
↓
炎症関連物質による肺組織障害
顆粒球エラスターゼ、活性酸素、 PAF 、 TNF-α 、ロイコトリエンなど
↓
未熟性による異常修復
ビタミンA低値など
↓
組織の化生と異形性
肺組織障害に伴う呼吸障害に対する治療自体(酸素?高圧換気)が障害
因子となり悪循環形成
小川雄之亮: 1990 年出生児における慢性肺疾患患者の疫学調査.平成三年度厚生省心身障害
研究
慢性肺疾患の治療慢性肺疾患の治療
呼吸管理
  1) 可能なら出生後まもなくから nasal CPAP を使用して、挿管管
理を回避
  2) 挿管した児においては、なるべく早期に抜管して nasal DPAP
へ移行
  3) 挿管管理中において
    高頻度振動換気法 (high frequency ventilation: HFO)
    吸気同調人工換気法 (patient triggered ventilation: PTV)
薬物療法
  1) ステロイド療法
    静注:デキサメサゾン(デカドロン ?
)
    吸入:ベクロメサゾン、フルチカゾン(フルタイド ?
)
  2) 気管支拡張薬:テオフィリン
  3) 利尿薬:フロセミド(ラシックス ?
)、クロロサイアザイド、
スピロノラクトン
  4) その他:エリスロマイシン、ビタミンA、ビタミンE
その他
慢性肺疾患の呼吸管理慢性肺疾患の呼吸管理
1.経鼻持続陽圧呼吸法 (Nasal CPAP)
利点: (1) 気管内挿管の回避→肺損傷、過換気、気道感染の回避
(2) 呼吸仕事量の減少
(3) 末梢気道の虚脱を予防→機能的残気量を保持
(4) 閉塞性無呼吸や気管狭窄に対しても有効
問題点: (1) 鼻腔前庭や鼻孔の損傷
(2) 自発呼吸が十分あり循環障害がないことが前提
適応: (1) 中等度呼吸障害の抜管後呼吸管理
(2) 極低出生体重児の無呼吸発作
(3) 軽度の気管狭窄や気管軟化症
(4) 超低出生体重児の超早期抜管後の呼吸管理
機器: (1) Infant flow driver system (Nasal DPAP)
(2) 人工呼吸器
(3) 自家製 CPAP 装置 (bubble NCPAP)
CLDCLD の呼吸管理における注意点の呼吸管理における注意点
1. 圧損傷 barotrauma
高い圧と長い吸気時間により圧損傷が起こる。
2. 高容量による損傷 high volume injury
在胎週数が短いほど胸郭のコンプライアンスが
大きく、同じ吸気圧でも肺の吸気容量が大きくな
り
肺損傷をうけやすい。
3. 低容量による損傷 low volume injury
肺胞や末梢気道系が虚脱と再開放を繰り返すこと
で
生じる shear stress により組織に炎症を引き起こ
す。
4. 酸素毒性 oxygen toxicity
酸素濃度が高いと肺胞内でフリーラジカルを
発生させ肺損傷を起こすとされる。
5. 化学性損傷 chemical injury 、その他
① 最大吸気圧 (PIP)
は
できるだけ低く!
② 病態に応じた
吸気時間?回数設定
を
③ 適切な PEEP 設定
を!
④ 吸入酸素濃度
(FiO2)
はできるだけ低く!
「肺にやさし
い
 呼吸管理」
慢性肺疾患の呼吸管理慢性肺疾患の呼吸管理
1. 経鼻持続陽圧呼吸法
Nasal Continuous Positive Airway Pressure (Nasal CPAP)
利点: (1) 気管内挿管の回避→肺損傷、過換気、気道感染の回避
(2) 呼吸仕事量の減少
(3) 末梢気道の虚脱を予防→機能的残気量を保持
(4) 閉塞性無呼吸や気管狭窄に対しても有効
問題点: (1) 鼻腔前庭や鼻孔の損傷
(2) 自発呼吸が十分あり循環障害がないことが前提
適応: (1) 中等度呼吸障害の抜管後呼吸管理
(2) 極低出生体重児の無呼吸発作
(3) 軽度の気管狭窄や気管軟化症
(4) 超低出生体重児の超早期抜管後の呼吸管理
機器: (1) Infant flow driver system (Nasal DPAP)
(2) 人工呼吸器
(3) 自家製 CPAP 装置 (bubble NCPAP)
慢性肺疾患の呼吸管理慢性肺疾患の呼吸管理
2. 高頻度振動換気 High Frequency Oscillation (HFO)
利点: IMV と比べて1回換気量が極めて少なくてすむため、
肺胞内の圧変化も少ない→肺損傷の軽減
管理: (1) 十分な MAP で換気し肺気量を保つ (high MAP strategy)
(2) PO2 は平均気道内圧 (MAP) で、 PCO2 は Stroke
Volume(SV) で
  調整して管理する
問題点: (1) 外径 2.0mm の挿管チューブでは振動が十分に伝わ
らないため   超早産児や超 SFD の場合には不向きである。
(2) 体位や首の向きで挿管チューブの深さが変わりやすいため
  口角固定や体位保持における工夫が必要である。
3. 呼吸同調人工換気法 Patient Triggered Ventilation(PTV)
慢性肺疾患の薬物治療①慢性肺疾患の薬物治療①
1. ステロイド
主な作用: 抗炎症作用、肺浮腫軽減、細胞膜安定化、????????産生増加
副作用: 消化管出血?穿孔
高血糖
高血圧
神経学的後遺障害(頭囲発育遅延、脳室周囲白質軟化症)
投与方法: デキサメサゾン 0.5mg/kg/day の静注→約 1 週間で漸減中止
主に CLD の急性増悪や抜管困難症合併時などに使用
現時点で吸入療法については十分なエビデンスなし
2. 利尿剤(フロセミド)
主な作用: 肺浮腫軽減→肺コンプライアンス改善と酸素化改善に効果あり
副作用: 電解質異常(主に低 K 血症)
腎石灰化
聴力障害の可能性
投与方法: フロセミド 1 ~ 2mg/kg/day( 分 2) の内服
低 K 血症時にはスピロノラクトンやカリウム製剤を併用
慢性肺疾患の薬物治療②慢性肺疾患の薬物治療②
3. 気管支拡張薬
主な作用: 呼吸機能改善(気道抵抗低下、肺コンプライアンス上昇)
気管支攣縮予防
※ CLD 予防効果は期待できない
副作用: 頻脈、けいれん、高血糖
安全域がせまいため、血中濃度のモニタリングが必要!
投与方法: ネオフィリン 3 ~ 4mg/kg/day の静注または内服
4. エリスロマイシン少量持続療法
主な作用: 抗菌作用以外に気道過分泌の抑制や抗炎症作用などが
関与していると考えられるが、明らかな作用機序は不明
※ CLD 予防効果も証明されていない
投与方法: エリスロマイシン 10 ~ 15mg/kg/day( 分 3 ~ 4) の内服
慢性肺疾患の一般管理慢性肺疾患の一般管理
1. 胃食道逆流現象 (GER) と誤飲
人工呼吸管理中は silent aspiration が起こりやすく、抜管後も CLD 患児で
は
嚥下障害が合併しやすく、努力呼吸により胸腔が陰圧になりやすいために
胃食道逆流現象 (GER) と誤飲が起こりやすい。
主な対策: (1) 体位:腹臥位や上体挙上位
(2) シリンジポンプによるミルクの持続注入
(3) ミルク粘稠度の調整
(4) 十二指腸チューブによる経腸栄養
2. 感染予防
肺の反復感染は CLD 悪化の大きな要因であり、その予防は重要である
主な対策: (1) 定期的な気道分泌物の監視培養→気道感染の早期発見
(2) 手洗いの徹底や物品個別化等の感染対策
(3) 閉鎖式吸引システム
(4) エリスロマイシン少量持続投与(十分なエビデンスはな
し)
(5) γ グロブリン補充療法や RSV ワクチンの予防接種
慢性肺疾患の水分?栄養管理慢性肺疾患の水分?栄養管理
1. 慢性期における水分管理
過剰な水分摂取は肺浮腫を増強し、 CLD を重症化させるため、
慢性期における水分管理では常にドライサイドでの管理を心がける。
慢性期における水分率設定は軽症例で 150mg/kg/day 、
重症例で 100 ~ 120mg/kg/day にする。
2. 輸液管理
体重増減や水分バランス、心エコー評価、血液検査 ( 電解質や BUN,Cr な
ど)を
適宜確認して、輸液内容や水分率を変更するなど、きめ細かな管理を行う
。
3. 栄養管理
CLD 患児では栄養摂取不足と呼吸努力によるエネルギー消費量増大から身
体発育遅延の可能性があり、摂取カロリーを 120 ~ 150kcal/kg/day と通常
よりも
高めに設定する。水分制限下での高カロリー摂取が必要となるため、
強化母乳 (HMS-1) や未熟児用ミルク、あるいは MCT オイル等を使用する
慢性肺疾患の在宅酸素療法慢性肺疾患の在宅酸素療法
在宅呼吸療法 Home Oxygen Therapy(HOT)
人工呼吸管理離脱後も長期にわたり酸素投与を余儀なくされる場合がある。
家族との接触の重要性から HOT 導入による早期退院例が増加している。
自宅では吸着型の酸素濃縮器を用い、外出時には携帯用小型酸素ボンベを
用いるという組み合わせが多い。
適応基準: (1) 呼吸?循環動態が安定している。
(2) 30 %以下の吸入酸素濃度で SpO2 が 95 %以上を保てる。
(3) 哺乳力や栄養状態が良好である。
(4) 家族が協力的である。
(5) 緊急時の受け容れ先病院が近くにある。
酸素濃縮器 携帯用小型
酸素ボンベ
慢性肺疾患と肺高血圧症慢性肺疾患と肺高血圧症
① 背景
超低出生体重児の救命率上昇に伴い、より重症な CLD 症例が増加
し、 HOT の
導入症例も増加している。その中で重症 CLD 症例に合併する肺高血圧症の
予防や管理が重要な問題となっている。 CLD 病型別ではⅠ ,Ⅲ 型の死亡率が
高くなっており、Ⅲ型では 11.6 %にもなっている。
気道感染 長期の入院治療
上気道狭窄 退院後の頻回入院
気道過敏性 急性呼吸循環不全
 重症 CLD PH 増悪 死亡
② 治療
現在のところ確実な治療法はなく、以下のような治療や予防を徹底して行
う。
    表 1  入院時?急性増悪時治療      表 2  外
来通院時治療
  1) 酸素療法 1) 在宅酸素療法 (HOT)
  2) 循環作動薬:強心剤や血管拡張剤 2) 感染症対策: RSVIG (シナジス ?) 等
  3)NO 吸入療法 3) 利尿剤
慢性肺疾患患児のケア慢性肺疾患患児のケア
1. 感染症対策
(1) 手洗いの徹底、手袋の使用、物品の個別化
(2) 閉鎖式吸引システムを用いた気管内吸引
(3) 気管内分泌物の性状確認→悪化時は培養に提出し、 APR スコア等の確
認
2. 気道や肺の保護
(1) 挿管チューブの固定や位置確認
(2) 気管内吸引チューブの深さや気管内吸引圧の確認
(3) 呼吸器の選択や呼吸器設定の確認
4. 換気不全や無気肺予防
(1) 挿管チューブの固定や位置確認
(2) 適切な加湿?加温設定
(3) 理学療法
(4) 気道閉塞の早期発見:経皮?呼気炭酸モニタ、グラフィックモニタも活
用
5. 患児の状態安定
(1) Developmental Care

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  • 2. 慢性肺疾患の概念と定義慢性肺疾患の概念と定義 <概念><概念> 新生児の慢性肺疾患は主に生後新生児の慢性肺疾患は主に生後 44 週以後の未熟児に認められ週以後の未熟児に認められ る呼吸障害で、未熟な肺が基盤にあり、そこに子宮内の絨毛る呼吸障害で、未熟な肺が基盤にあり、そこに子宮内の絨毛 膜羊膜炎膜羊膜炎 (CAM)(CAM) 等の感染や炎症、長期の呼吸管理による酸等の感染や炎症、長期の呼吸管理による酸 素毒性や圧損傷、生後の感染などの侵襲が加わることで局所素毒性や圧損傷、生後の感染などの侵襲が加わることで局所 の炎症と損傷が生じ、それに対して不完全な修復が行われての炎症と損傷が生じ、それに対して不完全な修復が行われて 発症すると考えられている。現在は主に極低出生体重児、超発症すると考えられている。現在は主に極低出生体重児、超 低出生体重児の疾患である。低出生体重児の疾患である。 <定義><定義> 新生児早期から肺の換気障害が持続し、酸素療法が一定期間新生児早期から肺の換気障害が持続し、酸素療法が一定期間 以上必要となる新生児の呼吸障害で、上気道の疾患を除外す以上必要となる新生児の呼吸障害で、上気道の疾患を除外す る。る。 ①① 酸素療法が日齢酸素療法が日齢 2828 をこえて必要な状態をこえて必要な状態 ②酸素療法が修正在胎②酸素療法が修正在胎 3636 週をこえて必要な状態週をこえて必要な状態
  • 3. 慢性肺疾患の疫学慢性肺疾患の疫学 19951995 年出生児対象の年出生児対象の CLDCLD 全国調査全国調査 概要:概要: 調査施設数調査施設数 252252 名名 出生体重別の出生体重別の CLDCLD 発症率発症率 入院患者数入院患者数 40,96640,966 名名 10001000 g未満g未満 46.246.2 %% CLDCLD :: 発症児数発症児数 902902 例例 (2.3%)(2.3%) 10001000 ~~ 14991499 gg 9.79.7 %% 死亡児数死亡児数 5454 例例 15001500 ~~ 19991999 gg0.70.7 %% 在宅酸素療法症例在宅酸素療法症例 5858 例例 6.0% 87.6% 6.4% 死亡 在宅酸素あり 在宅酸素なし
  • 4. 慢性肺疾患の疾患分類基準慢性肺疾患の疾患分類基準 (( 改改 訂訂 )) ⅠⅠ 新生児の呼吸窮迫症候群新生児の呼吸窮迫症候群 (RDS)(RDS) が先行する新生児慢性肺障害でが先行する新生児慢性肺障害で 、生後、生後 2828 日を超えて胸部日を超えて胸部 XX 線上びまん性の泡沫状陰影もしく線上びまん性の泡沫状陰影もしく は不規則索状気腫状陰影を呈するものは不規則索状気腫状陰影を呈するもの ⅡⅡ RDSRDS が先行する新生児慢性肺障害で、生後が先行する新生児慢性肺障害で、生後 2828 日をこえて胸部日をこえて胸部 XX 線上びまん性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしくは不線上びまん性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしくは不 規則索状気腫状陰影には至らないもの規則索状気腫状陰影には至らないもの ⅢⅢ RDSRDS が先行しない新生児慢性肺障害で、臍帯血のが先行しない新生児慢性肺障害で、臍帯血の IgMIgM 高値、絨高値、絨 毛膜羊膜炎、臍帯炎などの出生前感染の疑いが濃厚であり、か毛膜羊膜炎、臍帯炎などの出生前感染の疑いが濃厚であり、か つ、生後つ、生後 2828 日を超えて胸部日を超えて胸部 XX 線上びまん性の泡沫状陰影もし線上びまん性の泡沫状陰影もし くは不規則索状気腫状陰影を呈するものくは不規則索状気腫状陰影を呈するもの ’Ⅲ’Ⅲ RDSRDS が先行しない新生児慢性肺障害で、臍帯血のが先行しない新生児慢性肺障害で、臍帯血の IgMIgM 高値、絨高値、絨 毛膜羊膜炎、臍帯炎などの出生前感染の疑いが濃厚であり、か毛膜羊膜炎、臍帯炎などの出生前感染の疑いが濃厚であり、か つ、生後つ、生後 2828 日を超えて胸部日を超えて胸部 XX 線上びまん性の不透亮像を呈す線上びまん性の不透亮像を呈す るも、泡沫状陰影もしくは不規則索状気腫状陰影には至らないるも、泡沫状陰影もしくは不規則索状気腫状陰影には至らない ものもの
  • 5. 慢性肺疾患の疾患分類基準慢性肺疾患の疾患分類基準 (( 改改 訂訂 )) ⅣⅣ RDSRDS が先行しない新生児慢性肺障害で、出生前感染に関してはが先行しない新生児慢性肺障害で、出生前感染に関しては 不明であるが、生後不明であるが、生後 2828 日を超えて胸部日を超えて胸部 XX 線上びまん性の泡沫線上びまん性の泡沫 状状 陰影もしくは不規則索状気腫状陰影を呈するもの陰影もしくは不規則索状気腫状陰影を呈するもの ⅤⅤ RDSRDS が先行しない新生児慢性肺障害で、生後が先行しない新生児慢性肺障害で、生後 2828 日を超えて日を超えて 胸部胸部 XX 線上びまん性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしく線上びまん性の不透亮像を呈するも、泡沫状陰影もしく はは 不規則索状気腫状陰影に至らないもの不規則索状気腫状陰影に至らないもの ⅥⅥ 上記Ⅰ~Ⅴのいずれにも分類されないもの上記Ⅰ~Ⅴのいずれにも分類されないもの 厚生省心身障害研究,慢性肺疾患班(小川雄之亮厚生省心身障害研究,慢性肺疾患班(小川雄之亮 19921992 ,藤村正哲,藤村正哲 1996)1996)従来の定義と研究班分類との関係従来の定義と研究班分類との関係 従来の一般的概念従来の一般的概念 研究班分類研究班分類 気管支肺異形成症気管支肺異形成症 Bronchopulmonary dysplasia(BPD)Bronchopulmonary dysplasia(BPD) ⅠⅠ 型?Ⅱ型型?Ⅱ型 ウィルソン?ミキティ症候群ウィルソン?ミキティ症候群 Wilson-Mikity SyndromeWilson-Mikity Syndrome ⅢⅢ 型(Ⅳ型は疑型(Ⅳ型は疑 診)診)
  • 6. 慢性肺疾患の疾患分類基準慢性肺疾患の疾患分類基準 (( 改改 訂訂 )) 病型病型 RDSRDS <子宮内感染><子宮内感染> IgMIgM 高値高値 絨毛膜羊膜炎絨毛膜羊膜炎 臍帯炎臍帯炎 <胸部<胸部 XX 線所見線所見 >> 生後生後 2828 日を超え日を超え るる 泡沫状泡沫状 // 気腫状陰影気腫状陰影 ⅠⅠ ++ -- ++ ⅡⅡ ++ -- -- ⅢⅢ -- ++ ++ ’Ⅲ’Ⅲ -- ++ -- ⅣⅣ -- 不詳不詳 ++ ⅤⅤ -- -- -- ⅥⅥ 上記以外上記以外
  • 7. 慢性肺疾患分類の新しい流れ慢性肺疾患分類の新しい流れ 新生児呼吸窮迫症候群 (RDS) に加え胎盤の絨毛膜羊膜炎 (CAM) に代表される 胎内の炎症が CLD の発症要因として重要であることは周知の事実であり、 現在用いられている厚生省分類は RDS や CAM の有無により分類されている。 最近になり CAM の中でも亜急性の CAM が CLD と強く関連することや、びま ん性 絨毛膜羊膜ヘモジデローシス (diffuse chorioamniotic hemosiderosis, DCH) が 独立した CLD の危険因子であることが報告された。 参考文献: 1. 大山牧子、渡辺達也、田中祐吉:早産前期破水と新生児慢性肺疾患. 周産期医学 35 : 357-360 , 2005 2. 渡辺達也、大山牧子、豊島勝昭ら:胎盤病理と臨床像から見た新生児慢性肺 疾患 病型分類の再検討.日本未熟児新生児学会雑誌 18:72-78 . 2006 3. Ohyama M, Itani Y, Yamanaka M, et al. Re-evaluation of chorioamnionitis and funisitis with a special reference to subacute chorioamnionitis. Hum Pathol 2002; 33: 183-190 4. Ohyama M, Itani Y, Yamanaka M, et al. Maternal, neonatal, and placental features associated with diffuse chorioamniotic hemosiderosis, with special reference to neonatal morbidity and morality. Pediatrics 2004; 113: 800-805
  • 8. 慢性肺疾患分類の新しい流れ慢性肺疾患分類の新しい流れ 病理学的に以下のように分類し、 CLD 分類の病型ごとにその特徴を調べた。 ①急性 CAM :好中球が絨毛間腔を中心に浸潤し、羊膜腔へ向かうもの ②亜急性 CAM :変性した好中球と単核球の混在した炎症細胞が絨毛膜板に浸潤 し、           絨毛膜腔にはほとんどないもの ③ DCH :絨毛膜板に鉄染色陽性の顆粒がびまん性に認められるもの (1)CLD I,II 型 母体合併症:早産前期破水 (PPROM) も性器出血も稀で、単純な切迫早産が多 かった。 胎盤病理: CAM を約 1/4 に認めたが、その 80 %は ACAM で、 CAM を合併し ていても RDS を発症しており、羊膜壊死や DCH は稀であった。 呼吸予後:胸部 X 線所見の有無に依存し、 I 型は在宅酸素療法 (HOT) 例が多 かった。 (2)CLD III,III’ 型 母体合併症: PPROM や性器出血が多かった。 胎盤病理:全例に SCAM と羊膜壊死を認めた。 呼吸予後:両者とも不良で、 III 型は半数が HOT へ移行した。 (3)CLD IV 型
  • 10. 慢性肺疾患の症例慢性肺疾患の症例 【妊娠分娩経過】【妊娠分娩経過】 妊娠妊娠 2323 週不正性器出血を認めたため週不正性器出血を認めたため 当院産科へ緊急母体搬送で入院。当院産科へ緊急母体搬送で入院。 母体感染症や基礎疾患はなかったが、母体感染症や基礎疾患はなかったが、 羊水過少と母体感染徴候も認めた。羊水過少と母体感染徴候も認めた。 子宮収縮抑制剤投与で管理したが子宮収縮抑制剤投与で管理したが 妊娠妊娠 2424 週週 33 日陣痛抑制不可となり、日陣痛抑制不可となり、 骨盤位のため緊急帝王切開で出生。骨盤位のため緊急帝王切開で出生。 【出生時経過】【出生時経過】 在胎在胎 2424 週週 33 日、出生体重日、出生体重 542g(SFD)542g(SFD) 。。 幸帽児で出生。破膜時羊水混濁なし。幸帽児で出生。破膜時羊水混濁なし。 その他臍帯異常も認めなかった。その他臍帯異常も認めなかった。 まもなく挿管されまもなく挿管され S-TAS-TA をを 1V1V 投与。投与。 【胎盤病理検査結果】【胎盤病理検査結果】 絨毛膜羊膜炎?臍帯炎とも絨毛膜羊膜炎?臍帯炎とも StageⅢStageⅢ 絨毛幹血管に出血性血管内膜症絨毛幹血管に出血性血管内膜症 (+)(+) 絨毛炎、梗塞は見られません。絨毛炎、梗塞は見られません。 出生時胸腹部出生時胸腹部 XX 線線
  • 12. 慢性肺疾患の病態生理慢性肺疾患の病態生理 肺への何らかの障害因子 微生物?酸素?圧?量 ↓ 局所の炎症反応 インターロイキン等の放出 ↓ 炎症関連物質による肺組織障害 顆粒球エラスターゼ、活性酸素、 PAF 、 TNF-α 、ロイコトリエンなど ↓ 未熟性による異常修復 ビタミンA低値など ↓ 組織の化生と異形性 肺組織障害に伴う呼吸障害に対する治療自体(酸素?高圧換気)が障害 因子となり悪循環形成 小川雄之亮: 1990 年出生児における慢性肺疾患患者の疫学調査.平成三年度厚生省心身障害 研究
  • 13. 慢性肺疾患の治療慢性肺疾患の治療 呼吸管理   1) 可能なら出生後まもなくから nasal CPAP を使用して、挿管管 理を回避   2) 挿管した児においては、なるべく早期に抜管して nasal DPAP へ移行   3) 挿管管理中において     高頻度振動換気法 (high frequency ventilation: HFO)     吸気同調人工換気法 (patient triggered ventilation: PTV) 薬物療法   1) ステロイド療法     静注:デキサメサゾン(デカドロン ? )     吸入:ベクロメサゾン、フルチカゾン(フルタイド ? )   2) 気管支拡張薬:テオフィリン   3) 利尿薬:フロセミド(ラシックス ? )、クロロサイアザイド、 スピロノラクトン   4) その他:エリスロマイシン、ビタミンA、ビタミンE その他
  • 14. 慢性肺疾患の呼吸管理慢性肺疾患の呼吸管理 1.経鼻持続陽圧呼吸法 (Nasal CPAP) 利点: (1) 気管内挿管の回避→肺損傷、過換気、気道感染の回避 (2) 呼吸仕事量の減少 (3) 末梢気道の虚脱を予防→機能的残気量を保持 (4) 閉塞性無呼吸や気管狭窄に対しても有効 問題点: (1) 鼻腔前庭や鼻孔の損傷 (2) 自発呼吸が十分あり循環障害がないことが前提 適応: (1) 中等度呼吸障害の抜管後呼吸管理 (2) 極低出生体重児の無呼吸発作 (3) 軽度の気管狭窄や気管軟化症 (4) 超低出生体重児の超早期抜管後の呼吸管理 機器: (1) Infant flow driver system (Nasal DPAP) (2) 人工呼吸器 (3) 自家製 CPAP 装置 (bubble NCPAP)
  • 15. CLDCLD の呼吸管理における注意点の呼吸管理における注意点 1. 圧損傷 barotrauma 高い圧と長い吸気時間により圧損傷が起こる。 2. 高容量による損傷 high volume injury 在胎週数が短いほど胸郭のコンプライアンスが 大きく、同じ吸気圧でも肺の吸気容量が大きくな り 肺損傷をうけやすい。 3. 低容量による損傷 low volume injury 肺胞や末梢気道系が虚脱と再開放を繰り返すこと で 生じる shear stress により組織に炎症を引き起こ す。 4. 酸素毒性 oxygen toxicity 酸素濃度が高いと肺胞内でフリーラジカルを 発生させ肺損傷を起こすとされる。 5. 化学性損傷 chemical injury 、その他 ① 最大吸気圧 (PIP) は できるだけ低く! ② 病態に応じた 吸気時間?回数設定 を ③ 適切な PEEP 設定 を! ④ 吸入酸素濃度 (FiO2) はできるだけ低く! 「肺にやさし い  呼吸管理」
  • 16. 慢性肺疾患の呼吸管理慢性肺疾患の呼吸管理 1. 経鼻持続陽圧呼吸法 Nasal Continuous Positive Airway Pressure (Nasal CPAP) 利点: (1) 気管内挿管の回避→肺損傷、過換気、気道感染の回避 (2) 呼吸仕事量の減少 (3) 末梢気道の虚脱を予防→機能的残気量を保持 (4) 閉塞性無呼吸や気管狭窄に対しても有効 問題点: (1) 鼻腔前庭や鼻孔の損傷 (2) 自発呼吸が十分あり循環障害がないことが前提 適応: (1) 中等度呼吸障害の抜管後呼吸管理 (2) 極低出生体重児の無呼吸発作 (3) 軽度の気管狭窄や気管軟化症 (4) 超低出生体重児の超早期抜管後の呼吸管理 機器: (1) Infant flow driver system (Nasal DPAP) (2) 人工呼吸器 (3) 自家製 CPAP 装置 (bubble NCPAP)
  • 17. 慢性肺疾患の呼吸管理慢性肺疾患の呼吸管理 2. 高頻度振動換気 High Frequency Oscillation (HFO) 利点: IMV と比べて1回換気量が極めて少なくてすむため、 肺胞内の圧変化も少ない→肺損傷の軽減 管理: (1) 十分な MAP で換気し肺気量を保つ (high MAP strategy) (2) PO2 は平均気道内圧 (MAP) で、 PCO2 は Stroke Volume(SV) で   調整して管理する 問題点: (1) 外径 2.0mm の挿管チューブでは振動が十分に伝わ らないため   超早産児や超 SFD の場合には不向きである。 (2) 体位や首の向きで挿管チューブの深さが変わりやすいため   口角固定や体位保持における工夫が必要である。 3. 呼吸同調人工換気法 Patient Triggered Ventilation(PTV)
  • 18. 慢性肺疾患の薬物治療①慢性肺疾患の薬物治療① 1. ステロイド 主な作用: 抗炎症作用、肺浮腫軽減、細胞膜安定化、????????産生増加 副作用: 消化管出血?穿孔 高血糖 高血圧 神経学的後遺障害(頭囲発育遅延、脳室周囲白質軟化症) 投与方法: デキサメサゾン 0.5mg/kg/day の静注→約 1 週間で漸減中止 主に CLD の急性増悪や抜管困難症合併時などに使用 現時点で吸入療法については十分なエビデンスなし 2. 利尿剤(フロセミド) 主な作用: 肺浮腫軽減→肺コンプライアンス改善と酸素化改善に効果あり 副作用: 電解質異常(主に低 K 血症) 腎石灰化 聴力障害の可能性 投与方法: フロセミド 1 ~ 2mg/kg/day( 分 2) の内服 低 K 血症時にはスピロノラクトンやカリウム製剤を併用
  • 19. 慢性肺疾患の薬物治療②慢性肺疾患の薬物治療② 3. 気管支拡張薬 主な作用: 呼吸機能改善(気道抵抗低下、肺コンプライアンス上昇) 気管支攣縮予防 ※ CLD 予防効果は期待できない 副作用: 頻脈、けいれん、高血糖 安全域がせまいため、血中濃度のモニタリングが必要! 投与方法: ネオフィリン 3 ~ 4mg/kg/day の静注または内服 4. エリスロマイシン少量持続療法 主な作用: 抗菌作用以外に気道過分泌の抑制や抗炎症作用などが 関与していると考えられるが、明らかな作用機序は不明 ※ CLD 予防効果も証明されていない 投与方法: エリスロマイシン 10 ~ 15mg/kg/day( 分 3 ~ 4) の内服
  • 20. 慢性肺疾患の一般管理慢性肺疾患の一般管理 1. 胃食道逆流現象 (GER) と誤飲 人工呼吸管理中は silent aspiration が起こりやすく、抜管後も CLD 患児で は 嚥下障害が合併しやすく、努力呼吸により胸腔が陰圧になりやすいために 胃食道逆流現象 (GER) と誤飲が起こりやすい。 主な対策: (1) 体位:腹臥位や上体挙上位 (2) シリンジポンプによるミルクの持続注入 (3) ミルク粘稠度の調整 (4) 十二指腸チューブによる経腸栄養 2. 感染予防 肺の反復感染は CLD 悪化の大きな要因であり、その予防は重要である 主な対策: (1) 定期的な気道分泌物の監視培養→気道感染の早期発見 (2) 手洗いの徹底や物品個別化等の感染対策 (3) 閉鎖式吸引システム (4) エリスロマイシン少量持続投与(十分なエビデンスはな し) (5) γ グロブリン補充療法や RSV ワクチンの予防接種
  • 21. 慢性肺疾患の水分?栄養管理慢性肺疾患の水分?栄養管理 1. 慢性期における水分管理 過剰な水分摂取は肺浮腫を増強し、 CLD を重症化させるため、 慢性期における水分管理では常にドライサイドでの管理を心がける。 慢性期における水分率設定は軽症例で 150mg/kg/day 、 重症例で 100 ~ 120mg/kg/day にする。 2. 輸液管理 体重増減や水分バランス、心エコー評価、血液検査 ( 電解質や BUN,Cr な ど)を 適宜確認して、輸液内容や水分率を変更するなど、きめ細かな管理を行う 。 3. 栄養管理 CLD 患児では栄養摂取不足と呼吸努力によるエネルギー消費量増大から身 体発育遅延の可能性があり、摂取カロリーを 120 ~ 150kcal/kg/day と通常 よりも 高めに設定する。水分制限下での高カロリー摂取が必要となるため、 強化母乳 (HMS-1) や未熟児用ミルク、あるいは MCT オイル等を使用する
  • 22. 慢性肺疾患の在宅酸素療法慢性肺疾患の在宅酸素療法 在宅呼吸療法 Home Oxygen Therapy(HOT) 人工呼吸管理離脱後も長期にわたり酸素投与を余儀なくされる場合がある。 家族との接触の重要性から HOT 導入による早期退院例が増加している。 自宅では吸着型の酸素濃縮器を用い、外出時には携帯用小型酸素ボンベを 用いるという組み合わせが多い。 適応基準: (1) 呼吸?循環動態が安定している。 (2) 30 %以下の吸入酸素濃度で SpO2 が 95 %以上を保てる。 (3) 哺乳力や栄養状態が良好である。 (4) 家族が協力的である。 (5) 緊急時の受け容れ先病院が近くにある。 酸素濃縮器 携帯用小型 酸素ボンベ
  • 23. 慢性肺疾患と肺高血圧症慢性肺疾患と肺高血圧症 ① 背景 超低出生体重児の救命率上昇に伴い、より重症な CLD 症例が増加 し、 HOT の 導入症例も増加している。その中で重症 CLD 症例に合併する肺高血圧症の 予防や管理が重要な問題となっている。 CLD 病型別ではⅠ ,Ⅲ 型の死亡率が 高くなっており、Ⅲ型では 11.6 %にもなっている。 気道感染 長期の入院治療 上気道狭窄 退院後の頻回入院 気道過敏性 急性呼吸循環不全  重症 CLD PH 増悪 死亡 ② 治療 現在のところ確実な治療法はなく、以下のような治療や予防を徹底して行 う。     表 1  入院時?急性増悪時治療      表 2  外 来通院時治療   1) 酸素療法 1) 在宅酸素療法 (HOT)   2) 循環作動薬:強心剤や血管拡張剤 2) 感染症対策: RSVIG (シナジス ?) 等   3)NO 吸入療法 3) 利尿剤
  • 24. 慢性肺疾患患児のケア慢性肺疾患患児のケア 1. 感染症対策 (1) 手洗いの徹底、手袋の使用、物品の個別化 (2) 閉鎖式吸引システムを用いた気管内吸引 (3) 気管内分泌物の性状確認→悪化時は培養に提出し、 APR スコア等の確 認 2. 気道や肺の保護 (1) 挿管チューブの固定や位置確認 (2) 気管内吸引チューブの深さや気管内吸引圧の確認 (3) 呼吸器の選択や呼吸器設定の確認 4. 換気不全や無気肺予防 (1) 挿管チューブの固定や位置確認 (2) 適切な加湿?加温設定 (3) 理学療法 (4) 気道閉塞の早期発見:経皮?呼気炭酸モニタ、グラフィックモニタも活 用 5. 患児の状態安定 (1) Developmental Care