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精神症状の理解とアセスメント④
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Kana Aizawa
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精神症状を表す医学用語は350以上あると言われています。その中から看護でもよく使われる用語を、MSEに基づいて整理してみました。 (院内学習会のスライドを修正したものです)
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精神症状の理解とアセスメント④
1.
精神症状の理解とアセスメント④ ~MSEから捉える精神症状(思考)~ 医療法人社団正心会 岡本病院 精神看護専門看護師 相澤加奈
2.
外 観 言語活動 行動の変化 異常行為 感
情 知 覚 思 考 知識と知能 認 識 意 識 自我意識 自我機能 意志?欲動 MSEの枠組み 精神症状を観察するためのポイント
3.
思 考 情 報?刺
激 感 性(直感的なもの) で捉える 言 語 記 憶 意 識 の影響を受ける 観 念 考えられた内容 対象の性質?他のもの との関連を把握する 推理や判断を行なう 情報を統合して 意味を持たせる 知的障害者、統合 失調症患者が苦手 とするところ
4.
思考の障害 形式 思路 体験 内容 思 考 思考のまとまり 思考の進み方(速度?連続性) 思考の所有?強迫観念 妄 想 言語、会話で 明らかになる
5.
思考形式の障害 言葉と言葉が繋がり意味を持った文章で構成されている会話が… ?思考の組み立て方の障害 ?言葉と言葉のつながり具合が不完全で、全体の意味内容が 理解できない ?妄想や幻覚、抑うつなどのような主観的症状ではなく、 精神機能障害の結果、表出される客観的症状である ?特に軽度のものは見落とされやすいが、注意深く観察 することによって、その人の精神状態の全体の動きを 把握することができる 昨日初めて作業所に行きました。緊張してすぐ帰り たくなったけど、みんな優しく教えてくれたので、 がんばれました。
6.
連合弛緩 滅裂思考 言葉のサラダ 話が飛躍したり途中で省略される 無意味な語や文の羅列になる 思考がまとまらず、観念同士の意味の ある結びつきがなくなる 「緊張して、緊張して… ずっと大丈夫、所長になるから」 「緊張して、地下鉄だし、布団だし、 ネコは見なかった」 「僕にネコで、朝がダメ。 札幌を?ローマじゃダメ?」 ※ 助詞の使い方が特徴的になる印象があります 言葉を書き出してみると高度に詩的なんです! そして文字に起こすと全く「無意味」でもなく 何らかの関連を見つけることもあります
7.
思路の障害 ①速度の障害 速 い 遅 い 観念奔逸 思考制止 躁状態、薬物やアルコールの酩酊などでみられる 思考の進みが早く、思いつきは多いが観念のつながりは表面 的で、外からの刺激で脇道にそれやすく目標に達しない うつ状態で典型 疲労時やてんかんでもみられる 思考の進みが遅く停滞し、着想も乏しくなる 「ぼんやりして集中できない」 「以前に比べて、考えるにも努力がいる」 といった訴えが聞かれる
8.
冗 長(まとまりのある観念奔逸) 会話の寄り道は多いが、なんとか内容が元に戻る 思考の出現は観念奔逸よりも速くない 軽躁状態でみられる 迂 遠(廻りくどい思考) 会話の中では枝葉末節が詳しすぎて、あまり必要ない 内容が多くなるが、ゆっくり思考が進みながら結論に 達する てんかん、精神遅滞、脳気質疾患でみられやすい
9.
②連続性の障害 しこう大変 粘 着 思考がいつまでも同じテーマに とどまって新しい事柄に移れない 保 続 思考が言葉や動作に反復して 単語や語句であらわれる 年齢は? 生まれは? 28歳です 28歳です ご家族は?市内に両親 がいます 父は昔は厳 しくて、母 は自宅でお 茶の先生を していて… ひとり暮ら しで困った ことは?
10.
思考途絶 思考の流れが突然遮断される 急に黙り、多くは短時間の後に流れが再開 してまた話し始める 統合失調症患者に特有とされている 「頭の中が空っぽになった」 「なぜ黙ったか分らない、忘れた」 「考えを抜き取られた」 ?思考奪取にもつながる 止まる
11.
思考体験の障害 自生思考 今考えている内容と何らつながりのない考えがひとりでに 浮かんでくる現象 「いつの間にか“考え”がやってくる」 「自分では止められない」 ?自分でコントロール出来ず 束縛感を伴う ?思考の能動性が薄れていくと、 「考えが押し付けられている」という 思考吹入に発展する お祭りで迷 子になった 午後から部署の 大掃除だ 善の反対は悪、 義の反対は…統合失調症の特異的初期症状のひとつ (中安信夫,1990)
12.
つつぬけ体験(長井真理,1981) 言語以前の意味思考が漏れる体験 させられ体験 思考の主体性が失われ、他から 考えを押し付けられる、支配さ れると感じる 思考吹入 他人の考えが 押し入ってくる 思考奪取 自分の考えが 抜き取られる 思考察知 考えを知られてしまう 思考伝播 考えるそばから内容が 他人に伝わる
13.
強迫思考 不合理な内容の考え、語句、文章などを意思に反して 考えずにいられない 強迫性障害 特定の名や語句を 思わずにはいられない 物事の詮索、質問を せずにいられない 頭の中で歌のメロディが こびりついて離れない ある場面やイメージが 繰り返し思い浮かぶ 強迫行為をともない 周囲も巻き込む
14.
思考内容の障害 恐怖症 妄 想 恐れる理由がないと分かってい ながら、特定の対象や予測でき る状況を強く恐れ、避けようと すること 自分自身に関連した、ありえな い内容にも関わらず、確信は揺 るがず訂正できないこと ※妄想の定義は様々ありますが、ここでは上記のように考えてみます
15.
様々な恐怖症 広場恐怖 特定恐怖 疾病恐怖 公共の場所、買 い物、旅行など、 一人きりで無力 になる状況が対 象となる 対象が限定されてい る 病気にかかることを 過剰に心配すること 心気症 不潔恐怖
16.
社交恐怖 人ごみや特定の個人など、他人と関わることが 対象となる 醜形恐怖 自己視線恐怖
17.
患者さんの病的体験の理解の仕方 Karl Theodor Jaspers (1883~1969) 患者さんの体験に必死で感情移入してみる 私たちの心の中で 追体験して共感できる 病気の存在があるから と理解するしかない 了
解 説 明
18.
その妄想は 「了解」 できる? 一次妄想(真性妄想) 何かしらの感情や体験あった わけではなく、ひとりでに生 じたもので了解できないもの 二次妄想(妄想様観念) 患者さんの異常体験や感情、 人格的特徴、状況から妄想の 発生や内容が了解できるもの 妄想気分 妄想着想 妄想知覚
19.
一次妄想(妄想知覚) ? ありふれた日常的な知覚が、何も動機がないのに 本人にとって重大な意味をもって体験される妄想 形式 ? 統合失調症の患者さんに特異性が高い 今日は2014年の9月8日 急いで武道館に行かな いと自分に大変ことが 起こる クラクションを鳴らされた 自分の命を狙う合図かもし れない
20.
一次妄想(妄想気分) ? 不明の何かが起こったという、漠然とした不安 や高揚した緊迫を伴う変容感 自分の外の世界が一変し、言葉では表現できない 不気味で差し迫った感じが押し寄せる感じ 世界没落体験 この世界の終わりが 間近に来ると確信する どこかいつもと違う 周りが妙に騒がしい
21.
一次妄想(妄想着想) ? 突然、何の媒介もなく誤った観念が頭に飛び 込んできて確信する ? 統合失調症に限らず、うつ病性障害やパーソ ナリティー障害でも生じる可能性がある 私は本当はイギリ スの王女なんです 内緒にしておいて くださいね 私こそ神の生まれ変わりです
22.
幻覚や作為体験などの、 病的体験を説明するため に生じた説明妄想 病的な感情状態に基づく 妄想 ご飯が苦いのは、 茶碗に毒が塗られ ているからだ 躁状態での高揚気分から生じる 誇大妄想 二次妄想 体が操られているの は、昔会った占い師 が私に取り付いてい るからだ 抑うつ状態での抑うつ気分から 生じる微小妄想 宝くじにきっと当た るから、あなたも世 界一周旅行に連れて 行ってあげる 私は世の中で役に立 たない人間なんです
23.
特異的な人格に関連した 妄想 パラノイア(慢性の妄想性障害) 状況との関連で起こる妄想 患者さんの背景にある願望 や恐怖、劣等感等の強い感 情が妄想を形成させる 周りの人はみんな自分 のことを太っていると 思ってるに違いない 迫 害 好争者 発 明 血
統 恋 愛 嫉 妬 などなど
24.
妄想の主題と内容 被害妄想 微小妄想 誇大妄想 被影響妄想 他人や組織、未知 の力などから危害 を加えられる 自分の能力や財産、 地位などを事実と は違って過小に評 価する 自分が特別な能力や 個性を持っていると 過大に評価する 外から干渉され 支配される
25.
被害妄想群 被毒妄想 注察妄想 嫉妬妄想 もの盗られ妄想 関係妄想 周囲から監視 されている 毒を入れられる 周囲の出来事を 自分に結びつける 「タイミングぴったりで偶然とは思えない」 「わざと自分にしている」 パートナーが不貞を していると確信する
26.
微小妄想群 貧困妄想 罪業妄想 加害妄想 心気妄想 コタール症候群 財産を失った 重大な過失を してしまった 自分がある事故や 出来事を引き起こ したと確信する 健康を害した 「自分はすでに死んでしまっている」 「自分はゾンビのように死ぬことができない」
27.
誇大妄想群 血統妄想 恋愛妄想 発明妄想 宗教妄想 高貴な家柄の 生まれである 有名な人から 愛されている 世界的な発明や 発見をした 神に選ばれた 人間である
28.
被影響妄想群 自分は何かに操られている 憑依妄想 何かが乗り移って 自分の一部が占領される 自我意識の障害によるさせられ現象
29.
※人物誤認 ある人物を本人と認識することの障害 未知の人を知っている、あるいは肉親や友人を知らないと主張 すること 知覚の障害(錯覚)、記憶障害に分類されることもありますが ここでは「妄想的解釈」として思考障害で考えてみます 瓜ふたつ症候群(ソジー症候群) カプグラ症候群 陰性人物誤認 フレゴリの錯覚 陽性人物誤認
30.
フレゴリの錯覚 カプグラ症候群 よく知っている人物をそっくり な別人であると否認する 面会に来ている人 は私の夫ではあり ません よく似てるけど、 違います 認知症でも 見られる 他人をよく知っている人物と 誤認する 知っている人が次々に姿を変 えて周囲の複数の人になりす ましていると確信する
31.
二重見当識 妄想を持つ患者さんが、妄想と現実の互いに矛盾する 二つの世界に同時に生きており、あたかも見当識が二 重に存在しているかのように見える状態 毎日、実験で夜もあまり眠 れないくらい忙しいです 二重見当識を 持っているということ 患者さんの人格や生き方、これまでの人生に 妄想につながるものがあるのかもしれない 患者さんの「病的世界」も丁寧に扱うことが大切 現実世界と病的世界を 折り合いをつけながら 生きているということ (=その人のストレングス)
32.
統合失調症の患者さんに多い妄想 (被害妄想はなぜ生まれるのだろうか?) 社会的な関係の中で他人や組織、未知の力などから 危害が加えられたり、苦しみ、悩まされるという妄想 毒が盛られているから このご飯は食べられません 他の患者さんが自分の悪 口を言っているので部屋 から出たくありません
33.
被害妄想は何の前触れもなく生じるのではない 自分には価値がない (微小妄想) 他人に迷惑ばかりかけている (罪業妄想) 低い自己評価 他者への恨みに 変換させる 自分は悪くない 本当は他人に迷惑 をかけられている
34.
被害妄想を発展させない ?患者さんの自己評価を高める関わり 患者さんの存在を無視しない ?視線を合わせる、挨拶をする ?約束を守る ?出来るだけ待たせない 患者さん能力を支える ?出来ていること伸ばしつつ、 賞賛する ?必ず言葉にする