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付録8
正規化問題
2015 Copyright, All rights reserved. SYSTEMS DESIG Co.,Ltd 140
はじめに
正規化は問題視されるべきなのに、データベース設計の免罪符になっている。まずは、この問題について考
えてほしい
出典:http://www.fe-siken.com/kakomon/21_haru/q32.html
基本情報技術者試験ドットコム
午前問32
"従業員"表を第3正規形にしたものはどれか。ここで,下線部は主キーを表す。
従業員 (従業員番号,従業員氏名,{技能コード,技能名,技能経験年数})
({ }は繰返しを表す)
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(ア)
(イ)
(ウ)
(エ)
従業員番号従業員番号 従業員氏名従業員氏名
技能コード技能コード 技能名技能名 技能経験年数技能経験年数
従業員番号従業員番号 従業員氏名従業員氏名 技能コード技能コード 技能経験年数技能経験年数
技能コード技能コード 技能名技能名
従業員番号従業員番号 技能コード技能コード 技能経験年数技能経験年数
従業員番号従業員番号 従業員氏名従業員氏名
技能名技能名技能コード技能コード
従業員番号従業員番号 技能コード技能コード
従業員番号従業員番号 従業員氏名従業員氏名
技能コード技能コード 技能名技能名
技能経験年数技能経験年数
問題提起
簡単な設問なので解答に関する解説の要を認めないも
のとし、ここではとりわけ正規形について議論したい。
(正解は、前述のサイトで確認できる)
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正規化
『視点』が一定に定まらない情報を同時に扱っている!
出題者には衷心から敬意を表します。設問を云々したいのではない。そこ
で筆者がこの設問に感じる疑問を以下に提示したい。論点は、この設問か
ら答案を導き出している受験者諸氏が受けた教育、与えられた知識に違和
感を感じざるを得ないという筆者の直覚である
この設問では『技能の認定は個人に与えられるものである』という前提が蔑ろに
されている。情報の整理において、起点の置き方に問題があるのではないか?
この設問の前提には、個人が組織に所属する関係(端的に言えば雇用関係)を解
消した時点で、技能の管理を行わないという根本的な問題を孕んでいる
組織が展開する事業が組織に所属する役職員のみで賄われているとは、今のご時
勢とても考えられない。組織が有資格者、有技能者の管理を行う理由は、事業展
開において、有資格者、有技能者の存在が必須の案件に対応するためと解釈すべ
きだ
事業から業務へと視点を移す際、業務の事実を分析する手法としてモデリングを
選択したならば、有資格者、有技能者を組織の帰属によらず管理すべきと解釈す
るほうが理に適っている
そう考えると、この設問の問題点は、異なる視点のモノ(事実)をひとつの考え
方(情報の整理の仕方)に嵌め込もうとする点にあり、偶々『正規化』について
問う問題だったため、正規化とは既に論じた『一意性の束縛』の下にある機械的
作業に他ならないとのメッセージを発していると結論することができる???
(言掛り、粗探しとの批判を承知で)
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正規化と事業?業務の間に存在するギャップ
正規化を考えることが事業?業務との間に矛盾を生じる
具体的には、技能コードから『技能』エンティティを形成して
いるが、事業?業務上の視点から、資格の価値、有効性をどの
ように捉えるべきか?
一方、正規形はデータ構造を可視化するための手法である。そ
の核心部にあるのが関数従属性
では、事業、業務を支援するシステムを構築するための技術と
はなにか?
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論点の提示
1. One fact in one place
2. 実装独立と実装従属
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One fact in one place
1. “One fact in one place”は、データモデリングの原点とも
いえるルール。データモデリングは、”Onefact in one
place”の実現に、キーに対する関数従属性という方法を
見出した
2. 個人的経験になるが、”One fact in one place”と聞くと、
その重要性を提示してくれた真野正氏と議論を交わし
たことを思い出す
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実装独立と実装従属
1. 椿正明氏が提示した考え方で、筆者は意味論モデルの
根底にある思想だと考えている
2. 対向に実装従属と言う考え方がある。正規化は実装従
属段階で適用する手法である
3. システム構築の手順としては実装独立から実装従属に
仕様の詳細化が進む
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T字形ER手法では
1. One fact in one place
正規形を意識せずに正規化相当の成果を得ることは、形式意味
論の適用で可能
佐藤師は形式意味論の可能性に強く惹かれたと筆者は直覚する
T字形ER手法は、コード体系の分析で形式意味論によるアプ
ローチを実現する
2. 実装独立と実装従属
T字形ER手法では、データモデルであるT字形ERモデルとキー
をテーマとしたインデキシング設計を分ける。データの実装対
象がリレーショナル?データベースであるため、データ格納方
式とデータ検索方式をセットにした考え方だ。
インデキシング設計は実装従属の分析に含まれる
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真野正氏の著書
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真野正 ITコンサルタント
株式会社データアーキテクト 代表取締役
HP: http://dataarch.co.jp/

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