ヒ?シ?ネスと人権入門 人権をめぐる主な動き、ライツホルダーと負の影響、企業活動への影響、人権への取り組み
- 1. ビジネスと人権入门
- 2. 事業活動と人権 ? 人間らしく尊厳を持って幸せに生きる権利である人権を、企業がその活動によって侵害することがないよう、 事業活動のあらゆる側面に人権の視点を取り入れることが求められています。 1947 年 世界人権宣言 2024 年 EU 企業持続可能性デューデリジェンス指令 2022 年 日本 責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン 2017 年 フランス 注意義務法 2015 年 英国 現代奴隷法 2012 年 米国 CA 州 サプライチェーン透明法 1966 年 国際人権規約 1998 年 労働における基本的原則及び権利に関する ILO 宣言 2000 年 国連グローバル?コンパクト発足 2010 年 ISO26000 ：社会的責任に関する手引き 2011 年 国連ビジネスと人権に関する指導原則 OECD 多国籍企業行動指針 事業活動と人権をめぐる主な動き 出所：法務省人権擁護局 「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書他より
- 3. 下流 上流 直接創業 バリューチェーン上の様々なライツホルダー ? バリューチェーン上には様々なステークホルダーが存在し、それに対応して幅広いライツホルダー（配慮すべ き人権の主体）が存在します。 廃棄? リサイクル 消費 販売 輸送 製造 輸送 素材製造 原材料生産 バリューチェーン上のライツホルダーと人権への負の影響 ライツホルダーの例 原材料生産地域 の住民 取引先従業員 自社従業員 （アルバイト、派遣含む） 取引先従業員 消費者 出所：法務省人権擁護局 「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書より ステークホルダーの例 地域社会 各国政府 取引先 株主 従業員 債権者 地域社会 各国政府 取引先 消費者
- 4. 下流 上流 直接創業 ライツホルダーと事業活動による負の影響 ? 企業が引き起こす人権への負の影響の類型として、直接の原因となっている場合（ Cause ）、間接的に原因と なっている場合（ Contribute ）、自社の行動が原因ではないが負の影響と結びついている場合（ Linkage ）の 3 つがあります。 廃棄? リサイクル 消費 販売 輸送 製造 輸送 素材製造 原材料生産 バリューチェーン上のライツホルダーと人権への負の影響 Cause( 人権への負の影響を起こしている ) の例 自社従業員 （アルバイト、派遣含む） 自社施設での過剰な労働時間、賃金不払い、パワ ハラ、マタハラなど Contribute( 人権への負の影響を助長している ) の例 取引先従業員 急な仕様変更による取引先 従業員の長時間労働など 自社の行動が間接的に影響 Linkage( 人権への負の影響と結びついている ) の例 取引先従業員 下請け企業での契約違反によ る児童労働、強制労働など 自社は具体的な行動をしていない 出所：法務省人権擁護局 「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書より 自社の行動が直接的に影響
- 6. 人権への取り組みの企業活動への影響 ? 人権への取り組みが不足した場合、売上の減少やコストの増加、企業価値の既存といった影響が懸 念されます。 ポジティブ 売上 コスト 企業価値 ネガティブ 売上 コスト 企業価値 ? 新規の顧客獲得、既存顧客との関係強化 ? 採用力の向上 ? 人材の定着率向上 ? ブランド価値の向上 ? 株価の向上 ? 商品、サービスの差別的要素などによる販売停 止、取引縮小 ? 従業員の離反による事業停滞 ? 既存顧客や公的セクター（政府など）との取引 停止 ? 不買運動の発生 ? 罰金の発生 ? 損害賠償の発生 ? 採用力、人材定着率の低下 ? ブランド価値の低下 ? 株価の低下、ダイベストメント 充実 不足 出所：法務省人権擁護局 今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応より 人権への取り組み
- 7. ナイキの“ Sweatshops( 搾取工場 )” 問題 ? 1997 年に Nike の製造委託先の工場における人権侵害が発覚、 Nike は社外での人権問題であるとの立 場から対応を行わなかった結果、世界的な不買運動につながった。 出所：羽生田 慶介『すべての企業人のためのビジネスと人権入门』他 発生事象 ? Nike の製造委託先の工場（ベトナム、インドネシア）において、就業年齢に達して いない女性が、低賃金（時給約 17 セント）で長時間（ 1 日 10 時間以上）、強制的 に労働させられていることが監査法人の指摘により発覚 ? 従業員に対する管理者の暴行、性的な嫌がらせが横行していることも発覚 当初の対応 ? 問題の発覚当初、 Nike は製造委託先での問題であり、 Nike 自身によるコントロー ルは難しいとの立場を表明 結果 ? 委託先向上が Sweatshops （搾取工場）と 呼ばれ、全世界的な不買運動が展開 ? 1999 年には売上高対前年比でマイナスと なり、その後も低成長が続く ? 下請け向上のモニタリング体制を強化し、 途上国の労働問題に取り組む NGO を設立 するなど対応に追われた 1994 年 1995 年 1996 年 1997 年 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 0 5,000 10,000 15,000 3,790 4,761 6,471 9,187 9,553 8,777 8,995 9,489 9,893 ( 百万米ドル ) Nike 連結売上高 同期間の市場成長率 を踏まえた逸失売上
- 8. 企業に求められる人権への取り組み 人権デュー?デリジェンス 人権への取り組み ? 国連指導原則を踏まえて、人権方針の策定から人権デュー?デリジェンス、救済措置の実施までの一連の取り 組みが企業に求められています。 出所： OECD_ 責任ある企業行動のためのOECDデュー?デリジェンスガイダンスより 方針?体制構築 影響評価 開示 行動 観察 救済措置 ? 人権方針の策定、 公開 ? デュー?デリジェ ンス計画の策定 ? 従業員向け研修、 周知 ? リスクマネジメン ト、内部統制への 組み込み ? ライツホルダー向 けホットライン （苦情?相談窓 口）の設置 ? 人権デュー?デリ ジェンスへの フィードバック ? スコーピング、ビジネスモデル の整理 ? サプライヤーマッピング、 SAQ ? 負の影響と企業の繋がりの評価 ? 定期的なアンケート ? 労働時間実態などのモニタリン グ ? デュー?デリジェンス方針、実 施内容の報告 ? サステナビリティーレポートな どの作成、公開 ? 行動計画の策定 ? 社内啓発活動 ? 各種契約の見直し、サプライ ヤー行動規範の策定
- 9. 人権方針の策定 ? 人権方針は、人権尊重の責任を果たすという企業のコミットメントを社内外のステークホルダーに 明示するものです。 ? 一般に、以下の策定プロセスと記載事項が想定されます。 人権方針の策定プロセス例 人権方針の記載項目例 現状把握 人権方針案 の作成 承認 公開?周知 ? 自社のビジネスモデルを踏 まえた人権リスクの把握 ? 現状把握を踏まえた記載項 目の作成 ? 行動指針等との調整 ? 企業のトップを含む経営陣 による承認 ? 一般への公開（ Web ペー ジなど） ? ステークホルダー（従業員、 取引先など）への周知 位置付け 人権方針が自社にとってどのような文書であるか 適用範囲 人権方針がどの範囲に適用されるか コミットメ ント 国際的に認められた人権の尊重へのコミットメン ト 期待の表明 社内外のステークホルダーへの人権尊重への期待 人権尊重と 法令遵守 法令遵守に加え、ある国の法律で特定の人権が保 護されていない場合の対応 重点課題 自社のバリューチェーンにおいて起こり得る人権 侵害のリスクと取り組み 実践方法 どのように人権方針を実現するか
- 10. 人権方針の例 花王グループ（以下、花王）は、その使命を「豊かな共生世界の実現」と花王ウェイに定めています。 花王は、企業活動全体において、すべての人が生まれながらにして持つ基本的権利である人権を尊重する責任を果たします。 人権尊重に関連した法令や規範の遵守 花王は、世界のすべての人々が享受すべき基本的人権について規定した「国際人権章典」、労働における基本的権利（結社の自由及び団 体交渉権、強制労働の禁止、児童労働の実効的な廃止、雇用及び職業における差別の排除）を規定した国際労働機関（ ILO ）の「労働に おける基本的原則及び権利に関する ILO 宣言」、先住民族の権利に関する「自由意思による、事前の、十分な情報に基づいた同意」の原 則等の、人権に関する国際規範、各国のビジネスと人権に関する国別行動計画（ NAP ）を支持、尊重します。また、本方針は国連の 「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて策定しています。 花王は、企業活動を行なうそれぞれの国や地域で適用される法令を遵守します。 国際的に認められた人権と各国や地域の法令の間に矛盾がある場合、花王は、国際的な人権の原則を尊重するための方法を追求します。 本方針は、花王グループ（花王株式会社および子会社、関連会社）のすべての役員と社員に適用します。また、ビジネスパートナー、サ プライヤーおよびその他の関係者による人権への負の影響が、花王の事業、製品、サービスと直接つながっている場合、花王は、これら のビジネスパートナー、サプライヤーおよびその他の関係者に対しても、人権を尊重し、侵害しないように求めます。 企業活動全体を通じた人権尊重 花王では、企業活動全体において、人権侵害をゼロにし、図らずも問題が起きた場合に速やかに問題解決することをめざし、人身売買、 強制労働、児童労働、およびあらゆる差別の禁止と、結社の自由および団体交渉権、および同一労働同一賃金の保障を含め、人権を侵害 しないことを約束します。人権を侵害しないよう、また、企業活動上の人権に対する負の影響を軽減?防止し、また、花王ビジネスコン ダクトガイドラインおよび各分野の方針やガイドラインで規定した取り組みを通じて、人権尊重の取り組みを推進します。 社員やともに働く人々を尊重し、自由闊達なコミュニケーションが行なわれる、安全で働きやすい職場環境を提供します。 消費者?顧客を大切にする考え方に基づいて、安全?安心で、誰もが使いやすい商品、サービスを提供しています。消費者?顧客との対 話を通じて理解を深め、商品やサービス、コミュニケーションの改善に反映させます。 地域社会の人々に事業活動が影響を与える可能性を理解し、地域社会との共生を図ります。 ? 人権対応で先行している企業においても、必要な記載事項を踏まえた人権方針が策定されています。 花王グループ人権方針 出所：花王グループ人権方針 コミットメント 人権尊重と法令遵守 適用範囲 期待の表明 実践方法 重点課題 位置付け
- 11. 人権インパクト?アセスメント ? 事業活動を通して引き起こされるかもしれない人権への負の影響（人権リスク）を特定し、評価するプロセス が人権インパクト?アセスメント（影響評価）です。 出所：責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドラインより 人権インパクト?アセスメントの流れ ビジネスモデル、バリューチェーンの把握 人権リスク類型の整理 例）セクターリスク、製品?サービスリスク、地域リスク、企業固有リスク 情報収集方針の設計、調査実施 発生過程と自社の関与の特定 優先順位付け 優先順位付け方法 リスク 大 リスク 小 深刻度 発生可能性 深刻度評価の３要素 ? 規模 ? 範囲 ? 救済困難度 情報収集方針の設計 Who What Where When How 評価する人権リスクの特徴 情報収集の選択肢 対話?インタビュー 書面調査、 SAQ 現地調査
- 13. カカオ さやの収穫、種子の取り 出し、農薬散布など 魚介類 魚?エビの捕獲、加工、 漁具のメンテナンスなど コーヒー コーヒー豆の収穫、選別、 運搬など たばこ たばこの植え付け、水や り、収穫、乾燥など 砂糖 サトウキビの植え付け、 収穫、運搬、除草など コットン 除草、農薬散布、受粉、 収穫、運搬など パーム アブラヤシの収穫、運搬、 除草など 金 鉱石の収集運搬、洗浄、 水銀による精錬作業など コバルト 鉱石の採掘、収集運搬、 選別、洗浄など 児童労働のリスク 18 歳 15 歳 13 歳 最低年齢条約 適用外の労働 軽易な労働 危険ではない 労働 危険有害労働 ? 経済的に貧しい発展途上国を中心に、子ども（ 5 ? 17 歳）の５人に１人が労働に従事させらています。 ? 児童労働による生産品を購入することで、児童労働を助長してしまう可能性があります。 出所：『児童労働白書2020ービジネスと児童労働ー』 Unicef_Child labourより 年齢?携帯別の子供による労働 廃絶すべき 児童労働 夜間や長時間の作業、肉体的?心理的?性的虐待 に晒される作業、危険な機械?道具の使用を伴う 作業など 児童労働が指摘される生産品
- 14. 児童労働製品リスト 分類 製品 国名 分類 製品 国名 農業漁業 コーヒー コートジボワール 鉱業 タングステン鉱石（ウルフラマイト） コンゴ民主共和国 コカ（興奮作用のある植物） コロンビア タンタル鉱石（コルタン） コンゴ民主共和国 ココア コートジボワール 花崗岩 ナイジェリア ナイジェリア 砂利（砕石） ナイジェリア ゴム ミャンマー 錫鉱石（カッシテライト） コンゴ民主共和国 サトウキビ ボリビア 石 インド ミャンマー ネパール タバコ マラウイ 石炭 パキスタン チーク ミャンマー 工業 おもちゃ 中国 ティラピア（魚） ガーナ カーペット ネパール ブラジルナッツ／栗 ボリビア パキスタン 干物 バングラデシュ レンガ アフガニスタン 牛 南スーダン インド 魚 ガーナ カンボジア 竹 ミャンマー ネパール 豆（インゲン豆、大豆、黄豆） ミャンマー パキスタン 米 インド ミャンマー マリ 中国 ミャンマー 衣服 アルゼンチン 綿 タジキスタン インド ブルキナファソ タイ ベナン 織物（手織り） エチオピア 中国 装飾された織物 インド 綿実（ハイブリッド） インド ネパール 鉱業 金 コンゴ民主共和国 電子機器 中国 ブルキナファソ その他 ポルノ ロシア ? 米国労働省が作成する児童労働製品リストでは、国別にどのような製品で児童労働が行われている か示されています。 出所： U.S. Department of Labor List of Products Produced by Forced or Indentured Child Laborより ?