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意欲
目次
1. 意欲の下位概念
2. クリューバービューシー症候群
3. 脱抑制症候群
1.意欲の下位概念
意欲とは
意欲とは、単なる「~したい」という欲求の表れではない。そこには意思が介在
する。
意思:「いくつかの選択肢の中から最適あるいは最善と思われるものを決定す
る心の動き」
よって意欲とは、「~しよう」という意思によって行動を選択し、気持ちをその行
動に方向づけられた欲求といえる
加えて、自発性?意欲?発動性といえる
自発性の低下
自発性?意欲?発動性
放置すると、何かするという傾向がみられない
言語表現?非言語表現(表情?仕草)に乏しい
外的刺激に対する最小限の反応はある
自発性低下は全ての活動or一部の活動に影響
内的体験としては「無関心」が一般的で、「抑うつ感」や「悲哀感」はない
等によって説明される状態像
自発性と、内発的動機付け?発散的思考
自発性≒内発的動機づけ と考えられる
発散的思考障害が社会機能障害の重要な決定因子である
発散的思考認知機能訓練の結果、「情緒的引きこもり」「受動性/意欲低下によ
る社会的引きこもり」「疎通性障害」「自主的な社会回避」「運動減退」等の自発
性関連項目が改善。
発散的思考(自発性や内発的動機付けと関連が深い)を訓練の標的とした結果
?その改善が内発的動機づけを介して社会機能の改善にまで至った
発動性障害
1.心的自己賦活喪失
2.動因喪失
3.生命力喪失
によって記述可能な概念。
?発動性障害とは、生命機能の基礎となる「創造性」を支える心理神経的機能の喪失
発動性障害の神経基盤
①前頭葉背外側回路のいずれかの損傷で、遂行機能と運動プログラム障害
②眼窩脳回路のいずれかの損傷で、易刺激性と脱抑制
③前帯状回回路のいずれかの損傷で、無為無関心
③前帯状回回路(前帯状回→線条体腹側部→淡蒼球腹側部→視床背内側核
→前帯状回)が発動性障害に最も関連が深い
心的自己賦活喪失
自己賦活の障害(自分からは何もしようとしない)
外的賦活の保存(外的刺激には最小限の反応を示す)
内的体験は原則として無関心
時に強迫的常同傾向がみられる
動因喪失
動因喪失症候群は,有機溶剤や大麻等の精神作用物質使用によりもたらされる慢性的な精
神症状群。
能動性低下,内向性,無関心,感情の平板化,集中持続の困難,意欲の低下,無為,記憶障
害などを主な症状とする人格?情動?認知における障害。
認知機能障害の一部には大脳白質の障害が関連?
能動性?自発性低下には前頭葉機能の低下が関連?
治療については対症的な薬物療法が治療の中心。賦活系の抗精神病薬や抗うつ薬を中心に
投与しつつ,精神療法や作業療法を適宜導入。
アパシー(無気力?動因喪失)
アパシーとは、普通なら感情が動かされる刺激対象に対して関心がわかない
状態のこと
定義:意識障害、認知障害、情動的苦悩によらない動機付けの欠如ないしは
減弱した状態
無関心に伴ってみられる動因の喪失
=一次性の動因喪失=アパシー
アパシーの神経基盤
①前頭葉背外側回路(前頭前野→基底核)損傷により、行為の立案が認知的に
困難になるため、目標に向けての行為遂行が困難になり、結果としてアパシー
が生じるとされる
②眼窩脳回路(眼窩脳ー基底核)の損傷により、情動を行為に結びつけることや、
行為の結果を的確に評価することができなくなるため、同様に目標に向けての
行為を行えなくなり、結果としてアパシーが生じる
アパシー:観察のための定義
一般的な定義:「動機の障害」では外から観察が不可能であるため、概念の混
乱を招く可能性が含まれていた。
Levyらは、外から観察?定量可能なものとしてアパシーを「自発的?合目的的な
行動の量的な低下」と定義した。
アパシーの下位分類
行動の量的低下が生じる原因によって分類
①認知機能低下により主に計画を立てられず、行動量が低下するアパシー/責
任回路:前頭前野背外側部を含む皮質?皮質下回路/アパシーの基盤:遂行機
能障害
②情動反応の低下により主に動機づけに問題があり、行動量が低下するアパ
シー/責任回路:前頭葉眼窩部を含む皮質?皮質下回路/アパシーの基盤:興
味?関心の喪失
③自己活性化障害により行動化そのものが障害されているアパシー/責任回
路:腹内側前頭前皮質?前帯状回/アパシーの基盤:発動性の低下
2.クリュバービュー
シー症候群
要素症状
クリュバービューシー症候群:ヒトにおける側頭葉症候群
両側頭葉切除動物(被術動物)で認められる症状
1. 視覚失認
2. 口部傾向:あらゆるものを口で調べる傾向
3. 変形過多(注意転導性の亢進)
4. 情動の静穏化(恐怖?怒りの喪失)
5. 性欲の亢進?脱抑制
6. 食欲の亢進?食行動の変化
7. 全身の奇異な運動
変形過多
あらゆる視覚刺激に対して注意を向け、反応する過剰な傾向
≒視覚性注意の転導性の亢進
被術動物が視界に入った物に強制的に注意をひきつけられて見える?「強迫
的」「抵抗不能」
その物を手で掴む?口に触れる行為の衝動を抑制し難く見える?「変形過多的
な行為の衝動」
情動の静穏化
1. 攻撃性がなくなり、怒りや恐怖を示さなくなる
2. 他の者(サル)に接近するようになる
他からの攻撃等に対しても反撃?恐怖を示さず、相手に触れ続ける行為が見ら
れた
食べられないと分かっても、引き裂いたりといった攻撃行動を示さない(落とす
だけ)
興奮は、新しく視界に入った物を調べたい欲求からのみ
3.脱抑制症候群
脱抑制の定義等
脱抑制とは、「状況に対する反応としての衝動(エネルギー)や感情を抑えることがで
きない状態」のこと
外的な刺激に対して衝動的に反応したり(衝動性の亢進)、自己の内的欲求の制御が
できず本能のおもむくままに行動するもの
脱抑制行動は様々な生活場面で出現し、その内容はマナーや礼儀正しさの欠如と
いった軽微なものから、反社会的行動と呼ばれる違法行動まで幅広く、社会的問題を
招く可能性がある
脱抑制の神経基盤1
衝動コントロールや脱抑制:眼窩回路が主
眼窩前頭皮質(OFC)は、視床の背内側部にある内側の巨大細胞核から当社を受ける領域と
して定義されている
眼窩前頭皮質:情動や報酬系に大きな役割
1.感覚情報の統合
2.強化子の感情価の表現
3.報酬と罰に対する感受性に関連した行動計画を制御
脱抑制の神経基盤2
眼窩前頭皮質の内側部は強化子の報酬価値のモニタリング、学習、記憶に関係
外側部は罰の評価に関係
?内側部と外側部の統合により、現在行っている行動に変化を引き起こす
ヒトの眼窩前頭皮質は主観的な快楽性の経験を仲介?眼窩前頭皮質の損傷等
が、脱抑制行動につながる
脱抑制の症候学(人格情緒障害面)
情動の制御が困難となり、社会的行動障害、意思決定の障害が出現。
? 衝動コントロール+自分の言動を相手がどう受け止めるかに対する理解欠如による
適切な意思決定ができず、目先の報酬に釣られる
反社会的な脱抑制行為?前頭側頭型認知症(FTD)の進行により、徐々に発動性低下、無
為に傾いていくため、問題行動は沈静化する。
脱抑制に対する治療
1. 社会?心理的アプローチ
認知行動療法
環境調整
ルーチン化療法
2. 薬物的アプローチ
反応抑制:ノルアドレナリン系
衝動統制:リスペリドン?メチルフェニデート
(ADHD主体の児童)
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(対アルツ)
抗NMDA受容体拮抗薬(対FTD可)
参考文献
河原?横澤 注意ー選択と統合ー
日本高次脳機能障害学会編 注意と意欲の神経機構
柴崎?豊田(2008) 前頭葉損傷患者の認知リハビリテーション
大東(2004) 発動性障害の病理を探る
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/アパシー

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