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「珊瑚礁の思考カフェ」
第3回
『化身の王国』
2016/07/06
喜山荘一
1
化身の王国 1
様々なる化身
2
ユウナの花
? ユウナの花が散って海に入ると、
? 黄色やオレンジの鮮やかな色。薄い花びら
?ユウナの花 美しい熱帯魚
>
?
3
ユウナの葉
ユウナの葉 カレイ
? ユウナの葉が散って海に入ると、
? 肉厚な叶。「青」系の色。
4
ナガバカニクサの蔓
? 這うような生え方、丈夫な蔓、地中にある茎
? ナガバカニクサの蔓の皮を剥いで泥水に浸すと、
?ナガバガニクサ 白い蛇
5
蟹
? 蟹は寒くなると、
? 硬い甲羅。大群(地表を覆う)。海辺に棲息。
?蟹 岩
6
小型のスク(アイゴの稚魚)
? 小型のスクは、○○の精霊の化身
? 小型のスク
海の精霊
ウンジャミ
>
7
虹
? 虹は、○○の精霊の化身
? 虹
蛇の精霊
ティンパウ
8
ジュゴン
? ジュゴンは、○○の精霊の化身
? ジュゴン
サンゴ礁
の精霊
ヨナタマ
9
ヨナタマ伝承
「ヨナタマヨナタマ、何とて遅く帰るぞ」
「われ今あら炭の上に載せられ炙(あぶ)り乾かさるる
こと半夜に及べり、早く犀(さい)をやりて迎えさせ
よ」(『宮古島旧史』)
? ヨナタマ「人面魚体にしてよくものいう魚」。
? 「海霊」(柳田国男)
10
西表島の古謡
カァーヌパタヌアブダーマユングトゥ
「井戸のそばの小蛙」
(西表島祖納)
>
11
山亀
? 森の山亀が大海に下りて、
? 硬い甲羅。四本脚。首と脚を引っ込める。動きが
ゆったり。
?山亀 海亀
>
12
シレナシジミ
? マングローブにいるシレナシジミが海に入ると、
? 大きな二枚貝。マングローブの貝の主。
?シレナシジミ シャコ贝
13
キシノウエトカゲ
? 家のまわりのトカゲが潮に下りて、
? 大きな鱗。魚に負けない大きさ。赤みがかった頬。
?キシノウエトカゲ カタカシ(オジサン)
>
>
?
14
ヤモリ
ヤモリ サメ
? 雨戸の桟に住むヤモリが大海に下りて、
? ざらざらした皮肤。长い尾。鋭い歯。
15
小蛙
? 井戸の端にいる小蛙に翅が生えて空を飛ぶ
? 植物にとまる。曲線を描いて飛ぶ。変態する。
?小蛙 蝶?
16
化身の王国 2
化身の思考
17
サンゴ礁の子
ユウナ
(オオハマボウ)
サンゴ礁
花、葉 熱帯魚、カレイ
ユウナの花 美しい熱帯魚
18
聖なる植物
? 「沖縄ではゆうなは世の初めからの木といって珍
重がり、神に捧げる赤飯などもその葉にもる習慣
になっている。」
? 「今日では便所の附近にも植えてあって、俗な木
になっているが、古くは沖縄人の生活に密接な関
係があったので、神木とさえ謳われていた。」
(伊波普猷「おもろさうし通釈」)
19
サンゴ礁の大地
蟹 岩
サンゴ礁
?蟹 岩
20
蛇の系譜
ナガカニクサの
蔓の皮を剥ぐ
白い蛇
蛇の精霊
?ナガバガニクサ 白い蛇
21
蛇の系譜
ユウナ
(オオハマボウ)
サンゴ礁
陸亀 海亀
蛇の精霊
?山亀 海亀
22
蛇の系譜
ユウナ
(オオハマボウ)
サンゴ礁
キシノウエトカゲ
カタカシ
(オジサン)
蛇の精霊
?キシノウエトカゲ カタカシ(オジサン)
23
多良間島
24
多良間島の創世神話
大昔、ぶなぜーという兄妹があった。ある日、畑
に出て仕事をしていると、南の方から、突然、大き
な波がおしよせてきた。これを見た二人は、あわて
てウイネーツヅという丘にかけのぼり、波にさらわ
れようとするところを、シュガリガギナ(チカラシ
バ)にしがみついて、ようやく難をのがれた。周囲
を見ると、家や村も波にさらわれてしまって、たす
かったのは兄妹二人だけであった。
そこで、二人は夫婦のちぎりを結び、村の再建を
はかった。最初に生まれたのは、ポウ(へび)とバ
カギサ(とかげ)であった。次にアズカリ(シャコ
貝)とブー(苧麻)を産み、そのあとに人間が生ま
れた。(『村誌たらま島 孤島の民俗と歴史』)
25
宮古島の伝承
ある地域ではキシノウエトカゲが海に入ってオジ
サン(宮古の一般的な方言名カタカス)に変身した
ということでこの魚をまったく食べない。
(「宮古毎日新聞」2011.09.07)
?
26
ヤモリ
ヤモリ サメ
ユウナ
(オオハマボウ)
サンゴ礁
ヤモリ サメ
蛇の精霊
27
鮫の習性
? 鮫は仲間川を遡上する。
28
ヤモリと鮫
ヤモリ:フダチミ(西表島)、フタツメ(鳩間島)
【フタナカ】
1. あはひ、あひなか、間、二つの物の間
2. 主として母屋と炊事場との間を云ふ
(『八重山語彙』宮良当壮)
【フダチミ】二つのものの間に詰める者
>
29
境界の主
? 「ヤモリ」と「鮫」は「境界の主」であることが
同位相。
家屋の内と外の境界 川と海の境界
30
シャコ贝の系譜
ユウナ
(オオハマボウ)
サンゴ礁
シレナシジミ シャコ贝
シャコ贝の精霊
?シレナシジミ シャコ贝
31
霊魂思考
元の姿 先の姿
小蛙 蝶?
人間
小蛙 蝶?
32
古謡「井戸のそばの小蛙」
一.井戸のそばの小蛙に翅が生えて飛ぶまで。
わたしたちの命、島とともにあらしめてくださ
い。(※反復)
二.家のまわりのトカゲ(キシノウエトカゲ)が潮
におりて魚(カタカス)になるまで。
三.家の桟のヤモリが大海におりて鮫になるまで。
四.森の山亀が大海におりて海亀になるまで。
五.マングローブの下のシレナシジミがサンゴ礁に
おりてシャコ贝になるまで。(『八重山古謡』)
>
33
化身のベクトル
陸亀
海亀
シレナシジミ
シャコ贝
キシノウエトカゲ
カタカシ(オジサン)
ヤモリ
サメ
小蛙
蝶?
? 「小蛙」の節を除き、海の生き物に化身すること
になっている。
34
古謡の順序
陸亀
海亀
シレナシジミ
シャコ贝
キシノウエトカゲ
カタカシ(オジサン)
ヤモリ
サメ
小蛙
蝶?
1 2 3 4 5
? 神話の順序
? 死者の化身
? 浜辺に出現 ? 家屋の成立
? 浜辺の形成 ? サンゴの形成
? どの節もサンゴ礁の形成以降に作られている。
35
化身の法則
陸の生き物
海(サンゴ礁)
の生き物
蛇?シャコ贝の精霊
動植物の生命
36
化身の法則
1. ある領域の主である動植物や自然物の精霊は、同
じ系譜に属する他の動植物や自然物に化身するこ
とができる。
2. 同じ系譜のなかの動植物や自然物は、系譜内の同
じ位相にある他の動植物や自然物に化身すること
ができる。
? 化身は主に近い方へベクトルを持つ。(「ナガバガニ
クサ」が「白い蛇」へ)
? 生息領域の異なる動植物同士の場合は、「陸から海
へ」というベクトルになる。(「トカゲ」が「魚」
へ)
3. 化身は精霊を持つ同士のあいだで起こる。
37
化身の王国 3
循環する生命
38
循環する生
精霊生き物
主
39
ナガバカニクサと白い蛇
海?山
の精霊ナガバカニクサ
白い蛇 蛇
40
山亀と海亀
海?山
の精霊山亀
海亀 蛇
41
ヤモリと鮫
海?山
の精霊ヤモリ
鮫 蛇
42
シレナシジミとシャコ贝
シレナシジミ
貝
の精霊
シャコ贝
43
ユウナの花と熱帯魚
ユウナの花
サンゴ礁
の精霊
熱帯魚ジュゴン
44
蟹と海の岩
? 「貝」と「サンゴ礁」、どちらか?
蟹
貝
の精霊
海の岩シャコ贝
45
「性」の表現
貝=女性
蛇=男性
46
女色(おんないろ)?男色(おとこいろ)
cf.常見純一「青い生と赤い死」
47
ウンジャミ(小型のスク)
海?山
の精霊
ウンジャミ
サンゴ礁
の精霊
貝
の精霊
シャコ贝 蛇
ジュゴン
48
ジュゴン
海?山
の精霊
ジュゴン
サンゴ礁
の精霊
貝
の精霊
シャコ贝 蛇
49
キシノウエトカゲ、カタカス
海?山
の精霊
キシノウエトカゲ
カタカス
サンゴ礁
の精霊
貝
の精霊
シャコ贝 蛇
ジュゴン
50
ユウナ(オオハマボウ)
51
一方向に進む時間の限界
祖父
父
子
孫
祖父
父
子
孫
ひ孫
兄弟
(20世紀初頭のニューカレドニア)
52
そして、人間
海?山
の精霊
人間
サンゴ礁
の精霊
貝
の精霊
シャコ贝 蛇
ジュゴン
53
循環からの離脱
? 「蝶」への化身は循環する生からの離脱の始まり。
海?山
の精霊蛙
蛇
人間
蝶
54
縄文期の自然?人間理解
? 動植物や自然物の異種間の存在の垣根は本質的で
はなくグラデーションのなかにある。
? その自然のあり方を通して、人間は人間を理解し
ている。
? 人間は、自然に対して孤立しても、優位に立って
もいない。自然の環のなかの一部を占めるに過ぎ
ない。
55
19%
35%
35%
46%
31%
38%
69%
23%
38%
15%
77%
0% 20% 40% 60% 80%
「なぜ、ゴホウラとイモガイ…
「偉大なる「スク豆腐」」
「嗚呼、サンゴ礁」
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「タトゥをするなら」(「琉球ア…
「マイ?トーテムの見つけ方」
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「ニライカナイの原像」
カフェ企画?アンケート結果
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