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機能的アサーション
ー適切な自己主張という概念の分析
総合心理学部
三田村 仰(みたむら たかし)
第5回立命館大学総合心理学コロキウム
2016年11月28日(月)4限
*三田村?松見 (2010补)の内容です
2
アサーション assertiveness とは
? 「自他を尊重する自己主張」
「適切かつ率直な自己表現」(e.g., 平木,2000)
? 理想のコミュニケーションとして,
日本で根強い人気!!
わたしは今,忙しいんです。
ですから,これ以上したく
ありません。
他の方に頼まれてはどうですか?
話し手
アサーションの2つの課題
課題1:適応場面の限定性
? アサーションは率直な権利主張であるため,
婉曲な表現,間接表現が必要な繊細な場面
に向かない(三田村?松見, 2010)
課題2:攻撃的行動との線引き問題
? 半世紀以上,研究しても適切/ 不適切の
境界線は未だ不明(三田村, 2008)
攻撃的行動(不適切) アサーション(適切)
わたしはそれをしたく
ありません。
どこ??
この言い方は
マズい???
3
目的
? アサーションの適用範囲が広く, かつ
適切性の基準をもつ機能的アサーション
とい う新しい概念を提唱すること
? 方法
? これまでの研究を総ざらい(レビュー)しなが
ら,理論的に検討する
4
課題1 「適応場面の限定性」の解決
? 結論:機能的に捉える
(行動分析学を援用(Linehan & Egan, 1979 ))
? 結果的に課題を達成できるような行動ならなんで
もOKと捉える
? 間接表現はしばしば有用(仲?無藤, 1983)
話し手 聞き手
いいですよ
?
5
課題2 「線引き問題」の解決
? 結論:聞き手視点で適切さを判断する
(語用論を援用(Usami, 2002; 宇佐美,2002a) )
? ”相手が嫌だと感じたらハラスメント”の発想
話し手 聞き手
適切!
?
6
機能的アサーションの提唱
(三田村?松見,2010a,b)
? 「話し手がある課題達成の必要性に
迫られた状況下で,
①当該の課題をより達成し,かつ
②聞き手から,より適切と受け取られる
対人コミュニケーション」
→ 間接表現や婉曲表現なども使用可能
→ 適用範囲が拡大
→いわば ”しなやかで芯のある自己表現”!7
機能的アサーションの適応例
? 率直に言ったのでは角が立つ繊細な場面で有用
? 例:発達障害児の保護者向け機能的アサーショ
ン?トレーニング(三田村?松見, 2009)
8
保護者 担任教師
上手な依頼や相談
(機能的アサーション)
やってみま
しょう!
引用文献
平木典子 (2000). 自己カウンセリングとアサーションの
すすめ. 金子書房.
Linehan, M. M., & Egan, K. J. (1979). Assertion training
for women. In A. S. Bellack, & M. Hersen (Eds.),
Research and practice in social skills training. New
York: Plenum. pp. 237–271.
三田村仰 (2008). 行動療法におけるアサーション?トレー
ニング研究の歴史と課題. 人文論究, 58(3), 95-
107.
http://kgur.kwansei.ac.jp/dspace/bitstream/10236
/8415/1/58-3-6.pdf
三田村仰?松見淳子 (2009). 発達障害児の保護者向け
機能的アサーション?トレーニング. 行動療法研究,
35(3), 257-269.
三田村仰?松見淳子 (2010a). 相互作用としての機能的
アサーション. パーソナリティ研究, 18(3), 220-232.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/personality/18
/3/18_3_220/_pdf 9
引用文献
三田村仰?松見淳子 (2010b). アサーション(自他を
尊重する自己表現)とは何か? ―“さわやか”
と“しなやか”,2つのアサーションの共通了解
を求めて―. 構造構成主義研究, 4, 158-182.
OIC図書館にあります
仲 真紀子?無藤 隆 (1983). 間接的要求の理解にお
ける文脈の効果.教育心理学研究,31, 195–
202.
Usami, M. (2002). Discourse politeness in japanese
conver- sation: Some implications for a
universal theory of po- liteness. Tokyo: Hituzi
Syobo.
宇佐美まゆみ (2002). ディスコース?ポライトネス理
論構想(5) -DP理論の展開- ポライトネス理論
の展開(連載)11. 月刊言語, 31(13), 96-101. 10

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