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課程認定申請大学からの事例報告
～指摘事項を中心に～
松宮慎治（神戸学院大学）
2017.12.20.
阪神教協
2017年度第3回課題研究会
於：関西学院大学上ヶ原キャンパス
shinnji28@j.kobegakuin.ac.jp

本日の主要な結論
?今回の申請では2度，薄氷を踏んだ
?設置の趣旨は，「公民の教科指導」（①），
「チーム学校」（②），「学位プログラムとの相
当関係」（③）の3つの視点から説明した
?教員審査では，真正な評価などないという
前向きな諦めのもと，ディフェンスをした
→薄氷を踏むのは避けたい
→もっとも大切なコストは時間（半年は欲しい）
→時間がなかったので，防戦一方であった
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確認：認定可のためのポイント
（1）免許教科と学位名称の関係が深い
（2）「教科に関する科目」に卒業要件科目がいっ
ぱいある
（3）「共通開設科目」の取扱いに違反していない
→課程認定基準を満たし，かつ上記3つのポイント
を充足（していることを説明）すれば，認定されな
いことは起こりにくい
（現在の日本の大学の質保証は，多くの場面で準
則主義）
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過去の実績
1. 平成25年度現代社会学部現代社会学科／社会防災学科
の，中一種免（社会）?高一種免（公民）【新学部設置（平成26
年4月開設）による】
2. 平成26年度グローバル?コミュニケーション学部グローバ
ル?コミュニケーション学科（英語コース）の，中一種免（英
語）?高一種免（英語）【新学部設置（平成27年4月開設）によ
る】
3. 平成26年度総合リハビリテーション学部社会リハビリテー
ション学科の，高一種免（福祉）【学部改組／カリキュラム改
正（平成27年4月）による】
4. 平成26年度栄養学部栄養学科（うち管理栄養学専攻）の，
栄教一種免【学部改組／カリキュラム改正（平成28年4月）
による】 →かなりの自信があった！が……
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スケジュール（1）申請書提出まで
1/17（火）2019年度の新心理学部設置予定を把握
1/19（木）教職課程カリキュラムと設置の趣旨の初版作成
1/20（金）心理系で直近で認定を受けた大学にリサーチ
― この期間に，カリキュラムを編成 ―
1/26（木）大学設置室に事前相談書類を送付【設置関係】
1/27（金）事前相談予約メールを送付
2/ 3（金）事前相談用の資料提出
2/ 6（月）新心理学部の教員に個人調書の提供依頼
2/10（金）事前相談
2/13（月）事前相談を受けて，若干の組み替えを行う
2/24（金）新心理学部以外の教員に個人調書の提供依頼
― この期間に，学内の複数の会議体で決議 ―
3/24（金）申請書提出 ※最終日※
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スケジュール（2）申請書提出後
5/10（水）事務局指摘1回目（〆切：5/25（木））→ 5/25（木）回答
6/15（木）事務局指摘2回目（〆切：6/23（金））→ 6/21（水）回答
6/26（月）事務局指摘3回目（〆切：7/ 4（火）） → 7/ 4（火）回答
7/ 3（月）中教審への諮問
7/14（金）申請書差替
7/31（月）公認心理師カリキュラム等説明会
※省令記載の科目名しか認めないことが明らかに！
8/10（木）委員会指摘1回目（〆切：8/18（金））
→ 8/18（金）回答。同時に省令記載の科目名しか認められないことを相談
9/11（月）委員会指摘2回目（〆切：9/14（木）） → 9/14（木）回答
9/15（金）委員会用資料提供依頼（〆切：9/19（火））→ 9/19（火）送付
9/15（金）公認心理師法施行
9/29（金）申請書差替
12/ 4（月）認定
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スケジュールから見た薄氷（1）1-2月
【1月】
?一刻も早く事前相談に行かなければならなかっ
た！
?このため，10日でカリキュラムと設置の趣旨を構
築した
【2月】
?事前相談に行き，若干のリバイズを加える
?その後，息つく間もなく学内調整へ
?3月上旬に初めて，「自分が努力すれば提出でき
る状態」に
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スケジュールから見た薄氷（2）8月
?7月末に，公認心理師法の関係で，改正された省令の中に示された
科目名称しか認められないことが発覚！
→ 当然だが，科目名称を申請書提出後に変更する手続きなど存在し
ない。取り下げを覚悟
?公認心理師法施行がまだだったので，一旦は何事もなかったように
粛々と審査対応を進めることを選んだ
?しかし，「9月以降に審査会に残されるのは，問題のある大学のみ」と
いう情報をキャッチしたので，9月中に意識づけを含んで相談した
→ 最終的に認められた。今でもなぜなのかわからない
（公認心理師法が施行される前であることを理解して，
申請書を提出したのは我々なので）
→ 公認心理師法は文科省も無関係ではないから？それでも，部局が
違うし……
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様式第8号ア作成（1）方法
?常任理事会で配付された設置の趣旨（簡易版）を参考に作成
?「公民の教科指導」（①），「チーム学校」（②），「学位プログラ
ムとの相当関係」（③）の3つの視点から説明
?①では，「現代社会」「倫理」「政治?経済」の3領域の教科指導
と心理学との関連を強調
?②では，心理学部で養成したい公民科教員が，「公認心理師」
の基礎的素養を同時に備えることになる（しかも，そういう課
程がどこよりも早く設置される）ことを意義として強調
?③では，教職に関する科目と教科に関する科目の双方から強
固に成立していることを強調
→ 素人が読んでもわかる，説得力ある文章を意識
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様式第8号ア作成（2）最初と最後
（認定を受けようとする課程の設置趣旨（学科等ごと））
本学部では，「高等学校教諭一種免許状（公民）」の課程
認定を受けようとするものである。この課程の意義と必要
性について，以下に「公民の教科指導」（①），「チーム学
校」（②），「学位プログラムとの相当関係」（③）の3つの視
点から説明を行う。
― ①②③の説明 ―
以上，「公民の教科指導」「チーム学校」「学位プログラム
との相当関係」の3つの視点から，本学部で「高等学校教
諭一種免許状（公民）」を取得した学生は，心理学の幅広
い知見を用いながら，複雑な現代社会に関わる諸問題に
ついて理解し，生徒の自立と他者と協働する力を育むこと
はもちろん，社会的要求の高い「チーム学校」の一員として，
児童生徒を取りまく諸課題の複雑化?多様化という課題の
解決に寄与することが可能であると明言する。
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様式第8号ア作成（3）①②の基本的構成
本学部の学生はその教育課程において，Aを獲
得することができる。この能力Aが，①or②にいか
なる貢献をもたらすのかを示す。
①or②の目標（背景）は，Ｘにある。このＸに対し
て，aを修得していることが生かされる。具体的に
は，……（中略）
このように，Ｘに対して，本学部の教育課程を経
た教員は将来にわたって十分に寄与することがで
きる。
→心理学部のため，①については，「政治?経済」
領域との関連の記載が特に苦しかった
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様式第8号ア作成（4）③の基本的構成
①および②の視点を下支えするのが，本学部における学
位プログラムと教職課程との相当関係である。本学部で教
職課程を履修する学生は，学位プログラムの履修と教職
課程の履修を体系的?連関的に行うことが保障されている。
具体的には次のとおりである。
まず教職に関する科目では，……（中略）次に教科に関す
る科目では，……（中略）。
このように，本学部における学位プログラムと教職課程と
の相当関係は，教職に関する科目と教科に関する科目の
双方から強固に成立している。教育職員免許法および同
施行規則，さらには教職課程認定基準を満たすのはもち
ろんのこと，本学部の教育研究分野と認定を受けようとす
る「高等学校教諭一種免許状（公民）」との間には，十分な
相当関係が存在しているのである。
→ もっとも重要なので，初めから章立てに含めばよい
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様式第8号ア作成（5）注意した点
?直近の申請大学から，公民の科目区分「倫理学、倫理学、
宗教学、心理学」に配置する心理学系科目は，個を対象と
「臨床心理」等ではなく、社会を対象とした心理学である必
要があるという指摘を受けた，という情報をいただく
→学問的に正しい解釈なのか疑問だったが，一応ディフェン
スのために様式第8号アにスパイスを仕込む
→「教科に関する科目に配置している卒業要件内科目は，常
に＜個＞と＜社会＞の双方を射程としていることを付記し
ておく」と記しつつ，「チーム学校」（②）視点において，ス
クールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置
拡充と関連づけて記載 → 結果的に指摘なし
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事前相談（1）主な指摘
?（「法律学（国際法を含む）、政治学（国際政治を含む。）」に配置
していた）「心理専門職関係行政論Ⅰ?Ⅱ?Ⅲ」は，名称からいっ
て公民の教科指導になじまない。名称を変更されるか，別の科
目を配置された方がよい。特に，「心理専門職」と明示されている
と苦しい
?（「社会学、経済学（国際経済を含む。）」）に配置していた「社会
心理学」「集団心理学」も，内容的に社会学的であることは理解
できるが，やはり名称の問題から，「哲学、倫理学、宗教学、心
理学」の科目区分に移した方がよい
?その場合，大半の科目が心理学寄りの科目で構成されることに
なり，公民科の王道である法律学，社会学，経済学とのバランス
が懸念される。うまく双方の融合を図ってほしい
?心理学系の科目でも，教科に関する科目に配置する場合はコ
ミュニケーションの技法のようなものではなく，より学問的なもの
が望ましい
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事前相談（2）主な指摘への対応
?「心理専門職関係行政論Ⅰ?Ⅱ?Ⅲ」は公認心理師の関係で名称変更
は無理。このため，学則上単独で開設で開設されている共通教育科目
を3科目あてる
?（「社会学、経済学（国際経済を含む。）」に配置していた，共通教育科
目の）「現代の経済Ⅰ」を一般的包括的内容を含む科目から外し，選択
科目として再配置
?「社会心理学」「集団心理学」は，科目区分「哲学、倫理学、宗教学、心
理学」に移動
?（資格科目（卒業要件外）として配置していた）「社会学概論」を専門科
目に組み入れ，科目区分「社会学、経済学（国際経済を含む。）」の一
般的包括的内容を含む科目（かつ必修）として配置
?科目区分「社会学、経済学（国際経済を含む。）」に，新たに「行動科学
概論」を選択科目として配置
?「臨床心理学概論」「心理学的支援法Ⅱ」は科目区分「哲学、倫理学、
宗教学、心理学」から外す
→以上の対応によって，「心理学に寄りすぎている」という印象を縮小
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事前相談（3）その他いただいたコメント
?近年心理学と公民の関連は少しずつ相当性が厳しくなっている状況で
あり，我々としてもラインを探っている。最初は大学院課程の臨床心理
士科目から「相当性が薄いのでは」という議論が始まった
?現在の枠組みでいえば，心理学概論のような一般的な内容であり，シ
ラバスの内容がより学問的な心理学に寄っていた方が望ましいと考え
られる
?臨床心理的な知見を学校に生かすという意味では，本来はスクールカ
ウンセラーを常勤にするという運動をした方がよいと思っている。また
その場合，教師に求められるのは適切な支援先を紹介するということ
である。そうでないと，全人格的な対応が教師に求められすぎてしまう
（しかしながら，財務省はなかなかお認めにならない）
?「今回の申請が，次年度以降公認心理師カリキュラムに対応した課程
の前例となりうるか？」→他の資格のことまではフォローしていないので，
そこまでは考えていない。既に同種のケースを今年度3校受けている
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教員審査（1）個人調書の作成方法
以下の手順で行っている。
①「手持ちの履歴書?業績書」をデータでいただく
②「手持ちの履歴書?業績書」を課程認定の様式に最適化する
③最適化した履歴書?業績書をご本人に確認いただき，押印を
いただく
【メリット】
?時間効率が良い
?見た目が美しく統一できる
→この作業は，教員が費やす教育研究のコストとトレードオフ
→『手引き』を配付し，本人が作成する方法は結構しんどい
【デメリット】
?審査の責任を引き受けることになる（と，自分は思う）
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教員審査（2）プロセスで大事だと思うこと
?委員の数は，通常の課程認定では25-30名程度
?再課程認定では委員の数を50名弱に増員し，審査期間
も延ばして対応する
?委員が4, 5名のグループに別れ，グループごとに割り当
てられた大学を審査。最後に読み合わせ
?①申請書提出→②事務局指摘→③課程認定委員会指摘，
の順
→②と③を区別することが重要
→②と③は完璧に連動しているわけではない
（連動していることを過度に期待しない方がいい）
→本番は③から
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教員審査（3）ディフェンス
?「うちの教員は落とさせない」という気持ちで，ギリギリまで粘る
?少なくとも，1度目の指摘で教員を交代したり，オムニバスにし
たりすることはしていない。必ず粘る
【1つの例】
?「授業科目Aに関する研究業績が判然としないため，関連する
研究業績を追記すること。」
→「関連する実績が明瞭となるよう概要欄の表現を修正。」
（関連業績は追記していない）
【1つの技術】
?他大学の方の知見であるが，初めから全ての業績を出さず，
余力を残しておくというのも1つの方法（この方法が使えるの
は元々業績の豊富な先生なので，私はあまりしていない）
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概要欄作成のイメージ（1）担当科目に，灯りを照らす
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担当科目
専門（≒業績）
専門分野のキーワード（狭い）と担当科目の
キーワード（広い）の主従関係を意識する

概要欄作成のイメージ（2）照らすライトは何でもいい
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担当科目
ダウンライト
ペンダントライトスポットライト
電球さえ，切れていなければ……（≒10
年以内の業績が，0でなければ）

概要欄作成のイメージ（3）こういう状態の方が異常
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担当科目
「担当科目に合わせて，業績を積む」
ことを意識すると，こうなりかねない

教員審査への問題意識
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?巷では「厳しい」と言われており，（旧?現）「教職に関する科
目」の審査に合格していると，履歴書にその事実を示すことが
できる
?教員人事でも，採用の条件になっていることが多い
→若く優秀な研究者が，就職のことを考えて施行規則に適合す
るようなキーワードを論文のタイトルに入れようとしたり，学内
のエラい人から「審査のために論文を書け」と言われたりする
現状がある。つまり，良くも悪くも，論文生産に影響を与えて
いる。大切なのは，絶対的な評価など存在しない（何らかの指
標で代理評価するしかない）事実を皆で確認すること
→代案がないか考えているが，まずは教職課程の関連領域の
論文生産メカニズム（特に，分布）を調べていく必要がある

本日の主要な結論
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?今回の申請では2度，薄氷を踏んだ
?設置の趣旨は，「公民の教科指導」（①），
「チーム学校」（②），「学位プログラムとの相
当関係」（③）の3つの視点から説明した
?教員審査では，真正な評価などないという
前向きな諦めのもと，ディフェンスをした
→薄氷を踏むのは避けたい
→もっとも大切なコストは時間（半年は欲しい）
→時間がなかったので，防戦一方であった

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