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ソフトウェアエンジニアに必要な法律?契约のお话
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suno88
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NSEG 第 7 回勉強会にて発表
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ソフトウェアエンジニアに必要な法律?契约のお话
1.
2010.9.11(Sat) @長野市?もんぜんぷら座 ソフトウェアエンジニアに 必要な法律?契約のお話
suno (すの) @suno88
2.
自己紹介 ●
春原 宏保 (すのはら ひろやす) ● プログラマー (Win32/Web) ● 議事録係 (最近サボり気味) http://d.hatena.ne.jp/suno88/ ● 次は PHP カンファレンス 2010 (9/24?25)
3.
IT 技術者と法律 ●
友人?知人経由で仕事をもらうことがある ● 副業といえども仕事は仕事 ● 最低限の契約関連の法律知識は必須 ● IT エンジニアに必要な 法律の知識を さわりだけでも
4.
注意! 情報の正確さには万全を期してお話し しますが、必ず専門家のアドバイスを 仰いでください。
5.
Part I 正常系のお話
6.
受発注の流れ 業務委託基本契約書
契約の基本となる取り決めを 定めた文書。個々の契約の 上位に位置する。 業務委託注文書 発注ごとに定める契約を明文化 (発注書/発注請書) した文書。納期、価格、検収日 などを記す。 納品 基本契約書や注文書に記載 された方法で。
7.
受発注の流れ 検収書
検収が完了したことを証明する 文書。発注側が作る。 振込先、支払期日などを明記。 請求書 領収書 収入印紙も忘れずに。
8.
業務委託基本契約書 ●
「モデル取引?契約書」(経済産業省) http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/keiyaku/ ● ただし、大規模システム開発を想定した内容 ● 以下の3点は慎重に! ● 著作権 ● 検収 ● 瑕疵担保責任
9.
著作権法に見る著作権 ●
第2条 10の2 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得るこ とができるようにこれに対する指令を組み合わせたもの として表現したものをいう。 ● 第2条 1項2号 著作者 著作物を創作する者をいう。
10.
著作権法に見る著作権 ●
第15条 法人その他使用者(以下この条において「法人等」とい う。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が 職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。) で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その 他に別段の定めがない限り、その法人等とする。 2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者 が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その 作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めが ない限り、その法人等とする。
11.
自分が書いたプログラムの著作権者は? ●
契約書に「別段の定め」がないと、発注者が 著作権を持つことに ● 自分で書いたコードを再利用できなくなる ● 業務委託基本契約書に「別段の定め」を 入れるべき
12.
コードの著作権は譲渡しない ●
以下のいずれかでコードの著作権を守る ● 著作権は自分で保有し、使用許諾契約を締結 する ● 納品物の著作権は譲渡するが、「ソースコード 及びライブラリは対象外」の一文を入れる ● ソースコードも納品する場合、ソースコード の再販や改変、二次的著作物作成についての 条項も入れる
13.
検収条件 ●
納品時にテスト報告書を提出 ● 検収条件を明確化しておく(先手必勝) ● 機能を明文化し、「○○が行えること」などと 定量化した記述にする ● さもないと、「何だか気に入らない」で 突き返される恐れが ● 「気に入らない」部分は別途見積書を出す ● 大した手間でなければ無料対応すると心証が よくなる :-)
14.
瑕疵担保責任 ●
瑕疵担保期間の設定 ● 検収後、半年~1年くらいが一般的 ● 年次処理のあるシステムの場合、1年数ヶ月を 見込む ● 以下の項目がないと死ねる ● 開発ツールのバグは対象外 ● リリース後に導入したハードウェアでの動作は 対象外
15.
その他、契約書に明記するべき点 ●
代金支払い ● 機密保持 ● 「機密情報」が指す範囲 ● 機密情報を開示できる人の範囲 ● 機密保持期間
16.
Part II 異常系のお話
17.
契約がらみのトラブル発生! ●
Part I でお話しした契約関連の話を なおざりにして仕事をした結果、痛い目に 遭った体験談をお伝えします ● ケーススタディと反面教師として 「何事も、他人に起きている限り面白い」 ──ジョージ?バーナード?ショウ
18.
登場人物 私 (春原)
A社 (運送業) ② システム ③ システム 開発依頼 開発依頼 春原の父 B社 (事務機器リース) ① 私を紹介
19.
背景 ●
B社からの仕事は初めてではなかった ● 私が副業としてやっていることを理解して くれていて、「春原さんの負担にしたく ない」ということで契約書の類は一切 交わしていなかった ● 書類どころか受注金額や 納期の話もまったくない まま開発していた
20.
A社の仕事が始まる ●
最初の数回は、B社の営業担当者と同席 ● そのうち、B社営業が同行しなくなり、私が 一人で直接打ち合わせに行くようになった ● 納期の話も予算の話も一切なし ● 「いつでもいいよ」くらいの勢い 三者の関係は、 法的にはどうなる?
21.
础社と叠社と私
A社 (運送業) 業務請負契約 B社 (事務機器リース) 業務請負契約 このルートで 業務指示は 私 (春原) 出せない (偽装請負)
22.
B社の杜撰な営業担当者 ●
システム納品を当て込んで、新しい複合機の リースをA社に契約させた ● リース料が相場よりかなり高かった(らしい) ● しかし、なかなかシステムが納品されない ● A社にしてみれば「騙された」と思う罠 ● A社とB社の間でシステム開発に関する 契約書はなかった A社、キレる!
23.
さらに…… ●
B社営業担当、A社の怒りを静めるため、 独断で以下のような条件をA社に提示 「システムは無料にします」 ● それを私が知ったのはかなり後になってから ● 私に開発継続の義務はあるのか?
24.
契約書のない契約? ●
文書としての契約書が ない「口約束」の場合、 法的に契約として 認められるか? ● 慣習上「口約束でも 契約」と解釈される ● ただし、どこまで作れば「作った」ことに なるかについては、合意がないものと みなされる
25.
記録はしっかり取ろう ●
契約書にない内容について「言った」 「言わない」の議論になった場合、裁判では 言わなかったことになるケースが多い ● 議事録重要。必ず相手に承認印をもらう ● 話し合いの内容を録音する のもひとつの手段 ● ただし、録音する際は録音 する旨をあらかじめ伝えて おくほうがよい
26.
三者交えての話し合い ●
200x年10月、A社曰く…… ● 翌年の3月末までに完成品を納品しろ ● B社がリースで持ってきたPCと複合機は持って 帰れ。あんなに高くて低機能なモノは要らん。 契約期間? 知らんがな ● 翌年4月1日にシステムが稼働していなかったら B社は違約金として100万円払え
27.
まるで下請けいじめの偽装請負 ●
A社「この機能も付くって言ったよね?」 ● 私「『付けられる』とは言ったが、第二次 開発で実装するという提案をしたはず」 ● A社「そんな話は聞いていない。この機能が 付かなければ発注した意味がない。いいから 作れ」 →で、帳票印刷機能が4つ上乗せになるなど
28.
逃げるB社、追い込まれる私 ●
B社は…… ● この期に及んでも、私が作っているのが何を するシステムなのかをまったく理解していない ● 3/31に検収書に印鑑を押してもらうように 言っても、のらりくらりとかわされる ● 「アンタのおかげでこっちは修羅場なんだ。検収 印をもらわなければ4月以降もいいようにただ働き させられるんだぞ!」と電話口で怒鳴り飛ばした私
29.
A社との顛末 ●
A社「年度末に間に合うかい? 間に合わな かったら、大変なことになるよ」と恫喝 ● 勝手に納期を切ったクセに、業務が忙しい からと仕様を伝えてこない ● 打ち合わせの議事録にも承認印を押さない ● 契約関係が曖昧で、私も強気に出られない ● 3/31にバグ発覚→「はい、ご苦労さん。 B社さん、明日100万円持っておいで」
30.
私のB社対策 ●
複数の弁護士に相談 ● 今回の件が偽装請負であることは明らか ● 口約束の契約内容から鑑みて、私が責任を 負うべき範囲は全うしたと判断 ● 私はA社に対する一切の義務はない ● B社が何か言ってきたら、法廷で争う構え
31.
B社から連絡??━━━(???)━━━ !!!!! ●
B社社長から父に「100万円払って」の電話 ● 二度目の電話では何故か80万円に ● B社営業担当は最後まで逃げ、謝罪せず ● どころか、「春原さんがもっと早く納品しさえ すれば……」とすべての責任を私に向ける ● 契約書を作らないのは、私に責任を取らせない ようにするためじゃなかったっけ……?
32.
B社との顛末 ●
父「その100万なり80万なりの根拠を提示 しろ。話はそれからだ」 ● B社、それ以来音沙汰なしで 1年経過 ● 請求権は1年で時効 ● この件、終了
33.
この件での教訓 ●
ビジネスでは契約書が すべてのベース。相手の 甘言を鵜呑みにせず、 契約という名の防具を 身につけるのは最低限の 常識 ● 曖昧な点は早めに白黒つけておく ● 自分を安売りしない。正当な対価を要求する ● 条件が飲めなかったら、手を引くことも大切
34.
君、自分を安売りすることなかれ ●
「気をつけよう、甘い言葉と暗い道」 ● ダメな仕事を受けないためのNGワード (おごちゃんの雑文) http://www.nurs.or.jp/~ogochan/essay/archives/2906 ● 「レベニューシェアで」 ● 「今回は予算があまりないので小額になります が、次回はしっかり払いますので」 ● 「後でちゃんと払いますので、すぐ着手して」 ● などなど……
35.
まとめ
36.
ITエンジニアに法律知識は不要か ●
あえて文系?理系という区分けをすれば 文系 理系 法律 IT ● 雇われのプログラマーには法律なんて 関係ない?
37.
日本は法治国家 ●
何かあった時に自分を守ってくれるのは法律 ● 法律はビジネスの潤滑油 ● 経営者でなくとも、契約や取引に関する部分は 知っておきたい
38.
法律も知らずに世界を変えるって? ●
ITエンジニア(特にWeb系の人たち)は好んで言う ● コードだけが世界を変える ● レガシーなビジネスは死すべき ● スーツ爆発しろ! ● 世界を変えるためには、今の世界のルールを 知らないとダメ ● 今の自分が法律に守られていることを知って ほしい
39.
まとめのまとめ ●
「ITエンジニアだから」なんて自分の視野を 狭めず、いろいろな事象に興味を持とう ● 理論武装は身を助く ● 会社勤めの方は、面倒な法的手続きを会社が 全部やってくれていることに感謝しよう ● 「Part II」の内容が皆さんの役に立つ日が 永遠に来ないことを祈ります
40.
完 ──ご静聴ありがとうございました
すの (春原 宏保) http://d.hatena.ne.jp/suno88/ http://twitter.com/suno88