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子供型アンドロイドロボットに関する
理想と現実のギャップを埋める
石原 尚
2017-11-17 徳島県立脇町高校 Sw-ingレクチャー
大阪大学大学院 工学研究科 テニュアトラック助教 (浅田稔教授研究室)
JSTさきがけ研究員
2
大阪大学吹田キャンパス
研究を行っているところ
緑の多いキャンパスです
この建物で小型で高機能な
アンドロイドロボットの開発
を行っています
http://aar.art-it.asia/u/dxk12/ZOT8zFBdR3jDrf1iQekP/?art-it-aar=smstahpj http://math.ist.osaka-u.ac.jp/access/
3
将来世界で活躍するみなさんに少しでも
?研究者が感じていること
?考えていること
?大事だと気づいてきたこととその過程
を先取りして知って役立ててもらうため
ここに来た理由
4みなさんの夢や理想はどんなものですか
いずれにせよ,今の現状とは違う状態を思い描いているはず
こんな仕事? こんな風に過ごしたい? こんな状態に身を置きたい?
5
現実を少しでも変えていける力が必要
理想と現実,そのギャップを埋めるための力
理想
現実
ギャップ(隔たり)
今学んでいること,体験していること
これから学ぶこと,体験すること
が力になる
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現実も理想も,意図せず移り変わる
理想と現実,そのギャップを埋めるための力
理想
現実
ギャップ(隔たり)
どうなっても対応できるように
文系?理系,学業?遊び
といった分類に関係なく
幅広く多種多様な
力をつけていくことが大事
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SFや漫画に出てくるアンドロイドたちとその開発者
高校時代の夢
ストーリーも魅力的だったが,隙間に見える内部の機械に関心があった
?ワーナーブラザーズ
8
特色のある研究者が揃っていた大阪大学工学部
進学先
石黒浩教授
アンドロイドが人に与える
影響を調べて活用先を見出す
アンドロイド科学
浅田稔教授
子供のように学んでいける
ロボットをつくる
認知発達ロボティクス
細田耕教授
柔らかい素材で機能的な
運動を実現する
ソフトロボティクス
自由な発想でチャレンジするロボット研究が盛ん
http://www.humanware.osaka-u.ac.jp/professor/koh_hosoda/
http://www.eng.osaka-u.ac.jp/ja/research/index_asada.html
https://next.rikunabi.com/journal/entry/20150319
9
ロボット開発に必要な基礎学問とギャップ
工学部で学んだこと
そんな授業は世界中見渡してもいまだにない
機械工学,設計製図,材料工学,制御理論,計算科学,電気工学,
またそれらの基礎となる数学や物理.
アンドロイドロボットの
作り方を知りたい
ギャップ(隔たり)
?ワーナーブラザーズ
10
人間についての授業
ギャップを埋めようとして工学部以外でとった授業
人間の理解とロボットの開発の両方への関心が高まった
解剖生理学
認知神経科学
人の体がどのように構成され
安定を保っているのか
人の感覚器や脳がどのような癖を
備えているのか
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創発ロボティクス研究室(浅田稔教授研究室)
学部四年生で選んだ研究室
ロボットを作りつつ人も理解し,さらなるロボットの改善に役立てる
自分の関心や理想とぴったりだった
http://www.er.ams.eng.osaka-u.ac.jp/asadalab/
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人工知能の研究で再度ギャップを認識
学部四年生と修士課程の二年間の研究テーマ
シミュレーションなら数分で済むが,実際にはどれくらいかかるのか…
ロボットに対して人が情報を与えることで,
ロボットが認識の仕方や振る舞いを人に近づけていく
一つの振る舞いを学ぶだけでも,
数千~数万回のやりとりを繰り返さないといけない
ギャップ(隔たり)
学習機能のプログラミング技術やシミュレーションの技術は身についた
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ロボットの体の機能が足りていない
人工知能研究で気づいたこと
ないなら自分で作って現実を変えるしかない
知能的に未熟であっても可愛がられ,たくさんの
情報を与え続けてもらえる子供のようなロボット
があればよい
子供型ロボットは,機械的すぎるか,人形型か.
触れにくいし,動かしにくいし,備えている感
覚器も少ない.
ギャップ(隔たり)
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開発予算を貰うため,試作品を作り,計画書を提出
顔の試作品の開発
ひどい出来だったが,改善計画と研究の価値を説得して予算をつけてもらえた
粘土を適当にこねて
顔っぽいものを作る
着色した皮膚用素材を
流し込む型を作る
できた皮膚を適当な
ロボットの体に載せる
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造形技術?解剖知識を高めて挑戦
二回目の顔の開発
彫刻の仕方,頭部骨格の形状,皮膚表面の盛り上がりやへこみの配置など
以前よりバランスのよい
粘土彫刻
彫刻をかたどって
作った皮膚マスク
皮膚マスクをのせる
機械の部分も製作
皮膚をのせるための
骨の部分も製作
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単純な機械動作を皮膚が生き物らしくする
動かした結果
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アンドロイド開発の難しさが見えてきた
開発の成果
完成度は未だ低いものの,現在のテーマに繋がる発見を多く得た.
この挑戦により,年間研究予算が100万円程度に増額.
柔らかい皮膚の素材や構造は
どのようなものであればよい?
小さな体にたくさんの機械を
詰め込むには?
皮膚と機械はどこで
どう繋げればよい?
付加機能のある皮膚の
製作プロセスは?
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空気圧でしなやかに動く人型関節機構を採用
体の設計開発
空気が柔らかすぎて,姿勢が安定せずに暴れてしまう
3次元CADによる設計構造図 組み立て途中 最初の起動試験
立体構造物設計や,機械部品,電気配線や制御プログラム開発の技術知識を習得
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空気のかたさ(圧力)を高められるものに
体の設計の改善
この成果により,年間研究予算が数百万程度に増額.
空気の流れる管内摩擦の推定や流体制御用装置の選定などの技術知識を習得
改良した二号機の設計構造図 動作が安定し,機敏にも動く
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人のような構造の肉厚皮膚に触覚を持たせたい
皮膚の開発
関節部
曲がって姿勢を変える
複雑形状の機構部
硬くて角ばっている
脂肪層
衝撃を保護しつつ,内部機構の上で皮膚
を支える
真皮層
表面に張りを与える丈夫な層
表皮層
使い捨ての薄い保護膜
理想とするロボット皮膚
今のロボットの皮膚は,スポンジや布やゴムシートくらい.機能が低い.
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感度や耐久性の点で問題が多い
肉厚柔軟素材を触覚センサとする従来の方法
センサ素子や配線が破損しやすい
柔軟素材
ロボット
内部
センサ素子配線
外骨格
柔軟層にセンサ素子を内包するタイプ
[Hosoda, et al., 2006], [Jamali, et al., 2011]
柔軟部が厚く柔らかいほど感度が落ちる
センサ素子
骨格面にセンサを配置するタイプ
[Mukai, et al., 2008], [Maiolino, et al., 2013]
カメラ
光学系を構成するため構造が複雑
マーカ
カメラなどを用いたタイプ
[Kamiyama, et al., 2005], [Ohka, et al., 2016]
磁気
センサ
劣化しやすい柔軟素材の交換が容易でない
磁石
磁石と磁気センサを用いたタイプ
[L.Jamole, et al., 2015], [Goka, et al., 2010]
柔らかいまま配線も入れずどうやって変形を感知させるか?
図作成:川節拓実
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コイルとゴムと,鉄粉を挟んだゴムで構成
開発した触覚センサ
?壊れにくい
?感度が良い
?感触がよい
コイル
押下力鉄粉を混ぜたゴム
ただのゴム
どのような原理か想像できますか?
図作成:川節拓実
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鉄が近づいたときのコイル特性値を測定している
開発したセンサの原理
高校物理がセンサ開発にも役立つ
コイルに鉄心を入れると,コイルインダクタンスが上昇して電磁石として強くなる
提案センサ
コイルインダクタンスの変化
24横ずれも測れるようにする
x軸
y軸
コイル
鉄粉を含んだ
円盤部
センサ構造(一部ゴム切断図)
ただのゴム
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複数のコイル特性値の変化パタンをみる
横ずれを測る原理
センサの外観
ゴム切断図
ただのゴム
鉄粉を含んだ
ゴム部分
コイル3
コイル2
コイル3 コイル4
コイル1
~~~~
~~~~
鉄粉を含んだゴム部分(直径15mm,厚み3mm)
原点O
(-7.5, 7.5) (7.5, 7.5)
(-7.5, -7.5) (7.5, -7.5)
x[mm]
y[mm]
原点O
7mm
10mm
非磁性エラストマ
コイル
直径
10mm
上面図
側面図
基板コイル4
コイル2 コイル1
図作成:川節拓実
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四つのコイル特性値がすべて上昇
押しつぶされた場合
00.0030.006
0 6 12 18
インダクタンス変化[μH]
押込力Fz[N]
実験条件
圧子を原点上でz方向に3mm押込み
コイル1
コイル2
コイル3
コイル4
実験結果
z
y
コイル2
コイル3
コイル4
コイル1
x
鉄粉
含有ゴム
原点
図作成:川節拓実
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ずれた方のコイル特性値だけ上昇
横にずれた場合
-0.00200.002
-3 -1.5 0 1.5 3
インダクタンス変化[μH]
剪断力Fx[N]
x
y
コイル2
コイル3 コイル4
コイル1
実験条件
圧子をz方向に2mm押し込んだ状態で
原点からx方向に±2mm移動
実験結果(z方向に押込後からのインダクタンス変化)
コイル1
コイル4
コイル2
コイル3
図作成:川節拓実
28今描いている夢
この挑戦には数千万円の研究予算がついた.
29まとめ
理想
大きな理想を現実に変えるには,
大小様々な複数の理想と現実のギャップを埋める必要
今後直面するどんなギャップも埋められるように
理系?文系,学業?遊びの区別なく
積極的に知識と技術を身につけていってください

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