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分散相互運用型の災害情報システムが
利用者に与える影響に関する考察
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
伊勢 正
H27年度 日本災害情報学会 1
課 題
? 阪神?淡路大震災(1995)以降、情報共有の重要性
が強く認識され、さまざまなシステムが研究開発さ
れた。
? 被害状況や対応状況など災害情報を、被災自治体
(市町村)と都道府県、さらに国や防災関係機関で
共有するシステムが必要。
? ? 多くの自治体でインターネット等を用いたシステ
ム導入されている。
H27年度 日本災害情報学会 2
多くの自治体で
東日本大震災でも、やっぱりうまく使えなかった。
自治体の災害情報システムの現状
? 全国47都道府県および20政令指定都市のち、43カ
所の自治体が、所管する基礎自治体において統一
的な災害情報システムを有している。
? 都道府県が用意したシステムに市町村が被害状況
などを入力する集中管理型のシステムがほとんどで
ある。
? 各市町村は、都道府県の要請に応じる形で、災害
情報を報告している。
(防災科学技術研究所の調査より)
H27年度 日本災害情報学会 3
台風第1518号対応(中部地方のある基礎自治体)
? 県システムに入力すると、そのままマスメディアに伝わるので、最後の
“清書”の感覚
? こちら(市町村)が入力しても、一方通行で、こちらにメリットがない。
H27年度 日本災害情報学会 4
「自分たちの仕事」とは別の仕事
状況論的アプローチ
? 状況論的アプローチ
? ロバート?M?ハッチンス:
? 私たちの情報処理のプロセスにおいては、手や目だけでなく、計算
式、筆記用具、紙などのさまざまな道具が用いられており、当然のこ
とながら、頭の内部ですべてを処理しているわけではない。このよう
にして、認知システムの分析の単位は、個人の頭の中を超えて、より
大きな、システムとして見ていくべきだというのである。
? ? 『学習社会』という概念
【要するに???】
? 新しいシステムが根付くためには、“頭の内部の処理”(計画)だけはな
く実践を伴う必要がある。
? ? 新しい機械やシステムを導入することで、コミュニティがどのように
変化するのか、という視点
? ? コミュニティの再組織化を通じて、新しい機械やシステムが根付く
(学習されていく)という視点
H27年度 日本災害情報学会 5
再組織化を通じたオーナーシップの醸成
H27年度 日本災害情報学会 6
◆災害情報共有システムの課題
? 市町村としては、特に使うメリットを感じない。
? 災害時に使えなかった。手で書いた方が早い。
? 訓練で使ってみようとしたが、よくわからなかった。
【仮説】
?都道府県が用意した “立派なシステム” では市町村の
災害対応の現場に合わない。
?システムを含めた組織の再編が伴わなくてはならない。
官民協働危機管理クラウドシステム(1)
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【外部サーバを経由して情報共有】 ? 分散相互運用による情報の共有
例:避難所の開設状況を示す画面
赤枠の自治体は、自らの避難所の情報を入力し、各部署で共有することに専念。
このとき、自動的に隣接自治体の状況が、リアルタイムかつシームレスに共有される。
隣接自治体
このシステムの
対象自治体
官民協働危機管理クラウドシステム(2)
?災害対応業務の対応過程に沿って、2階層のタブとメニューボタンを構成
?設定によりタブとメニューを自由に変更可能
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官民協働危機管理クラウドシステム(3)
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?分散相互運用の地図データイメージ
?従来型の地図データイメージ
県の大きな地図セット
に各市町村が書き込む
各市町村の情報を県が集めて
必要な情報を生成する
愛知県西三河での取り組み(1)
? 西三河9市1町+愛知県で、情報連携の実証実験を開催
? SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)で名古屋大と共同で実験を開催
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? 平成12年東海豪雨のような洪水を想定し、地域全体の対応
の様子を可視化
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愛知県西三河での取り組み(2)
安城市
岡崎市
豊田市
知立市
刈谷市
愛知県西三河での取り組み(3)
◆情報連携がイメージできたことによる気づき
? これまでに、西三河9市1町の枠組みは存在したが、具体
的にどのような課題が存在し、どのような連携をするべき
であるかといった検討はなされていなかった。
? したがってシステムを導入するだけでは無意味であり、シ
ステムを活用して広域連携をターゲットとした取り組みや
組織体制の検討が必要だと感じた。
(参加自治体への事後インタビュー調査より)
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南海トラフ巨大地震?津波を想定した
広域連携のワークショップを開催
愛知県西三河での取り組み(4)
◆設定の見直しを通じた気づき
? 我々の自治体が導入する際には、独自に作成している様
式に応じて被害区分を見直したいと思うが、公開する基
本設定としての被害区分はこうした表現の方が一般的で
良いと思う。
(参加自治体への事後インタビュー調査より)
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単に利用者する立場ではなく、システム
を構築する側の視点による意見
結 論
? 視覚的に整理された災害情報を模擬経験したことで、
利用者である各自治体の職員が、災害対応の枠組
みの再組織化を検討しようとする意識の変化を確認
することが出来た。
? ワークフロー等のユーザ?インターフェイスを柔軟に
変更できるという機能が、利用する側から構築する
側への視点の変化をもたらし、災害情報システムに
対するオーナーシップを芽生えさせていることを確認
することが出来た。
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今後の展開
? 四万十町など(高幡広域市町村圏事務組合)
須崎市、津野町、梼原町、中土佐町、四万十町で構
成され、さまざまな取組を行っている。クラウド環境
を整備して、地域おこしなどを展開
? 愛知県西三河はトヨタグループ等の貢献もあり、
非常に財政的に豊かな自治体がほとんど。
? そもそも、人口が少なく“疎”な地域こそITを活用
した情報共有が必要。
? 西三河地区と高幡地区を比較しながら、シス
テム導入に伴う組織の再編を調査
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御清聴ありがとうございました。
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本研究の一部は,総合科学技術?イノベーション
会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラ
ム)「レジリエントな防災?減災機能の強化」(管理
法人:JST)によって実施されました。

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