海外の高等教育機関等に留学経験のある日本人の数は、2015年度は84,456人にも達した。このような時勢を反映し、海外の高等教育機関への留学志望者のための言語支援プログラムの策定が各方面で進められている。 しかし, 海外に渡る日本人の目的は学術的なものだけではない。たとえば、近年スポーツ留学生の数は年間1,500名に上る。そのような中で,一部のスポーツ留学生が十分に活躍できない要因として,語学力不足が指摘されている(辻 2013)。スポーツ場面など, より実用的な言語使用においては、非文法的であったり,言いよどみがあったりしても,実際に使用された言語データを使用した方がよいとする見方がある(Burns et al. 1996)。 本発表では、そうした実際に社会で使用された言語データを教材(オーセンティック教材)として使用するジャンルベースドアプローチ(GBA)を用いた実践指導報告をする。研究対象は、将来、海外でサッカーのコーチやプレーヤーを目ざす社会人や学生10名である。筆者が勤務する大学の授業やSNSを通じて受講希望者を募った。指導方法は, GBAの学習サイクルに基づき,原則的には隔週で屋外実習と屋内学習を交互に入れ,屋外実習でモデルコーチの英語コーチングを体験し,翌週の屋内学習で,屋外実習でモデルコーチが話していた英語を教材として使用し,コーチング英語の特徴(語彙文法資源)をField,Tenor,Modeの観点で明示的に指導した。実施場所は立命館大学びわこ?くさつキャンパスである。学習者は, 活力にあふれた前向きな学習姿勢と, 生きた英語に接したことによる気づきや喜びを示し, 英語の認識とパフォーマンスに向上の兆しを見せた。 本発表における議論は, ノンアカデミック分野における有効な言語支援プログラム策定の一助となると考える。