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妊娠経過中に
超音波所見の変化を呈した
胎児多発性小腸閉鎖症の一例
河内健二
【緒言】
?小腸閉鎖は先天性消化管閉鎖症のうち約 30 %を占める
が、
閉塞部位が多発性である例は多くない
?今回妊娠経過中に超音波所見の変化を呈し
出生後に多発性小腸閉鎖の診断となった一例を経験した
【症例】
32 歳 1妊0産 既往歴なし
自然妊娠成立
近医にて妊婦健診を施行していた
妊娠 26 週4日 超音波にて胎児に右側腸管拡張を認めた
徐々に拡大傾向となり、小腸閉鎖の疑いにて
妊娠 33 週0日 当科紹介となった
【初診時所見】
妊娠 33 週 0 日
十二指腸より肛門側の小腸に径 24mm の拡張所見あり
拡張腸管蠕動(+)
胎児腹水(-)
羊水過多(-)
24mm
【経過①】
妊娠 34 週 5 日 下腹部痛?胎動減少で受診
胎児腸管拡張が径 32mm と進行
腸管蠕動消失、胎児腹水出現、壁肥厚はなし
? 管理入院とした
腹水
32mm
妊娠 35 週0日
腸管拡張所見進行見られ、口側腸管に複数の嚢胞状拡張所見が出現
腹水は消失 胎児状態悪化の兆候なし
妊娠 35 週 4 日 患者の強い希望で外来管理へ 自宅で iCTG
【経過③】
妊娠 36 週0日
腸管拡張所見 +honeycomb sign 混在
AC + 3.7SD 37
? 週での予定帝王切開の方針
AC の推移
33 週 0 日 + 2.2SD
34 週 0 日 + 1.4SD
35 週 2 日 + 2.2SD
36 週 0 日 + 3.2SD
【出生時所見】
妊娠 36 週 1 日 陣痛発来にて緊急帝王切開術にて出生
アプガースコア 8 点( 1 分値) /8 点( 5 分値)
腹部膨満著明 胃吸引にて緑色内容物 350ml
体重 3090 g (+0.27SD)
頭位 34.0cm(+1.29SD)
腹囲 34.5cm (吸引後の計測)
【新生児 腹部画像所見】
注腸造影
micro
colon
【緊急腸閉鎖症手術】
→ 診断:多発性小腸閉鎖症
離断部 回盲部から 23cm 口側
索状型 回盲部から 30cm 口側と 40cm
口側
狭窄部 回盲部から 53cm 口側
? 腸管吻合:口側 回盲部から 23cm
肛門側 回盲部から 60cm
【術後経過】
日齢 30 普通ミルクチャレンジテスト開始
日齢 33 突然吐血 , 下血あり、 CT で腸管気腫 緊急開腹術
多発小腸穿孔、小腸壊死 の診断にて壊死腸管切除、腸瘻造設施行
日齢 69 腸瘻閉鎖術施行 残存小腸 19 cm
日齢 80 現在NICU入院中
?胎児消化管閉鎖の原因として約 30 %と最も多い
?閉塞部位は空腸近位が 31 %、回腸遠位が 36 %であり、
多発性閉鎖症は 6 % -17 %に見られる
?器官形成終了後の腸間膜脈管障害の結果と考えられている
?胎便性イレウスが 12 %、胎便性腹膜炎が 8 %に合併する
小腸閉鎖とは (出典:ニューイングランド周産期マニュアル)
【胎児超音波所見】
?胎児の嚥下運動が乏しい 24 週以前の診断は困難
?腸管内腔が 7mm 以上で鑑別となり、 17mm を超える、
また腸管壁が 3mm 以上の厚さになると閉塞の頻度は優位に増加する
?空腸閉鎖では小腸拡張像が数個(3個以上)確認できるのに対して、
回腸閉鎖では小腸拡張像が多数描出され蜂の巣状となる
【治療】
?一般的には閉塞部位の切除と吻合術
?多発閉鎖症の場合は、短腸症候群となることを防ぐため、腸管
切除は避け複数の吻合術を施行する
?一般に小腸閉鎖症の予後は 95 %と良好であるが、残った腸管
が極めて短い場合は短腸症候群を合併する
【考察】
? 今回の症例は多発性小腸閉鎖症であった
? 染色体異常合併や腸管外奇形は認めなかった
? 今回の症例では 26 週で腸管拡張の指摘ありその後徐々に進行した
? 初診時は単一の腸管拡張所見であったが、途中複数の嚢胞状の拡張
所見が混在し、最終的には均一な honey comb sign の部分も見ら
れるようになった。小腸閉鎖としては非典型的な経過を観察できた
超音波所見の経過
小腸閉鎖の超音波所見
非典型像?典型像 へ
【結語】
今回妊娠経過中に超音波所見の変化を呈し出生後に多発性小腸閉
鎖の診断となった一例を経験した
先天性消化管閉鎖では妊娠経過に伴い超音波所見も変化すること
に注意して観察することで正確な胎児診断に近づく可能性がある
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妊娠経过中に超音波所见の変化を呈した胎児多発性小肠闭锁症の一例、(胎児、小肠闭锁、超音波所见)

Editor's Notes

  • #1: よろしくお愿いします
  • #2: 緒言です   小腸閉鎖は 先天性 消化管 閉鎖症 のうち 約30%を 占めますが、閉塞部位が 多発性で ある例は そのうちの 6%と 多くはありません 今回 妊娠経過中に 超音波所見の変化を呈し 出生後に 多発性 小腸閉鎖 の診断となった 一例を経験しましたので 報告します
  • #3: 32歳 1妊 0産 既往歴はなし  自然妊娠 妊娠26週4日 右側 腸管拡張 を認め、徐々に 拡大傾向となり、小腸閉鎖の疑いとなり 妊娠33週で紹介となりました。
  • #4: 初診時所見です 十二指腸より 肛門側の小腸に 径24mmの拡張所見を認めました 腸管壁は高輝度でしたが 壁の厚さは 1.5mm程度で 壁肥厚は無し 拡張腸管の蠕動は 確認できました 鎖肛所見は ありませんでした 胎児腹水や羊水過多は認めませんでした 腹囲周囲長 ACは プラス2.2SDでした 以後 外来管理としました
  • #5: その後 1週間ごとの妊婦検診を 予定していましたが 妊娠34週5日で 下腹部痛?胎動減少を主訴に 時間外受診されました 腸管拡張所見が進行し、32mmとなっており、 同部位の 腸管蠕動を認めず、軽度の腹水が出現していました。 壁肥厚はありませんでした 腸管穿孔  および 胎便性腹膜炎  の可能性を考慮し 児の状態 観察目的に 管理入院としました
  • #6: 妊娠35週0日  腸管の拡張所見はさらに進行し 複数の 嚢胞状の拡張所見 を呈しましたが、 腹水は消失し 胎児状態悪化の兆候も 認めなかったため、 妊娠35週4日 退院し、外来管理としました また iCTGを 自宅で連日モニターするよう指示しました
  • #7: 妊娠36週0日 腸管拡張所見とともに、honeycomb signを混在して呈していました ACが3.7SDと大きいため、児のストレスを考慮し、 予定帝王切開の方針としました
  • #8: 児のACの推移です 33週の当科紹介前後から急激に腹囲が増加しました
  • #9: 児の出生時所見です 発の字が違っていますが 緊急帝王切開で出生し 腹部膨満著明で 胃吸引にて 緑色内容物350mlを吸引しました
  • #10: 新生児の 腹部 画像所見です 注腸造影で 特異的な マイクロコロン と呼ばれる 狭小化した結腸 像を認め、  小腸閉鎖症の疑いで 日齢1に緊急手術を行いました。
  • #11: 術中所見より 診断は 多発性の小腸閉鎖症となりました 離断部、索状部、狭窄部 がそれぞれ認められ、 腸管吻合が行われました。
  • #12: 術後経過です 母体は術後6日目に術後経過良好にて退院しました 児はその後 術後経過良好でしたが 退院に向けて普通ミルク開始後 小腸穿孔 小腸壊死 にて腸瘻造設となりました 腸瘻 閉鎖術にて 残存小腸は19cmとなり 現在  短腸症候群のため 入院がつづいています 
  • #13: 考察です  小腸閉鎖についてですが 胎児 消化管閉鎖の原因として 約30%と 最も多い とされています ?閉塞部位は 空腸 近位が 31%、回腸 遠位が 36%であり、  多発性 閉鎖症は 6 から 17% に見られます ?器官形成 終了後の 腸間膜の脈管障害の結果 と考えられています ?胎便性 イレウスが 12%、胎便性 腹膜炎が 8%に合併します
  • #14: 次に 超音波所見でについてですが 胎児の 嚥下運動が乏しい 24週以前の診断は困難とされています 腸管内腔が 7mm以上で 鑑別となり、 17mmを超えると  または 腸管壁が3mm以上の厚さになると 閉塞の頻度が 優位に増加する とされています 典型的な所見としては ?空腸閉鎖では 小腸拡張像が 数個確認できる のに対して、 回腸閉鎖では 小腸拡張像が 多数描出され 蜂の巣状となります
  • #15: 治療は 一般には 閉塞部位の 切除と吻合術を おこないます 多発閉鎖症 の場合は、短腸症候群 となることを防ぐため、腸管切除は避け 複数の吻合術を施行します 一般に 小腸閉鎖症の予後は 95%と良好であるが、残った腸管が 極めて短い場合は 短腸症候群を合併します
  • #16: 以上より 今回の症例は多発性小腸閉鎖症でした 染色体異常合併や腸管外奇形は認めませんでした 今回の症例では26週で腸管拡張の指摘がありその後徐々に進行しました 初診時は 単一の腸管拡張所見でしたが、途中 複数の 嚢胞状の 拡張所見 が混在し、最終的には 均一な ハニーカムサインの 部分も 見られるようになりました。 小腸閉鎖としては 非典型的な 超音波所見の変化を 経時的に観察できた と考えます
  • #17: さいごのまとめとして 超音波所見の変化を供覧します ポーズ10秒
  • #18: 結語です 今回妊娠経過中に 超音波所見の変化を呈し 出生後に 多発性 小腸閉鎖の 診断となった一例を経験しました 先天性 消化管 閉鎖では 妊娠経過に伴い 超音波所見も 変化すること に注意して 観察することで 正確な 胎児診断に 近づく可能性がある と考えます 以上で発表を終わります ご清聴ありがとうございました