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どのように学生を知ろうとし、どのように
学生を支援しようとしているか
-イェール大学、マサチューセッツ大学アマースト校で
の調査から-
千葉大学附属図書館学術コンテンツ課
谷 奈穂
2014年度 第5回 千葉大学アカデミック?リンク?セミ
ナー(千葉大学附属図書館 2015.3.20)
発表内容
?2014年10月、イェール大学、マサチューセッツ
アマースト校に海外派遣
(H26年度国立大学図書館協会海外派遣事業)
?イェール…学生行動調査について
(どのように学生を知ろうとしているのか)
?マサチューセッツ…学習支援について
(どのように学生を支援しようとしているのか)
?問いを立てる
↓
?学生にきく
↓
?学生が何をどのように勉強しているかを知る
↓
?図書館ではどうすればいいか考え、実践する
学生行動調査のプロセス
?ガイダンスやってるのに何で来ないの?
?論文をどうして探しきれないの?
?新しいスペースをなんで使わないの?
?なんで図書館員に質問しないの?
図書館の人
問いを立てる
×図書館のための問いになっている
×学生の行動を変えようとしている
問いを立てる
?キャンパスに勉強スペースが
少ないって意見が一年生に多いな…
?●○分野の院生って
ほかの分野と比べて修了遅いな…
なんでだろう?
図書館の人
問いを立てる
?学生の声や大学全体の問題を知る
?それをふまえて問いを考える
?図書館が学生の実態に合わせて変わる、
図書館としてできることを考える
問いを立てる
?キャンパスに勉強スペースが
少ないって意見が一年生に多いな…
?●○分野の院生って
ほかの分野と比べて修了遅いな…
学生の人、なんでだと思うー?
図書館の人
問いを立てる
?「なぜ?」に対する答えを考えるのは学生では
なく自分(=ここでは図書館の人)。
?あくまでそのための材料として、学生には
「何をどのように勉強しているか」をきく。
学生にきく
学生に「あなたは、普段、何をどうやって勉強
しているのか?」を聞く
(×図書館をどのように使っているのか)
↓
学生の発言を分析する
↓
学生が困っていること、不満に思っていること、
便利に使っているもの、不足しているもの…な
どなどを発見する。
学生が何をどのように勉強しているか
を知る
どうやって?
?アンケート(量的調査)だけ?
?インタビュー(質的調査)だけ?
→併用する。
学生が何をどのように勉強しているか
を知る
調査するのは誰?
?図書館員だけ?
+調査のプロ(質問のつくりかた、質問の仕
方、分析の仕方)
+図書館員以外の人(他の人の目、図書館
だけの調査ではなくなる)
学生が何をどのように勉強しているか
を知る
調査が終わればそれで終了?
?結果をふまえて何かを変えること
→学生にとって「改善された」と感じなけれ
ば信頼されなくなる。
図書館ではどうすればいいか考え、実
践する
①人文科学専攻の博士課程学生を対象とした調査
問いを立てる
→人文科学の博士課程学生
の課程の修了が他の分野と
比べて遅いようだ。なぜこの
ようなことが起こっているの
か?図書館として何かできる
ことは?
【調査メンバー】
図書館員11人(全員初)+人類学者(レクチャー)
【対象】
人文科学(Humanity)専攻博士学生33人
【手法】
事前アンケート(基本情報)+インタビュー。
発言のカード化。定期的にミーティング、分析。
調査の概要
? 調査のために海外へ行く必要がある。準備やそ
の後のまとめも含め多くの時間と労力がかかる。
? 博士論文執筆前に十分なトレーニングを受けら
れていない状態でいきなり大部な論文を書かなく
てはならない。
? 学生は自宅で勉強することを好む
? 春季休業中、学部生がいない時期(=大学院生
が集中できる時期)に図書館が早く閉館する
調査の結果(一部)
? 検討中。
? たとえばオンラインのコンテンツを増やすことが考
えられる。
図書館ではどうすればいいか考え、実
践する
②音楽専攻の大学院生を対象とした調査
問いを立てる
→School of music(SoM)の学
生はどんなサービスを必要と
しているのか?図書館として
何ができるのか?(学生に
とって必要な存在でありた
い)
【調査メンバー】
図書館員1人(Emilyのみ)+SoMの学生3人。
【対象】
SoMの学生40人
【手法】
事前アンケート+インタビュー(インタビュアーは
学生のみ)。
定期的にミーティング、発言について分析。
調査の概要
調査の結果(一部)
? 図書館の資料はあまり使わない。
? そもそも図書館にあまり来ない。
むしろSoMのラウンジでくつろいでいることが多い。
? 図書館の資料はあまり使わない。
→2階にあった雑誌を1階に移動。学生たちはその存
在に気がつき、手にとって見るようになった。
? そもそも図書館にあまり来ない。むしろSoMのラウン
ジでくつろいでいることが多い。
→図書館内にもラウンジのスペースを準備
→学生を図書館にひっぱってくるのではなく、図書館員
自身がSoMに出向いてリソースの紹介などをおこなう
Embedded librarianshipを計画中
図書館ではどうすればいいか考え、実
践する
?問いを立てる
(「学生」「大学」に目を向ける)
↓
?学生にきく
(学生自身のことをきく)
↓
?学生が何をどのように勉強しているかを知る
(調査にはプロの手と図書館員以外の目)
↓
?図書館ではどうすればいいか考え、実践する
(調査だけに終わらない)
学生行動調査のプロセス
マサチューセッツ大学アマースト校(図書館)
26F
Teaching Commons
B1F
Learning Commons
Writing Center
3F
Digital Media Lab
10F
Learning Resource Center
学習支援のために用意されていたのは
? 用途に特化した場所+その分野の相談
ができる人材(ライティングならライティン
グ、メディアならメディアのプロ)
→さらにそれらの場所を、大学の「中心」
(物理的、心理的)である図書館に集めて
いた。
Learning Commons学習場所
+
ツール
文房具の自販機大判印刷用プリンタ
PC(Adobeなど) 各種サポートデスク
Writing Centerライティング
サポート
? トレーニングを受けた学生スタッフが相談者と1対1
でセッション
? 文章を「直す」のではなく、会話をすることで相談者
自身の気づきを引き出す
Digital Media Labメディア
機材
? メディアに関する問い合わ
せなら何でも
? 作業スペース+相談ス
ペース
? 各種機材、撮影?録音スタ
ジオの貸出
(ビデオ作成の授業)
? ドローン、3Dプリンタの貸
出も検討中
Learning Resource Center授業の
サポート
? 学部1、2年生対象
? チューターも学部生
-ピアチュータリング
-サプリメンタルインストラクション
-OURS(Office of Undergraduate
Research and Studies)
? 2013-2014年は延約34,000人
(全学生の60-70%)が利用
Teaching Commons番外編:
教員への
サポート
? 副学長の意向「図書館に連携の場を作って欲しい」
(FD組織+IT組織+図書館)
? 静かで落ち着いた環境で執筆などの活動ができる
? 著作権のコンサルテーションサービス
マサチューセッツ大学でみた
学習支援から考えたこと
? 用途に特化した場所
+その分野の相談ができるプロ
? 図書館はどんな場所で
図書館員は何のプロなのか?
マサチューセッツ大学でみた
学習支援から考えたこと
?学生から見た図書館員…
図書館=「資料」がある場所 にいる人
→資料がどこにあるかは知っている
?私(図書館員)が考える図書館員…
図書館=「学習」がおこなわれる場所の一つ にいる人
→必要な資料に確実につなぐ(聞かれても聞かれなくても)
→図書館として学生に必要な環境を用意する
(学生のことを知る)
→「学習」がおこなわれる他の場所にも行く or
学生には見えない存在でもいい?

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