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日本教育社会学会第66回大会Ⅳー1部会「社会の中での教育」 
コミュニティと社会教育に関する社会関係資本の 
観点からの考察 
荻野亮吾 
(東京大学高齢社会総合研究機構) 
2014/09/14(日)11:10?11:35 
@松山大学8号館4階841教室
1. 報告の目的 
? 本報告の目的:コミュニティと社会教育の関係について、 
社会関係資本の観点から理論的枠組みを設定し、この枠組 
みに基づいて、事例を分析する。 
? 本報告の構成 
? (1)社会教育とコミュニティ研究を巡る状況を概観。 
? (2)社会関係資本の研究を参照し、コミュニティと社会教育 
の関係を分析する際の研究枠組みを設定。 
? (3)研究枠組みに基づき、長野県飯田市、大分県佐伯市の2 
つの事例を分析。 
? (4)事例研究から得られる示唆を提示。 
2
1. 研究の背景 
? 社会教育行政論の基本的構図:1960年代以降の先行研究レビューより。 
? 議論の構図:(1)(社会)教育行政の一般行政からの自律性、(2)社会 
教育行政による住民に対する学習機会の提供と、社会教育関係団体に対する 
支援、(3)社会教育行政による条件整備と、住民の「対抗的参加」の相補 
性、(4)行政と住民との対立を調停する社会教育関係職員の位置づけ、 
(5)「対抗的参加」を行うための住民の主体形成。 
? この構図は、行政と住民との「対抗的相補性」を前提としてきた。 
? しかしこの構図は、1990年代以降、生涯学習政策の進展のもとで、社 
会教育行政の再編が進む現在では、成立しがたいものとなっている。 
? 教育委員会制度の改編に代表されるように、社会教育行政の一般行政からの 
独立という原則が揺らいでいること。 
? 社会教育行政の再編が進む中で、社会教育行政に「学校支援」ないし、コ 
ミュニティ政策を遂行する役割が求められつつあること。 
? 社会教育施設運営の弾力化?多様化の傾向。 
? 様々な領域での市民参加の要請。 
3
1. 社会教育論の転換の必要性 
? 現在では、住民の行政への「対抗的参加」を重視し、それを担う自治の 
主体の形成に関して、学習の条件整備と「社会教育の自由」の保障を社 
会教育行政に求めていくという構図は成り立ちがたい。 
? この課題の解決のためには、新たな研究の枠組みを設定する必要がある。 
? 研究課題1:行政と住民とを二項対立的に捉える見方の見直しと、コ 
ミュニティを射程に含めた、行政と住民との新たな関係の提示。 
? 研究課題2:コミュニティと社会教育に関する実証的な検討を進めるこ 
と。社会教育行政の再編によって、生活の拠点であるコミュニティがど 
のように変容し、住民の生活にどのような影響を及ぼすか、あるいは、 
コミュニティの変容が住民の学習にどのような影響を与えるのかを捉え 
る。 
→ 本報告の課題 
4
2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点 
? 社会教育を通じたコミュニティの構成や変化を考えるにあたっては、社 
会関係資本の議論を援用することが有用(松田2014; 荻野2014)。 
? 社会関係資本の議論は、人々がどのような相互関係の中に埋め込まれている 
かという関係論的視点と、その関係自体がどのように構成されているかとい 
う構造的視点の双方を、その射程に含む。 
? 実証的研究へと展開する際のポイント 
? 社会関係資本と生涯学習に関する研究では、フォーマルな教育や講座といっ 
た教育の機会の効果に注目してきたが(Schuller et al., 2004; Field 
2005=2011)、インフォーマルな学習への注目は少ない(佐藤2011)。 
? ミクロレベルの社会的ネットワークと、マクロレベルの社会関係資本のつな 
がりを解明することも重要。 
? そこで、認知的価値観を規定する社会的ネットワークと、その文脈的規定要 
因である「関係基盤」(三隅2013)に焦点を当てる。 
? 地域の社会的ネットワークの基底に位置する中間集団がどのような関係にあ 
るか、住民が各集団への所属を通じて地域活動にどのように関わるのかを把 
握し、この蓄積の中でコミュニティが構成されて行く過程と論理を捉える。 
? 事例研究の対象範囲は、埴淵?中谷(2013)を参照し、図1のように表せる。 
5
地域の社会関係資本の 
社会関係資本の 
文脈的規定要因 
【地域レベル】 
個人レベルの 
社会的ネットワーク 
社会関係資本の 
個人的規定要因 
地域レベルの 
社会関係資本 
集計 
個人レベルの 
認知的価値観 
形成過程 
図1 社会関係資本を捉える枠組み 
地域レベルの 
アウトカム 
個人レベルの 
アウトカム 
【個人レベル】 
社会教育行政の 
介入 
6
3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 
―長野県飯田市の分館活動を事例として― (1) 
? 事例分析の目的:飯田市の20地区のうち、上郷地域、鼎地区、龍江地 
区という3つの地区の公民館体制と分館活動を分析し、社会的ネット 
ワークが、地域の中間集団と結びついて拡張され、地域活動への参加を 
促すという、社会関係資本の構築過程を明らかにすること。 
? 調査の方法 
? 飯田市公民館と、東大所属研究室との共同研究の一環。調査対象地 
域は、鼎地区(下山、東鼎、西鼎、下茶屋、中平、上茶屋、切石、 
上山、一色、名古熊)、上郷地域(上黒田、下黒田北、下黒田南、 
下黒田東、丹保、北条、飯沼南、南条、別府上、別府下)、龍江地 
区(第1?第4)。 
? 調査対象者は、各地域?地区の計24分館の分館長、副分館長、分館 
主事、その他の文化、体育、広報などの分館役員、及び地域団体の 
中で分館活動に関わりを持つ団体。 
? 調査期間は、2011(平成23)年6月?10月。 
7
地域の 
中間集団 
分館活動を通じた 
社会的ネットワーク 
地域レベルの 
社会関係資本 
地域への 
意識 
行政設置の 
公民館(本館) 
問3 公民館職員の果たす役割 
図2 飯田市の事例研究のリサーチ?クエスチョン 
8 
問1 分館活動を通じたネットワークの形成過程 
問2 ネットワークの構造的、認知的特性
3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 
―長野県飯田市の分館活動を事例として― (2) 
? 第1の問い:分館活動を通じて形成される、地域の社会的ネットワーク 
? 地域活動に関わるには大きく分けて2つのルートが存在する(荻野?中村 
2013)。 
? 1つは、自治会を通じて持ち回りで担われる各種委員である。分館の文化、 
体育、広報などの部員は、この自治会選出の委員によって充当される。 
? もう1つが、壮年団や婦人会等の地縁団体に基づくルート。地縁団体では、 
個人が団体に所属することに加えて、団体が地域の行事や分館活動を通じて 
他の団体と結びつくことで、地域の社会的ネットワークを形成している。 
? 具体的には、(1)地縁団体はその構成員が重複し、(2)地域の祭りや 
運動会といった行事に参加し、成員同士が互いに顔見知りになり、(3) 
1つの団体への所属が、新たな関係性の構築につながることで地域の社会 
的ネットワークを構成している。 
? この地縁団体と分館とのつながりは、分館活動を支える母体として重要な役 
割を有している。 
? 地縁団体への所属が、職場や学校を介したネットワークによって補足さ 
れることで、分館役員の選出が行われている。 
? ただし、この社会的ネットワークには、地域差や男女差がある。 
9
3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 
―長野県飯田市の分館活動を事例として― (3) 
? 第2の問い:分館活動を通じて築かれる社会的ネットワークの構造的?認知的特性 
? 社会的ネットワークの形成の持つ構造的特性:「関係基盤」の「重層性」 
? 地域活動への「参加」は、基底となる「中間集団」への所属と、分館での活動という二 
層構造によって成立している(図3)。 
? この垂直的なつながりと別に、壮年団や消防団におけるつながりや、女性団体同士のつ 
ながりが水平的なネットワークを作り出す。住民同士の関係は、複数の中間集団への所 
属が重なり合うことで、より密で強固なものになっている。 
? この重層的な団体同士のネットワークによって築かれた住民同士の社会的ネットワーク 
が、分館役員へのルートとして有効に活用されている。 
? ただし、これはネットワークの構造上の「弱み」でもある。(1)ネットワークの重層 
性が、凝集性につながり新たな構成員を受け入れにくい。(2)地縁団体を基礎にした 
関係であるため、サークルやNPOとのネットワークが築きにくい。 
? 社会的ネットワークの形成の持つ認知的特性:「遠慮がちな社会関係資本」 
? 地域活動への参加は、必ずしも積極的に行われるものでない。 
? 当初は、「お付き合い」「お互い様」という消極的な意識であったとしても、地域内の 
他の住民との「つながり」ができることによって、地域に対する意識を持ち、地域のた 
めに何かをしたい、活動することが楽しいという感覚へと転ずる意識の組み替えが起き 
る。この意味で、「遠慮がちな社会関係資本」の一種と言える(今村他2010)。 
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分館組織 
地域内の中間集団 
広報部 
文化部 
体育部 
壮年団 
消防団 
PTA 
各種団体 
老人クラブ 
自治会から 
選任された役員?委員 
学校や職場での 
つながり 
図3 分館活動を巡る地域の社会的ネットワークの構造 
11
3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 
―長野県飯田市の分館活動を事例として― (4) 
? 第3の問い:社会的ネットワークを構成する公民館職員の役割 
? 飯田市の公民館主事は、20代から30代の「若手」が異動の中で経験する職 
務の1つ。異動前に「専門性」と呼べるような内実は存在しない。 
? 公民館への異動前に「専門性」が期待されるのではなく、公民館に勤めるこ 
とを通じて「地域に育てられ」、行政に戻ってくることが期待されている。 
? 公民館で身につけられる「触媒」としての役割や、「利害調整」「人脈」づ 
くりといった「手法」は、異動後の行政の職務においても、住民の側に立ち、 
住民の目線で仕事をするといった形で活かされている。 
? この「専門性」の構造は、飯田市の公民館?分館システムと密接な関わりが 
ある(図4)。 
? 飯田市の公民館は、分館活動の上に成り立ち、その基盤に地区の中間集 
団が位置するという三層構造をなしている。 
? 公民館主事は、この構造のもとで、本館で専門委員会の部員とともに活 
動をすることによって、地域活動の中で得られた経験や知識、時には彼 
らが有する社会的ネットワークを参照することが可能となっている。 
? このネットワークの構造によって、公民館主事がその力量を高めるのに 
必要な「手法」を学ぶためのインフォーマルな学習機会が作り出されて 
いる。 
12
各種団体 
地域内の中間集団 
分館組織 
文化部 
広報部 
体育部 
壮年団 
消防団 
PTA 
老人クラブ 
本館組織 
各地区から役員を選任 
文化部 
体育部 
広報部 
公民館主事 
図4 飯田市の社会的ネットワーク 
における公民館主事の位置 
13
3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 
―長野県飯田市の分館活動を事例として― (5) 
? 分析結果が持つ示唆 
? コミュニティにおける社会関係資本の構築の方法 
? 地縁団体や自治会という中間集団における顔見知りの関係が基本になる。 
? コミュニティにおける「中間集団」の視点の重要性 
? 中間集団の相互連関や布置が、地域の活動への関わりを規定する。 
? 地域の社会的ネットワークに埋め込まれることによって、公民館や分館はそ 
の教育的機能を発揮している。 
? 社会的ネットワークの中での住民のインフォーマルな学習の存在 
? 地縁団体を基盤とする分館での活動を通じて、地域の活動に関わっていく過 
程で、最初は周りから促される形で消極的に関わっていた住民の態度が、地 
域を意識した積極的な態度へと組み替わっていく点にインフォーマルな学習 
の過程が見られる。 
? 社会教育は、中間集団という「関係基盤」を通じて社会的ネットワーク 
の構築に関わり、インフォーマルな学習を促していく可能性を有する。 
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4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 
市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(1) 
? 事例分析の目的:大分県佐伯市において、既存の社会的ネットワークの 
弱体化に対応して、「学校支援」というテーマを設定し、社会関係資本 
の再構築を進めてきた過程を描くこと。 
? 大分県では2005(平成17)年度より「学校、家庭、地域社会の『協育』 
ネットワークづくり」を教育行政の重点目標に掲げている。 
? 佐伯市でも、県のモデル事業や補助事業を受けて「協育ネットワーク」の 
構築を進めてきた。「協育ネットワーク構築推進」事業(2008年度?)は、 
公民館に校区コーディネーターを配置し、校区ネットワーク会議や青少年健 
全育成会議の組織化を行い、地域人材を活用した「学校支援」を進めるもの。 
? 調査の方法 
? 調査対象地域は、2008(平成20)年度より「協育」関係事業を実施してい 
る7校区(鶴谷、上浦、弥生、宇目、直川、鶴見、蒲江)が中心(2013年度 
時点で13校区で事業を実施)。 
? 調査対象者は、公民館長、コーディネーター、振興局職員、学校管理職、協 
育担当教員。 
? 調査期間は2008(平成20)年3月、9月、11月、2009(平成21)年11月、 
2010(平成22)年1月、10月、2012(平成24)年1月、2013(平成25) 
年11月。 
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地域の 
中間集団 
住民の 
社会的ネットワーク 
問3 「学校支援」の活動の展開 
地域レベルの 
社会関係資本 
地域への 
意識 
図5 佐伯市の事例研究のリサーチ?クエスチョン 
社会教育行政 
問2 コーディネーターの果たす役割 
16 
問1 地域の社会的ネットワークの再編 
学校支援の 
活動
4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 
市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(2) 
? 第1の問い:事業実施に伴う、地域の社会的ネットワークの再編の状況 
? 学校と公民館との関係:日常的な職員交流が促進される可能性 
? 公民館にコーディネーターが配置されることで教職員の心理的なコストが軽減され、校 
区コーディネーターが制度的に位置づけられることで学校側が依頼しやすくなる効果。 
? 学校外部の職員やコーディネーターからすれば、学校に入りやすくなる効果もある。 
? 地域に存在する団体?組織の「再編」の状況(図6) 
? 事業実施前から、地域のネットワークを構成する地縁団体の活動が停滞していた。 
? 「学校支援」という名目で会議体を組織化することで、関係者間の「意見交換」や「情 
報交換」を促し、教員や教育に関心を持つ住民の間の関係を形成することが目的。 
? 既存の組織では「学校支援」を行えないため、組織?団体の活性化や組織化、「転用」 
も起きている。 
? 社会的ネットワークが形成される過程での「信頼」の構築過程 
? 事業実施前は教職員が住民に直接的?対面的に接触し、インフォーマルに協力を依頼。 
? 事業実施後は、仲介の「窓口」たるコーディネーターに信頼のおける人物を置くことで、 
コーディネーターへの信頼を根拠に、新たな地域人材を受け入れていく体制となる。 
? 信頼関係の維持や発展には、活動への評価やフィードバックという「投資」も必要。 
? 「信頼」を広げるために地域住民に「学校支援」に関する活動を周知することも重要。 
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ネットワーク会議 
青少年健全育成会議 
各種団体 
壮年団 
PTA 
各種団体 
老人クラブ 
婦人会 
おやじの会 
壮年団 
PTA 
老人クラブ 
婦人会 
事業実施前 
事業実施後 
図6 佐伯市における 
ネットワーク構造の変化 
18 
公民館
4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 
市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(3) 
? 第2の問い:コーディネーターが社会的ネットワークの形成に果たす役割 
? この事業では、学校と地域をつなぐ「窓口」として、公民館に社会経験の豊かな 
校区コーディネーターを配置している。 
? コーディネーターの多くは50代、60代で、その社会経験を一種の担保として、学 
校や地域での人材のリクルートを任されている人々である。 
? すでに地域で多くの社会的ネットワークを有するコーディネーターは、学校と地 
域をつなぐ「仲介役」や「パイプ役」として、もしくは活動の触媒になるという 
意識を持って活動を行っている(図7)。 
? 活動を通じて、「関係基盤」としての中間集団を活性化し、集団同士をつな 
ぎ直すことで、既存の社会的ネットワークを編み直す役割が期待されている。 
? 元々の社会的ネットワークが少ないコーディネーターの場合にも、公民館におけ 
るつながりや、校区ネットワーク会議での対面的な接触を通じて、新しく社会的 
ネットワークを広げていくことが可能な構造が存在する(図7)。 
? 校区コーディネーターが公民館に配置され、校区ネットワーク会議の事務局 
を務めることにより、地域の中で中心的な存在である住民との接触の機会が 
開かれている。 
? これらの点を総合すると、校区コーディネーターは、自身の社会関係を社会的 
ネットワーク形成の拠り所とし、地域の社会的ネットワークの中でその「専門 
性」を育んでいると言える。 
19
ネットワーク会議 
青少年健全育成会議 
壮年団 
PTA 
コーディネーター 
各種団体 
老人クラブ 
婦人会 
おやじの会 
図7 佐伯市の社会的ネットワークにおける校区コーディネーターの位置 
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4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 
市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(4) 
? 第3の問い:事業実施後の「学校支援」の活動の展開 
? 事業実施前に学校関係者や公民館関係者にインタビューを行ったところ、こ 
れまで比較的受け入れがスムーズに行われていたゲストティーチャーや部活 
動の指導者としての受け入れを促進しつつ、現在人手が不足しがちな環境整 
備の活動にも協力を求めて行くという形で、地域人材の活用が進んで行くと 
予測された(荻野2010)。 
? その後数年間、事業が実施される中で、(1)当初は小学校が中心だったが、 
2年目以降には中学校のキャリア教育での活用が促進され、(2)対象とする 
校区も広がり、19校区全てにおいて校区ネットワーク会議や青少年健全育成 
会議が組織されることとなった。 
? この結果、事業数、ボランティア数とも着実に伸びを見せている。 
? 「学校支援」の内容は、登下校指導、読み聞かせ、総合的な学習の時間での 
活動が中心であるものの、それ以外の活動も少しずつ充実を見せている。 
? なおこのネットワークの中で、防災キャンプや体験活動を推進する試みが始 
まっている。これは、ネットワークの「転用」可能性を示す(Putnam & 
Feldstein 2003: 286-291)。 
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4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 
市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(5) 
? 分析結果が持つ示唆 
? 既存の中間集団を利用したネットワークの再構築の方法 
? 会議体を組織し既存の「関係基盤」の「連結性」を強めたり、別の形で「関係基盤」 
を再組織化することで、地域の社会関係資本の充実が図られていた。「学校支援」は 
新たなネットワークを形成するための、1つの枠組み。 
? ネットワークの構築における「信頼」の役割 
? 対面的な接触の場面が減少した時の新たな「信頼」形成の方法:信頼のおける人物か 
らの紹介を基盤に、その後の活動を通じお互いに理解し合うことで、関係が広がる。 
? 中間集団という「関係基盤」が崩れた場合も、それを代替するような対面的接触の機 
会を創出することが重要。この関係を起点として社会関係資本の構築がなされる。各 
公民館にコーディネーターを配置することの意味は「信頼」を担保すること。 
? 社会的ネットワークを構築することの2つの意味 
? 新たに構築されたネットワークを通じて「学校支援」の人材を探すことができる。 
? ある目的で築かれたネットワークは、別の目的にも「転用」可能である。 
? 地域の「関係基盤」の「連結性」を強め、「関係基盤」を再構成することを通じて、社会 
的ネットワークを組み直していくことに、社会教育の現代的な役割が見出される。 
22
5. 2つの事例研究のまとめ 
? 事例研究では、「社会関係資本」の視点を導入することで、ミクロ(個 
人)レベルの社会的ネットワークと、地域(マクロレベル)の社会的 
ネットワークを媒介する、中間集団の持つ役割、あるいは地域の社会的 
ネットワークの結節点に位置づく職員の役割を議論の俎上に載せること 
ができた。 
? 事例研究を通じて、社会教育行政は公民館などの地域施設に職員を配置 
することで、(1)地域の「関係基盤」と接触を持ちその教育的機能を 
発揮できること、(2)「関係基盤」を形成したり、基盤自体を再編し 
たりすることを通じて、地域の社会関係資本の形成に介入できることを 
示した(図8)。 
? 本報告の分析の枠組みに基づけば、コミュニティの形成における社会教 
育の役割は、「関係基盤」の「重層性」を高め、「連結性」を強める役 
割をどのように果たすことができるかという点から判断される。 
? 社会教育を通じてコミュニティを構築していくことには、活動に関わる 
人々のインフォーマルな学習を促す意味もあると考えられる。 
? 中間集団自体が有する教育的機能とともに、中間集団がどのような関係を持って 
地域に存在しているかという構造が、インフォーマルな学習にとって重要な要素。 
23
地域における社会関係資本の構築過程 
コミュニティ意識 
地域活動への関わり 
配置 
中間集団への所属 
住民 
認知的側面 
社会的ネットワーク 
の形成 
相互の信頼 
一般行政社会教育行政 
職員 
力量形成 
関係基盤=中間集団の 
重層性?連結性の向上 
影響 
図8 コミュニティにおける社会関係資本の構築過程と社会教育の果たす役割 
24
5. まとめ:社会教育を通じたコミュニティの構成 
? 現在の行政とコミュニティの関係において、社会教育とは、住民の関係 
の形成を通じてインフォーマルな学習を促し、住民が関係の中で集合的 
に社会化されることによって、コミュニティを内的に組み替えていく営 
為であると考えられる。 
? これまで、社会教育の役割は、意図的な働きかけ(学習機会の提供)を 
行い、主体形成を援助することに求められてきた。これに対し本報告で 
は、住民同士のインフォーマルな学習が営まれる「関係基盤」の形成に 
社会教育の役割を求めた。 
? 社会教育によって、コミュニティは動態的に構成される可能性があり、 
この点に社会教育の今日的意義を見出すことができる。 
? 地域の社会的ネットワークと、そのネットワークに基づく信頼や、規範、そ 
して、この三者に基づく住民の協調行動によって、コミュニティはその構造 
を更新していくことが可能である。 
? 社会教育行政は、社会的ネットワークの創出に直接関わることはできなくて 
も、「関係基盤」の創出や組み替えという営為を通じて、社会的ネットワー 
クの構成に間接的に寄与することができる。 
25
引用文献(1) 
? Field, John, 2005, Social Capital and Lifelong Learning, The Polity 
Press. (=2011, 矢野裕俊監訳『ソーシャルキャピタルと生涯学習』東信 
堂.) 
? 埴淵知哉?中谷友樹, 2013, 「地域コミュニティのソーシャル?キャピタル 
を規定する文脈的要因」イチロー?カワチ他編『ソーシャル?キャピタルと 
健康政策』日本評論社, 151-172. 
? 今村晴彦?園田紫乃?金子郁容, 2010, 『コミュニティのちから――“遠慮が 
ちな”ソーシャル?キャピタルの発見』慶應義塾出版会. 
? 松田武雄, 2012, 「社会教育学研究におけるソーシャル?キャピタル論の枠 
組み」『生涯学習政策研究1』(文部科学省生涯学習政策局)21-29. 
? ――――, 2014, 『コミュニティ?ガバナンスと社会教育の再定義――社会 
教育福祉の可能性』福村出版. 
? 三隅一人, 2013, 『叢書?現代社会学6 社会関係資本――理論統合の挑戦』 
ミネルヴァ書房. 
26
引用文献(2) 
? 荻野亮吾, 2010,「学校―地域間関係の再編の動態についての『社会関係資 
本』の観点からの考察――大分県佐伯市の学校支援地域本部事業を事例とし 
て」『生涯学習基盤経営研究』34: 41-56. 
? ――――, 2014, 「『社会関係資本』論の社会教育研究への応用可能性」 
『東京大学大学院教育学研究科紀要』53: 95-112. 
? ――――?中村由香, 2013, 「地域における社会的ネットワークの形成過程 
に関する研究:飯田市における分館活動を事例として」『東京大学大学院教 
育学研究科紀要』52: 233-250. 
? Putnam, Robert D. and Lewis M. Feldstein, 2003, Better Together: 
Restoring the American Community, Simon & Schuster. 
? 佐藤智子, 2011, 「社会関係資本と生涯学習」立田慶裕?井上豊久?岩崎久 
美子?金藤ふゆ子?佐藤智子?荻野亮吾『生涯学習の理論――新たなパース 
ペクティブ』福村出版, 203-224. 
? Schuller, Tom, John Preston, Cathie Hammond, Angela Brassett- 
Grundy, and John Bynner, 2004, The Benefits of Learning: The 
Impact of Education on Health, Family Life and Social Capital, 
Routledge, 161-178. 
27
謝辞 
? ご多忙の中、事例調査にご協力頂きました、以下の皆様に深く御礼を 
申し上げます。 
? 長野県飯田市の分館役員や各団体の皆様。及び調査の円滑な実施に 
ご協力頂いた飯田市公民館、地区公民館主事の皆様。 
? 大分県佐伯市の各学校の教職員?公民館の職員の皆様。及び調査の 
円滑な実施にご協力頂いた大分県教育庁社会教育課、佐伯市教育委 
員会生涯学習課(現:社会教育課)の皆様。 
? 本研究に関わる調査研究は、以下の団体からの助成を受けて行われた 
ものです。記して感謝を申し上げます。 
? 平成23?24年度日本学術振興会科学研究費補助金(研究活動 
スタート支援)「ポスト合併期における生涯学習を通じたコミュニ 
ティ形成に関する調査研究」 
? 平成25?26年度日本学術振興会科学研究費補助金(若手研究 
B)「生涯学習を通じたコミュニティ?エンパワメントモデルの開 
発」 
28
一般行政 
社会教育行政 
行政参加 
社会教育の 
自由 
社会教育 
職員 
条件整備 
学習機会の提供 
住民 
社会教育 
関係団体 
社会教育 
施設 
施設運営参加 
サポート?バット 
ノーコントロール 
団体への参加 
行政への協力 
自治の 
主体形成 
対抗的参加 
参考社会教育行政論の基本的構図 
29
一般行政社会教育行政の再編 
規制緩和 
市民 
社会教育行政 
NPO法人 
指定管理者 
社会教育 
施設 
団体への 
参加 
市民社会論的 
前提 
コミュニティ 
団体 
権限の付与 
学校 
ボランティア 
としての参加 
制度 
参加の要請 
学校支援 
コミュニ 
ティ政策 
新しい中間集団教育施設 
参考2000年代の社会教育行政の再編の動向 
30
参考佐伯市におけるネットワーク会議、青少年健全育成会議の組織化の状況 
31 
?2005 2006 2008 2010 2011? 
備考(※) 
佐伯地区鶴谷校区ネットワーク会議○ ※ 2008年度より鶴谷校区ネットワーク会議 
渡町台地区鶴谷校区ネットワーク会議○ 
大入島地区青少年健全育成会議○ 
西上浦地区青少年健全育成会議○ 
佐伯東地区青少年健全育成会議※ ○ 2008年度より鶴谷校区ネットワーク会議 
八幡地区青少年育成協議会○ ※ 2011年度より彦陽校区ネットワーク会議 
鶴岡地区城南校区ネットワーク会議○ 
上堅田地区上堅田幼稚園?小学校区協育 
ネットワーク会議 
※ ○ 2010年度より南中校区ネットワーク会議 
下堅田地区下堅田っこふれあい協育ネット○ ※ 2010年度より南中校区ネットワーク会議 
青山地区青山地区協育ネット○ 
木立地区青少年健全育成会議○ 
上浦地区上浦校区ネットワーク会議○ 
弥生地区弥生校区ネットワーク会議※ ○ 事業前から青少年育成会議が存在 
本匠地区本匠校区ネットワーク会議○ 
宇目地区宇目校区ネットワーク会議○ 
直川地区直川校区ネットワーク会議○ 
鶴見地区鶴見校区ネットワーク会議○ 
米水津地区米水津校区ネットワーク会議○ 
蒲江地区蒲江校区ネットワーク会議○ ※ 2012年度より青少年健全育成会議と別組織に 
旧市部 
旧郡部 
地区名2013年度の組織名 
設立年度 
出典:佐伯市教育委員会社会教育課の提供資料により、筆者作成。
参考佐伯市における「学校支援」の活動の広がり 
32 
ボランティア事業計 
(実人数) 延べ人数学校支援活動部活動指導環境整備登下校指導学校行事その他 
1,679 31.7% 3.6% 1.2% 63.2% 0.3% - 
10,378 17.9% 0.1% 1.4% 79.7% 0.9% - 
2,826 39.9% 0.2% 5.4% 53.9% 0.5% 0.1% 
17,305 23.5% 0.3% 4.4% 71.5% 0.3% 0.1% 
3,451 33.5% 1.7% 7.6% 55.9% 1.1% 0.2% 
21,081 17.4% 0.4% 6.5% 74.4% 1.1% 0.2% 
5,260 33.4% 0.2% 10.0% 55.6% 0.5% 0.3% 
20,465 35.1% 0.2% 9.0% 54.4% 0.9% 0.4% 
6,668 38.0% 1.6% 8.8% 50.3% 1.0% 0.2% 
27,208 29.3% 0.6% 8.7% 59.0% 2.2% 0.2% 
年度対象校 
2009(平成21)年度7 1,043 
2010(平成22)年度9 2,123 
2011(平成23)年度12 2,569 
2012(平成24)年度13 3,023 
内容別割合(%) 
2008(平成20)年度7 723 
出典:佐伯市教育委員会社会教育課の提供資料により、筆者作成。

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140914教育社会学会报告

  • 1. 日本教育社会学会第66回大会Ⅳー1部会「社会の中での教育」 コミュニティと社会教育に関する社会関係資本の 観点からの考察 荻野亮吾 (東京大学高齢社会総合研究機構) 2014/09/14(日)11:10?11:35 @松山大学8号館4階841教室
  • 2. 1. 報告の目的 ? 本報告の目的:コミュニティと社会教育の関係について、 社会関係資本の観点から理論的枠組みを設定し、この枠組 みに基づいて、事例を分析する。 ? 本報告の構成 ? (1)社会教育とコミュニティ研究を巡る状況を概観。 ? (2)社会関係資本の研究を参照し、コミュニティと社会教育 の関係を分析する際の研究枠組みを設定。 ? (3)研究枠組みに基づき、長野県飯田市、大分県佐伯市の2 つの事例を分析。 ? (4)事例研究から得られる示唆を提示。 2
  • 3. 1. 研究の背景 ? 社会教育行政論の基本的構図:1960年代以降の先行研究レビューより。 ? 議論の構図:(1)(社会)教育行政の一般行政からの自律性、(2)社会 教育行政による住民に対する学習機会の提供と、社会教育関係団体に対する 支援、(3)社会教育行政による条件整備と、住民の「対抗的参加」の相補 性、(4)行政と住民との対立を調停する社会教育関係職員の位置づけ、 (5)「対抗的参加」を行うための住民の主体形成。 ? この構図は、行政と住民との「対抗的相補性」を前提としてきた。 ? しかしこの構図は、1990年代以降、生涯学習政策の進展のもとで、社 会教育行政の再編が進む現在では、成立しがたいものとなっている。 ? 教育委員会制度の改編に代表されるように、社会教育行政の一般行政からの 独立という原則が揺らいでいること。 ? 社会教育行政の再編が進む中で、社会教育行政に「学校支援」ないし、コ ミュニティ政策を遂行する役割が求められつつあること。 ? 社会教育施設運営の弾力化?多様化の傾向。 ? 様々な領域での市民参加の要請。 3
  • 4. 1. 社会教育論の転換の必要性 ? 現在では、住民の行政への「対抗的参加」を重視し、それを担う自治の 主体の形成に関して、学習の条件整備と「社会教育の自由」の保障を社 会教育行政に求めていくという構図は成り立ちがたい。 ? この課題の解決のためには、新たな研究の枠組みを設定する必要がある。 ? 研究課題1:行政と住民とを二項対立的に捉える見方の見直しと、コ ミュニティを射程に含めた、行政と住民との新たな関係の提示。 ? 研究課題2:コミュニティと社会教育に関する実証的な検討を進めるこ と。社会教育行政の再編によって、生活の拠点であるコミュニティがど のように変容し、住民の生活にどのような影響を及ぼすか、あるいは、 コミュニティの変容が住民の学習にどのような影響を与えるのかを捉え る。 → 本報告の課題 4
  • 5. 2. 「社会関係資本」論と社会教育研究の接点 ? 社会教育を通じたコミュニティの構成や変化を考えるにあたっては、社 会関係資本の議論を援用することが有用(松田2014; 荻野2014)。 ? 社会関係資本の議論は、人々がどのような相互関係の中に埋め込まれている かという関係論的視点と、その関係自体がどのように構成されているかとい う構造的視点の双方を、その射程に含む。 ? 実証的研究へと展開する際のポイント ? 社会関係資本と生涯学習に関する研究では、フォーマルな教育や講座といっ た教育の機会の効果に注目してきたが(Schuller et al., 2004; Field 2005=2011)、インフォーマルな学習への注目は少ない(佐藤2011)。 ? ミクロレベルの社会的ネットワークと、マクロレベルの社会関係資本のつな がりを解明することも重要。 ? そこで、認知的価値観を規定する社会的ネットワークと、その文脈的規定要 因である「関係基盤」(三隅2013)に焦点を当てる。 ? 地域の社会的ネットワークの基底に位置する中間集団がどのような関係にあ るか、住民が各集団への所属を通じて地域活動にどのように関わるのかを把 握し、この蓄積の中でコミュニティが構成されて行く過程と論理を捉える。 ? 事例研究の対象範囲は、埴淵?中谷(2013)を参照し、図1のように表せる。 5
  • 6. 地域の社会関係資本の 社会関係資本の 文脈的規定要因 【地域レベル】 個人レベルの 社会的ネットワーク 社会関係資本の 個人的規定要因 地域レベルの 社会関係資本 集計 個人レベルの 認知的価値観 形成過程 図1 社会関係資本を捉える枠組み 地域レベルの アウトカム 個人レベルの アウトカム 【個人レベル】 社会教育行政の 介入 6
  • 7. 3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 ―長野県飯田市の分館活動を事例として― (1) ? 事例分析の目的:飯田市の20地区のうち、上郷地域、鼎地区、龍江地 区という3つの地区の公民館体制と分館活動を分析し、社会的ネット ワークが、地域の中間集団と結びついて拡張され、地域活動への参加を 促すという、社会関係資本の構築過程を明らかにすること。 ? 調査の方法 ? 飯田市公民館と、東大所属研究室との共同研究の一環。調査対象地 域は、鼎地区(下山、東鼎、西鼎、下茶屋、中平、上茶屋、切石、 上山、一色、名古熊)、上郷地域(上黒田、下黒田北、下黒田南、 下黒田東、丹保、北条、飯沼南、南条、別府上、別府下)、龍江地 区(第1?第4)。 ? 調査対象者は、各地域?地区の計24分館の分館長、副分館長、分館 主事、その他の文化、体育、広報などの分館役員、及び地域団体の 中で分館活動に関わりを持つ団体。 ? 調査期間は、2011(平成23)年6月?10月。 7
  • 8. 地域の 中間集団 分館活動を通じた 社会的ネットワーク 地域レベルの 社会関係資本 地域への 意識 行政設置の 公民館(本館) 問3 公民館職員の果たす役割 図2 飯田市の事例研究のリサーチ?クエスチョン 8 問1 分館活動を通じたネットワークの形成過程 問2 ネットワークの構造的、認知的特性
  • 9. 3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 ―長野県飯田市の分館活動を事例として― (2) ? 第1の問い:分館活動を通じて形成される、地域の社会的ネットワーク ? 地域活動に関わるには大きく分けて2つのルートが存在する(荻野?中村 2013)。 ? 1つは、自治会を通じて持ち回りで担われる各種委員である。分館の文化、 体育、広報などの部員は、この自治会選出の委員によって充当される。 ? もう1つが、壮年団や婦人会等の地縁団体に基づくルート。地縁団体では、 個人が団体に所属することに加えて、団体が地域の行事や分館活動を通じて 他の団体と結びつくことで、地域の社会的ネットワークを形成している。 ? 具体的には、(1)地縁団体はその構成員が重複し、(2)地域の祭りや 運動会といった行事に参加し、成員同士が互いに顔見知りになり、(3) 1つの団体への所属が、新たな関係性の構築につながることで地域の社会 的ネットワークを構成している。 ? この地縁団体と分館とのつながりは、分館活動を支える母体として重要な役 割を有している。 ? 地縁団体への所属が、職場や学校を介したネットワークによって補足さ れることで、分館役員の選出が行われている。 ? ただし、この社会的ネットワークには、地域差や男女差がある。 9
  • 10. 3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 ―長野県飯田市の分館活動を事例として― (3) ? 第2の問い:分館活動を通じて築かれる社会的ネットワークの構造的?認知的特性 ? 社会的ネットワークの形成の持つ構造的特性:「関係基盤」の「重層性」 ? 地域活動への「参加」は、基底となる「中間集団」への所属と、分館での活動という二 層構造によって成立している(図3)。 ? この垂直的なつながりと別に、壮年団や消防団におけるつながりや、女性団体同士のつ ながりが水平的なネットワークを作り出す。住民同士の関係は、複数の中間集団への所 属が重なり合うことで、より密で強固なものになっている。 ? この重層的な団体同士のネットワークによって築かれた住民同士の社会的ネットワーク が、分館役員へのルートとして有効に活用されている。 ? ただし、これはネットワークの構造上の「弱み」でもある。(1)ネットワークの重層 性が、凝集性につながり新たな構成員を受け入れにくい。(2)地縁団体を基礎にした 関係であるため、サークルやNPOとのネットワークが築きにくい。 ? 社会的ネットワークの形成の持つ認知的特性:「遠慮がちな社会関係資本」 ? 地域活動への参加は、必ずしも積極的に行われるものでない。 ? 当初は、「お付き合い」「お互い様」という消極的な意識であったとしても、地域内の 他の住民との「つながり」ができることによって、地域に対する意識を持ち、地域のた めに何かをしたい、活動することが楽しいという感覚へと転ずる意識の組み替えが起き る。この意味で、「遠慮がちな社会関係資本」の一種と言える(今村他2010)。 10
  • 11. 分館組織 地域内の中間集団 広報部 文化部 体育部 壮年団 消防団 PTA 各種団体 老人クラブ 自治会から 選任された役員?委員 学校や職場での つながり 図3 分館活動を巡る地域の社会的ネットワークの構造 11
  • 12. 3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 ―長野県飯田市の分館活動を事例として― (4) ? 第3の問い:社会的ネットワークを構成する公民館職員の役割 ? 飯田市の公民館主事は、20代から30代の「若手」が異動の中で経験する職 務の1つ。異動前に「専門性」と呼べるような内実は存在しない。 ? 公民館への異動前に「専門性」が期待されるのではなく、公民館に勤めるこ とを通じて「地域に育てられ」、行政に戻ってくることが期待されている。 ? 公民館で身につけられる「触媒」としての役割や、「利害調整」「人脈」づ くりといった「手法」は、異動後の行政の職務においても、住民の側に立ち、 住民の目線で仕事をするといった形で活かされている。 ? この「専門性」の構造は、飯田市の公民館?分館システムと密接な関わりが ある(図4)。 ? 飯田市の公民館は、分館活動の上に成り立ち、その基盤に地区の中間集 団が位置するという三層構造をなしている。 ? 公民館主事は、この構造のもとで、本館で専門委員会の部員とともに活 動をすることによって、地域活動の中で得られた経験や知識、時には彼 らが有する社会的ネットワークを参照することが可能となっている。 ? このネットワークの構造によって、公民館主事がその力量を高めるのに 必要な「手法」を学ぶためのインフォーマルな学習機会が作り出されて いる。 12
  • 13. 各種団体 地域内の中間集団 分館組織 文化部 広報部 体育部 壮年団 消防団 PTA 老人クラブ 本館組織 各地区から役員を選任 文化部 体育部 広報部 公民館主事 図4 飯田市の社会的ネットワーク における公民館主事の位置 13
  • 14. 3. 地域活動を通じた社会関係資本の構築過程 ―長野県飯田市の分館活動を事例として― (5) ? 分析結果が持つ示唆 ? コミュニティにおける社会関係資本の構築の方法 ? 地縁団体や自治会という中間集団における顔見知りの関係が基本になる。 ? コミュニティにおける「中間集団」の視点の重要性 ? 中間集団の相互連関や布置が、地域の活動への関わりを規定する。 ? 地域の社会的ネットワークに埋め込まれることによって、公民館や分館はそ の教育的機能を発揮している。 ? 社会的ネットワークの中での住民のインフォーマルな学習の存在 ? 地縁団体を基盤とする分館での活動を通じて、地域の活動に関わっていく過 程で、最初は周りから促される形で消極的に関わっていた住民の態度が、地 域を意識した積極的な態度へと組み替わっていく点にインフォーマルな学習 の過程が見られる。 ? 社会教育は、中間集団という「関係基盤」を通じて社会的ネットワーク の構築に関わり、インフォーマルな学習を促していく可能性を有する。 14
  • 15. 4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(1) ? 事例分析の目的:大分県佐伯市において、既存の社会的ネットワークの 弱体化に対応して、「学校支援」というテーマを設定し、社会関係資本 の再構築を進めてきた過程を描くこと。 ? 大分県では2005(平成17)年度より「学校、家庭、地域社会の『協育』 ネットワークづくり」を教育行政の重点目標に掲げている。 ? 佐伯市でも、県のモデル事業や補助事業を受けて「協育ネットワーク」の 構築を進めてきた。「協育ネットワーク構築推進」事業(2008年度?)は、 公民館に校区コーディネーターを配置し、校区ネットワーク会議や青少年健 全育成会議の組織化を行い、地域人材を活用した「学校支援」を進めるもの。 ? 調査の方法 ? 調査対象地域は、2008(平成20)年度より「協育」関係事業を実施してい る7校区(鶴谷、上浦、弥生、宇目、直川、鶴見、蒲江)が中心(2013年度 時点で13校区で事業を実施)。 ? 調査対象者は、公民館長、コーディネーター、振興局職員、学校管理職、協 育担当教員。 ? 調査期間は2008(平成20)年3月、9月、11月、2009(平成21)年11月、 2010(平成22)年1月、10月、2012(平成24)年1月、2013(平成25) 年11月。 15
  • 16. 地域の 中間集団 住民の 社会的ネットワーク 問3 「学校支援」の活動の展開 地域レベルの 社会関係資本 地域への 意識 図5 佐伯市の事例研究のリサーチ?クエスチョン 社会教育行政 問2 コーディネーターの果たす役割 16 問1 地域の社会的ネットワークの再編 学校支援の 活動
  • 17. 4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(2) ? 第1の問い:事業実施に伴う、地域の社会的ネットワークの再編の状況 ? 学校と公民館との関係:日常的な職員交流が促進される可能性 ? 公民館にコーディネーターが配置されることで教職員の心理的なコストが軽減され、校 区コーディネーターが制度的に位置づけられることで学校側が依頼しやすくなる効果。 ? 学校外部の職員やコーディネーターからすれば、学校に入りやすくなる効果もある。 ? 地域に存在する団体?組織の「再編」の状況(図6) ? 事業実施前から、地域のネットワークを構成する地縁団体の活動が停滞していた。 ? 「学校支援」という名目で会議体を組織化することで、関係者間の「意見交換」や「情 報交換」を促し、教員や教育に関心を持つ住民の間の関係を形成することが目的。 ? 既存の組織では「学校支援」を行えないため、組織?団体の活性化や組織化、「転用」 も起きている。 ? 社会的ネットワークが形成される過程での「信頼」の構築過程 ? 事業実施前は教職員が住民に直接的?対面的に接触し、インフォーマルに協力を依頼。 ? 事業実施後は、仲介の「窓口」たるコーディネーターに信頼のおける人物を置くことで、 コーディネーターへの信頼を根拠に、新たな地域人材を受け入れていく体制となる。 ? 信頼関係の維持や発展には、活動への評価やフィードバックという「投資」も必要。 ? 「信頼」を広げるために地域住民に「学校支援」に関する活動を周知することも重要。 17
  • 18. ネットワーク会議 青少年健全育成会議 各種団体 壮年団 PTA 各種団体 老人クラブ 婦人会 おやじの会 壮年団 PTA 老人クラブ 婦人会 事業実施前 事業実施後 図6 佐伯市における ネットワーク構造の変化 18 公民館
  • 19. 4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(3) ? 第2の問い:コーディネーターが社会的ネットワークの形成に果たす役割 ? この事業では、学校と地域をつなぐ「窓口」として、公民館に社会経験の豊かな 校区コーディネーターを配置している。 ? コーディネーターの多くは50代、60代で、その社会経験を一種の担保として、学 校や地域での人材のリクルートを任されている人々である。 ? すでに地域で多くの社会的ネットワークを有するコーディネーターは、学校と地 域をつなぐ「仲介役」や「パイプ役」として、もしくは活動の触媒になるという 意識を持って活動を行っている(図7)。 ? 活動を通じて、「関係基盤」としての中間集団を活性化し、集団同士をつな ぎ直すことで、既存の社会的ネットワークを編み直す役割が期待されている。 ? 元々の社会的ネットワークが少ないコーディネーターの場合にも、公民館におけ るつながりや、校区ネットワーク会議での対面的な接触を通じて、新しく社会的 ネットワークを広げていくことが可能な構造が存在する(図7)。 ? 校区コーディネーターが公民館に配置され、校区ネットワーク会議の事務局 を務めることにより、地域の中で中心的な存在である住民との接触の機会が 開かれている。 ? これらの点を総合すると、校区コーディネーターは、自身の社会関係を社会的 ネットワーク形成の拠り所とし、地域の社会的ネットワークの中でその「専門 性」を育んでいると言える。 19
  • 20. ネットワーク会議 青少年健全育成会議 壮年団 PTA コーディネーター 各種団体 老人クラブ 婦人会 おやじの会 図7 佐伯市の社会的ネットワークにおける校区コーディネーターの位置 20
  • 21. 4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(4) ? 第3の問い:事業実施後の「学校支援」の活動の展開 ? 事業実施前に学校関係者や公民館関係者にインタビューを行ったところ、こ れまで比較的受け入れがスムーズに行われていたゲストティーチャーや部活 動の指導者としての受け入れを促進しつつ、現在人手が不足しがちな環境整 備の活動にも協力を求めて行くという形で、地域人材の活用が進んで行くと 予測された(荻野2010)。 ? その後数年間、事業が実施される中で、(1)当初は小学校が中心だったが、 2年目以降には中学校のキャリア教育での活用が促進され、(2)対象とする 校区も広がり、19校区全てにおいて校区ネットワーク会議や青少年健全育成 会議が組織されることとなった。 ? この結果、事業数、ボランティア数とも着実に伸びを見せている。 ? 「学校支援」の内容は、登下校指導、読み聞かせ、総合的な学習の時間での 活動が中心であるものの、それ以外の活動も少しずつ充実を見せている。 ? なおこのネットワークの中で、防災キャンプや体験活動を推進する試みが始 まっている。これは、ネットワークの「転用」可能性を示す(Putnam & Feldstein 2003: 286-291)。 21
  • 22. 4. 学校支援を通じた社会関係資本の再構築の過程―大分県佐伯 市の「協育ネットワーク構築推進事業」を事例に―(5) ? 分析結果が持つ示唆 ? 既存の中間集団を利用したネットワークの再構築の方法 ? 会議体を組織し既存の「関係基盤」の「連結性」を強めたり、別の形で「関係基盤」 を再組織化することで、地域の社会関係資本の充実が図られていた。「学校支援」は 新たなネットワークを形成するための、1つの枠組み。 ? ネットワークの構築における「信頼」の役割 ? 対面的な接触の場面が減少した時の新たな「信頼」形成の方法:信頼のおける人物か らの紹介を基盤に、その後の活動を通じお互いに理解し合うことで、関係が広がる。 ? 中間集団という「関係基盤」が崩れた場合も、それを代替するような対面的接触の機 会を創出することが重要。この関係を起点として社会関係資本の構築がなされる。各 公民館にコーディネーターを配置することの意味は「信頼」を担保すること。 ? 社会的ネットワークを構築することの2つの意味 ? 新たに構築されたネットワークを通じて「学校支援」の人材を探すことができる。 ? ある目的で築かれたネットワークは、別の目的にも「転用」可能である。 ? 地域の「関係基盤」の「連結性」を強め、「関係基盤」を再構成することを通じて、社会 的ネットワークを組み直していくことに、社会教育の現代的な役割が見出される。 22
  • 23. 5. 2つの事例研究のまとめ ? 事例研究では、「社会関係資本」の視点を導入することで、ミクロ(個 人)レベルの社会的ネットワークと、地域(マクロレベル)の社会的 ネットワークを媒介する、中間集団の持つ役割、あるいは地域の社会的 ネットワークの結節点に位置づく職員の役割を議論の俎上に載せること ができた。 ? 事例研究を通じて、社会教育行政は公民館などの地域施設に職員を配置 することで、(1)地域の「関係基盤」と接触を持ちその教育的機能を 発揮できること、(2)「関係基盤」を形成したり、基盤自体を再編し たりすることを通じて、地域の社会関係資本の形成に介入できることを 示した(図8)。 ? 本報告の分析の枠組みに基づけば、コミュニティの形成における社会教 育の役割は、「関係基盤」の「重層性」を高め、「連結性」を強める役 割をどのように果たすことができるかという点から判断される。 ? 社会教育を通じてコミュニティを構築していくことには、活動に関わる 人々のインフォーマルな学習を促す意味もあると考えられる。 ? 中間集団自体が有する教育的機能とともに、中間集団がどのような関係を持って 地域に存在しているかという構造が、インフォーマルな学習にとって重要な要素。 23
  • 24. 地域における社会関係資本の構築過程 コミュニティ意識 地域活動への関わり 配置 中間集団への所属 住民 認知的側面 社会的ネットワーク の形成 相互の信頼 一般行政社会教育行政 職員 力量形成 関係基盤=中間集団の 重層性?連結性の向上 影響 図8 コミュニティにおける社会関係資本の構築過程と社会教育の果たす役割 24
  • 25. 5. まとめ:社会教育を通じたコミュニティの構成 ? 現在の行政とコミュニティの関係において、社会教育とは、住民の関係 の形成を通じてインフォーマルな学習を促し、住民が関係の中で集合的 に社会化されることによって、コミュニティを内的に組み替えていく営 為であると考えられる。 ? これまで、社会教育の役割は、意図的な働きかけ(学習機会の提供)を 行い、主体形成を援助することに求められてきた。これに対し本報告で は、住民同士のインフォーマルな学習が営まれる「関係基盤」の形成に 社会教育の役割を求めた。 ? 社会教育によって、コミュニティは動態的に構成される可能性があり、 この点に社会教育の今日的意義を見出すことができる。 ? 地域の社会的ネットワークと、そのネットワークに基づく信頼や、規範、そ して、この三者に基づく住民の協調行動によって、コミュニティはその構造 を更新していくことが可能である。 ? 社会教育行政は、社会的ネットワークの創出に直接関わることはできなくて も、「関係基盤」の創出や組み替えという営為を通じて、社会的ネットワー クの構成に間接的に寄与することができる。 25
  • 26. 引用文献(1) ? Field, John, 2005, Social Capital and Lifelong Learning, The Polity Press. (=2011, 矢野裕俊監訳『ソーシャルキャピタルと生涯学習』東信 堂.) ? 埴淵知哉?中谷友樹, 2013, 「地域コミュニティのソーシャル?キャピタル を規定する文脈的要因」イチロー?カワチ他編『ソーシャル?キャピタルと 健康政策』日本評論社, 151-172. ? 今村晴彦?園田紫乃?金子郁容, 2010, 『コミュニティのちから――“遠慮が ちな”ソーシャル?キャピタルの発見』慶應義塾出版会. ? 松田武雄, 2012, 「社会教育学研究におけるソーシャル?キャピタル論の枠 組み」『生涯学習政策研究1』(文部科学省生涯学習政策局)21-29. ? ――――, 2014, 『コミュニティ?ガバナンスと社会教育の再定義――社会 教育福祉の可能性』福村出版. ? 三隅一人, 2013, 『叢書?現代社会学6 社会関係資本――理論統合の挑戦』 ミネルヴァ書房. 26
  • 27. 引用文献(2) ? 荻野亮吾, 2010,「学校―地域間関係の再編の動態についての『社会関係資 本』の観点からの考察――大分県佐伯市の学校支援地域本部事業を事例とし て」『生涯学習基盤経営研究』34: 41-56. ? ――――, 2014, 「『社会関係資本』論の社会教育研究への応用可能性」 『東京大学大学院教育学研究科紀要』53: 95-112. ? ――――?中村由香, 2013, 「地域における社会的ネットワークの形成過程 に関する研究:飯田市における分館活動を事例として」『東京大学大学院教 育学研究科紀要』52: 233-250. ? Putnam, Robert D. and Lewis M. Feldstein, 2003, Better Together: Restoring the American Community, Simon & Schuster. ? 佐藤智子, 2011, 「社会関係資本と生涯学習」立田慶裕?井上豊久?岩崎久 美子?金藤ふゆ子?佐藤智子?荻野亮吾『生涯学習の理論――新たなパース ペクティブ』福村出版, 203-224. ? Schuller, Tom, John Preston, Cathie Hammond, Angela Brassett- Grundy, and John Bynner, 2004, The Benefits of Learning: The Impact of Education on Health, Family Life and Social Capital, Routledge, 161-178. 27
  • 28. 謝辞 ? ご多忙の中、事例調査にご協力頂きました、以下の皆様に深く御礼を 申し上げます。 ? 長野県飯田市の分館役員や各団体の皆様。及び調査の円滑な実施に ご協力頂いた飯田市公民館、地区公民館主事の皆様。 ? 大分県佐伯市の各学校の教職員?公民館の職員の皆様。及び調査の 円滑な実施にご協力頂いた大分県教育庁社会教育課、佐伯市教育委 員会生涯学習課(現:社会教育課)の皆様。 ? 本研究に関わる調査研究は、以下の団体からの助成を受けて行われた ものです。記して感謝を申し上げます。 ? 平成23?24年度日本学術振興会科学研究費補助金(研究活動 スタート支援)「ポスト合併期における生涯学習を通じたコミュニ ティ形成に関する調査研究」 ? 平成25?26年度日本学術振興会科学研究費補助金(若手研究 B)「生涯学習を通じたコミュニティ?エンパワメントモデルの開 発」 28
  • 29. 一般行政 社会教育行政 行政参加 社会教育の 自由 社会教育 職員 条件整備 学習機会の提供 住民 社会教育 関係団体 社会教育 施設 施設運営参加 サポート?バット ノーコントロール 団体への参加 行政への協力 自治の 主体形成 対抗的参加 参考社会教育行政論の基本的構図 29
  • 30. 一般行政社会教育行政の再編 規制緩和 市民 社会教育行政 NPO法人 指定管理者 社会教育 施設 団体への 参加 市民社会論的 前提 コミュニティ 団体 権限の付与 学校 ボランティア としての参加 制度 参加の要請 学校支援 コミュニ ティ政策 新しい中間集団教育施設 参考2000年代の社会教育行政の再編の動向 30
  • 31. 参考佐伯市におけるネットワーク会議、青少年健全育成会議の組織化の状況 31 ?2005 2006 2008 2010 2011? 備考(※) 佐伯地区鶴谷校区ネットワーク会議○ ※ 2008年度より鶴谷校区ネットワーク会議 渡町台地区鶴谷校区ネットワーク会議○ 大入島地区青少年健全育成会議○ 西上浦地区青少年健全育成会議○ 佐伯東地区青少年健全育成会議※ ○ 2008年度より鶴谷校区ネットワーク会議 八幡地区青少年育成協議会○ ※ 2011年度より彦陽校区ネットワーク会議 鶴岡地区城南校区ネットワーク会議○ 上堅田地区上堅田幼稚園?小学校区協育 ネットワーク会議 ※ ○ 2010年度より南中校区ネットワーク会議 下堅田地区下堅田っこふれあい協育ネット○ ※ 2010年度より南中校区ネットワーク会議 青山地区青山地区協育ネット○ 木立地区青少年健全育成会議○ 上浦地区上浦校区ネットワーク会議○ 弥生地区弥生校区ネットワーク会議※ ○ 事業前から青少年育成会議が存在 本匠地区本匠校区ネットワーク会議○ 宇目地区宇目校区ネットワーク会議○ 直川地区直川校区ネットワーク会議○ 鶴見地区鶴見校区ネットワーク会議○ 米水津地区米水津校区ネットワーク会議○ 蒲江地区蒲江校区ネットワーク会議○ ※ 2012年度より青少年健全育成会議と別組織に 旧市部 旧郡部 地区名2013年度の組織名 設立年度 出典:佐伯市教育委員会社会教育課の提供資料により、筆者作成。
  • 32. 参考佐伯市における「学校支援」の活動の広がり 32 ボランティア事業計 (実人数) 延べ人数学校支援活動部活動指導環境整備登下校指導学校行事その他 1,679 31.7% 3.6% 1.2% 63.2% 0.3% - 10,378 17.9% 0.1% 1.4% 79.7% 0.9% - 2,826 39.9% 0.2% 5.4% 53.9% 0.5% 0.1% 17,305 23.5% 0.3% 4.4% 71.5% 0.3% 0.1% 3,451 33.5% 1.7% 7.6% 55.9% 1.1% 0.2% 21,081 17.4% 0.4% 6.5% 74.4% 1.1% 0.2% 5,260 33.4% 0.2% 10.0% 55.6% 0.5% 0.3% 20,465 35.1% 0.2% 9.0% 54.4% 0.9% 0.4% 6,668 38.0% 1.6% 8.8% 50.3% 1.0% 0.2% 27,208 29.3% 0.6% 8.7% 59.0% 2.2% 0.2% 年度対象校 2009(平成21)年度7 1,043 2010(平成22)年度9 2,123 2011(平成23)年度12 2,569 2012(平成24)年度13 3,023 内容別割合(%) 2008(平成20)年度7 723 出典:佐伯市教育委員会社会教育課の提供資料により、筆者作成。