狠狠撸

狠狠撸Share a Scribd company logo
脳波モデルを用いたてんかん波判别手法
○上原 賢祐 山口大学 創成科学研究科
第52回 日本てんかん学会学術集会@パシフィコ横浜
The 52nd Congress of the Japan Epilepsy Society (Yokohama)
2018年10月25日
利益相反 (Con?ict of Interest) に関する開示
イントロダクション:脳波の振る舞いをモデリング
Chaotic
<脳神経活動は常にカオス的>
EEGとして計測された信号もカオス的に振る舞う
カオス的な信号の特徴
?初期値鋭敏性
 →確率的ではない
?長期予測不可能性
 →短期予測を可能とする
一見,不規則的な挙動を示すが,
それは初期値によって後の振る舞い
が大きく影響されているだけであ
り,ランダム(確率論)なものとは異
なる
確率的要素を含まない
一自由度の運動方程式で
振る舞いをモデリングする
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
<脳波の振る舞いモデル:非線形振動子>
線形項 非線形項 外部入力項
<モデリング指針>
?脳波の振る舞いは決定論的に記述することができる.
?時間軸のある解析幅であれば初期状態からの予測ができる.
イントロダクション:通常脳波→てんかん波 の検証 (先行研究事例)
最小二乗法によって
  モデル式のパラメータ      を同定する
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
最小二乗法 Error =
N
∑
i=0
(··xi + A ·xi + Bxi + Cx3
i ? P1cosωti ? P2sinωti)
“Study on Detection of Epileptic Discharges Based on a Du?ng Oscillator Model”, Takahiro M, Yasumi U, Masami F, Michiyasu S and Takashi S,
Proceedings of the ASME 2014 IMECE, Vol.3, No. IMECE2014-38107, pp.003T03A083.
イントロダクション:通常脳波→てんかん波 の検証 (先行研究事例)
てんかんによって脳波の状態が変わった場合
脳波の振る舞いを
再現できるか?
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
シミュレーション結果
この振る舞いが再現できていれば,
パラメータ自体に脳波の特性が
保持されているのでは
てんかん波の判別の精度を高めるために,
シミュレーション結果が実験値と合うような,モデルパラメータ同定が必要である
脳波の状態を
数値化する
目的
?実験値を模擬するモデルパラメータ値の同定
?てんかん波判別の実現可能性
1.解析手法の改良
報告内容
(従来)最小二乗法 
(本報告)実験値に合うようなパラメータを同定する目的関数へ変更
2.てんかんモデルラット(n=4)の解析
3.解析結果および考察
1.脳波実測値(解析幅)から初期位置と初期速度を計測
2.以下の評価関数に応じて,
  モデル式のパラメータ      を同定する
3.パラメータの時間推移によって状態を推定
1.解析手法の改良:最小二乗法 → 評価関数を提案
<脳波解析の方法>
?初期値の決定と決定論的記述,短期予測
脳波実測値
モデル出力
x
解析幅 0.5 sec
STEP:
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
実験値を模擬するモデルパラメータが同定される.
脳波の状態を同定されたモデルパラメータ値によって確認する.
Error(A, B, C, P1, P2, ω) =
1
N
N
∑
i=1
(xexp
i
? xsim
i )2
評価関数
A, B, C, P1, P2, ω
2.てんかんモデルラット(n=4)について
てんかん脳波取得のためのラット実験
睡眠ラット
(体重400g)
ラット
固定台
体温維持マット
生理食塩水
毛,頭皮,
頭蓋骨,硬膜
の除去
0 2000300 42010
最大振幅を取る10
実験の時系列について(+解析範囲)
通常脳波10秒 てんかん波10秒
てんかん誘発剤投与
(ペニシリンGカリウム)
Rat 1
Rat 2
Rat 3
Rat 4
4体分の実験結果 (アルファ波)
2.てんかんモデルラット(n=4)について
ωB×103C×108P
同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω)
ECoG
(mV)
Time (sec)
0 5 10 0 5 100 5 10 0 5 10
Time (sec)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
ωB×103C×108PECoG
(mV)
Time (sec)
0 5 10 0 5
ωB×103C×108PECoG
(mV)
0 5 10 0 5 10
Time (sec)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
2002.0 2002.5 2003.0
-0.1
0.0
0.1
xEXP
xSIM
Amplitude[mV]
Time[sec]
1707.0 1707.5 1708.0
-0.1
0.0
0.1
xEXP
xSIM
Amplitude[mV]
Time[sec]
xexp
xsim
822.0 822.5 823.0
-0.1
0.0
0.1
xEXP
xSIM
Amplitude[mV]
Time[sec]
xexp
xsim
2005.5 2006.0 2006.5
-0.2
-0.1
0.0
0.1
0.2
xEXP
xSIM
Amplitude[mV]
Time[sec]
xexp
xsim
実験値とシミュレーション値の一致 
→ 脳波の特性をパラメータによって評価できる
xexp
xsim
xexp
xsim
xexp
xsim
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω) ··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
2.てんかんモデルラット(n=4)について
ωB×103C×108PECoG
(mV)
Time (sec)
0 5 10 0 5
ωB×103C×108PECoG
(mV)
0 5 10 0 5 10
Time (sec)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
非線形パラメータC
 → てんかんが発生すると非線形項が25%消失
 → 先行研究の結果を支持する結果となった
“Study on Detection of Epileptic Discharges Based on a Du?ng Oscillator Model”, Takahiro M, Yasumi U, Masami F, Michiyasu S and Takashi S, Proc. ASME 2014 IMECE, Vol.3, No. IMECE2014-38107, pp.003T03A083.
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω) ··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
3.解析結果および考察
ωB×103C×108PECoG
(mV)
Time (sec)
0 5 10 0 5
ωB×103C×108PECoG
(mV)
0 5 10 0 5 10
Time (sec)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
入力項の振幅P 
→てんかん波が生じると,値が約3倍増加することが確認できた
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω) ··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
3.解析結果および考察
ωB×103C×108PECoG
(mV)
Time (sec)
0 5 10 0 5
ωB×103C×108PECoG
(mV)
0 5 10 0 5 10
Time (sec)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
非線形パラメータC, 入力項の振幅P 
→直感的にてんかん波の判別を行えるものであることが分かった
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω) ··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
3.解析結果および考察
ωB×103C×108PECoG
(mV)
Time (sec)
0 5 10 0 5
ωB×103C×108PECoG
(mV)
0 5 10 0 5 10
Time (sec)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
ωB×103C×108PECoG
(mV)
線形パラメータB, 入力項の周波数ω 
→これらには相関があり,振動工学的アプローチによる処理を施す  
ことで,てんかん波の区別ができることが確認できた(次ページ)
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω) ··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
3.解析結果および考察
パラメータB と ω の振動工学的関係
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
ωB×103ωB×103
ωB×103ωB×103
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
線形項 非線形項 外部入力項
質点が振動するというモデル(今回の系)では,パラメータB
は固有角振動数 を表す
周囲とから入る外部振動数 ω と関連がある可能性がある
ωn = B
ωn
B
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
3.解析結果および考察
ωn(rad/sec)
0
30
60
90
120
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
ωn(rad/sec)
0
25
50
75
100
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
ωn(rad/sec)
0
30
60
90
120
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
ωn(rad/sec)
0
30
60
90
120
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
通常脳波
てんかん波100%発達時
通常脳波
てんかん波100%発達時
通常脳波
てんかん波100%発達時
通常脳波
てんかん波100%発達時
-0.62
-0.64
-0.16
-0.72
-0.61
-0.49
-0.50
-0.27
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω)
3.解析結果および考察
外部
固有
外部
固有
外部
固有
外部
固有
ωn(rad/sec)
0
30
60
90
120
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
ωn(rad/sec)
0
25
50
75
100
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
ωn(rad/sec)
0
30
60
90
120
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
ωn(rad/sec)
0
30
60
90
120
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
通常脳波
てんかん波100%発達時
通常脳波
てんかん波100%発達時
通常脳波
てんかん波100%発達時
通常脳波
てんかん波100%発達時
-0.62
-0.64
-0.16
-0.72
-0.61
-0.49
-0.50
-0.27
通常脳波
異常脳波
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω) ··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
3.解析結果および考察
外部
固有
外部
固有
外部
固有
外部
固有
ωn(rad/sec)
0
30
60
90
120
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
ωn(rad/sec)
0
25
50
75
100
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
ωn(rad/sec)
0
30
60
90
120
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
ωn(rad/sec)
0
30
60
90
120
ω (rad/sec)
0 20 40 60 80 100 120
通常脳波
てんかん波100%発達時
通常脳波
てんかん波100%発達時
通常脳波
てんかん波100%発達時
通常脳波
てんかん波100%発達時
-0.62
-0.64
-0.16
-0.72
-0.61
-0.49
-0.50
-0.27
通常脳波
異常脳波
Rat1
Rat2
Rat3
Rat4
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω)
3.解析結果および考察
外部
固有
外部
固有
外部
固有
外部
固有
てんかん波発生時のωとωnの分布範囲は
通常脳波時に比べて拡大した
··x + A ·x + Bx + Cx3
= P1cosωt + P2sinωt
同定結果(パラメータはA, B, C, P1, ω)
Rat1
3.解析結果および考察
0
20
40
60
80
100
120
0 20 40 60 80 100 120
通常脳波
てんかん波100%発達時
ωn[rad/sec]
ω[rad/sec]
てんかん波判別
?非線形パラメータCの25%消失
?入力信号振幅パラメータPの約3倍増加
?線形パラメータBと入力信号振動数ωの分布拡大
これら同定されたモデルパラメータ
を複合的に用いててんかん波判別の指標とする
参考資料
?実験値を模擬するモデルパラメータ値の同定
?てんかん波判別の実現可能性
1.解析手法の改良
報告内容
(従来)最小二乗法 
(本報告)実験値に合うようなパラメータを同定する目的関数へ変更
2.てんかんモデルラット(n=4)の解析
3.解析結果および考察
てんかん波判別における指標が確認された
?非線形パラメータCの消失
?入力信号振幅パラメータP1の増加
?線形パラメータBと入力信号振動数ωの分布拡大
Duffing振動子 :
RAT D
RAT A RAT B
RAT C
結果と考察
Aφ[deg]
0.0    5.0  10.0 2000.0 2005.0 2010.0
Time[sec]
Aφ[deg]
0.0    5.0  10.0 2000.0 2005.0 2010.0
Time[sec]
Aφ[deg]
0.0    5.0  10.0 2000.0 2005.0 2010.0
Time[sec]
Aφ[deg]
0.0    5.0  10.0 2000.0 2005.0 2010.0
Time[sec]
Duffing振動子 :
RAT D
RAT A RAT B
RAT C
結果と考察
0.0    5.0  10.0 2000.0 2005.0 2010.0
Time[sec]
Error[m2V2]
0.0    5.0  10.0 2000.0 2005.0 2010.0
Time[sec]
Error[m2V2]
0.0    5.0  10.0 1700.0 1705.0 1710.0
Time[sec]
Error[m2V2]
0.0    5.0  10.0 820.0 825.0 830.0
Time[sec]
Error[m2V2]
Duffing振動子 :
RAT D
RAT A RAT B
RAT C
結果と考察Normalizedvalue
0
3
6
9
12
1.00
11.44
Normalizedvalue
0
3
6
9
12
1.00
11.67
Normalizedvalue
0
1.5
3
4.5
6
1
5.5231
Normalizedvalue
0
2
4
6
8
1.00
5.25
Normal Epilepsy Normal Epilepsy
Normal EpilepsyNormal Epilepsy

More Related Content

脳波モデルを用いたてんかん波判别手法