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足関節果部骨折術後の 
臨床成績と主観的満足度との関係
背景と目的 
足関節果部骨折 
? 理学療法士による治療成績報告はない 
? 整形外科医による報告はあるが 
客観的アウトカム研究でしかなされていない 
近年,医療のアウトカム研究において主観的指標が 
積極的に取り入れられるようになってきている 
当院における足関節果部骨折骨接合術後患者の 
治療成績を調査し,客観的な機能アウトカムと 
患者の主観的満足度との関連を検討した
対象 
2012年1月~2012年8月までに当院で骨接合術と理学療法を 
行い理学療法終了時まで経過観察可能であった 
足関節果部骨折33例(開放骨折,脱臼骨折含む) 
?男性20例女性13例 
?骨折型(Lauge-Hansen分類) 
SER型25例,PER型3例,SA型1例,PA型4例 
?受傷時平均年齢48.1±16.8歳 
?受傷前ADL 全例独歩 
?終了時最終評価術後平均135.7±59.7日で実施
評価項目 
○足関節背屈?底屈ROM 
○JSSF 
(日本足の外科学会足部?足関節疾患治療成績判定基準の 
足関節?後足部判定基準) 
○主観的満足度→ VAS使用 
0mm 100mm 
現在の足関節機能に 
まったく満足していない 
現在の足関節機能に 
かなり満足している 
VASによる主観的満足度の評価は以下を参考にした 
(Stefan G M,2011 寺尾ら,2009 板子ら,2006)
統計解析 
? 主観的満足度とJSSFとの関連度を見るために相関係数を求めた 
すべての検定における有意水準は5%とした 
正規性の検定シャピロ?ウィルク検定 
正規分布に従わない 
Spearmanの順位相関係数を求めた 
主観的満足度 
JSSF疼痛 
JSSF合計点 
JSSF機能 
JSSFアライメント 
相関 
相関
結果 
~最終評価時の各項目平均値~ 
背屈ROM 23.6±5.3° 
底屈ROM 54.1±5.2° 
JSSF合計96.5±4.9/100点 
JSSF疼痛37.6±4.4/40点 
JSSF機能48.9±1.6/50点 
JSSFアライメント10/10点(全例満点) 
主観的満足度(VAS) 87.5±10.9mm/100mm 
ROM,JSSF,満足度ともに良好な成績
結果 
~主観的満足度とJSSF合計,小項目との相関~ 
Spearmanの順位相関係数*:p<0.05 
JSSF合計JSSF疼痛JSSF機能 
主観的満足度0.326 0.046 0.567* 
(JSSFアライメントは全例満点であったため相関係数は求めなかった) 
主観的満足度とJSSF合計点との間の相関は低い 
小項目ごとに見ると‥ 
主観的満足度とJSSF機能との間に有意な相関を認めた
結果~JSSFの内訳~ ()内:点数赤字:該当患者数 
機能50点 
?活動の制限 
すべての活動に支障なし(10) 26 
日常生活に支障はないが, 
レクリエーション程度の活動に支障あり(7) 7 
日常生活,レクリエーションに支障あり(4) 0 
日常生活,レクリエーションに著明な支障あり(0) 0 
?連続最大歩行可能距離 
600m以上(5) 33 
400m以上600m未満(4) 0 
100m以上400m未満(2) 0 
100m未満(0) 0 
?路面の状況 
どの路面でも問題なし(5) 28 
凸凹道,階段,斜面でやや困難(3) 5 
凸凹道,階段,斜面はかなり困難, 
またはできない(0) 0 
疼痛40点 
なし(40) 25 
軽度(30) 8 
中等度(20) 0 
高度(0) 0 
?歩容異常 
なし,またはあってもわずか(8) 33 
あきらかな異常はあるが歩行は可能(4) 0 
著明な異常があり歩行が困難(0) 0 
?矢状面可動域(他動的背屈+底屈の総計) 
正常,あるいは軽度の制限〈30°以上〉(8) 33 
中等度の制限〈15°以上30°未満〉(4) 0 
著明な制限〈15°未満〉(0) 0 
?後足部可動域(他動的内がえし+外がえしの総計) 
正常,あるいは軽度の制限 
〈健側の75%以上〉(6) 32 
中等度の制限〈健側の25%以上75%未満〉(3) 1 
著明な制限〈健側の25%未満〉(0) 0 
?足関節と後足部の安定性 
安定(8) 33 
不安定(0) 0 
アライメント10点 
良蹠行性足,変形なし(10) 33 
可蹠行性足,軽度~中等度の変形(5) 0 
不可非蹠行性足,高度の変形(0) 0
考察 
? 主観的満足度とJSSF機能との間に正の相関 
機能的な改善は患者満足度の改善につながる 
機能回復を目的とした理学療法は 
患者満足度向上において有用であると考える 
JSSF機能をさらに細かく見ると‥ 
? 「活動制限」「路面の状況」で減点が多い 
動作上の制限があると満足度が低くなる傾向が示唆された
考察 
? 主観的満足度とJSSF疼痛との間に有意な相関なし 
33例中25例は痛みがなく,8例が軽度で, 
対象に偏りが生じたため. 
傾向としては‥ 
疼痛が残存している者は満足度も低い傾向にあった 
痛みの強い者は主観的健康感も有意に低下する.(笠井ら,2001) 
痛みと主観的指標との間には密接な関係があると思われる. 
これらを明らかにするには, 
症例数の増加,疼痛評価法の再検討が必要
理学療法学研究としての意義 
? 患者の機能面の向上は患者満足度の向上につながる 
可能性が示唆された 
? 整形外科医は機能アウトカムを重要視するが,主観的評価を 
取り入れることでより臨床的な治療成績を出すことが可能 
? 足関節果部骨折は骨折型により手術や後療法の進め方が 
変わるため,今後の臨床成績調査では骨折型別の成績や 
術後の継時的な変化について検討していく必要がある

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  • 2. 背景と目的 足関節果部骨折 ? 理学療法士による治療成績報告はない ? 整形外科医による報告はあるが 客観的アウトカム研究でしかなされていない 近年,医療のアウトカム研究において主観的指標が 積極的に取り入れられるようになってきている 当院における足関節果部骨折骨接合術後患者の 治療成績を調査し,客観的な機能アウトカムと 患者の主観的満足度との関連を検討した
  • 3. 対象 2012年1月~2012年8月までに当院で骨接合術と理学療法を 行い理学療法終了時まで経過観察可能であった 足関節果部骨折33例(開放骨折,脱臼骨折含む) ?男性20例女性13例 ?骨折型(Lauge-Hansen分類) SER型25例,PER型3例,SA型1例,PA型4例 ?受傷時平均年齢48.1±16.8歳 ?受傷前ADL 全例独歩 ?終了時最終評価術後平均135.7±59.7日で実施
  • 4. 評価項目 ○足関節背屈?底屈ROM ○JSSF (日本足の外科学会足部?足関節疾患治療成績判定基準の 足関節?後足部判定基準) ○主観的満足度→ VAS使用 0mm 100mm 現在の足関節機能に まったく満足していない 現在の足関節機能に かなり満足している VASによる主観的満足度の評価は以下を参考にした (Stefan G M,2011 寺尾ら,2009 板子ら,2006)
  • 5. 統計解析 ? 主観的満足度とJSSFとの関連度を見るために相関係数を求めた すべての検定における有意水準は5%とした 正規性の検定シャピロ?ウィルク検定 正規分布に従わない Spearmanの順位相関係数を求めた 主観的満足度 JSSF疼痛 JSSF合計点 JSSF機能 JSSFアライメント 相関 相関
  • 6. 結果 ~最終評価時の各項目平均値~ 背屈ROM 23.6±5.3° 底屈ROM 54.1±5.2° JSSF合計96.5±4.9/100点 JSSF疼痛37.6±4.4/40点 JSSF機能48.9±1.6/50点 JSSFアライメント10/10点(全例満点) 主観的満足度(VAS) 87.5±10.9mm/100mm ROM,JSSF,満足度ともに良好な成績
  • 7. 結果 ~主観的満足度とJSSF合計,小項目との相関~ Spearmanの順位相関係数*:p<0.05 JSSF合計JSSF疼痛JSSF機能 主観的満足度0.326 0.046 0.567* (JSSFアライメントは全例満点であったため相関係数は求めなかった) 主観的満足度とJSSF合計点との間の相関は低い 小項目ごとに見ると‥ 主観的満足度とJSSF機能との間に有意な相関を認めた
  • 8. 結果~JSSFの内訳~ ()内:点数赤字:該当患者数 機能50点 ?活動の制限 すべての活動に支障なし(10) 26 日常生活に支障はないが, レクリエーション程度の活動に支障あり(7) 7 日常生活,レクリエーションに支障あり(4) 0 日常生活,レクリエーションに著明な支障あり(0) 0 ?連続最大歩行可能距離 600m以上(5) 33 400m以上600m未満(4) 0 100m以上400m未満(2) 0 100m未満(0) 0 ?路面の状況 どの路面でも問題なし(5) 28 凸凹道,階段,斜面でやや困難(3) 5 凸凹道,階段,斜面はかなり困難, またはできない(0) 0 疼痛40点 なし(40) 25 軽度(30) 8 中等度(20) 0 高度(0) 0 ?歩容異常 なし,またはあってもわずか(8) 33 あきらかな異常はあるが歩行は可能(4) 0 著明な異常があり歩行が困難(0) 0 ?矢状面可動域(他動的背屈+底屈の総計) 正常,あるいは軽度の制限〈30°以上〉(8) 33 中等度の制限〈15°以上30°未満〉(4) 0 著明な制限〈15°未満〉(0) 0 ?後足部可動域(他動的内がえし+外がえしの総計) 正常,あるいは軽度の制限 〈健側の75%以上〉(6) 32 中等度の制限〈健側の25%以上75%未満〉(3) 1 著明な制限〈健側の25%未満〉(0) 0 ?足関節と後足部の安定性 安定(8) 33 不安定(0) 0 アライメント10点 良蹠行性足,変形なし(10) 33 可蹠行性足,軽度~中等度の変形(5) 0 不可非蹠行性足,高度の変形(0) 0
  • 9. 考察 ? 主観的満足度とJSSF機能との間に正の相関 機能的な改善は患者満足度の改善につながる 機能回復を目的とした理学療法は 患者満足度向上において有用であると考える JSSF機能をさらに細かく見ると‥ ? 「活動制限」「路面の状況」で減点が多い 動作上の制限があると満足度が低くなる傾向が示唆された
  • 10. 考察 ? 主観的満足度とJSSF疼痛との間に有意な相関なし 33例中25例は痛みがなく,8例が軽度で, 対象に偏りが生じたため. 傾向としては‥ 疼痛が残存している者は満足度も低い傾向にあった 痛みの強い者は主観的健康感も有意に低下する.(笠井ら,2001) 痛みと主観的指標との間には密接な関係があると思われる. これらを明らかにするには, 症例数の増加,疼痛評価法の再検討が必要
  • 11. 理学療法学研究としての意義 ? 患者の機能面の向上は患者満足度の向上につながる 可能性が示唆された ? 整形外科医は機能アウトカムを重要視するが,主観的評価を 取り入れることでより臨床的な治療成績を出すことが可能 ? 足関節果部骨折は骨折型により手術や後療法の進め方が 変わるため,今後の臨床成績調査では骨折型別の成績や 術後の継時的な変化について検討していく必要がある