![プログラムによる计测と制御の仕组みを学ぶための
学習支援ソフトウェア
松浦 敏雄*1?中村 亮太*1?Liu Lu*2?Chan Myae THU*1?西田知博*3
Email: matsuura@lemon.media.osaka-cu.ac.jp
*1: 大阪市立大学 大学院創造都市研究科
*2: 関電システムソリューション
*3: 大阪学院大学 情報学部
◎Key Words 計測?制御，PEN，xDNCL, 情報, 技術?家庭，Arduino，情報教育用教材
1. はじめに 組みを容易に学べるようにした。 PEN は比較的短時間で
平成 24 年度より、中学校技術の新指導要領[1][2]におい プログラミングを学習することができる[5][6]。 ハードウェ
て、学ぶべき 4 つの領域のうちの 1 つとして、 「プログ アには Arduino を利用し、プログラムによって機器をい
ラムによる計測と制御」が必履修に指定された。それ以 かに制御するかを学べることに力点を置いた。
前のこの項目は選択履修の扱いであったため、多くの中
学校の教育現場で、実際の授業は行われていなかった。 2.1 ハードウェア制御の方法
このため新指導要領に準拠した教材の充実が急務である ハードウェアの計測?制御は、 プログラムを実行し
が、適切な教材は不十分と言わざるを得ない。 ながらセンサーの値の変化を観察できるよう、PEN
本研究は「プログラムによる計測?制御」を学ぶため と Arduino が対話的に通信し計測?制御が行えるモ
の学習支援ソフトウェアおよびその教材の開発を行ない、 デルとした。このモデルを使用する際、あらかじめ
その有効性を確認することを目的とする。この目的を達 Arduino IDE に用意されているシリアル通信用のプ
成するため、まず我々研究グループで開発した初学者向 ログラムを Arduino に書き込んでおく必要がある。
けプログラミング学習環境 PEN[3][4][5][6][7]に拡張機能を
追加した。この機能を利用すると、PEN 自体を修正し 2.2 組み立て済み基盤の利用
なくても、様々な関数を簡単に追加できる。この拡張機 Arduino にはデジタル入出力が 14 ポート存在し、
能の仕組みを利用して，ハードウェア ( Arduino[8] ) を そのうち 6 ポートはアナログ出力が可能である。そ
制御するための新たな関数を追加した。 の他に、アナログ入力が 6 ポート用意されている。
これらのポートに、 様々な部品を半田付けやブレッド
2. 学習支援システム ボードを用いて取り付けていく。 しかし、 組み立てる
には多くの時間を必要とし、 また必ずしも正常に動作
センサー値 するものを作成できるとは限らない。 本研究では標準
的な入出力装置群を一括して Adruino に接続できる
制御 CLCD-BOOSTER （図 2）を使用することにした。
初学者向けプログラミング
学習環境 PEN
（ソフトウェア）
Arduino
（ハードウェア）
図 1 システムの構成例
プログラムによる計測 制御を学ぶためのシステムは、
?
プログラムを作成するソフトウェアと、計測?制御を行 図 2 組み立て済み基盤 CLCD-BOOSTER
うためのハードウェアで構成される。 本研究では図 1 の
ようなシステムを用いることにした。ソフトウェアは初
学者向けプログラミング学習環境 PEN にハードウェア 3. PEN の拡張
制御する機能を追加したものを使用し、計測?制御の仕 今まで、PEN に関数を追加するには、構文解析を行う](https://image.slidesharecdn.com/pcc117-120808135426-phpapp01/85/-1-320.jpg)
![ためのプログラムを修正し、インタプリタにその関数で できる。
処理する命令を記述し、 PEN 全体をリコンパイルしなけ ［パラメータ］ pin：読み取るピンの番号
ればならない。この作業は PEN の開発に携わっている ［戻り値］ 0 から 1023 までの整数値
者以外には困難であった。今回、PEN に Arduino を制
(8) analogWrite ( pin, value )
御するための関数群を新たに追加したのだが、今後も 指定したピンからアナログ値を出力する。この機
様々なハードウェアの対応や他の新たな関数を追加する 能は LED の明るさを変えたいときや，モータの
ケースが考えられるため、 PEN をリコンパイルせず容 回転スピードを調整したいときに使える。
易に関数を組み込むための仕組み「プラグイン機能」を ［パラメータ］ pin：出力に使うピンの番号
追加した。 value：0 から 255 の整数値
このプラグイン機能を用いて PEN に新しい関数を追 ［戻り値］ なし
加する場合、新規に Java プログラムを記述し、コンパ
イルした class ファイルを所定のディレクトリにコピー 5. おわりに
する。そして、functionTable.ini という関数対応表に、 今回、 「プログラムによる計測?制御」 の仕組みを学ぶ
PEN で使用する関数名とユーザが作成した Java のク ための学習支援システムとして、初学者向けプログラミ
ラス名?メソッド名?メソッドに渡す引数の型を記述す ング学習環境 PEN にプラグイン機能を追加し、
ることで関数を追加できる。 Arduino を制御するための関数群を組み込んだ。追加し
たハードウェアを制御するための関数群を用いて、出力
4. Arduino を制御するための関数群 用の 13 番ピンに付いている LED1 を光らせるためには、
プラグイン機能を用いて、 PEN に Arduino から値を pinMode( 13, "OUTPUT" ) という命令で 13 番ピンを出力
取得、また制御するための関数群を追加した。以下に追 用のピンと設定し、 digitalWrite( 13, 1 ) という命令で
加した Arduino を制御するための関数群を示す。 LED 1 が光る。このように追加した関数群は、ハードウ
ェアよりのローレベルな知識を必要し、ハードウェアの
(1) openPort( port )
ことを意識しながら学習できるので、プログラムによる
Arduino と通信するためのポートを開く。
計測?制御を深く理解できると考えている。
(2) closePort() しかし、ハードウェアの深い知識がなくとも計測?制
開いたポートを閉じる。 御を行いたいという場面も考えられる。この要求に応え
(3) portList( port ) られるよう、 たとえば LED1( high ) とだけすれば、 LED1
シリアル通信できるポートを返す。 が光るといった、ピンの番号などを知らなくても、
［パラメータ］ port：ポートリスト番号 Arduino を容易に制御できる関数群を追加することを検
［戻り値］ シリアル通信できるポート情報 討している。
また、本システムを用いたプログラムによる計測?制
(4) pinMode( pin, value )
御のコースウェアを示し、実際の授業で使用していきた
指定したピンを入力用のピンなのか出力用のピ
いと考える。この授業において学習者の操作履歴や理解
ンなのかを設定する。
度などのデータを収集し評価を行い、 PEN やコースウェ
［パラメータ］ pin：ピンの番号
アなどの教材を改良していきたい。そして、Arduino だ
value：INPUT または OUTPUT
けでなく、他の計測?制御を行うことができるハードウ
［戻り値］ なし
ェアにも対応したいと考える。
(5) digitalRead ( pin )
指定したピンの値を読み取る。その結果は 0 ま 参考文献
たは 1 となる。 [1] 文部科学省：
“学校指導要領”, 2 章 各教科第 8 節技術?家
［パラメータ］ pin：読み取るピンの番号 庭, 2008.
［戻り値］ 0 または 1 [2] 文部科学省： “中学校学習指導要領解説” 技術?家庭, 2008.
[3] 中村亮太, 松浦敏雄, 西田知博 : “初心者向きアルゴリズ
(6) digitalWrite ( pin, value ) ム学習環境の構築”, 2004 PC Conference, pp.102-103
指定したピンにデジタル出力を設定する関数で (2004-08).
ある。value として 0 を指定した場合は出力 pin [4] 中村亮太, 西田知博, 松浦敏雄： “プログラミング入門教育
に低電圧( Low : 0V ) が、 1 を指定した場合は高 用学習環境 PEN”, 情報処理学会研究報告, 2005-CE-81
(2005-10).
電圧 ( High : 5V ) が出力される。
[5] 西田知博, 原田章, 中村亮太, 宮本友介, 松浦敏雄： “初学
［パラメータ］ pin：ピンの番号
者用プログラミング環境 PEN の実装と評価” ，情報処理学
value：0 または 1 会論文誌，Vol.48, No.8, pp.2736-2747 (2007-08).
［戻り値］ なし [6] 中村 亮太, 西田 知博, 松浦 敏雄: 高等学校での “ 「プログ
(7) analogRead ( pin ) ラミング」教育の導入 : PEN を用いて”, 情報処理学会研
指定したアナログピンから値を読み取る。 Arduino 究報告 2008-CE-94, pp41-47 (2008-05).
[7] 初 学 者 向 け プ ロ グ ラ ミ ン グ 学 習 環 境 PEN :
ボードは 6 チャネルの 10 ビット AD ( analog to
http://www.media.osaka-cu.ac.jp/PEN/, (2012/06).
digital ) コンバータを搭載している。これにより， [8] Arduino : http://arduino.cc/, (2012/06).
0 から 5V の電圧を 0 から 1023 の数値に変換](https://image.slidesharecdn.com/pcc117-120808135426-phpapp01/85/-2-320.jpg)
プログラムによる计测と制御の仕组みを学ぶための学习支援ソフトウェア
- 1. プログラムによる计测と制御の仕组みを学ぶための 学習支援ソフトウェア 松浦 敏雄*1?中村 亮太*1?Liu Lu*2?Chan Myae THU*1?西田知博*3 Email: matsuura@lemon.media.osaka-cu.ac.jp *1: 大阪市立大学 大学院創造都市研究科 *2: 関電システムソリューション *3: 大阪学院大学 情報学部 ◎Key Words 計測?制御，PEN，xDNCL, 情報, 技術?家庭，Arduino，情報教育用教材 1. はじめに 組みを容易に学べるようにした。 PEN は比較的短時間で 平成 24 年度より、中学校技術の新指導要領[1][2]におい プログラミングを学習することができる[5][6]。 ハードウェ て、学ぶべき 4 つの領域のうちの 1 つとして、 「プログ アには Arduino を利用し、プログラムによって機器をい ラムによる計測と制御」が必履修に指定された。それ以 かに制御するかを学べることに力点を置いた。 前のこの項目は選択履修の扱いであったため、多くの中 学校の教育現場で、実際の授業は行われていなかった。 2.1 ハードウェア制御の方法 このため新指導要領に準拠した教材の充実が急務である ハードウェアの計測?制御は、 プログラムを実行し が、適切な教材は不十分と言わざるを得ない。 ながらセンサーの値の変化を観察できるよう、PEN 本研究は「プログラムによる計測?制御」を学ぶため と Arduino が対話的に通信し計測?制御が行えるモ の学習支援ソフトウェアおよびその教材の開発を行ない、 デルとした。このモデルを使用する際、あらかじめ その有効性を確認することを目的とする。この目的を達 Arduino IDE に用意されているシリアル通信用のプ 成するため、まず我々研究グループで開発した初学者向 ログラムを Arduino に書き込んでおく必要がある。 けプログラミング学習環境 PEN[3][4][5][6][7]に拡張機能を 追加した。この機能を利用すると、PEN 自体を修正し 2.2 組み立て済み基盤の利用 なくても、様々な関数を簡単に追加できる。この拡張機 Arduino にはデジタル入出力が 14 ポート存在し、 能の仕組みを利用して，ハードウェア ( Arduino[8] ) を そのうち 6 ポートはアナログ出力が可能である。そ 制御するための新たな関数を追加した。 の他に、アナログ入力が 6 ポート用意されている。 これらのポートに、 様々な部品を半田付けやブレッド 2. 学習支援システム ボードを用いて取り付けていく。 しかし、 組み立てる には多くの時間を必要とし、 また必ずしも正常に動作 センサー値 するものを作成できるとは限らない。 本研究では標準 的な入出力装置群を一括して Adruino に接続できる 制御 CLCD-BOOSTER （図 2）を使用することにした。 初学者向けプログラミング 学習環境 PEN （ソフトウェア） Arduino （ハードウェア） 図 1 システムの構成例 プログラムによる計測 制御を学ぶためのシステムは、 ? プログラムを作成するソフトウェアと、計測?制御を行 図 2 組み立て済み基盤 CLCD-BOOSTER うためのハードウェアで構成される。 本研究では図 1 の ようなシステムを用いることにした。ソフトウェアは初 学者向けプログラミング学習環境 PEN にハードウェア 3. PEN の拡張 制御する機能を追加したものを使用し、計測?制御の仕 今まで、PEN に関数を追加するには、構文解析を行う
- 2. ためのプログラムを修正し、インタプリタにその関数で できる。 処理する命令を記述し、 PEN 全体をリコンパイルしなけ ［パラメータ］ pin：読み取るピンの番号 ればならない。この作業は PEN の開発に携わっている ［戻り値］ 0 から 1023 までの整数値 者以外には困難であった。今回、PEN に Arduino を制 (8) analogWrite ( pin, value ) 御するための関数群を新たに追加したのだが、今後も 指定したピンからアナログ値を出力する。この機 様々なハードウェアの対応や他の新たな関数を追加する 能は LED の明るさを変えたいときや，モータの ケースが考えられるため、 PEN をリコンパイルせず容 回転スピードを調整したいときに使える。 易に関数を組み込むための仕組み「プラグイン機能」を ［パラメータ］ pin：出力に使うピンの番号 追加した。 value：0 から 255 の整数値 このプラグイン機能を用いて PEN に新しい関数を追 ［戻り値］ なし 加する場合、新規に Java プログラムを記述し、コンパ イルした class ファイルを所定のディレクトリにコピー 5. おわりに する。そして、functionTable.ini という関数対応表に、 今回、 「プログラムによる計測?制御」 の仕組みを学ぶ PEN で使用する関数名とユーザが作成した Java のク ための学習支援システムとして、初学者向けプログラミ ラス名?メソッド名?メソッドに渡す引数の型を記述す ング学習環境 PEN にプラグイン機能を追加し、 ることで関数を追加できる。 Arduino を制御するための関数群を組み込んだ。追加し たハードウェアを制御するための関数群を用いて、出力 4. Arduino を制御するための関数群 用の 13 番ピンに付いている LED1 を光らせるためには、 プラグイン機能を用いて、 PEN に Arduino から値を pinMode( 13, "OUTPUT" ) という命令で 13 番ピンを出力 取得、また制御するための関数群を追加した。以下に追 用のピンと設定し、 digitalWrite( 13, 1 ) という命令で 加した Arduino を制御するための関数群を示す。 LED 1 が光る。このように追加した関数群は、ハードウ ェアよりのローレベルな知識を必要し、ハードウェアの (1) openPort( port ) ことを意識しながら学習できるので、プログラムによる Arduino と通信するためのポートを開く。 計測?制御を深く理解できると考えている。 (2) closePort() しかし、ハードウェアの深い知識がなくとも計測?制 開いたポートを閉じる。 御を行いたいという場面も考えられる。この要求に応え (3) portList( port ) られるよう、 たとえば LED1( high ) とだけすれば、 LED1 シリアル通信できるポートを返す。 が光るといった、ピンの番号などを知らなくても、 ［パラメータ］ port：ポートリスト番号 Arduino を容易に制御できる関数群を追加することを検 ［戻り値］ シリアル通信できるポート情報 討している。 また、本システムを用いたプログラムによる計測?制 (4) pinMode( pin, value ) 御のコースウェアを示し、実際の授業で使用していきた 指定したピンを入力用のピンなのか出力用のピ いと考える。この授業において学習者の操作履歴や理解 ンなのかを設定する。 度などのデータを収集し評価を行い、 PEN やコースウェ ［パラメータ］ pin：ピンの番号 アなどの教材を改良していきたい。そして、Arduino だ value：INPUT または OUTPUT けでなく、他の計測?制御を行うことができるハードウ ［戻り値］ なし ェアにも対応したいと考える。 (5) digitalRead ( pin ) 指定したピンの値を読み取る。その結果は 0 ま 参考文献 たは 1 となる。 [1] 文部科学省： “学校指導要領”, 2 章 各教科第 8 節技術?家 ［パラメータ］ pin：読み取るピンの番号 庭, 2008. ［戻り値］ 0 または 1 [2] 文部科学省： “中学校学習指導要領解説” 技術?家庭, 2008. [3] 中村亮太, 松浦敏雄, 西田知博 : “初心者向きアルゴリズ (6) digitalWrite ( pin, value ) ム学習環境の構築”, 2004 PC Conference, pp.102-103 指定したピンにデジタル出力を設定する関数で (2004-08). ある。value として 0 を指定した場合は出力 pin [4] 中村亮太, 西田知博, 松浦敏雄： “プログラミング入門教育 に低電圧( Low : 0V ) が、 1 を指定した場合は高 用学習環境 PEN”, 情報処理学会研究報告, 2005-CE-81 (2005-10). 電圧 ( High : 5V ) が出力される。 [5] 西田知博, 原田章, 中村亮太, 宮本友介, 松浦敏雄： “初学 ［パラメータ］ pin：ピンの番号 者用プログラミング環境 PEN の実装と評価” ，情報処理学 value：0 または 1 会論文誌，Vol.48, No.8, pp.2736-2747 (2007-08). ［戻り値］ なし [6] 中村 亮太, 西田 知博, 松浦 敏雄: 高等学校での “ 「プログ (7) analogRead ( pin ) ラミング」教育の導入 : PEN を用いて”, 情報処理学会研 指定したアナログピンから値を読み取る。 Arduino 究報告 2008-CE-94, pp41-47 (2008-05). [7] 初 学 者 向 け プ ロ グ ラ ミ ン グ 学 習 環 境 PEN : ボードは 6 チャネルの 10 ビット AD ( analog to http://www.media.osaka-cu.ac.jp/PEN/, (2012/06). digital ) コンバータを搭載している。これにより， [8] Arduino : http://arduino.cc/, (2012/06). 0 から 5V の電圧を 0 から 1023 の数値に変換