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[心理学集中講義ノート]




2010/11 心理学集中講義(文理学部 14 コマ分)
授業ノート written by Yukio Saitoh ( FXFROG.COM )


意味記憶の実験的根拠


?メイヤーら(1975)の実験
語彙判断課題


二つの単語を間隔をあけて提示
それぞれの語が意味ある語かそうでないかを判断
2番目の語が1番目と意味的に関連する場合、判断速度が短い。


→意味プライミング (プライオリ)


 意味にネットワークモデル(ノードとリンクで表現される)


===
手続き記憶


?動作を行うときなどの一連の行動の記憶


- 行動的スキル:自転車の乗り方、泳ぎ方
- 認知的スキル:外国語のヒアリング、暗算など


 エピソード記憶が障害されている脳損傷患者でも手続き記憶の
形成が認められるなどの知見がある。


===




                                   1
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プライミング


?先行して与えられた情報から無意識に影響を受けるケースがある。


例


だ○ど○ろ
し○ぶ○し




既に授業で「新聞紙」という文言を聞いているから活性化して判断できた。
何らかの痕跡があった。(プライミング記憶の一種として研究されている)


誰かの顔写真を見せられると一か月くらいは素早く判断できるようになる。
→すでに準備状態としている


- プライマー:先行する情報
- ターゲット:測定する対象となる情報
例:意味プライミング、反復プライミング


反応時間が早くなったり、思いつきやすくなったりする。
効果は長時間継続する。




===


13:00~


?動機づけと情動


人が行動を起こすための原動力を動機と呼び(要求、欲求、動因ともいう)
行動は大抵、目標定位のものである。


ex.) 喉が渇いた動機と水という目標→飲水行動




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?情動
怒りや怖れといった動機として生活体を行動に駆り立てる激しい感情


感情:快-不快という方向を持った様々な主観的状態
気分:感情に身体的条件が加わったもの
情操:文化的所産に対する感情の事


===
動機づけ


?行動の発端から終結するまでの一連の過程を指している。
ある動機を持った行動の全体を意味している。


欲求?要求?動因 ――――――> 誘因
           (動機づけ)


行動を駆り立てる内的過程
行動にきっかけを与える外的要因


===
動機づけ


教科書 P.83


?生物学的動機
 渇き、食欲などのホメオスタシス性動機、性欲などの
自己及び種の保存に根ざした本能的要求に基づく動機づけ
(一時的要求)


?内発的動機:
 知的好奇心、ネズミの探索行動、サルのパズルのように
生物学的動機が満たされているとき、強力に働く


?一次刺激と中世刺激が提示され、学習によって条件刺激と
なったとき、二次的動因とよばれる。




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===
欲求(行動をここさせる内的条件)


?1次的要求(生命の維持に直接かかわる生理的欲求、渇き、
飢え、性など)


?ホメオスタシス
体の生理的状態を一定に保とうとする傾向
 渇きという動機は身体内における水分の量が低下したときに
視床下部にある中枢が刺激され生じる。ここに食塩水を
注入すると飲水行為が生じる。
             (ネズミの脳に実施)


?種の保存にかかわる行動の動機づけは性ホルモンによる
ところが大きい。しかし人間などは社会や文化による影響が
強い。


===
社会的動機


?2次的要求(心理、社会的な欲求、1次的欲求が基礎になって
学習によって獲得された動因)


達成動機といわれるようにそれぞれの文化において優れた
目標とされることを高い水準で完成させようとする意欲も
含まれる。


-地位   社会的地位への欲求
-親和   共同の仕事をしたい、人と接したい


===
マスローの欲求階層説


4つの欠乏欲求 生理的動機~威信?自己評価同期、自己実現動機


生理的動機 → 自己実現動機
 動機はいくつかの層をなしており、テキスト P.87 の図の下から順に


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欲求が充足される必要がある。


===
生理的動機(欠乏欲求)


?生理的動機は一次的欲求であり、生命維持、種の保存に関する本能的な
動機である。


?すべての欲求に先立つものとされる。


Ex) 居眠りをしている子供は不機嫌で血糖値も低い。
空腹な子供は落ち着きがなく攻撃的になり易い。


===


安全欲求(欠乏欲求)
?生理的動機が充足されると発現する動機で、危機を避け安全を求める動機。


Ex.) 罰を避けるために行動を伴う。


===
愛情?所属欲求(欠乏欲求)


?生理的欲求と安全欲求が充足すると発現する。


?友達や家族、恋人を求めたり、組織やグループに所属することを求める動機。


?他人に対する愛情と他人からの愛情の両方を含む。


===
威信?自己評価の欲求(欠乏欲求)


?自信、能力などの自己信頼的なものと名誉、賞賛、優越など他人の評価に
かかわるものがある。


?自己尊重の願望:強さ?自信?功績、
                 (プライド)


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?他社からの尊重による願望:名声?注目


===
自己実現欲求


以上の4つの欲求が満たされると発現する欲求。


自己実現:自分がなりたいもの、自分の理想像に近づきたい欲求


喜びといっそうの自己実現の願望につながる。


===
欲求不満


?ローゼン矮躯の分類による欲求不満の要因


内的     欠乏        喪失          葛藤
       自分自身の能力   欲求を満足するための 自分自身の抑制によって
     などが不足する場合   能力が失われた場合   欲求の充足を禁止するなど
                             して欲求の充足に葛藤が
                             生じる場合


外的 欲求を満足させるもの    欲求を満足させる    外的な障害?障壁によって
     存在しない場合     対象が失われた場合   欲求充足のための葛藤が
                             生じる場合




?欲求不満に耐える能力:欲求不満耐性(フラストレーション?トレランス)


?→幼少期からある程度の欲求不満を体験させながら、対処を教え自信と
積極的態度を育てる必要がある。




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葛藤(コンフリクト)


?レヴィン(P.189-191)による葛藤の3タイプ


-接近-接近葛藤
 魅力のある目標が複数あり、その選択における葛藤


-回避-回避葛藤
 好ましくない目標のいずれかを選択しなければならないときの葛藤


-接近-回避葛藤
 一つの目標が魅力的でありかつ好ましくない面もある場合の葛藤


===
欲求不満や葛藤と心身の健康


(大村政男の図 9-3 )


===
適応機制(1)


?予九不満などの緊張や不安から自己を守る働き


?攻撃機制?防衛機制?逃避規制?抑圧機制の4種がある。


?攻撃機制
欲求を阻止していると思われる要因を攻撃し、緊張や不安を解消しようとする。


-短絡反応:正当な手段によらず、直接的に欲求を満足させようとする反応
-試行錯誤的反応:情緒的緊張を無目的な行動や感情に爆発させて解消する。




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適応機制(2)


防衛機制:


?合理化:欲求不満を引き起こした原因が自分にあるのに尤もらしい理由を
持ち出して自分を正当化すること。
EX.) 試合に負けたのは天気が悪かったせいだ。


?代償:本来の目標が手に入らないとき、代わりの目標を手に入れて仮の
満足を得ること。
EX.) ほしかった服が買えなかったので他のものを買った。




?昇華:代償のうち、社会的?文化的に高次の目標に向かう場合。
EX.) もやもやした気持ちをスポーツに打ち込んで解消した。


?同一視:自分が憧れている対象と自分があたかも同じであるかのように思い込む。
EX.) 好きな芸能人と同じ格好をして喜ぶ。




?投射:自分の持っている好ましくない特質を他者の中に見出して非難すること。


Ex.) 点数にこだわる人が他の人が点数にこだわることを非難する。


===
逃避規制


-孤立:現実を回避して身を守ろうとする
-固着:発達の途上で未熟な段階にとどまってしまうこと
-退行:発達の段階を逆に戻ってしまうこと
-逃避:適応困難な状況や不安から退くことで心の安定を図ろうとすること
?現実への逃避、空想への逃避、病気への逃避




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?抑圧機制
-防衛機制の基礎となる無意識下の機制、緊張や不安を意識上に上らないようにする。
-反動機制:露骨に表現できないことを逆な形で表現する。
-知性化:抑圧されている欲求や感情を知的に客観化することにより感情的な混乱や
怖れを防衛する。


===
欲求不満や葛藤の心身の健康


===


情動の学説


?ジェーズム?ランゲ説


?キャノン?バード説(中枢説)
視床下部の活動が身体、脳への情動体験を生じさせる。


?シャクターの2要因説
-情動的状況が身体的変化を生じ、同時にそれを【認知】するとき、それに応じた情動が
生じる。
-同じ身体的変化でも状況にお維持之悿胜盲壳閯婴似鹨颏丹护搿


=======


『発達』


?発達の定義
 人の誕生から死に至るまでの生涯過程(生涯発達)における個人内の変化


上昇的変化:心身の増加、増大、精密化、有効化


減衰的変化:心身の減少、減退、衰弱といった下降的変化




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発達の原理(1)


A)発達の順序性:
一定の順序で起こる。


B)発達の方向性:
頭部から尾部へ、中心から周辺へ。心的にも例えば思考は「自己中心から
客観性、社会性へ」進む。


C)発達の連続性
発達は飛躍がなく連続して起きる


===
発達の原理(2)


D)発達の異速性
 発達はある時期には急激な変化が起き、ある時期には変化が緩慢になる。


E)発達の臨界期:
 発達には特定の時期だけ有効でその時期機を逃すと発達困難になる時期がある。


F)発達の個人差:
 発達の速さや様態には個人差がある。


===
発達の異速性


スキャモンの発達曲線




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遺伝と環境


?遺伝か環境か
?成熟優位説(遺伝的要因)
-レディネス:成熟により発現する学習準備状況である。レディネスが備わった時期に
学習が効果をあげることができる。




===
ゲゼルの階段昇りの研究(P.
             )
一卵性双生児の階段昇りの実験


-ゲゼルの研究への批判:Tが訓練を受けいる間、Cは訓練を受けなかった。
しかし日常生活で階段昇りに役立つことをしなかったのか?


===
経験を重要視する立場


刺激-反応( S-R;stimulus-response)


?学習優位説(環境的要因)
-ワトソン:発達はS-R(刺激に対する反応)の形成と考えた。
-乳幼児の行動観察とともに、条件付け実験を子供に行った → 人体実験なので批判。


-イギリスの経験主義者ロックの環境重視の立場では、生まれてくる人間は白紙の状態で
あって学習と経験によってその白紙に知識が埋め込まれていくとされる。


===


?輻輳説:環境、遺伝の加算的相互作用(ベクトル的な考え)


?相互作用説:
      (ジェンセンの環境閾値説)
                  :潜在的に存在する遺伝的特質が
環境の要因によって顕著化する。


?環境閾値-ある性質は環境が不良によっても顕著化するが、ある特性は非常に
恵まれた環境に置かれてはじめて顕著化する。
                    (テキストP11)


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乳幼児期の発達


?誕生と身体の成長
 人間は他の高等哺乳類と比喩すると誕生後の運動能力は
非常に未熟であり、自立歩行まで1年ほどである。


ポルトマン 生理的早産


?反射行動
-バビンスキー反射:足の裏をくすぐると指を足の甲側に反る反射。
18ケ月頃から指を屈曲させ、この反射は消去。


-把握反射:手に触れるものをすべてつかむ反射。
ただし親指は把握に参加しない。生後4ケ月ごろに消失。


===
反射行動


-起立反射:身体を支えて立たせ、足の裏を平らなところにつけてやると足を繰り返し
曲げ伸ばす。生後3か月ごろに消失。


-匍匐(ほふく)反射:うつぶせに寝かせると腹這いをするように両足をリズミカルに
動かす。生後3か月ごろに消失。


-モロー反射:固い床面に乗せて、強いショック(光や音)を与えたり、足を持って
急に持ち上げたりすると両腕を伸ばして広げ、何かに抱きつくようにする。
生後3ヶ月ごろに消失。




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刻印づけ


?刷り込み、インプリンティング


-鳥類で顕著にみられる。
-孵化直後、初めてみた動くものを追尾する。
-学習のし直しなどができない不可逆的学習。
-臨界期現象の一種。


===
臨界期


発達初期に不可逆な経験が起きるとき、その経験の時期的限界を臨界期という
(テキストP79)


?アマらとカマラ、アヴェロンの野生児
?ハーローの代理母実験


===
母子相互作用と社会性の発達


?愛着:日常生活をしてくれる養育者に好みを示し
その人と情緒的なつながりを持つこと。


?子供が親に愛着を持つだけでなく、愛らしい相貌、鳴き声や
養育者への微笑みなどの働きかけを行って愛情を得ようとする。


?マザリング(母性行動)が養育者から行われる。


===
愛情の成立


?愛着が成立した養育者を安全基地とした探索行動 → 好奇心


?第一次反抗期:3歳ごろ。養育者に対して「自分」を主張する。




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===
母性剥奪


?ボウルビィの研究(戦時中)
 非常に設備が整った病院
 古く汚い託児施設の比較(孤児院)


?病院のほうが設備が良いが「スキンシップ」という面では
託児所のほうが圧倒的に多かった。


?→スキンシップがないため、ホルモン分泌以上が発生していたと
結論付けた。


===
言語の獲得


?新生児はいかなる言語の母音も弁別するが、12ケ月児で
母音の音韻弁別が完成する。


?発声についてはクーイング(あうーなど) 喃語(なんご)
                    、      (ばぶばぶなど)が
4ケ月で出現する。


?1歳過ぎには意味のあるものを指して発声する初語がみられる。


?3歳ごろには基本的統語規則や語彙が獲得され、さかんに
コミュニケーションできるようになる。


===
乳幼児期の発達


?玩具と遊び
 幼児期の子供は自己を中心とした場の認識
 →3歳ごろ他の子どもと遊んでいておもちゃの取り合いをしてしまう。
 →4歳ごろ:役割分担や協力して遊ぶようになる。
 小学校入学前:単純なルールのボール遊びなどが可能となる。




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===
児童期


?人間関係の広がり
 親子関係から教師との信頼関係、友人関係へ


?小学校入学ごろ:家や席が近い、なんとなく好きなどの情緒的関係で関係を構築
 →広く浅い


?学年が上がると意見が合う人などを友達と思うようになり、限られた友人と長く
付き合うようになる。


?4-5年生になると友達グループのまとまりが強くなる。
 →ギャング?エイジ


?一方で親からの保護を受けていることを当然と受け止め、
心理的には安定している。


===
発達段階


?発達の過程をいくつかの段階に分けてとらえたのの
?いくつかの理論が広く知られている。
→たとえば?


===
ピアジェの発達段階


感覚運動期(空間の構成)


前操作的期は象徴的思考期(2~7歳)と直感的思考期(4~7歳)に分類される。


A.自己中心性




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直感的思考の特性


A.アニニズム すべてのものに生命や感情があると考える


B.人工論 すべてのものは人間が作ったもの、親が作ったものと考えること
→月はママがホットケーキを作ったいたときにポイッと放り投げたときにできる。


C.実念論 心に描いたものは実在する、言ったことは本当になる。
→テルテル坊主を吊るすと晴れになる。夢の中の事が現実と結びつく。


===
前操作的思考期において、
           「量の保存」が存在します。




■ピアジェ(認知的段階)
- 児童期?具体的操作期(7~12歳)


具体的操作というのは、その個人個人、子供たちの心の中での
働きを纏めるのを操作という。これらのことが出来るようになって
コップからコップへ、太いコップから細いコップへ入れるても
容積は同じであることが理解できるようになること。


1年生から6年生まで働きが違うので、必ずしも「量の保存概念」が
出来るのではなく、徐々にできるようになる。


液体や年度の大きさは比較的早くに量の保存が完成するが
面積などの抽象的などは具体的操作期に完成しないことがる。
すなわち個人差が生じる。




具体的というのは思考が具体的な事実に沿って進行し客観性を
持つことを意味する。
操作ということは個々の心理活動を一つの体系にまとめる働きをする。
この2つによって「量の保存」も成立する。


===


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「保存」の概念の成立


A.可逆性の獲得 - 元に戻せば同じで


B.同一性 - こぼしたり飲んだりしていないから


C.相補性 - 高くなった代わりに細くなったから
        (2つのことに注意を払うことが出来る)


→操作する内容が数?量/重さ/体積といった領域ごとでバラバラに
発達する。
2. 脱中心化   自己中心性からの脱却し、客観性を得る。


3.分離、結合、順序付けなどの行為を秩序付け、整合できる結果としての論理的操作




A.分離、分類
  2つの特徴を考慮して分類できる。
  図形の色と形による分類




???黄色い■、赤い○、青い△の分類ができる。


B.結合
  包含関係の理解ができる


???すずめの鳥 (鳥という種類のすずめ、より上位の概念を持つ)


C.順序付けの操作
  少しずつしか長さの違わない棒を順番に並べることが出来る


???小さい■、大きい■など、操作ができるようになる。




===


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形式的操作


仮説的演繹(えんえき)的な思考的な思考(自我が芽生える、自分が求める姿)


 具体的な事実を必要としないで、現実世界のこと以外の可能性についても
思考が広がる。大人の理論と同じであり、
                  「もし~なら~となるはず」という
未来の可能性を検討できる。自我の探求を開始できる前提となる思考形式である。


===
ピアジェの理論に対する批判
?個体発達に基づいた発達理論であるため、所属する社会による発達段階の設定に疑問


→発達段階は一般的に進行するのか?
 数学的問題は推論的に解けるのに電気機器の故障はたたいてみること。


?対人関係を排除した発達理論


???すべての思考に均一に当てはめていいのか?テレビを叩いてみるのは
論理的ではない。決してそうではない。家族や学校における人間環境などの
対人関係ではなくもっと広く考慮してもいいのではないか?
ピアジェが発達的分類をしているのが多くの人から支持を受けているのは
間違いではないからであると考えられる。


ピアジェより発達段階の理論をみておく必要がある。
→エリクソンが提唱した「心理-社会的段階」
 エリクソンはフロイトの弟子であり、フロイトは研究者なので
 説明が薄いのでエリクソンを中心に説明していく。




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エリクソンの自我発達の法則


?自己同一性(アイデンティティ)
               :自分は何者か、目指す道は何か、
存在意義は何かという自己を社会の中に位置づけていくことがアイデン
ティティの確立である。


?心理学的社会的危機
 フロイトの発達段階を基に、エリクソンは発達段階を8段階に分け
各段階において危機的状況を乗り越えることによって次の段階へ進むと考えた。


===
(1)基本的信頼と基本的不信


-乳児期 生後1歳、1歳半まで(フロイトのいう口唇期)


-重要な行動様式
?ミルクを吸うこと-取り込むこと
?頭をおっぱいにつっこんでゆくこと。


母親との関係がうまくいっていれば、取り込むという行動以上に
他の様相が優勢になることはない。


母性を発達させていない母親では、赤ん坊の吸収、新陳代謝のリズムに
合わせることが出来ず、適切な時期に適切な刺激を与えることができず
赤ん坊に防衛反応を引き起こさせてしまう。


?歯茎で締め付けること、かみつくこと
?口を閉ざす、拒絶する。
?外へ吐き出す、嘔吐する




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[心理学集中講義ノート]




この記事に赤ん坊が獲得すべき心理?社会的様式


?母親との安定した関係のうちに外界からの刺激を安心して
「受け取る」こと。母親との相互性を確立し、刺激に対して
自分の藩王を「返すこと」ができるようになること?


?「受け取る」「受容する」は「基本的信頼」を意味する。
母子の相互性を通して外界を信じ、何事が起こっても耐えて
いけるような自己信頼を獲得する。それが「自我同一性」形成の
中核となる構成要素になる。


===
信頼体不信の危機


歯が生え、噛むことの快感が増大し「受け取る」ことができなくなる。


身体がしっかりすることによって、母親は子供を放っておく時間が増える。


基本的信頼が基本的不信を上回るバランスを持って確立することが
発達課題。




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[心理学集中講義ノート]




(2)自立性 対 恥


前児童期(2-3歳) フロイトのいう肛門器


重要な行動様式
?排尿?排便について子供が自分で「我慢」し、自分の意志で排泄が可能
になること


?保持と排除、筋肉の硬直と弛緩、屈曲と伸長、という互いに相反する
筋肉活動は葛藤を伴う。


?こどもは「しつけ」という社会適用性に対処するために、この2つの
活動を統合し自己調整の能力を獲得しなければならない。


===
この時期に赤ん坊が獲得すべき心理?社会的様式


「つかまえておく」ことと「手放す」ことの統合。自立性を意味する。


危機
自身の進退コントロールという自律性とそれを失敗するという恥


早すぎるしつけや母親が過度に神経質に汚れを嫌う態度をとることによって
排泄「手放す」という様相を抑圧したり、反動形成によって
保持「つかまえておくこと」に固着する。


 反復的、強制的にたえず自己を統制しようとする傾向が出現する。
自己の自律性を信頼できない弱い自律性は、常に恥の感覚と自己統制が
失敗するのではないかという日枠の感覚が伴うようになる。




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(3)積極性 対 罪悪感(自主性)


遊技期(3歳半から5歳まで)
フロイトのいう男根期(幼児性器期)


重要な行動様式
遊ぶこと(歩行の完成、好奇心が旺盛になる)
 男の子=父親への同一視
 女の子=母親への同一視
無意識的に敵意を持つ同性の親に対して「同一化」し「同一視」を試みる。


===
この時期に赤ん坊が獲得すべき心理?社会的様式


子供が親との同一化によって積極性を獲得すること。同一視した人物を
ごっこ遊びの中で演じることによって受動的にしか受け止められなかった
現実を能動的に支配できるようにしてゆく。


危機
この時期の子どもにとって両親は非常に大きな存在であり、禁止や
叱責に対して反応性が高い。親が見ていないところでも禁止されて
いることをしようとしなくなる。つまり、内的世界に超自我が形成
される。同一視によって積極性を獲得できないときは超自我による
罪悪感によって必要以上に行動が拘束されてしまう。




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[心理学集中講義ノート]




(4)勤労性 対 劣等感


学齢期(5歳から6歳以降)
フロイトの言う潜在期


重要な行動
 外界から目を向け、新しい物事を知り、好奇心を満足させ
与えられた知的作業を完了する喜びを獲得すること。


家庭内の人間関係から学校という社会集団の場に興味や関心が向かう。
感情的な葛藤のもとになっている性愛的要素が加圧され、知的作業へと
昇華されて行く。家庭内の葛藤にまだ巻き込まれている子供は、外部の
世界に昇華されたエネルギーを振り向けることが出来ないので自分の
内に引きこもってしまう。


この時期に獲得すべき心理?社会的様式


?物を作ること。生産的な自我の態度。


潜在期の危機


生産的なエネルギーは周りから認められることによる自尊感情によって
もたらされるが、自己の優劣の意識があまりにも強くなると否定的な
自己概念が形成される。周囲の評価の枠組みで劣等感を抱き生産性
獲得できなくなる。


===
5)自我同一性 対 自我同一性拡散


思春期、青年期
(フロイトの言う性器期)


重要な行動
自分で肯定できる本当の自分を見つけ出し、社会の中における自己を
揺るぎないものにすること。




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[心理学集中講義ノート]




前代会の評価意識が媒介となって「自己概念」が形成されること。
自分、自我ということについて意識されるようになる。
(意識的な存在になる)


?思春期の身体的成熟に伴う性的衝動は自我にとって脅威となる。


?不安が増大するため自我は防衛機制を総動員して克服しようとするが
性的衝動の増大は内的世界の激変として意識され、いままでとは違う自己の
意識が生まれてくる。


?「自分が分からない」「自分はこれからどうなっていくのか」
「自分がバラバラになってしまう」というような意識の出現により
自己の存在の根底が問われるようになる。


===
この時期に獲得すべき心理?社会的様式


 自己を再定義し、再統合することによって自我同一性の感覚を獲得
すること。同一性とは「正体」
             「存在証明」
                  「主体性」といった
意味を含んでいる。


 事故の中に自分の【連続性】と一貫性(小さい時の自分と今の自分は
同じ存在である)の感覚があり、他者や社会との【連帯感】が統合的に
生じしている状態。集団の中に飲み込まれてしまわない【個性(独自性)
                                】
の意識が望まれる。




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[心理学集中講義ノート]




1.信頼感    この世が信じられること


獲得できない場合の青年期の問題


-反抗的な非行行動


-世界が自分を監視したり、つけ狙ったりする追跡妄想を訴える
精神病の様式


-幾度も自分の行動を確認しないではいられない脅迫的な
神経症の様式。


---
2.自律性 自分自身で律せられること。


自我境界の確立(自己と他者の区別が明確になる)


→獲得できない場合の青年期の問題


-自我境界に関連して、自己意識、自分の価値、自分の感覚が
他者のものと混同を起こす。(自分自身の感じていること、
価値観などが曖昧になり自信がもてなくなる)


-他者の存在自体が脅威になる。あるいは他者との境界が
明確でない場合に、他者の影響を受けやすく、支配される
状況に陥る。




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[心理学集中講義ノート]




3.積極性


?前段階の自律性の確立、つまり自分が他者と異なった独自の
世界をもっていることを自覚できる段階になって、はじめて
自分が求めている行動を起こすことができる。
(目的、目標が芽生える、意志の力が働く)


?獲得できない場合の青年期の問題


?能力を他者と比較することに明け暮れる。劣等感や優越感に支配
される。
?自分の心の世界を豊かにすることはできない。


?自分を他者との関係の中で独自性を持つ存在としての感覚を持つこと。
集団の中にあって周囲に飲み込まれない個性を獲得すること。


?社会的に成人であることの証明としての職業を持つまでの間、社会的な
特定の役割を取って、実験を行う時期、モラトリアム執行猶予期間。




---
4.生産性


?学ぶことが可能になる。社会に出るための基礎としての学習と
訓練を受ける。


?獲得できない場合、自らの行動を選択することが困難になる。


---
5.自我同一性   自分とは何者か?何者になろうとしているのか?
何者になりうるのか?


1.自分を歴史的に捉えなおし、これまで生きてきた自分自身の生涯に
位置づけ将来を展望すること。




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[心理学集中講義ノート]




同一性拡散 (自我同一性の確立が出来ていない)


1)時間的展望の拡散
2)自意識の過剰        (集団生活で協調性が取れない)
3)否定的同一性の選択 (社会通念、道徳上に好ましくない破壊的な自分に)
4)勤勉さの麻痺        (何かの作業を積み重ねることが出来ない)
5)性的同一性の混乱      (男性、女性としてその性に合わせた自分が混乱)
6)指導的役割?従属的役割の崩壊(自分は社会で何を指示する?支配される混乱)
7)理想像と価値観の混乱(自分の目標、道徳価値観が混乱)




2010/11/23 心理学集中講義?最終日 13:30~


6.親密性 対 孤独


成人期(フロイトの言う性器期)


いったん獲得した自我同一性を柔軟に修正しながら周囲との
親密な関係を築くことができるか。または自分の自我同一性に
あまりに固執して周囲との親密な関係が築けなくなり孤独に
陥るか。


満13歳~20歳まで


---


7.生殖性 対 停滞(世代性 対 自己陶酔)


次世代を育てることにより、自ら獲得した精神的な資産を
伝えていくことが出来るか。または次世代への伝達を拒否して
停滞してしまうか。


取り扱える情報の量や速度という知能検査の観点からは中高年は
老化?喪失の段階であるが、認知的、問題解決面での中高年の
能力が注目されてきている。



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[心理学集中講義ノート]




8.自己統一 対 絶望
(老齢期)


自分の人生を振り返り、良いことも悪いこともすべて統合して
受け入れられるか、または深い絶望に襲われるか。


===
■性格(パーソナリティ)


類型論


パーソナリティのタイプを指定し(P.86,87)、このどれかに
あてはめるという考え方。


外交的性格 ?????????? 内向的性格


タイプA
?心臓血管系疾患に罹患しやすい性格類型
?競争性、予定の詰め込み、切迫感などの傾向が強く見受けられる性格


タイプAに該当しない人をタイプBと呼ぶ。




【アイゼンク】の特性論P.101
?パーソナリティ特性を纏めたものが類型であると考え類型型と
特性論をまとめた。


-例 内向型(類型)
   持続性?硬直性?主観性?内気?焦燥


→MMPI ミネソタ人格検査(692問からなるアンケート)


ギルフォードの考え方(P.97) 13個の特性から性格を考える。




                      28
[心理学集中講義ノート]




【ビッグファイブ】
?性格特性のうち、様々な研究において共通して見出される因子
?情緒不安定性
?外向性
?知性
?同調性
?誠実性


示すもの
1.性格そのもの
2.人間の性格とは何かについての知識
3.性格を表す言葉の意味的関連


===
パーソナリティの測定


矢田部ギルフォード性格検査(YG性格検査)
72の質問尺度で構成されるパーソナリティ検査
12の性格特性を測定し、これをもとに15の類型へ分類する。


作業法検査
?内クレペリン検査P.152
?加算課題を繰り返し行い、作業量の変化からパーソナリティを
把握しようとする検査。


投影法(P.142~)
?言語による質問紙では回答者の意識している
パーソナリティしか把握できない。


※アセスメント


?そこで回答者のパーソナリティが繁栄されるような標準化された
課題を用いて行われるのが投影法検査である。
-ロールシャッハ検査




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[心理学集中講義ノート]




検査とその要件


?妥当性:測定しようとする内容を測定しているか。
偏りや理論的に導かれる概念と一致するか。


?信頼性:同じ検査を行ったとき、同じ結果が得られるか。
また同種の検査と近い値が得られるか?


?客観性:手続きが標準化され、結果が比較できること。


?実用性:短時間で実施することが出来、煩雑でないこと。




                              以上




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